機動戦士ガンダム Silent Trigger 作:ウルトラゼロNEO
それとガンプラ繋がりでガンダムビルドファイターズトライが終わってしまいましたね、賛否の分かれた作品ですが私は楽しんでみてました。OVAも楽しみです!ガンプラバトルプロジェクトtype絆…運良く当選しないかな…
「──こちらアークエンジェル、今の振動はなんですか?」
「アークエンジェルは無事だったか!!」
デンドロビウムの猛攻を掻い潜っている最中、状況を知らないルルから通信が入る。
あのような出来事の後ではアークエンジェルも危険ではないかと思っていた為、ひとまずの無事は分かり、カレヴィは安堵する。
ルルの気の抜けた声に今の状況を合わさって思うところはあるが、ひとまずは無事を喜んだ。
「港のハッチはどうなりました?」
「その辺に浮いてるんじゃないか?! それよりこちらは敵と交戦中だ! アークエンジェルはそのまま隠れてろ。絶対に出てくるなよ!」
こちらの状況もお構いなしにそのまま自身が気になることを呑気に聞いてくるルルにカレヴィはデンドロビウムの猛攻を前に焦りながらも素早く指示を出し、すべての神経をデンドロビウムに集中させる。気が抜けない相手には違いないからだ。
「副長代行、ハッチって浮くものなんですか?」
「古今東西ハッチは開くものです」
(呑気だな……!)
アークエンジェルからの通信は未だに途切れていないせいか、こちらの状況を知らないルルとマドックの会話も丸ごと聞こえてきて、極限の状況下のせいか翔は内心苛立ちさえも感じていた。
(アレは……確かベースジャバー! まだ使えるか……?)
デンドロビウムの猛攻にバーニアを吹かせて避け続ける翔だが、途中で宙に浮いている飛行台であるベースジャバーを見つけた。
何とかデンドロビウムの隙を伺いつつベースジャバーに接触し、動けることを判断するとすぐさま運用する。自身のバーニアも無限に使えるわけじゃない。有効活用だ。
(やはりアイフィールド持ちか……)
翔はベースジャバーに備わっているビーム砲を放つがデンドロビウムに直撃した瞬間、かき消される。それはミノフスキー粒子に電磁波を流すことで生じるビームを偏向する特性を持つ磁場だ。その応用で対ビームバリアとして使われる。今、まさにデンドロビウムがそうだ。
するとデンドロビウムの大型武装庫からミサイルコンテナが発射され翔はその武装を知っている為に目を見開き生唾を飲む。避けられる自信などなかった。
「無事か!?」
マイクロミサイルが発たれる直前にウィングガンダム自慢のバスターライフルの膨大なビームが飲み込む。間一髪、四散するマイクロミサイルが発射する前に破壊された。
「くらえぇっ!」
(デンドロビウムは脅威的だ。けどそう何度も……!)
カレヴィの援護に感謝しつつ、モニターのデンドロビウムを睨み付けるように見ると、デンドロビウムの武器コンテナが再び開こうとしていた。しかしただそれを見ているつもりはない。隙が少しでもあるならばそこはつくべきだ。
「やらせるかぁっ!」
MS並みの大きさを持つ大型ミサイル3基搭載された大型収束ミサイルが放たれようとした時、翔は自身のバックパックに二つ装備されているビームサーベルの一つを出力全開で投擲すると、大型収束ミサイルに突き刺さり、瞬時に爆発する。
(少しで誘爆できたか……ッ!!)
「そんなぁっ!?」
大型収束ミサイルのあまりの爆発の大きさに武装コンテナの二つのうち一つを破壊することに成功した。圧倒的な優勢に立っているのだと確信していたルスランはあまりの自体に目を見開いて驚愕していると……。
「──こんな場所で動揺なんてすれば……ッ!」
明らかに機体にも動揺の動きが見て取れた有利な状況に翔は思わず叫びながらデンドロビウムへと急接近する。近くまで接近を許したことにルスランは更に動揺してしまうが翔は決して止まる事はなく突き進む。
「死んじゃうってことだろッ!!」
そのまま今度は自身のバーニアを吹かして上方へと舞う。
すると操縦者を失ったベースジャバーはアイフィールドジェネレーターに突っ込み轟音をあげ爆発した。その衝撃はルスランにまで届いているのか、コックピット内のシートで彼は必死に衝撃に耐えていた。
それで攻撃を止める訳がない。翔はすぐさま機体を操作、ベースジャバーをぶつけられ損傷を受けたアイフィールドジェネレーターに取り付き、機体の両腕を握って激しく打ち付けるとアイフィールドジェネレーターは大破させる。
このままではまずいと、デンドロビウムは素早く大型バーニアを吹かして逃れようと移動する。しかし翔は驚きながらもバーニア近くに何とかしがみ付く事が出来た。
「危険だわっ!」
「そう思うなら援護をしてくれても良いだろう……! 俺に考えがある! だから二人は援護を!」
「仕方ねぇ……! レーアついて来い!」
すぐにレーアからの通信が入るが、翔はすぐさま必死になって言い返す。
デンドロビウムを相手に何をしようというのかだが、それが少なくとも勝機に繋がるのであれば構わない。カレヴィはすぐさまレーアに指示を出し、全速力でデンドロビウムの正面に近づく。
「まだ来るか!」
「俺よりも年下の……しかも民間人のガキが命張ってまで生きようとしてんでな。俺も命張ってでも援護してやる!」
真正面にいるウィングを見て煩わしそうにルスランはメガビーム砲を向け発射すると己の意地を持ってバスターライフルの引き金を引いた。
「これでぇっ!!」
二つの巨大ビームがぶつかり合い拮抗する中、レーアが駆るエクシアも素早く動いて自身に装備されているビームサーベルとビームダガーをメガビーム砲へ投擲する。
メガビーム砲を破壊され、拮抗していた二つのビームの片方は消失。バスターライフルの一撃がデンドロビウムを貫いた。
「ヴァルター様からいただいたこの機体を……! よくもよくもぉっ!!」
(バスターライフルはフルパワーで出した……! もうエネルギーもカートリッジもねぇ!)
(近接特化のエクシアじゃあ、あのマイクロミサイルには対処出来ない……!)
怒り狂うルスランの叫び。どうやら反撃に転じようとしていようだ。
一方、カレヴィとレーアは距離が遠いことと武装の問題で窮地に立たされていた。
「──もらった玩具を傷つけられた子供か……それとも期待に応えようとするためか……」
すぐさまミサイル発射のための操作をしているルスランに接触回線で通信が入る。それは静かに怒気が含まれていた。
「どっちだっていい! けど!」
「どこだ! どこにいる!? まさかっ!?」
接触回線で入る通信なのでその発信源を探すルスランだが、遂にその場所を見つけた。
「そんなことの為に殺されちゃ堪ったもんじゃないんだよ!」
「バカなぁっ!?」
なんと翔の機体はデンドロビウムの巨大な機体をバーニア部分からよじ登り、巨大コンテナを通過して、コアであるステイメンの傍まで辿りついていたのだ。驚くルスランに翔は素早くビームサーベルを引き抜き、ステイメンに突き刺す。
「生きてる……?」
自身が生きていることに驚いているルスランはモニターを確認すると、どうやらメインカメラの頭部を破壊されたらしい。
「帰れ……。帰れよっ……! ……ッ……今だったら……命まではとらない」
自身にビームサーベルを突き刺したパイロットからの言葉を聞く。その声は所々、恐怖が伝わってくるほど震えていた。
「ルスラン……退きなさい……。今ならアナタにも理解できるはずよ。あなたの負け」
「レーアお嬢さん!? 何故アナタが……!」
「二度は言わないわ。退かないと言うのなら……」
すると更にルスランに通信が入る。
それはレーアだ。ルスランもレーアのことは知っていたのか、驚いているのだが、レーアは必要以上に話す気はないのか冷たく、そして短く完結するとGNビームライフルを向ける。
「クッ……! レーアお嬢さん……いずれまた……」
それは脅しなんかではなく間違いなく彼女は引き金を引くだろう。
それを理解したルスランは素早くオーキスとのドッキングを解除してステイメンの状態でこの宙域から離脱する。
「…」
漸く戦闘が終わり翔は操縦桿から手を離し、シートへ身を預ける。するとオーキスから翔の機体が離れ、宙を漂いだす。
「敵がいなくなったからって操縦をやめるな。宇宙なんだからどこまでも流されちまうぞ? けどよくやってくれたな。お前のお陰で助かったようなもんだ」
「……」
「貴方……無口なのね。まずはアークエンジェルへ戻りましょう」
漂い続ける翔の機体の肩をウィングガンダムが掴み、注意しつつも感謝の言葉を伝えるも、疲労感と脱力感に襲われて、なにも言えない翔にレーアは翔の印象を口にしつつも三機は移動する。
・・・
「みなさんのお陰で助かりました! 感謝してます!」
「気にするな、仕事の一環だしなによりこいつらがいなかったら危なかったからな」
戦闘が終わり出航したアークエンジェルの格納庫にてルルとマドックがカレヴィ達と初顔合わせをしていた。
「にしてもこの艦……。機体がないようだが」
「はい……。さっきの部隊の隊長さんがスペースが開かないって言ってMSの類は廃棄しちゃったんです。パイロットさん達もさっきの部隊と交戦して……」
「つまり俺達だけってことか……。まぁ物資があるだけマシだな」
カレヴィ達が話をしている中、翔の機体のコックピットが開き、そこから翔が降りてくる。その最中にカレヴィの質問にルルが目を伏せながら答えるとカレヴィはその仕草で何が起きたのか察し、周囲を見回す。一応、物資はあるようだ。
「艦長、今後の予定は?」
「一応、民間人の方達を降ろすために月にある中立都市フォン・ブラウンへ向かう予定です」
合流したレーアがそのまま質問をするとルルが手に持つ書類をまじまじと睨めっこのように見つめながら答える。
「おいおい……。そんなの敵に攻める口実を与えるようなモンじゃねーか」
「で、ですが……民間人の方達を下ろす都合だってあります……」
それを聞いたカレヴィは呆れ顔だ。そんなカレヴィを見て、ルル自身も分かっているのか、指先を突き合わせながら何とか答えていた。
(フォン・ブラウンか……。ガンダムじゃお馴染みだな……。そう言えば俺が乗ってたガンダムタイプって……)
レールを使ってデッキに降りている翔はルル達の話を聞きながらすぐにガンダム作品を連想しつつ、着地して、ふと自身の乗っていた機体が気になり、そのまま振り返る。
「おいおい……」
「あっ、翔。さっきの貴方が助けてくれたことなんだけど……」
思わず言葉を出してしまう翔に気づいたレーアが先程、助けてくれた礼をするために声をかける。しかし彼は彼が乗ったMSに集中していて気づかなかった。
(ガンダムブレイカー……。お前までコッチの世界に来たのか……。ハハッ……あんな小さなガンプラだったのに……ここまで大きくなっちゃって……)
「……翔? 聞こえているの?」
なんと翔が乗っていた機体は何時間か前には自身がガンプラバトルにしようしていたガンダムブレイカーだったのだ。
だが驚くと同時に精神的に消耗していた翔にはガンダムブレイカーは自身がいた世界の象徴としての安心感さえもある。そんな翔に聞こえていないと思ったのかレーアが肩を掴むが……。
「帰り……た……」
「翔……? えっ……!? しっかりしなさい、翔っ!?」
だが次にガンダムブレイカーを見た感想は自身の世界へ帰りたいという強い渇望だった。
思わず口に出しながら翔は精神の限界に達したことや戦闘の終わりやガンダムブレイカーを見たことで気を緩めて気を失ってしまう。
翔の肩を掴んでいたレーアはすぐに翔を介抱するもその呼びかけに翔は答えることはなく、ただ人知れず、彼の頬に一筋の涙が伝った。
強襲(される)デンドロビウム
ということでこの回を持ってフロンティアⅣ編は終了で次回はフォン・ブラウン編です。漸く長かった戦闘が終わったので日常パートを入れることができます。とはいえ翔の気分は晴れてませんが…。一応、本作の主人公はどっちかといえば悩むタイプです。