ハリー・ポッターと滅びゆく一族の末裔   作:水湖 玲

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遅くなりました。拙い文に評価をつけてくださり、ありがとうございます。頑張って投稿していきますので、気長にお待ちください。


賢者の石

まもなくハリーの初試合が迫ってきた。クィディッチの練習と大量の宿題に苦しむハリーをセレーンたちが支えていた。宿題を手伝い、練習でくたくたの身体を気遣い、五人は確実にその友情を固めていた。ハーマイオニーはトロールの事件以来、規則破りに少しだけ寛大になっていてこの寒い季節には有難い魔法の火を出してくれた。それは空き瓶に入れて持ち歩けるものだった。ハリーの初試合の前日、五人で暖まっていると、片脚を引きずるスネイプに出会った。全員は即座に魔法の火をくっつきあって隠したが、スネイプは小言を言う気満々で近づいてきた。

 

「ポッター、そこに持っているのは何かね?」

 

ハリーはハーマイオニーに貸してもらった『クィディッチ今昔』を差し出した。

 

「図書館の本を校外に持ち出してはならん。よこしなさい。グリフィンドール五点減点」

 

そのままスネイプが行こうとした瞬間にセレーンが聞いた。

 

「先生、脚をどうされたんですか?」

「君には関係あるまい、ウォーターフォード。これ以上グリフィンドールから減点されたくなくば、とっとと立ち去ることですな」

 

そして今度こそスネイプは行ってしまった。

 

「確かにあの脚はどうしたんだろう?」

「知るもんか、でもものすごく痛いといいよな」

 

サムの発言に対してロンは悔しがった。ハリーはスネイプが規則をでっち上げたとぶつぶつ言っていた。

 

翌日、ハリーの初試合を観るために四人はクィディッチ競技場の観客席へ向かった。セレーン、サム、ハーマイオニー、ロンは最上段を陣取ってハリーに内緒でつくった『ポッターを大統領に』旗をたなびかせていた。みんなワクワクして今か今かと試合開始を待っていた。

 

試合中、突然ハリーに異変が起きた。ほうきがまるでハリーを振り落とそうとするかのような動きを見せた。みんなが不安の声を上げる中、ハーマイオニーが双眼鏡を片手に叫んだ。

 

「スネイプよ…見てごらんなさい」

 

ロンが双眼鏡をもぎ取ると、そこにはハリーから目を離さずぶつぶつつぶやくスネイプの姿があった。

 

「ほうきに呪いをかけてる」

「僕たち、どうすりゃいいんだ?」

 

ハーマイオニーに対してロンは不安そうにセレーンとサムを見やる。しかしセレーンは双眼鏡で別のものを発見していた。

 

「クィレルもよ!ハーマイオニー、クィレルもハリーをじっと見てぶつぶつ言ってる!」

「何ですって⁈」

「何だって⁈」

 

ロンとハーマイオニーは叫んだ。スネイプとクィレルが呪いを?どうして?サムは突然立ち上がって走り出した。セレーンはサムのあとを追った。

 

「どうするの?」

「僕はスネイプの気をそらす。君はクィレルの方を頼んだ。方法は何でもいい。この際タックルをかけても構わない。ハリーを助けるんだ!」

「わかったわ」

 

二人は人混みをかき分けて進んだ。途中でセレーンは方向を変えてクィレルのいる方へ走った。頭の中で必死に考えた末にサムのタックル案を採用することにした。呪文もいいが、他の人を巻き込まない呪文を思いつけない。ちょうど目の前にハリーに夢中のクィレルが見えた。セレーンは急いでいて気づかずにぶつかったことを装うため、そのままの速度で突っ込んでいった。クィレルは見事になぎ倒されて頭から前方の列に落ちた。セレーンは立ち止まらずにサムの方へ走った。いざとなれば助太刀する予定だ。しかし途中でサムに出会って速度を落とした。

 

「うまくいった?」

「ああ。ハーマイオニーの魔法の火を少しだけお裾分けしたんだ」

 

セレーンは顔を赤らめた。柄にもなくタックルなんて激しい行動を取ってしまい、恥ずかしかったのだ。

 

「君の方もうまくいったみたいだね」

 

サムはにこにこしながら元の観客席へ戻っていく。セレーンは自分の方法が見抜かれたみたいで顔をさらに赤らめてサムを追った。

 

試合は見事にグリフィンドールの勝利。ハリーは口でスニッチをキャッチした。試合後にセレーンたちはハグリッドの小屋で濃い紅茶を淹れてもらっていた。

 

「スネイプとクィレルだったんだよ」

 

ロンは説明した。

 

「スネイプはハーマイオニーと僕が見て、クィレルはセレーンが見たんだ。君のほうきにぶつぶつ呪いをかけていた。ずっと君から目を離さずにね」

「バカな!なんでスネイプとクィレルがそんなことする必要があるんだ?」

 

ハグリッドの問いに五人は顔を見合わせた。ハリーはハグリッドに自分の考えを伝えた。

 

「僕、スネイプについて知ってることがあるんだ。あいつ、ハロウィンの日に、三頭犬の裏をかこうとして噛まれたんだよ。何か知らないけど、あの犬が守っているものをスネイプが盗ろうとしたんじゃないかと思うんだ」

 

ハグリッドはティーポットを落とした。セレーンもこの推理をついさっきハーマイオニーから聞かされたばっかりで頭が付いていかない。他の四人はハリーからこの話を聞いていて、セレーンだけ知らなかった理由はセレーンが異常なほどの早寝をするからだ。

 

「なんでフラッフィーを知ってるんだ?」

「フラッフィー⁈」

「そう、あいつの名前だ。俺がダンブルドアに貸した。守るため…」

「何を?」

 

ハリーが身を乗り出した。ハグリッドはなかなか話してくれない。

 

「スネイプはそれを盗もうとしていてそれがハリーにバレそうだからハリーに呪いをかけたとして、クィレルは?」

 

セレーンは疑問をみんなにぶつけた。全員が困惑する中、サムが答えた。

 

「多分、反対呪文だ。いくら運動神経のいいハリーでもあれだけ長い間ほうきから落とされずに済むはずがない。誰かが反対呪文をかけてたんだ。ハリーの推理から行くと、クィレルが反対呪文を唱えてハリーを助けていたことになる」

 

サムはいまいち納得していない顔だ。しかしハリー、ハーマイオニー、ロンはすっきりした顔で感激していた。

 

「さすが闇の魔術に対する防衛術の先生ね!きっとハリーがどんな呪いをかけられているかすぐに見抜いて助けようとしてたんだわ」

「僕、二度とクィレルことをからかったりしないよ」

 

ロンは宣言した。セレーンはサムにこっそり視線を合わせた。サムの腑に落ちてない様子を見てセレーンは思った。サムになら話せそうだ。クィレルにぶつかったときにクィレルはセレーンを恐ろしい、凍りつくような眼差しと今にも首を絞めそうな殺気で睨みつけたことを。

 

あの後、ハグリッドがニコラス・フラメルの名を出した。ハグリッドはものすごく自分に怒っていたが、おかげで何を隠しているのかがわかった。賢者の石である。

 

「セレーン、サム、すごいわ」

 

ハーマイオニーは少し悔しそうにニコラス・フラメルと賢者の石を結びつけた二人を褒めた。

 

「黄金と命の水か…。スネイプはどっちも欲しいんだろうな」

 

ロンは賢者の石の力にびっくりしながら、スネイプが犯人だと信じて疑わない。

 

「それで、あのね…わたしが思うに多分…」

 

セレーンは言いかけてやめた。クィレルが犯人じゃないか、なんて今さら信じてもらえないだろう。特にすっかりクィレル信者のロンとハリーには。

 

「何だい、セレーン?」

 

ハリーによって現実に戻されたセレーンは首を振って話題を変えた。

 

「もうすぐクリスマス休暇よね!わたしとサムは残るんだけど、みんなは?」

「わたしは家に帰るわ」

「僕らは残るよ」

 

ハーマイオニー以外全員がホグワーツに残ることになってハーマイオニーは寂しそうだ。ハーマイオニーがいないのはとても残念だが、初めて楽しいクリスマスになりそうだとセレーンは思った。


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