機動戦士ガンダム Silent Trigger 作:ウルトラゼロNEO
「クソォッ……どこからこんな戦力を……。うあぁあッ!!?」
バーニングガンダムブレイカー計三機の改修が終わり、三日後、アフリカタワー周辺はまさに戦争が行われていた。
パッサートは殆どの戦力をここに集中させていた。
何故ならアフリカタワーの完全な破壊は地球の人々の心に大きな影響を与えるだろう。
そうすればコロニーとの関係は悪化する。
自分達コロニー側は地球側よりも優れているとパッサートの構成員誰もが思っていた。
それを象徴するように統合軍のMSは次々に爆散していく。
だが統合軍だって負けているわけではない。アフリカタワーへ向かっていくパッサートを何とか抑え込んでいるのだ。
しかし……。
「MAだとォッ!?」
まさにパッサートにとっては今後を賭ける大きな戦い。
それ故出し惜しみは一切しない。全戦力をぶつけて来た。それを表すようにビグザムが5機が投入され、五機並んでアフリカタワーを目指すその姿はアフリカタワー周辺で防衛をする統合軍に恐怖を与える。
「──大きければ良いと言う物ではないわッ!!」
だが誰もが恐怖に怯えているわけではなかった。
GN粒子を放出しながらビグザムに向かっていく機体があった。戦線復帰したレーアのダブルオークアンタだ。それに続くのはアークエンジェル隊のMSだ。
ダブルオークアンタはサイズと形状が異なるGNソードビットを全て射出する。
GNソードビットは初出撃に心躍らせるかのように縦横無尽に駆け回り、ビグザムへと向かい翻弄する。
「リーナッ!!」
ビグザムの攻撃を掻い潜り、ダブルオークアンタはビグザムの下方から飛び込んで、ソードビットと合体させバスターソードにすると、そのまま大きく一振り、Iフィールド発生装置を破壊する。Iフィールド発生装置の破壊を確認したレーアはリーナに声をかけ、ビグザムから離脱する。
「……」
ダブルオークアンタがビグザムから離れたと同時に2本のビームがビグザムを貫く。
ウィングゼロはツインバスターライフルを連結させると、そのまま羽をまき散らしながら、ビグザムに向かい、ツインバスターライフルを突き刺す。
そのままトリガーを引き、ゼロ距離で放たれたツインバスターライフルはビグザムの巨体を地面に沈め、爆発させる。
「俺達も負けてらんないな、翔! 男の意地を見せてやろう作戦だッ!」
「その作戦名は却下だと言った筈だ」
レーアとリーナがビグザムを撃破したのを見たショウマは翔へ声をかける。
作戦名を聞いた翔は呆れながらも微笑を浮かべるとゴッドとブレイカーの二機は同時に一機のビグザムへ飛び出していく。
ゴッドを背後にビグザムの攻撃をシールドで防ぐと、確実に距離を縮めるとブレイカーの背後からゴッドが飛び出し、ゴッドフィンガーを展開、Iフィールド発生装置を破壊する。
そのまま2機はビグザムの上部へ移動すると、そのまま着地し、二機のガンダムを見つめるモノアイ部分にビームサーベルとゴッドフィンガーを放って、撃破する。
「ならば……」
「……」
それぞれ連携によってビグザムを撃破した翔達を見たエイナルは機体越しでレッドドラゴンを見る。レッドドラゴンが頷くように機体越しでアイコンタクトをするとトールギスⅢとレッドドラゴンもビグザムへ向かっていく。
「私達の連携も悪くはあるまい」
右肩に懸架される大型ビーム砲であるメガキャノンを最大出力で放つ。
いくらIフィールドと言えどその衝撃は凄まじかったのかビグザムは巨体をのけ反らせる。
その間にドライグヘッドからビームアンテナを展開したレッドドラゴンはカレトヴルッフを2本装備すると、そのままビグザムを上空から襲い掛かり、損傷を与え最後には二基のカレトヴルッフをハルバードモードにすると深々とビグザムに突き刺す。
ティグレはビグザムのコクピットの位置を把握していた。故にそこだけを狙い、ビグザムを行動停止させる。
「……凄ェ……ッ!!」
共に出撃しているシュウジは統合軍に恐怖を与えていたビグザムを次々と撃破する翔達を見て感嘆の声を漏らす。
「ここは戦場よ」
「シュウジ君、カガミさん! 私達も行きましょう」
カガミの静かながらも鋭い声がバーニングブレイカーのコクピット内に響く。
彼女の言うとおりだった。ヴェルの声掛けとともにシュウジは最後に残ったビグザムへ意識を向ける。あれは自分達が倒すのだ。
「プランF」
「「了解ッ!!」」
静かなカガミの指示が入ると、シュウジとヴェルが返答し、三機のガンダムはそれぞれ行動に移る。
ライトニングFBはバックパックのミサイルを放出するとビグザムへ向かっていく。しかしビグザムの全方位ビームによってその殆どが破壊されビグザムの周囲を爆炎が覆う。
そこから飛び出したのはスターストライクのドラグーンだ。縦横無尽に駆け回るドラグーンはビグザムを翻弄する。
「流星螺旋拳ンンッッ!!!!」
スターストライクに気を取られている間に上空から飛来したのはバーニングブレイカーだった。マニュピレータを高速回転させた一撃は直撃させたビグザムの装甲に大きな損傷を与えそのまま地面に叩き付けて粉砕する。
しかしこれで戦いが終わったわけではない。
それを表すかのように付近に地面をすり潰すような轟音が響く。
「バイク戦艦かい……ッ!!」
轟音の正体はかつてグレートキャニオンの地で同型と戦闘をしたアドラステアだった。
しかも一隻ではない。
周囲にはアドラステアよりも小型ではあるが、同じバイク戦艦であるリシテアが4隻、共にアフリカタワーに接近していた。かつて戦ったことのある厄介な敵にショウマが憎々しげに呟く。
「敵戦艦からMS隊の出撃を確認っ!!」
「巨大戦艦なおも進行中……ッ!」
センサーが敵艦隊から無数のMSの熱源を感知するとヴェルは周囲の味方機に声をかける。敵艦隊への攻撃も行われるが、タイヤ部分の装甲の硬さは尋常ではなく尚もアフリカタワーへ侵攻する。
「……タイヤを狙ったところでアイツはどうにだってならない……ッ! 下手な接近も危険だッ!」
「じゃあどうすりゃ……ッ!!」
かつて戦ったことのある翔も険しい表情で呟く。接近しようものならその圧倒的な艦砲射撃が襲い掛かるだろう。しかしこのまま手をこまねいていては何れは距離を縮められるだけだ。シュウジが何とか打開策を練ろうとしていると……。
「風雲再起ィッ!!」
ショウマの声が響き渡る。
そうすると後方からヤマトから譲り受けた風雲再起が声をあげながらMFとしてこちらに向かってくると、ゴッドは素早く乗り込む。
「下手な接近じゃなけりゃ良いって事だよッ!!」
「師匠ッ!?」
そのまま風雲再起は宙を蹴るように空を駆ける。
シュウジが驚いて目で追う頃にはゴッドの姿はどんどん小さくなっていた。
驚くべきことに接近するゴッドを乗せた風雲再起を撃墜する為に対空射撃をする敵艦隊だが、風雲再起は悉く避け、近づいていく。
「うらぁあっ!!」
そのままリシテアに突撃し、風雲再起の脚部が砲台を踏み潰し破壊すると、ゴッドスラッシュを引き抜き、ブリッジ目がけて、すれ違いざまに切り裂く。
リシテアを一隻破壊したところでまで他にも戦艦はある。
他のリシテアからの砲撃がゴッドに襲いかかり、避け続ける風雲再起ではあったが、やがては直撃してゴッドごと地面に叩きつけられる。
「翔さんッ!?」
地面に倒れたゴッドと風雲再起はすぐに体勢を立て直し、アドラステアとリシテアの砲撃を避け続ける。
そのまま残りの戦艦に攻撃をしかける魂胆のようだ。
それを見たブレイカーは一度後方へ下がる。シュウジは驚いてブレイカーを見やる。ブレイカーが向かう方向にはアークエンジェルが宙を飛んでいた。
「シュウジ、今はあっちを何とかする方が先よッ!」
「……了解ッ!!」
ブレイカーの行動が気にはなるが、以前として敵艦隊はこちらに向かってくる。レーアはシュウジに声をかけると、ウィングゼロ達と共に敵艦隊へと向かっていく。
・・・
「ルル! このゴットフリートのコントロールをブレイカーにッ!!」
≪……うんっ!≫
一方でブレイカーはそのままアークエンジェルのゴッドフリート一基の上に着地すると、そのまま膝を折り曲げ、ゴッドフリートからコードを抜き取ってブレイカーに接続させる。そのままルルに声をかけると、ルルは驚きながらもすぐに翔の意図に気付いたのか頷き、指示を出す。
「……ッ!!」
ブレイカーのモニター内ではデバイスの接続が認識され、モニター画面が変化する。
翔は目を細め、モニターが拡大しロックするリシテアを見つめるとそのままトリガーを引く。
放たれたアークエンジェルの主砲はまっすぐ伸びて、リシテアのブリッジ周囲に貫通する。
「……今度は外さない」
流石に距離がある為に一発で仕留めることは出来なかったが、すぐに誤差を修正をする。
エネルギーのチャージと共に再びゴッドフリートが放たれ、今度こそ仕留め損ねたリシテアを完全に貫き、破壊する。
それだけではない、
残りのリシテアもダブルオークアンタ、トールギスⅢ、ウィングゼロ、ライトニングFBの高火力の一斉射撃で、バーニングブレイカー、スターストライク、ゴッド、レッドドラゴンの攻撃でそれぞれアドラステアと共にこちらへ向かってきていたリシテアを全て破壊したのだ。
「……よし」
自分達が切り開いた道のお陰で一部の統合軍のMS隊が進攻し、ダブルオークアンタ達と共にアドラステアに攻撃を仕掛ける。
絶望が支配していた流れは変わり始めているいるのだ。ブレイカーはゴッドフリートのコントロールを解除すると、共にアドラステアへ向かおうとする。
「……?」
しかしここで翔はあることに気付く。
ブレイカー0の姿が見えないことだ。パッサートにとっても主力であると言っても良い筈だ。なのにその姿をここで見てはいない。そのことが強烈な違和感となって翔に襲いかかる。
その違和感はすぐに翔の目の前にその姿を表した。
アドラステアが内部から溢れ出る巨大な触手によって大きく変形を始めているのだ。やがてブリッジに当たる部分からガンダムブレイカー0が現れたのだ。
「デビルガンダムブレイカー……とでも言うのか……?」
かつてのデビルガンダムを彷彿とさせるアドラステアのブリッジと一つになったブレイカー0を見て、翔は驚愕のあまり声を漏らす。
あれは間違いなくガンダムブレイカー0だ。
そしてアドラステアを覆った触手は恐らくはDG細胞によって生み出された存在。それが出来るのはデビルガンダムが生み出したコピーだけだ。
「……ッ……!!」
デビルガンダムブレイカーは再び侵攻を始め、デビルガンダムブレイカーから放たれたデスアーミーやフィンファンネルは周囲の統合軍に襲い掛かる。
このままでは再び世界が危機に陥る。
この世界を救う気はないと言ったとはいえ、あれを倒すのがこの世界に来た目的だ。
翔はペダルを踏み込んで、デビルガンダムブレイカーへ向かっていくのだった……。