あなたへの想い
孤児院に戻ってから憂鬱な毎日を過ごしているセレーン。サムからもらったお守りを何度も見つめてため息をついた。孤児院の生活以上に気がかりなのはハリーのことだ。ハリーが可愛い白いふくろうのヘドウィグで手紙をくれると約束したのに全く来ないのだ。ロンはふくろうで、サムとハーマイオニーはマグル方式で手紙を送ってくれているが、ハリーだけ手紙がないのだ。セレーンは心配で仕方がなかった。意地悪な叔父さんたちに酷い目に遭ってるんじゃないかな?セレーンは再びため息をついた。そしてハーマイオニーから届いた最近の手紙をもう一度読み返してみた。
『大好きなセレーンへ
あなたのお母様のこと調べてみたわ。でもサムが教えてくれた本以外には全く記録が残ってないの。でも、あなたのお祖母様については見つけたわ!セレナは人魚独自の魔法が使える一族の女王なの。彼女は大西洋のどこかに王国を持っていて、生きていらっしゃるわ。ただその国への行き方は誰も知らないの。あとわかったのは、あなたの杖の芯に使われているのはあなたのお祖母様の髪の毛よ。オリバンダーに提供したっていう記録が残ってたわ。でも薄々わかってたわよね?私もそうじゃないかって思ってたの。ところで早くみんなに会いたいわ!今家族と旅行中だけど、ロンのお家で会いましょう!ハリーったらまったくどうしたのかしらーーー』
ハーマイオニーが家族とのバカンス中にもかかわらず、自分の家族について一生懸命調べてくれていたのが嬉しかった。一方のサムの手紙にもセレーンの家族について調べてくれたことが書いてあった。
『セレーンへ
君のお母さんについてわかったことがある。君のお母さんはハリーのご両親と同じときにホグワーツに入学している。彼女はレイブンクローの生徒だったそうだ。ホグワーツに戻ったらもっと詳しく生徒の記録を調べよう。ところでハリーのことだけど、とても心配だね。今、ロンと一緒にハリーを救い出す計画を立てたんだ。明日の夜、迎えにいくから用意しておいて。
サム』
サムはハグリッドの言う「近く」の孤児院に住んでいるので、たまに会いに来てくれていた。あの意地悪のマリアはサムを一目見た途端に気に入ってしまって彼とどういう関係かしつこく聞かれたが、サムが「友達だ」と断言したおかげで窮地を免れた。そしてマリアはサムに会いたい一心でセレーンに親切になった。セレーンは孤児院で以前よりも過ごしやすくなったが、サムの発言にずっと胸が痛んでいた。ハーマイオニーに手紙で相談したところ、とんでもない答えが返ってきた。
『セレーン、それって多分恋だと思うわ』
恋?まさか!サムのことはハーマイオニーやハリー、ロンと変わらないくらい大好きなのよ?サムが特別好きなんてことはないわ!ハーマイオニーったらおかしいんだから…。サムが今夜迎えにくる。そう考えると彼女はずっとそわそわしていた。
サムはロンとロンの双子の兄弟とともに迎えにきた。空飛ぶ車にのって。
「すごいわね!この車!」
「僕のパパがつくったんだ」
興奮するセレーンにロンは得意げに言った。
「ねぇジョージ先輩、普通の車と運転の仕方は変わらないんですか?」
「…嘘だろ?」
「…見分けた⁈」
双子とサム、ロンは呆気にとられた。家族だって見分けられないのに、どうして他人のセレーンが見分けられるんだ?
「あー…普通に話してくれ」
「そうだな、むずかゆいからな」
双子がようやく答えた。驚きのあまりセレーンの質問を忘れてしまっている。サムが代わりにセレーンに耳打ちで答えた。
「あそこだ!」
ロンが指さす先には鉄格子のはめられた窓があった。
「嘘でしょ?」
セレーンは咄嗟に杖を出しかけて学校外で魔法を使ってはならないことを思い出した。双子は落ち着いて作業を始めた。鉄格子にしっかりロープを結びつけ、車を勢いよく後退させて意図も簡単に鉄格子を外してしまった。ハリーは迎えに気づいてあわてて準備している。サムとロンは窓越しに中に入ってハリーを手伝い、急いで車に乗り込んできた。ちょうどハリーの部屋のドアが開いて叔父が入ってくるところだった。
「「つかまれ!」」
双子は叫んで車を発進させる。何とか捕まらずに出発できた。みんなで歓声を上げながらロンの家へと向かっていった。
セレーンとサム、ハリーはロンの母親のモリーに大歓迎された。一方の双子とロンは勝手に車を飛ばしたことをきつく叱られていた。サムは車を飛ばす計画の共犯者だと名乗り出たが、モリーはサムに対して寛大だった。セレーンにとって憧れの母親像がモリーにぴったり当てはまり、モリーが大好きになった。ロンの妹のジニーとは初めて会ったが、あっという間にハリーへの恋心の相談を受けるまでの仲になった。
「あぁ、私、あなたくらい綺麗だったらよかったのに…」
「ジニー、何言ってるの?わたしは綺麗じゃないよ。それにもっと自信を持たなくちゃ!あなた、本当に素敵な女の子よ?」
ジニーはセレーンが自分の魅力をわかってないと思った。そしてセレーンからサムへの気持ちについて相談されて嬉しかった。
「ハーマイオニーは恋だって言うの。変でしょ?」
「私も恋だと思うわよ」
ハーマイオニーの同じ意見がもう一つ出てきてセレーンは不安になった。しかしそれを密かに否定した。ハーマイオニーもジニーも恋愛経験は数えるほどだって言ってるし、きっと間違いだわ。セレーンは気持ちを切り替えてようやく楽しくなる夏休みを過ごすことにした。
セレーンの視点なので主な筋がぼんやりしていて申し訳ありません。セレーンは打ち消していますが、彼女の恋の行方もよかったら追ってください。