機動戦士ガンダム Silent Trigger 作:ウルトラゼロNEO
「リン、早く行けッ!!」
「分かってるわよッ!!」
ダブルオーライザーとガンダムブレイカー0を連れアークエンジェルへ帰還する為、移動していたドラゴンは何とかエイナルが戦っている地点まで辿りついた。エピオンがドラゴンを庇いながら促すと、攻撃の激しさに苛立ちながら怒鳴り返す。
「「っ!?」」
ドラゴンの守りに徹するエピオンにも限界があった。
だが、次の瞬間、周囲の敵機体。無数のビームによって撃ち抜かれ、次々に爆発を起こす。
「待たせたなッ!!」
「あんた達、アフリカの時の……ッ!!」
ビームの発生源を見れば、こちらに向かってくるDX、それに続くサテライトシステムを修復したXとジェスタ、Zプラスのグランの隊だった。
グランを詳しくは知らないが覚えはあるのか、リンが驚いている。
「翔達は無事なの!?」
「分からない……。早くアークエンジェルに行かないと」
大破したブレイカー0とダブルオーライザーを見て、ティアは翔達の安否を心配するあまり叫ぶと、リンはレーアはいないが、いまだ意識のない翔にアークエンジェルへ向かおうとする。
「ここは私達が何とかします……!」
「早く翔さん達をッ!!」
ドラゴンの前に出たカガミのZプラスとヴェルのジェスタ。迫りくる敵機体に射撃攻撃をしながらアークエンジェルへの帰還を促すとリンは頷き、エピオンの護衛の下、アークエンジェルへ向かうのだった。
≪ライスター少尉、間に合ってくれて何よりだ。早速だが、君の出番だ≫
「了解ッ!!」
DXにレギン直々の通信が入る。
自分の役割が分かっているグランは素早く行動を開始する。DXとXはそのままメメント・モリ周辺まで移動する。
「よしティアッ! 遅れた分はここで取り返すぞ!」
「ええッ!」
グランはティアに声をかけ仲間達の援護の元、DXとXの真の能力を使用する。
月面に存在する太陽光発電施設から送信されるスーパーマイクロウェーブを受け、それぞれ機体を展開する。
・・・
「射線上の味方機、全て退避しました!」
「メメント・モリ発射準備完了!!」
メメント・モリのコントロールを握るラーカイラムでは慌ただしく乗組員が手を動かしていた。艦長席に座るレギンはモニターに映るコロニーを見据える。
「これで終わらせるぞ、メメント・モリ発射ァッ!!」
コロニーを地球に落とすわけにはいかない。
あんなものを落とせば沢山の命が失われる。
それを阻止するため、レギンの命令と共にメメント・モリ及びDXのツインサテライトキャノンとXのサテライトキャノンが放たれ、コロニーを飲み込む。
・・・
「どうなったんだ!?」
アークエンジェルへ帰投したショウマ達はメメント・モリ発射の知らせを受け、ブリッジへやってきていた。丁度今、コロニーが閃光の中に飲まれていた。
「……! おい、あれ……壊れてないぞッ!!」
暫くコロニーの様子を見ていたショウマ達であったが、すぐに異変に気付く。
コロニーの半分がまだ残っていたのである。
すると内側から凄まじい数の触手が溢れ出し、コロニーの外装を包みその姿を変貌させていく。
「あれは……ッ!!」
リンは目を見開いて震える。
姿は異なっているが全体的な姿はかつてアフリカタワーで出会ったデビルガンダムそのものだった。
いや、コロニーと一体化した姿はデビルガンダムコロニーとでも言うべきか。
巨大なツインアイが輝き、その姿は不気味な恐怖を与える。
・・・
「コロニーの残骸はその姿を大きく変え、いまだ地球へ侵攻しています」
作戦は失敗に終わった。
プリーフィングルームにて映像を交えてルルの言うようにいまだ進路を地球に向けたデビルガンダムコロニーから放たれた無数の触手は地球へ進行し、それを地球軍が何とか食い止めている状況だった。
「現在再びメメント・モリの発射準備をしていますが、やはり時間がかかりますし恐らくはまた同じ結果だと思います。ですので今やるべきはあのガンダムと一体化を果たし、そのエネルギー源となっているであろうコロニーの動力部を破壊することです」
「それを私達がやる。私が水先案内人を務めよう」
作戦の説明を終えたルルの隣でエイナルが申し出る。
この中で一番、コロニーに詳しいのはエイナルだろう。異論はないのかショウマ達が頷く。
「……皆さん、最後に一つだけお話があります。ダブルオーライザーのデータを解析し、エイナルさんに確認をとってもらったのですが……」
まもなく作戦準備が始まるが、その前にルルが動き出そうとするショウマ達に待ったをかける。
それはレーアに関することだった。
画面上に一枚の拡大画像が現れる。
それはダブルオーライザーのメインカメラが捉えたバンシィ・ノルンから大破したこちらに向かってくるパイロットスーツに身を包んだ一人の男の姿が映し出されていた。
「この男はヴァルター・ハイゼンベルグ。あの場所にいたのだ」
「……父親に捕まったのなら、きっとまだ無事でいると思うんです」
エイナルの口から出たヴァルターの名前と画像の人物にショウマ達は驚く。
画像越しでも悪鬼のようなその表情は恐怖心を与える。するとルルが願望のような推測を話す。
「……だったら助けなきゃな。今更誰かを失ってたまるか」
「当然っ!」
拳を打ち付け、決意を表すショウマとその隣でリンが力強く頷く。
レーアを助け出す。
危険ではあるが、誰もそれを反対はしなかった。
「時間だ……。出撃するぞ」
外ではまだグラン達を始めとした地球軍が戦闘を繰り広げている。
自分達もここで悠長に構えている時間はない。エイナルの言葉に頷いたショウマとリンは格納庫へと向かう。
・・・
「うっ……くぅっ……!」
医務室で漸く翔が目を覚ました。
痛む身体を無理やり起こし周囲を見る。
どうやら見慣れたアークエンジェルの医務室のようだ。
「リーナ……!」
自分のベッドの近くのカプセルでは機器を取り付けられたリーナが眠っていた。
自分も入ったことのあるカプセルだ。これに入るということはそれ程までに深刻と言うことだ。
「──翔、起きたのかいッ?!」
すると医務室の扉が開き、慌しく薬品を持って室内に入ってきたドクターが目を覚ました翔に気づき、その隣に向かう。
「ドクター……。状況は?」
「……コロニーの破壊には失敗したよ。今、ショウマ達が動力部の破壊と囚われたレーアを救うために出撃したところだ」
自分がどれだけ意識を失っていたかは知らない。
ドクターに現在の状況を求めるとドクターはたった今、聞いた話をそのまま翔に伝える。
「……俺も出る、と言いたそうな気な目だね」
「……ごめん、ドクター」
翔の目を見て、すぐにこの後の行動を読み取ったドクターに翔は静かに謝る。
ここでドクターに止められても無理にでも出撃するつもりだった。
「……君に何を言っても聞かないだろう。行くと良い。きっとそれが君の役目なんだろう。上手く言えないけど君には何か使命帯びたものを感じる。幸い特に目立った怪我などもないしね」
「……ありがとう、ドクター」
何度も医務室に運ばれた翔がそのまま出撃する姿は何度も見たし、幾ら止めても翔は聞かなかった。
その姿を見てきたドクターは薄々、何かに気が付いていたのかもしれない。ドクターに頷き、翔は医務室から出る。
・・・
「翔君ッ!!」
「……ルル」
パイロットスーツに着替え、格納庫へと向かう。
それに声をかけたのはルルだった。
翔が目を覚ました。
その知らせを受け、翔のもとへ来たのだろう。
こちらに向かってくるルルを受け止める。
「翔君……行くんだね」
「……ああ」
翔のその姿から出撃しようとしているのはすぐに分かったが、ドクターと同じで今更止めるつもりなどルルにはなかった。
だが……。
「ルル……?」
するとルルはポスッと翔の胸に飛び込み、背中に手を回す。
それはまるで翔という存在を確かめるのかように。突然の出来事に翔は驚き、ルルの名を口にする。
「……なんでだろう、この手を放しちゃいけない気がするの。翔君がまたいなくなるんじゃないかって……。翔君、全部終わったらまた戻ってくるよね……?」
翔の胸に顔を埋めながらギュと回した手に力を込める。
そんなルルの姿を見て、翔は抱き返そうとルルの背中に手を回そうとするが、それを止め、ルルの肩に手を置く。
「……全部終わったら俺は本来いるべき場所に帰る……。絶対に戻ってくるなんて無責任な事は言わない。だけど……それでも……俺はルルは忘れない。ルルは俺にとって大切な人だから……ルルだけじゃない……。このアークエンジェルのクルー、それにグラン達……皆と出会えたから俺は強くなれた……。皆がいたからこそ俺は救われた……。きっとルル達と出会わずに戦い続けたら壊れてたと思う……。だから今度は俺が救う。ルルも皆も……レーアも」
ルルを引き剥がしながら、彼女の目を見て翔は今まで仲間に対して黙ってきた自分の気持ちを明かす。ジッと自分の目を見て話す翔にルルは俯き……。
「……分かった。いってらっしゃい、翔君……。レーアさんを助けてあげて」
「……ああ……。ありがとう……ルル……」
今にも泣きそうな顔を無理やり笑顔にして翔を見送る。
ルルにそんな顔をさせてしまったのは申し訳ないが、翔は自分も微笑を受かべ今度こそ全てを終わらせるために格納庫へと向かう。
「……ずっと私の隣で笑ってほしかったな……」
遠くなっていく翔の背中。
ルルにはもう翔に会えないかもしれないという予感が、ルルの中であったのだ。
誰もいなくなったこの場所で一人涙を流したルルは自分の役割を果たす為、ブリッジへ戻る。
・・・
「来たな。お前なら絶対来ると思って、急造だけど出撃できるようにはしておいたぞ」
格納庫に到着した翔。それを出迎えるかのようにグレイを始めとした整備班が待っていた。彼らの後ろには一体のガンダムが。
「ブレイカー0もダブルオーライザーもウィングももう使いもんにならないからな。だから使えるもんは全部かき集めて作り上げたんだ。正直、〝コイツ”の異常なまでの互換性の良さがなけりゃここまで早くするのは無理だったがな」
グレイが振り返るとそこにはガンダムブレイカーが。
いや正確にはエクシアやショウマのゼータプラスなどからパーツを使ったまさに継ぎ接ぎの機体だった。
「GN系の武装はダブルオーライザーのGNドライブからGN粒子を配給して何とか使えるようにはしておいた。……行けるか?」
説明を終えたグレイはチラリと翔を確認の意も込めて見ると、翔を見る。
当の翔本人はジッ……とこの継ぎ接ぎのようなガンダムブレイカーを見つめていた。
「行くよ。今まで乗ってきた中で最高の機体かもしれない。ありがとう、グレイさん……それに皆さん……本当に今までありがとう」
「そういうことを言うんじゃない!」
ふっと微笑を浮かべた翔はグレイや整備班に礼を言うと、翔の言葉に怒ったグレイを尻目にそのまま微笑を浮かべ、ブレイカーに乗り込む。
・・・
【これが最後かもしれないね】
「……ああ。いや最後にしなきゃいけない。全部終わらせてレーアを助ける……。この俺ガンダム……いや俺達ガンダムで」
ブレイカーに乗り込んだ翔は内側から聞こえるシーナの言葉に頷き、この戦いを最後にする事を決める。その為にこのガンダムで発進するのだ。
「全部終わったら皆、自分の未来に進むんだ……。俺も本来ある自分の未来を再び進む」
自分はこの世界の人間ではない。
あやことシーナとの約束を果たす為、全てを終わらせて帰るのだ。
そして自分のあるべき未来に再出発する。
【そうだね……。その為にはレーアを助けないと。……レーアに伝えたい事、あるから】
「奇遇だな、俺もだ……。その為に……もう一度行こうッ……!」
シーナ、そして翔はどうしてもレーアに伝えたいことがあった。
その為にレーアを助け出す。ブレイカーはそのままカタパルトへ移動する。
≪ガンダムブレイカー……発進どうぞ!≫
カタパルトデッキに接続され、ブレイカーのモニターには戦闘が行われている宇宙が見える。
あの輝き一つ一つが命の輝きなのだ。
だがそれは散りゆく命……。
もう終わらせる、全てを。
ルルのアナウンスと共に翔は表情を引き締める。
──例えどんな絶望が待っていようと
「如月 翔……!」
──俺達が
【シーナ・ハイゼンベルグッ!!】
──私達が
「【ガンダムブレイカー・リスタート、行きますッ!!】」
──破壊するッ!!
ガンダムブレイカー3ついに発売ッ!早く届いてほしいものです!
さてガンダムブレイカー・リスタートの設定を載せておきます。
ガンダムブレイカー・リスタート(表記はブレイカーR)
WEAPON GNソードⅢ
WEAPON バスターライフル(EW)
HEAD ガンダム
BODY ジムカスタム
ARMS ガンダムエクシア
LEGS ゼータプラス(テスト機カラー)
BACKPACK HI-νガンダム
SHIELD 対ビームシールド(ストライク)
大破したブレイカー0に代わり、以前翔が使用していたブレイカーBに今、アークエンジェルにある全てのパーツを使って作り上げた急造品の翔曰く俺達ガンダム。故にカラーリングもそのままで継ぎ接ぎ感が目立つが翔的には気に入っている模様。
右にGNソードⅢ、左にバスターライフルとシールドと性能こそブレイカー0に劣るもののある程度は戦える仕様となっている。GN系の武器もある程度、武器その物にGN粒子を貯めている為、使用は出来るがあまり長時間及び何度も好きに使えるわけではない。