ハリー・ポッターと滅びゆく一族の末裔   作:水湖 玲

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禁じられた森

チャーリーにノーバートをこっそり渡すときに、マルフォイのせいでハリーたち5人は捕まってしまった。そしてマルフォイのことを警告しようとしてくれたネビルも捕まった。一人五十点、みんなで三百点も寮の点を失ってしまった。唯一の救いはマルフォイもマクゴナガルに捕まったことだ。しかしグリフィンドールのみならず、レイブンクローやハッフルパフの生徒たちからも嫌われてしまったことで帳消しである。行く先々で睨まれて陰口を言われるのだ。

 

「まったく。真夜中に処罰があるんだぜ?しかもマルフォイと一緒に」

「一体どんな処罰かしら」

 

ロンとハーマイオニーはそわそわしている。とぼとぼと集合場所へ歩くハリーたちの足取りは重かった。そしてとうとうフィルチの姿が見えてきた。マルフォイもすでにその場にいたが、いつもの勢いがなくて存在感が薄い。フィルチに嫌みを言われながらついて行った先にはハグリッドの姿があった。5人は安堵のため息をつく。フィルチはにやにやしながら処罰の内容を教えた。

 

「今からお前たちは森に入る」

 

それに対してマルフォイとネビルはあからさまに怖がった。一方のセレーンはそれを聞いた途端ワクワクしていた。森という場所に今までの人生で一度も行ったことはなかったのだ。さらにハグリッドから傷ついたユニコーンを探す使命を聞き、セレーンはますます森へ入って行く気になった。

 

「森では二手に分かれて探す。よーし、組み分けだ。ネビル、ロン、ハーマイオニーは俺と。ハリー、セレーン、サム、マルフォイはファングと一緒だ」

 

分かれてしばらくしてハリーはユニコーンの銀色の血の跡を見つけた。

 

「見て」

「なんて…こんなの、ひどい」

 

ハリーの指す先でユニコーンが死んでいた。セレーンは哀しげにつぶやいた。セレーンの力を持ってしても死から蘇らせることはできない。サムは落ち込んでいるセレーンの肩をそっと抱いた。ハリーがユニコーンへ一歩踏み出したその時、ズルズル滑るような音がした。

 

「ぎゃあああああああ〜!!!」

 

マルフォイは絶叫して逃げだした。ファングもかけて行く。セレーンたちの目の前に頭からフードを被った何かが地面をはってきたのだ。フードに包まれた影が頭を上げてハリーを真正面から見た。ユニコーンの血が隠れた顔から滴り落ちている。その影がハリーに向かってきた。金縛りにあったように動けない3人。そんな中ハリーが額を押さえて苦しみながら倒れた。

 

「ステューピファイ!」

「インペディメンタ!」

 

倒れたハリーを見て、サムとセレーンは身体の自由を取り戻し杖を手に叫んだ。2人の呪文は見事に影に命中する。影が怯んだ隙にサムはハリーを背負い、走った。セレーンは影に目を光らせながら走る。

 

「ロー…レライ…」

 

微かな呻きにセレーンは思わず足を止めた。自分のミドルネームを影が呼んだのだ。わたしを知ってるの?

 

「セレーン!走れ!早く!」

 

サムはかなり後方で立ち止まっているセレーンに叫ぶ。セレーンは我に返り再び走った。なぜあの影が自分を知っているのか。後ろ髪を引かれる思いだった。

 

サムは森から戻った後、ロンとハーマイオニーに見たことを話した。ハリーたちは影が何者かを考えた。

 

「ユニコーンの血は、死の淵にいる命を永らえさせる効果がある。でも恐ろしい代償を払うことになるんだ。ユニコーンのような純粋で無防備な生物を殺すのだから、得られるのは呪われた命。生きながらの死の命だ」

「そこまでするのは…考えられるのは…まさかヴォルデモート?ハリーの傷が痛んだから辻褄が合うわ」

 

サムのユニコーンの血の講釈からセレーンはぞっとする推理をした。ロンはヴォルデモートの名前が出た瞬間、身震いしてみせた。

 

「賢者の石、命の水だ。それが手に入るまでのつなぎなんだ!スネイプはあの石をヴォルデモートに差し出すつもりなんだ!」

「ヴォルデモートがわたしの名前を知ってるの?どうして?」

「その名前を言うのはやめてくれ!頼むから!」

 

セレーンとハリーが口々に言うのをロンはきついささやき声で止めた。サムはセレーンをちらりと見た。そして決心したように話し始めた。

 

「みんな聞いてくれ。セレーン、君のことについて気になるものを見つけたんだ」

 

サムは分厚くとても古い本を寝室から持ってきた。四人とも興味深々である。ヴォルデモートがハリーだけでなくセレーンについても知っている可能性があることは重大である。

 

「ここだ。ローレライ・ウォーターフォード」

「『魔法史上最高の慰者。そして奇跡の護りと癒しを持つ者。人魚の女王セレナの血を継ぐ者とも呼ばれている』…まぁ、この肖像画!あなたに似ているわよ、セレーン」

「確かに。髪の色は違うね。この人は銀色だ」

「これって君の親戚か何かかな?」

 

他の人の声はセレーンには届いていなかった。ただひたすら肖像画を見つめて確信していた。

 

「わたしの母よ。間違いないわ。覚えてるの、何となくだけれど…」

 

ハリーは頷いた。両親がどういう人だったか。はっきり顔は見たことがないが、みぞの鏡が映し出した両親のように、ハリーにはわかるのだ。彼らのしっくりくるイメージを持っている。セレーンも似たような感覚を持っているのだろう。

 

「僕の推測だけど、ヴォルデモートはきっと君のお母さんを狙ってたんだよ。不思議な力を持った人みたいだから。ヴォルデモートは自分の身体の回復のためにその力を利用しようとしてたんだ。それで」

「それでわざと君を孤児院に入れたんだね。君を危険な目にあわせないために」

 

サムのあとをハリーが推測した。ハーマイオニーは静かに涙を流すセレーンを抱きしめた。すっかり空が明るくなってきた談話室で一人の大切な親友の重大な過去が明らかになったのだった。そしてスネイプがいつ賢者の石を奪ってヴォルデモートに渡すのか、時間の問題であることもはっきりしたのだった。




ケンタウロスの出番がなかったですね。ケンタウロスの与えてくれるはずだった情報はサムに代わりに喋らせました。
今回はセレーンの母親の情報が少しだけ出てきました。母親の行方が気になるところです。また少しずつ書いていきます。

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