機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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EX─未来へ─

 

「……なぜ押される……ッ!?」

 

 デビルガンダムブレイカーが現れる数分前、ビグザムやリシテアも全て轟沈させられ、残ったMS隊も次々に撃破されていくこの状況で指揮をとっていたシャミバは苦々しい表情を浮かべる。

 

「アルティメットはどうなっているッ!!?」

「──今、出るよ」

 

 こうなってしまえばもうアルティメットガンダムのコピーを出すしかない。

 今までギリギリまで自己増殖を繰り返し、そしてそれを取り込むことで自己進化させていたがこの状況では出撃させざるえない。コピーの状況を問うと正面モニターからコピーの姿が映る。

 

「ああ、早く薙ぎ払え。地球を這いずり回るゴミ共を……ッ!!」

 

 コピーの返答にニィッと気味の悪い笑みを浮かべ、そして忌々しそうにアドラステアに群がる統合軍を見やる。

 

 シャミバは地球に属する人間を見下していた。

 自分達よりも劣っている奴らは所詮、こちらを見上げることしかできないと。だからこそ和平という結果が許せなかったのだ。自分達の力を示す為にパッサートを創設し、今に至るのだ。

 

「……ゴミは再利用しなきゃダメだろ?」

 

 しかしコピーからの返答はシャミバにとって意味が分からなかった。

 その意味を問いかける前に彼はその生を目の前のモニターを突き破り、自分の頭を貫いた触手によって終えたからだ。

 

 ・・・

 

「感謝してるぞ、シャミバ……ッ! 礼にお前はこれから奴隷となる他の人類とは違い、楽にしてやった」

 

 既に翔を模していたコピーの姿はない。

 あるのはブレイカー0とアドラステアと今まで自己増殖させていた全てを取り込んだデビルガンダムブレイカーだけだ。ブリッジ部分にブレイカ-0の上半身が現れ、そこからコピーと思われる声が聞こえる。

 

 そもそもシャミバとコピーの目的は違っていた。

 シャミバは前述の通りだが、コピー、いやアルティメットガンダムの本来の目的は地球環境の浄化。その為、翔達への復讐を終えた後は地球を汚した人類を奴隷とし、浄化に役立てようとしていたのだ。

 

 まだ不完全な体ではあるが、それでも十分な力は得られた。

 デビルガンダムブレイカーは高笑いを上げると、そのままフィンファンネル、デスアーミー、ガンダムヘッドを放つ。

 

「うあああぁあっっ!!!?」

 

 一機の統合軍のMSが撃ち落される。

 爆発こそはしないものの地に叩きつけられてしまった。すぐに行動を起こそうとするが、デビルガンダムブレイカーのその巨大な車輪によって踏み潰されてしまう。

 

「クソッ!! どうすりゃぁ……ッ!!」

 

 バーニングブレイカーはカンダムヘッドを破壊しながら、デビルガンダムブレイカーを見やる。

 アドラステアだけであればまだ何とかなった。

 実際に後少しで倒せたはずだ。

 しかし今のこの姿にいくら攻撃をしようがその侵攻を止めることはできない。

 

「ッ!?」

 

 そんなバーニングブレイカーの周囲をフィンファンネルが包囲する。

 それは確実にバーニングブレイカーを落とすためのものだった。

 

 これでは避けられない。

 身構えるバーニングブレイカーであったがその前にフィンファンネルは全て撃ち落される。

 見れば後方からビームライフルを構えてこちらに接近してくるブレイカーの姿がモニターに映る。

 

「最後まで諦めるな……ッ!!」

 

 庇うようにバーニングブレイカーの隣に移動し、ビームライフルを駆使してデスアーミーやガンダムヘッドを撃ち落としながら翔はシュウジを叱咤する。

 

 その言葉にシュウジは目を見開く。

 見れば周囲にはアークエンジェル隊のMSが戦闘をしていた。

 

「私達は未来を目指す……! ここで負ける訳にはいかない……ッ!!」

「過去が立ち塞がろうが、私達は前に進むわッ!!」

 

 今度はリーナとレーアの声が聞こえる。

 二人の機体を見れば、デビルガンダムブレイカーの足を止めるために、タイヤ部分へエヴェイユの光を纏ったウィングゼロはツインバスターライフルを、トランザムしたダブルオークアンタはGNバスターライフルをそれぞれ構え最大出力で放つ。

 二つの極太のビームは完全にタイヤを破壊することは出来なかったが、それでもデビルガンダムブレイカーの動きを止めることには成功する。

 

「そうだ、何度立ち塞がろうが過去は乗り越えるッ!!」

「それが人間のあるべき姿だッ!!」

 

 リーナやレーアの言葉に頷きながらトールギスⅢはヒートロッドで周囲のデスアーミーをなぎ倒し、レッドドラゴンはガーベラストレートを引き抜き、自分を食い殺すと言わんばかりにこちらに向かってくるガンダムヘッドに突き刺した。

 

「俺達はみんなで未来を掴む、そうだろ、シュウジッ!!!」

 

 ショウマの声がバーニングブレイカーのコクピット内に響く。見れば風雲再起に搭乗したゴッドはアドラステアの砲台を破壊して回っていた。

 

「……」

 

 仲間達の助言を耳に入れたシュウジは一度俯き、そして顔を上げる。

 もうそこには迷いや恐怖は一切、なかった。

 

「俺のこの手が輝き吼えるッ! 未来を掴めと羽ばたき叫ぶッ!!」

 

 バーニングブレイカーは背面ジェネレーターを展開、日輪を輝かせシュウジは右腕を立て構える。連動したバーニングブレイカーの右腕の甲に前腕のカバーが覆い、エネルギーが右マニピュレーターに集中する。

 

「バアアアァァァァァニングゥゥッ!!!! フィンッッガアアアァァァァァァァアアアアッッッッ!!!!!!」

 

 そのまま一気に飛び出し、前に展開していたデスアーミーを数機そのままバーニングフィンガーで突き破り、背後のガンダムヘッドを破壊したのだ。

 

「……翔さん、アイツは俺達が倒す」

「……!」

 

 ブレイカーに背を向けたままシュウジは翔に通信を入れる。

 翔のコピーであり、今は変貌したデビルガンダムブレイカーを倒すことが翔の本来の目的だったからだ。

 

「翔さんが決着をつけることは簡単でしょう。でもそれじゃあダメなんです」

「この世界にいる私達が終わらせて見せます!」

 

 ブレイカーの隣にはそれぞれライトニングFBとスターストライクがいた。

 カガミ、そしてヴェルの言葉を聞いた翔は僅かに考えるように俯く。

 

「……分かった。お前達がやるんだ、道は切り開くッ!!」

「「「了解ッ!」」」

 

 すぐさまビームライフルを構えて、周囲のデスアーミーやフィンファンネルを撃ち落とし、デビルガンダムブレイカーへの道を示すと、バーニングブレイカー、ライトニングFB、スターストライクの三機はデビルガンダムブレイカーへと向かっていく。

 

「チョロチョロと……ォッ!!」

 

 デビルガンダムブレイカーは周辺に飛び回り、自分へ攻撃してくる統合軍のMSに苛立ちながらも、こちらにまっすぐ向かってくる三機のガンダムに気づく。

 

 すぐさまデスアーミーやフィンファンネルなどを打ち出すがライトニングFBのミサイルとスターストライクのドラグーンが撃ち落として、どんどん距離を縮めていく。

 

「貴方には……頭にきています。ここで必ず仕留める」

 

 デビルガンダムブレイカーは倒すべき敵。

 それ以上に翔に成りすました事は許せない。

 カガミはライトニングFBのバックパックの武装を全て駆使してデビルガンダムブレイカーに損傷を与える。

 

「私達の目指す未来にあなたはいないッ!!」

 

 フィンファンネルやデスアーミーを撃破したスターストライクはそのままドラグーンをデビルガンダムブレイカーへ向ける。縦横無尽に駆け回るドラグーンはデビルガンダムブレイカーは残り少なかった砲台を全て破壊した。

 

「過去に縋りついたお前が俺達を倒そうなんざ二万年早いぜッ!!」

 

 バーニングブレイカーは両腕を大きく広げ、そしてマニピュレーター同士を組むとエネルギーが溜まり始める。それは覇王不敗流究極奥義である石破天驚拳だった。

 

 しかし放たれた石破天驚拳は今までショウマ達が見せたものとは大きく違った。

 放たれた一撃はその姿を大きな青龍をかたどったのような姿になり、そのままデビルガンダムブレイカーを貫く。

 

「シュウジッ!!」

「行ってッ!!!」

 

 デビルガンダムブレイカーはバーニングブレイカーの一撃が大きかったのか、攻撃が一時的に止まる。

 畳みかけるようにライトニングFBは肩部センサーにハイ・ビームライフルを接続し、銃身が焼け焦げるほどの最大出力で放ち、スターストライクもドラグーンと連携して撃つ。

 それぞれのビームはデビルガンダムブレイカーに直撃し、再び攻撃を開始する前にカガミとヴェルがシュウジに後を託す。

 

「ウオオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!」

 

 シュウジは咆哮を上げる。

 狙うはコアであろうブレイカー0だ。

 バーニングフィンガーを展開し、そのまま一気に接近してブレイカー0を貫く。

 

「まだだ……ッ! 俺はこの世界を……ッ!」

「何度でも言ってやるぜ……ッ!! お前の復讐……。その野望は俺が……俺達が叩き潰すッッ!!」

 

 ブレイカー0はバーニングフィンガーの腕を掴み、最後まで執念を見せるとシュウジは更に力を強め、そのままブレイカー0をデビルガンダムブレイカーから無理やり引き上げる。

 

「ヒイイイィィィィィィーーーーートォッ!! エエエエエェェェェェェ------ンドォオッ!!!!!」

 

 そのままブレイカー0を持つバーニングフィンガーを空に掲げ、一気の握り潰し、完全にブレイカー0を撃破する。

 コアを破壊されたことにより、デビルガンダムブレイカーも爆発を始め、その姿は見る見るうちに崩れ去っていくのであった。

 

 ・・・

 

「……翔、本当に良かったの? ブレイカー0は……」

「……構わないさ。彼らは過去に勝ったんだ」

 

 戦いが終わった。

 アフリカタワー周辺ではシュウジなどがショウマ達にもみくちゃにされている。

 

 その光景を見つめながら翔の隣に立つレーアはどこか憂い帯びた顔で翔に問いかける。

 ブレイカー0は翔の愛機だったからだ。

 だが翔の表情には後悔の念は感じさせない。翔はショウジを見ていると、シュウジは翔の視線に気いて、こちらに向かってくる。

 

「終わったな」

 

 シュウジに声をかける翔は安心したような様子だった。

 しかしシュウジはクスリと笑うと……。

 

「いや、これから始まるんですよ、先輩」

「……フッ……そうだな、後輩」

 

 見る者も気持ち良くなるような笑顔で翔に笑いかける。

 そう、デビルガンダムブレイカーは倒した。

 これから過去ではなく未来が始まるのだ。

 その言葉、そしてシュウジの笑顔につられて翔も笑う。

 

「翔君……!?」

 

 すると翔の体がかつてと同じように淡い光に包まれ、半透明になっていく。

 それを見てルルは驚き、そして悲しげな表情に変わる。戦いは終わった。もう翔のコピーもいない。翔がこの世界に留まる理由は完全になくなったのだ。

 

「もう行っちまうのか……」

「……君の目的を考えれば仕方のないことかもしれないが」

 

 ショウマとエイナルは薄れゆく翔の体を見て、彼らも残念そうな表情を浮かべる。

 翔がいなくなることは分かっていたとはいえ、戦いが終わってすぐに帰るとは思わなかった。

 

「……翔、ありがとう。お礼、言えなかったから」

 

 ならばとリーナが礼を口にする。

 翔がいなければ自分は今、この場にいなかったかもしれないのだ。もう少し翔と勝利の余韻に浸りたい気持ちもあるが伝えるべき事は伝えたかった。

 

「……翔、貴方とまた一緒に戦えて……またこうやって会うことが出来て……本当に良かった」

「……ああ。俺もこうしてまた会えたのは素直に嬉しかったよ」

 

 翔との再会を未来に願ったレーアは目の前に翔がいることを嬉しくもあり、そしてもう別れだと言うことに悲しみもあった。

 だが彼が心残りがないように、笑って見送ろうと思う。

 それはルルも同じだったのか、レーアの隣に立って目じりに涙をためながらでも翔に笑いかける。

 

「翔さん、本当にありがとうございました。お陰で私達は一つに纏まることが出来ました……」

「……貴方のことは絶対に忘れません」

 

 ヴェルとカガミも翔との別れを惜しむ。

 

 ヴェルは気づいていた。

 隣に立つカガミが今にも泣きだしそうであること。表情は変わらないが、長い付き合いでカガミの僅かな変化はすぐに何なのかが分かっていた。

 

「俺、強くなってまた挑戦しますよ。今度こそ勝ちたいから」

 

 シュウジは翔への挑戦を誓う。

 翔が別世界から来たというならそこに行って挑戦をする。

 

 いつになるか分からない。

 しかしダブルオークアンタや最近、研究が進められているアリスタなどの技術を使えばいつかは翔に挑戦することは夢じゃないと考えていた。

 

「シュウジ、カガミ、ヴェル。手を出してくれ」

 

 翔の体ももう少しで完全に消えてしまうだろう。

 その前に翔はシュウジ達を前に出し、それぞれ手を伸ばさせる。

 シュウジ達は何をするのかと首を傾げている中、翔の手がそれぞれ三人の手のひらをポンと軽く叩いていく。

 

「バトンタッチだ。この世界を頼んだぞ」

 

 その言葉を皮切りに翔は消えてしまった。

 

 バトンタッチ……。

 ほのかに伝わる翔が触れた手の感触がまだ残っている。三人は手をギュッと握り締め、空を見上げるのだった……。

 

 ・・・

 

「それじゃあ行ってくる」

 

 あれから数年が経った。

 それまでの間にパッサートも完全に壊滅し、今ではこの世界も目立った問題もなく平和な日々が続いていた。

 その中で成長したシュウジは更に強くなる為にアークエンジェルから旅に出ようとしていた。

 

「シュウジ、これを」

「……?」

 

 シュウジを見送る為にカガミ達が集まっていた。

 するとレーアは首に下げていたペンダントをシュウジの首にかける。それはかつてシーナに託されたアリスタだった。

 

「お守り。翔にどっちか先に会えるか勝負よ」

 

 シュウジは翔に再挑戦すると言った。

 同じような願いを持つシュウジに笑いかける。

 翔との再会を願ったレーア。自分達の力で再び翔に会う為に行動をしようとしているのだ。

 だが世界は恐らくは無数にある。

 翔とは違う誰かが自分達と共に戦うような世界もあるかもしれない。

 その中で自分達が知る翔に出会うのは難しいだろう。だがだからこそ挑戦のし甲斐があった。

 

「……ああ、行ってくるッ!」

 

 シュウジも笑顔を浮かべると、一人旅に出る。

 胸に下がるアリスタは輝き、空はそんなシュウジを祝福するように晴天が広がるのだった……。

 

 

 

 

 ・・・

 

 

 

 

「……」

 

 同じく数年の月日が立ち、翔は台場の地に立っていた。

 ここでかつて翔は初めてガンプラバトルシミュレーターに触れ、ナオキ達ガンダムブレイカー隊の面々に出会った始まりの地だった。

 

「翔さん!」

 

 そんな翔に声をかけるのはあやこだった。

 何だかんだ言ってあやこと出会ってからの付き合いは長い。この場にはいないがナオキともだ。この二人にはガンダムブレイカー隊の中で付き合いが長いだろう。

 

「帰りましょう? 明日はお店のオープン日ですよ!」

「……ああ」

 

 あやこは翔に笑いかける。

 翔は今、一つの大きな挑戦をしようとしていた。

 彼が自分の世界で玩具屋を開こうとしていた。ここまで来るのに長い道のりがあった。だがそれが漸く叶おうとしているのだ。翔はあやこに手を引かれて歩き出す。

 

(過去があるから未来がある……。そして更なる未来へ俺達は進む。この胸の中にある誇り(プライド)をぶつけながら)

 

 血みどろの戦いから解放された翔は本来あるべき未来へ進む。

 その翔の懐にはガンダムブレイカー0、ガンダムブレイカーに続く新たなブレイカーが自分が立つ新たなステージを待っていた……。




これにて本小説は完結しました、今まで見てくださった読者の皆様本当にありがとうございました!!分割にするかもと言っていましたが本当に分割になりました…。本小説を書き始め、あと少しで一年、完結させられて本当に良かったです。

因みにちょっとしたこぼれ話ですが、今まで書いてきて所謂、没案は結構ありました。例えば…。

・終盤、翔とシーナの意識が交わり一つになり、もう翔なのかシーナなのか分からない存在になる。
・ティグレとマヒロは和解できずに相打ち
・ジェイクやレンが味方になる。
・リーナは味方になるが死亡する。
・ルスラン生存。
・中盤、地球に落ちた翔はエヴェイユの研究の為、研究所に送られる
・ゴッドマスター登場
などなど

まぁ書いているうちに没になりましたが、兎に角最初から最後まで決めていたのは出来るだけ翔は一般人で書き、必ず自分の世界に帰らせるという事でした。因みにレーア達の世界では破壊されたブレイカー0はあくまで機体なので、翔の世界ではガンプラとしてちゃんと残ってます。

さてガンダムブレイカー3が発売され、私も 一通りプレイを終えまして3の話も大体、把握しました。

ただ小説を書くかはまだですね。キャラなどはもう纏まっているんですけど、話を練りたいと思い、書くにせよ間を開けて書こうと思います。NPCのオリガンの扱いとか、せめて主要キャラ以外の名ありキャラのガンプラの名前だけでも知れれば良かったんですが…。勿論、書くとしたらこの小説の続編という位置づけで書いていきます。もし興味のある方がいれば、そちらの方でもよろしくお願いします。

最後に40000UAありがとうございます!!そして何よりこの小説を読んでいただいてありがとうございます!!40000UA記念として、今ある案での予告を書こうと思います!

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