ハリー・ポッターと滅びゆく一族の末裔   作:水湖 玲

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怪物の正体

グリフィン対スリザリンのクィディッチの試合でハリーはブラッジャーに追い回されていた。セレーンたちが不安気に見守る中、ブラッジャーはハリーの右腕に激突した。骨折したようだ。ハーマイオニーとサムは杖を降り、ブラッジャーを何とかしようとしている。セレーンはあわててハリーのいる競技場に入る通路へ向かった。

 

「グリフィンドールのハリー・ポッターがスニッチを獲りました!グリフィンドールの勝利です!」

 

セレーンは実況を聞きながら競技場に走り込んだ。試合が終われば競技場には誰でも入れるのだ。ハリーが墜落して地面に叩きつけられた瞬間にスタンド中から悲鳴があがった。セレーンも動揺したが、足を止めずにハリーの元へ駆け寄った。幸いにもセレーンが一番最初にハリーにたどり着くことができた。

 

「ハリー、今良くするからじっとして」

 

セレーンはすぐに右腕を両手で包み込んだ。白く淡い光が溢れ出し、ハリーは痛みが引いていくのを感じた。

 

「もう治ったよ」

「ありがとう、セレーン。本当に何ともないよ。すごいね」

 

セレーンはハリーの反応が嬉しくて微笑んだ。そこにいろんな人が集まってきた。セレーンの力を知るハリーたち4人以外はまだハリーが怪我をしていると思っている。

 

「皆さん!心配ご無用!この私が看てあげればすぐに元気になりますよ!」

 

嫌な予感しかさせない声が聞こえてきてセレーンとハリーはめまいを覚えた。ロックハートは自信満々にハリーの腕を取った。しかも左腕だ。

 

「先生、そっちの腕じゃないです!というより大丈夫です!」

 

ハリーはあわててロックハートを振り払い、立ち上がった。墜落した影響で全身に打撲を受けていると思っていたが、セレーンが右腕の骨折のついでに治してしまったらしい。お陰で俊敏に危険人物から遠ざかることができた。そしてロックハートの放った呪文は見事に地面へ向かって空振りした。

 

「ほら!この通り!大丈夫でしょう!」

「先生のおかげではないですけどね!」

 

ロックハートは呪文が明らかにハリーに当たっていないにも関わらず張り切って集まってきた人々に大声でアピールした。ハリーは思い切りつっこんだが、ロックハートは気にしていない。しかしまあ、余計なことをされなくてよかったとハリーは思った。

 

 

 

「ドビーだったんだ、あのブラッジャーの犯人は。もっと詳しく聞こうとしたけど、それどころじゃなかった。コリンが石にされて運ばれてきたんだ」

 

翌日の朝食でハリーはセレーンたち4人に言った。試合の後、一応一晩医務室で過ごすように命じられてハリーは医務室にいた。そこへドビーがやってきたこと、そしてドビーはハリーをホグワーツから追い出すために怪我をさせようとしていたことを話した。秘密の部屋についてドビーは知っている様子だったが、結局何も教えてもらえなかった。石化したコリンが医務室に運ばれてきてドビーは姿を消してしまったのだ。

 

「僕は怪物の正体に見当がついたよ。おそらくバジリスクだ」

 

サムの言葉にセレーンとハーマイオニーは息をのんだ。

 

「別名『毒蛇の王』とも呼ばれる巨大で何百年も生きながらえる“蛇”だ。毒牙のほかに、眼を見た者は即死する」

「即死だって⁉︎バジリスクなら何故みんな石になったんだ?」

 

ロンはサムに問う。ハリーは合点がいって代わりに答えた。

 

「ミセス・ノリスもコリンも直接バジリスクの眼を見てないんだ。覚えてる?ミセス・ノリスが石になっていた場所の床は水浸しだった。水を通して奴を見たんだ。そしてコリンはいつもカメラを持ち歩いている。だからコリンはカメラのレンズを通して奴を見たんだ」

「直接見てないから誰も死ななかったのね」

 

ハーマイオニーはハリーの言葉を締めくくった。サムはさらに付け足した。

 

「ミセス・ノリスの石化を見つける前に蜘蛛の行列が僕らと逆の方へ行っていたのを見たんだ。そして今日の朝食前にハグリッドに聞いたんだけど、雄鶏が全部何者かに殺されていたそうだ」

「蜘蛛の敵はバジリスク。バジリスクの敵は雄鶏の鳴き声。辻褄が合う」

 

セレーンはバジリスクについての知識をまとめた。バジリスクが怪物の正体であることは疑いようのないものになった。そして残った問題は2つ。巨大なバジリスクがどうやってホグワーツ内を移動しているのか。そして秘密の部屋はどこにあるのか。

 

 

その後5人は毎日全力で図書館の本を読み漁った。しかし成果を得られないまま次の犠牲者が出てしまった。また運の悪いことにセレーンたち5人が第一発見者になってしまった。ハッフルパフ生のジャスティン・フィンチ・フレッチリーとグリフィンドール憑きのゴーストであるニコラス・ド・ミムジー・ポーピントン卿が石化したのだった。騒ぎの中、ハリーだけダンブルドアの部屋へ呼ばれたため残りの4人は談話室で待っていた。戻ってきたハリーはダンブルドアとの会話を全て教えてくれたが、ロンの興味はそこにはなかった。

 

「不死鳥だって⁉︎そりゃすごいや!」

「僕も見たかったな。しかも燃焼日に当たるなんて君は幸運だ」

 

サムも目を輝かせている。サム、可愛いなぁ。セレーンはそう思ってから首を横に振った。別に特別な意味はないって!セレーンの、脳内ハーマイオニーが『それは恋の作用だわね』と意見するのをあわてて否定する。そこへちょうどお気楽な男子陣に呆れるハーマイオニーと目が合ってしまった。だから違うって‼︎恋じゃないってば‼︎




原作より展開が早くなっています。ハーマイオニー以外にもセレーンとサムという2人の秀才がいることが大きく影響しています。そのため出番が少なくなってるキャラもいますが、大目にみてください。

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