機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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EX─燃え盛るパナマで…─

 

「ショウマさん、お久しぶりです!」

 

 グレートキャニオン基地に到着したルルはショウマとシュウジをブリッジに招き入れ、再会を満面の笑みで喜んでいた。

 ショウマと紹介されたことがあるシュウジもルルやマドック、久しぶりに出会うアークエンジェルのクルー達に笑いかける。

 

「久っしぶりだなー。アークエンジェルも」

「シュウジ君は半年ぶりくらいかな。ショウマさんが弟子をとったって嬉しそうに連れてきてたもんね」

 

 両腰に手を当て、久方ぶりに見るアークエンジェルに懐かしみながら周囲を見渡す。

 そんなシュウジを微笑ましそうにルルはクスリと笑いながら、ショウマを見る。

 

「余計な事は良いって! それより聞いたぜ、今のアークエンジェルの任務」

「うん……」

 

 ルルの言葉が恥ずかしかったのか、照れ笑いを浮かべ首元を摩りながら話題を変える。

 照れ隠しも含めてとはいえ、この話題は今、ショウマがもっとも気になっていた話でもあったからだ。現にルルの表情は一転し、暗いものとなっている。

 

「俺達も参加させてもらう。翔のこと気になるしな」

「……俺もどーでも良いけど……。まぁ師匠がやるってんなら仕方ねぇか」

 

 ブレイカー0の動向が気になっていたのはショウマだって勿論の事だ。

 シュウジをチラリと見ながら参加を申し立てるショウマにその背後に控えていたシュウジは翔とは面識がないために特にその正体までは気にはならないのか、頭をポリポリと掻きながら答える。

 

「……ありがとうございます。二人とも……」

 

 二人の参加を純粋に嬉しく思いながらルルは笑う。

 先ほどの暗い表情から少しでも明るくなっていた。

 それを見たショウマとシュウジは顔を見合わせ頷くのだった。

 

 ・・・

 

「暫くの間、また世話になるぜ。こっちはシュウジ。ヴェルとカガミは知らなかったよな」

 

 アークエンジェルがグレートキャニオンを出港し、ショウマ達が大体のアークエンジェルクルーと顔を合わせた後、新戦力であるカガミとヴェルをプリーフィングルームに集め、彼女達にとっては初対面となるシュウジをショウマが簡潔に紹介すると、挨拶を促すようにシュウジへ目配せする。

 

「シュウジ……です。よろしく」

「ヴェル・メリオです。よろしくお願いしますね」

「……カガミ・ヒイラギよ」

 

 面倒臭そうに自身の名を口にするシュウジに苦笑しながらヴェルは自己紹介をすると傍らに立っているカガミは簡潔に自己紹介を済ませる。

 

「さて早速ですが、これからシュウジ君、ヴェルさん、カガミさんで組んでいただきます」

 

 互いの名前が分かったところでルルがシュウジ、ヴェル、カガミの三人に一つの隊を組むことを指示すると三人は呆気にとられて驚いてしまう。

 

「これから先のパナマでショウマさんとリーナさんにはパッサートの敵艦を叩いてもらいます。三人には狙われるであろうマスドライバーの防衛の任をお願いしたいのです。隊長はカガミさん、その補佐にヴェルさんをお願いします」

「シュウジ、二人の指示はちゃんと聞けよ」

 

 畳みかけるようにルルがモニターにグレートキャニオンからパナマまで経路を映しながらカガミ達に指示をするとその隣に立つショウマはニッと快活に笑いかける。

 

「ちょっと待ってくれよ! なんで俺が師匠じゃなくて他の奴の言うこと聞かなきゃいけないんだよ!?」

「話聞いてなかったのか? 話をややこしくするなよ。それに良い刺激になるだろうぜ」

 

 シュウジは己の実力に自信があった。

 だからこそ師匠であるショウマ、そしてリン達以外に指示を受けるつもりはなかった。

 しかし軍隊でスタンドプレーなど出来ず、反発するがショウマは有無を言わさずシュウジを黙らせる。

 

「皆さん、パナマに備えて、準備をお願いします」

 

 シュウジの言動によってカガミはどこか不機嫌になり、ヴェルは苦笑している。

 そんな雰囲気を破る為、ルルがそう告げるとカガミは真っ先にプリーフィングルームを出ると、それを追うようにヴェルもルル達に小さく会釈をして、プリーフィングルームを後にする。

 

 ・・・

 

「久しぶりね、ショウマ、シュウジ」

 

 あの後、医務室にやってきたショウマとシュウジはベットに横たわるレーアとその傍らに置いてある椅子に座るリーナと顔を合わせていた。

 レーアもブレイカー0に大破させられたとはいえ、容態も安定しているということだ。

 これならば近いうちに出撃できるだろう。

 

「リンやフェズ達はどうしたの?」

「リン達は少林寺にいるよ。皆でゾロゾロ出向くわけにはいかないし俺達だけだ」

 

 レーアはリン達のことを聞くと、今回は二人で行動しているショウマが答える。

 今現在、リン、フェズ、ヤマトの三人は少林寺に身を置いていた。

 

「そう言えばエイナルのおっさんはここにはいないんだな」

「エイナルは商売をしてる筈……」

 

 アークエンジェルに来てエイナルの姿が見えない事をショウマが口にすると、エイナルが軍を離れ、商売を始めたことはショウマを知っているだろうとリーナは首をかしげながら答える。

 

「ブレイクピラー事件以来、博物館もブレイカーを置くことを拒否した事でエイナルのおっさんが一か月前にブレイカーを裏で買い取ったって話を聞いたもんだから、てっきりここに持ち込んだと思ってたんだけどな」

「エイナルがブレイカーを……?」

 

 ショウマが風の噂で聞いた話をすると、何故エイナルがわざわざブレイカーを買い取ったのか疑問を感じてしまう。エイナルが態々、ブレイカーを購入する理由が見当たらないからだ。

 

「それよりもう数時間後にはパナマだろ? 俺達は準備してようぜ」

「そうだな、レーアは安静にな。それとリーナ、いつまでもレーアの傍にいないでお前も休めよ」

 

 自分達がアークエンジェルと合流して数時間が経過した。

 間もなくパナマ基地に入港するだろう。

 そのことをシュウジが知らせると、ショウマは頷きレーアとリーナにそれぞれ声をかけ医務室を出るのだった……。

 

 ・・・

 

「──パナマ基地、攻撃を受けていますッ!!」

「所属不明……。恐らくはパッサートと思われますッ! 所属不明の部隊、マスドライバーを目指し侵攻ッ! 又、海上からも複数の艦による波状攻撃を受けているとの事ですッ!!」

 

 パナマに漸く到着と言ったところでオペレーター達が慌ただしく報告を開始する。

 モニターに映し出される送られてきたパナマ基地の様子には燃え盛る炎の中にゆっくりと此方に接近してくるギラドーガ達が不気味にモノアイを輝かせる姿は恐怖を与える。

 

「やはり噂は本当でしたな……。そして恐らくあの部隊には」

「少し遅かったようですね……。大至急、MS隊に出撃命令をッ!!」

 

 マドックは以前も話に出た噂を口にしながら地球に降りパナマへ向かったブレイカー0の存在を思い出すと、ルルは悔しそうに下唇を噛みながら速やかに指示を出す。

 

 ・・・

 

「よし最後はお前だ、気をつけろよ!」

「ああッ! 英雄だろうが何だろうが俺が倒してやるぜ」

 

 既にゴッド、ウィングゼロ、ライトニング、そしてビルドストライクが出撃した。

 グレイがビルドバーニングに乗るシュウジに注意を促すと上唇を親指で拭いながら機体をカタパルトへ移す。

 

「ビルドバーニングガンダム出るぜッ!!」

 

 セルリアンブルーのツインアイがキラリと光ると、ビルドバーニングガンダムはGN粒子とはまた違う粒子を放出しながらアークエンジェルを飛び出す。

 渋々ながらもライトニングとビルドストライクと合流して、マスドライバーの防衛に当たる。

 

 ・・・

 

「敵機確認ッ! 此方にはまだ気づいてないようです」

「……私から先制攻撃を仕掛けます」

 

 ウィングゼロとゴッドは大元を叩くために敵艦の殲滅へ向かった。

 マスドライバー防衛の為、動いているカガミ達は敵MSを確認する。

 防衛隊と撃ち合いをしており、ヴェルの報告とともに隊長として指示を出す。

 

 ライトニングのバックパックから無数のミサイルが発射される。

 大雨のようなミサイルは敵MS群に降り注ぎ、爆発をする。完全には撃破してはいないが損傷し、敵MS軍に動揺を与える。

 

「次は──「俺がやるッ!」──!?」

 

 次の指示を出そうとするカガミだったが、シュウジの割り込みによって遮られ、驚いている間にビルドバーニングは飛び出して、隕石の如く敵MSの中心に飛び込んでいく。

 隙を突かれた敵MS群はビルドバーニングに気づくも一足遅く一気になぎ倒されていく。

 

「……ッ!」

 

 しかしすぐさまギラドーガ達はビルドバーニングに攻撃をしようとする。

 すぐさまライトニングによる精密射撃がそれを阻み、ビルドストライクも大型のビームキャノンによってビルドバーニングを援護する。

 

「……邪魔を……!」

 

 続けざまに狙撃を行おうとするカガミだったが、好き放題に動くせいで射線上に入り邪魔になるビルドバーニングに苛立ちながらも狙撃を開始してギリギリ、ビルドバーニングの真横からギラドーガを撃ち抜いた。

 

「敵増援を確認ッ! これは……ッ!!」

 

 上空からビルドバーニングの援護を続けるヴェルだったが、センサーが何かを捉える。

 それはパッサートによる増援のMSだった。そしてその中に混じる機体のシグナルはよく知っている。

 

「来たかよ……!」

 

 それはこちらに向かってくるブレイカー0とそれに続くギラドーガ達であった。

 シュウジも確認すると、モニターに映るブレイカー0を睨みつける。

 

「なっ!?」

 

 ブレイカー0はすぐさま行動した。

 ライトニングとビルドストライクは共に来たギラドーガ達に任せ、フィンファンネルを全て射出する。

 構えるビルドバーニングだったが、フィンファンネルは全てビルドバーニングの脇をすり抜け、防衛隊へと攻撃を開始する。

 

「ぐっ!?」

「……随分と威勢が良いみたいだな」

 

 背後で撃ち抜かれていく防衛隊のMSを見たシュウジはすぐさま助けに行こうとするが、ブレイカー0はビームサーベルを引き抜いて直接、襲いかかってきた。

 間一髪避けることには成功したもののレールガンが放たれ、直撃を受ける。

 

「アンタが如月翔なのか!?」

「……お前らは似たようなことしか言えないのか?」

 

 直撃を受けながらも果敢にブレイカー0へ向かっていく。

 近距離ではまだシュウジに分があるからだ。

 オープン回線によるシュウジの問いかけに鬱陶しそうに答えながらブレイカー0はビームサーベルを突き出す。

 

「何でなんだよ……。アンタはレーアさん達と一緒に戦ってたんじゃないのかよッ!? なんでこんなッ!?」

 

 ブレイカー0の攻撃を避けながら、シュウジはその真意を知ろうとする。

 口ではどうでも良いとは言ったが師匠が行動を共にした男が何故、このようなことをするのか知りたかったのだ。

 

「本当に似たような事ばかり……。お前達みたいな奴らのせいで、俺がこんな惨めな思いをしなきゃいけないなんてな……ッ!」

 

 シュウジの問いかけ全てはこれまで何回も聞いてきたのか、心底吐き捨てるように憎しみを込めながらブレイカー0はその攻撃をどんどん強めていく。ビルドバーニングはいつしか避けることに手一杯になっていた。

 

「だが俺の復讐の半分は成功している……ッ! 後少しだ……ッ! 俺の邪魔をしないでもらおうかッ!」

「ふざけんなッ! その復讐はアンタごと俺が叩き潰すッ!」

 

 言葉と共に憎悪を表すようなブレイカー0の攻撃を避け、その中から反撃を繰り出していく。

 ブレイカー0は後方に下がって避けるとビルドバーニングと対峙し、シュウジは想いを表すように拳を握り、ブレイカー0に向かっていく……。

 

 ・・・

 

「MS隊交戦開始! ブレイカー0も出現しています!!」

「また未確認機が三機、高速でマスドライバーへ向かっていますッ!」

 

 パナマの上空にいるアークエンジェルのブリッジでオペレーターが次々と状況を口にする。

 

「まだ来る……ッ!? シュウジ君、カガミさん、ヴェルさん……! 何とか持ちこたえて……ッ!!」

 

 報告を耳にしたルルは険しい表情を浮かべながら、シュウジ達の無事を祈る。

 しかしこの後、このパナマにいる誰しもが予想しなかった事が起きるとは誰も想像すらしていなかった。




シュウジは増長タイプのキャラで書いてます。翔じゃ書けなかったので…。

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