機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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スペース─Silent Trigger─

 

 

「──ンジェル……アークエンジェル!! そちらの状況は! どうなってるの!?」

 

 エクシアは2本のGNダガーを同時に投擲しヤクトド-ガのファンネル二基を破壊する。

 レーアも無能なパイロットという訳ではない。

 ルスランのファンネルの動きを見切り始めたのだ。

 

 ある程度、余裕も生まれたのかファンネルとヤクトドーガの動きに注意しながらアークエンジェルに通信を繋げる。レーダーからプロトゼロの反応が消えたのだ。嫌な予感がする。

 

 《……カレヴィさんが》

「カレヴィがどうしたの!? よく聞こえない、ハッキリ言いなさいッ!!」

 

 通信越しに聞こえるルルの声から力が感じられない。

 その反応に自分の中である考えが浮かぶ。しかしそれは間違いであって欲しい。レーアの声に熱が入る。

 

「──ッ!?」

 

 自分の周りを飛んでいたファンネルのうち二基を後方から放たれたビームが破壊する。

 ショウマのモノではない。

 

 センサーを見て驚く。

 それはブレイカーFBのモノだった。

 ブレイカーFBは一筋の流星のように猛スピードでこちらに向かってきていた。

 

 ブレイカーFBの機体は赤く発光している。

 

 エヴェイユの覚醒の光だ。

 カレヴィの死がトリガーとなったのだろう。

 エクシアとヤクトドーガを通り過ぎ、ディビニダドへ近づくと2本のビームサーベルを引き抜き、ビーム刃が巨大化したビームサーベル2本を振りかぶって一気に振り下ろして、ディビニダドの二つの巨大なアームを斬り落とすとその直後、何度も何度もサーベルを振り続け、斬撃波を放ってディビニダドの機体を傷つけ、やがては行動不能にする。

 

「翔、目を覚ましたのね……!」

 

 翔が目を覚ましたことは素直に喜ばしいことだ。

 レーアはブレイカーFBにも通信を繋げ、サブモニターにブレイカーFBのコクピット内の翔の様子が映し出されると声をかける。

 

「翔……?」

 

 しかし彼は返事をしない。

 俯いて顔はよく見えないがバイザー越しに涙の痕のようなモノが見え、更にはバイザー内には水泡のようなものが浮かんでいる。

 

 思わず翔の名を口にする。

 翔はアークエンジェルから来たはずだ。

 そしてアークエンジェルにいるルルの反応、胸騒ぎがどんどん大きくなっていく。

 

 《──カレヴィ少尉は名誉の戦死を遂げた》

 

 翔もルルもまともに答えられない。

 そんな中でマドックが静かにカレヴィの戦死を告げる。

 小さな声ながらもその衝撃はレーアとショウマに大きく響く。

 

「間違い……ないの……?」

 《……この目でしかと見届けたよ》

 

 信じられない、というよりは信じたくない。

 レーアは震える唇を動かして問いかける。

 もしかしたらという希望を信じて、しかしそれはマドックによって消されてしまう。

 

「おっさん……!!」

 

 2機のディビニダドの猛攻を必死に回避しているゼータプラスのショウマは目尻に涙を溜めながらカレヴィへの呼び名を呟く。

 フェズと良い仲であったことで少し反抗的な態度を取ってしまったが、短い付き合いとはいえショウマの中でカレヴィは頼りになる兄貴分のような存在だった。

 

 だからこそアークエンジェルを任せた。

 しかしその結果がこれだ。

 こうなることならもっとちゃんと彼と接していたかった。

 これではゼータプラス隊と同じではないか。

 

「クッ……!」

 

 しかし悲しんではいられない。

 目の前の脅威を消し去らなければいけないのだ。

 ブレイカーFBはブースターポットを忙しく動かし、高機動機としての名を恥じない圧倒的なスピードと運動性能によってディビニダドのフェザーファンネルを回避する。

 翔へかかるGは強烈なモノだ。

 だがそれを歯を食いしばって耐えながらビームライフルと椀部ガトリングを撃ち続けディビニダドへ直撃する。

 

「──っ!」

 

 ディビニダドが中型メガ粒子砲の砲口がキラリと輝くのを察知した。

 同時にフェザーファンネルも依然としてこちらに襲い掛かってくる。

 突っ込んできたフェザーファンネルを撃ち落しながら、撃ち漏らした一基に対して角度を調整しシールドを構え、そのままディビニダドの砲口へ受け流すと急停止が出来ずフェザーファンネルの一基は中型メガ粒子砲の砲口へ突っ込み誘爆する。

 更にブレイカーFBは加速してディビニダドに取り付くとガトリング砲を破壊した場所に押し付けて発射して、ディビニダドの行動を停止させる。

 

「───させるものか!!」

 

 例え行動停止させたとしてもまだ1機残っている。

 倒さなくてはいけない。

 

 翔の瞳がギラリと近くにいるディビニダドを捉える。

 再びブースターポッドを使用してバッタのように俊敏に動きながらディビニダドへ近づいていくが二基のファンネルがブレイカーFBに襲い掛かる。

 

 ヤクトドーガのものだ。

 見ればエクシアを蹴り飛ばしたのか、エクシアは姿勢を立て直して、ヤクトドーガを追いかけている。

 しかしヤクトドーガのほうが速く、シールドから内蔵型のメガ粒子砲を放ちブレイカーFBが避けている間にヒートナイフ付きビームサーベルを取り出し更に距離を縮めて斬りかかって来る。

 ディビニダド二機を行動不能にした目の前の機体は危険だ。そして何よりこの機体には借りがある。

 

「……レーア……。ショウマとあのMAを頼む」

「でも……」

「頼む」

 

 こちらもサーベルを引き抜いてヤクトドーガのサーベルを受け止めながら静かにエクシアへ通信を入れると、相手がルスランであることに、どこか渋った様子を見せるが翔は返答を待たずに上方へ飛び、ヤクトドーガもそれを追いかけた事でレーアは否応なしにショウマの加勢に加わる。

 

「貴様は以前、私に何故、ヴァルター様が間違った道を行くのを止めなかったんだと言ったなッ!」

「俺は言ってない……ッ!」

 

 宇宙を加速しながら流星のような軌道を描き、何度も何度もビームサーベル同士による剣戟を繰り広げるブレイカーFBとヤクトドーガ。

 かつてグレートキャニオンの一戦で言われた言葉に関して接触回線越しに叫ぶと翔は僅かに間を置き、答える。

 実際、今思い返せばその記憶はあるが、あの時の意識は半ばシーナのモノだった。

 そもそもヴァルターが間違った道を行くなどと言う事は翔にとって知る由もないことだ。

 

「ふざけるなぁっ!」

 

 袈裟斬りで放たれたブレイカーFBのビームサーベルを鍔迫り合いで受け止め、ルスランは叫ぶ。

 あれはこのパイロットの声だ。

 それを言ってないとはふざけているとしか言えなかった。

 その怒りを表すように鍔迫り合いからサーベルを払いシールドを突き出す。

 なんだ、と翔は思ったが瞬間、目を見開きすぐに機体を動かす。次の瞬間、シールドに内蔵されたメガ粒子砲が放たれたのだ。

 

「貴様のような奴に大切な者を奪われ、復讐の道を進む私達の想いが分かるものかァッ!!」

 

 何とか避けようと機体を動かすが左腕部とその後ろのブースターポット一基が破壊される。

 コクピット内に襲い掛かる衝撃に耐えている翔のブレイカーFBのメインカメラを掴むと、そのまま猛スピードでブレイカーFBの背後のデブリに突っ込む。

 

 デブリにブレイカーFBを埋め込みながらルスランはその瞳に憎しみを宿す。

 それはまさにドス黒い闇のようだった。

 それに呼応するようにヤクトドーガの機体も赤く輝く、

 これは翔と同じくエヴェイユの覚醒の光だ。予兆はあったがここに来て覚醒したのだ。

 

「───……お前と同じかどうかなんて知らないが……」

 

 ヤクトドーガのコクピット内に静かに翔の声が響く。

 静かながらも黒い感情が篭った憎しみの声だ。

 

 モニターに移るブレイカーFBを見る。

 東洋の小さな島国には"鬼"と呼ばれる化け物の伝承があると聞く。

 ブレードアンテナと不気味に輝くツインアイはまさにその鬼を想わせその声に負けないくらいに恐ろしく見える。

 

「大事な仲間を失った気持ちは……俺にも分かる……。お前達に奪われたばかりだからな……ッ!」

 

 右のマニピュレーターをそのままヤクトドーガの頭部へ打ち付け、そのまま腕部ガトリングで破壊するとそのまま左脚部でヤクトドーガの腰部のスカート部分を蹴り飛ばす。

 翔の目にもルスランと同じ色のどす黒い憎しみの感情が宿っていた。

 

「お前も俺も憎しみで戦ってる……。俺もお前も武器を持って戦う限り、誰かを泣かせ憎しみを生み出すだけの存在でしかないんだよ……! 自分達だけが被害者だと思うな……ッ!」

 

 シーナを失ったルスラン達。

 そして戦闘によってカレヴィを失った翔達。

 憎しみの連鎖はどこまでも続いていく。

 

 こうして戦っている翔でさえ今までの戦いで誰かを泣かせた存在でしかない。

 "今は戦争だから仕方ない”それで済ませられるほど出来た人間は多くないのだ。

 ブレイカーFBから一文字に振られたビームサーベルはヤクトドーガの両足の間接部から下を切断する。

 

「……ッ……そんなことは分かっている……ッ! だからヴァルター様は戦争を終わらせようとしている! 私はヴァルター様のお言葉を信じて戦うッ!」

「言葉はナイフと同じだ……ッ! 人を生かすことも出来れば死を招くことだって出来る……ッ! 今のお前はどうなんだッ!? 言われたまま戦ってるだけじゃないのかッ!?」

 

 翔の言葉に目を見開く。

 目の前のガンダムのパイロットに言われなくとも分かっていた筈だ。

 しかし現に自分と殺し合いをしているガンダムのパイロットもまた自分と同じ存在になりかけている。

 

 ルスランの怒声と共に残ったファンネルのビームがブレイカーFBの装甲を傷つけ、遂には右足部を撃ち抜き爆発する。

 

 このままでは危険だ。

 ブレイカーFBは展開したままの腕部ガトリングで残ったファンネルを破壊しながらヤクトドーガへ接近し、ビームサーベルで斬りかかるがギリギリで避けられる。

 

「……俺は俺の意思で俺の為に戦う……ッ! だから邪魔をするなッ!」

「ぬぅっ!!?」

 

 避けられたが、なにも出来ない訳じゃない。

 ブレイカーFBは残った右肩部をヤクトドーガへ向け、使えるバーニアを使ってタックルと浴びせるとヤクトドーガは背後のデブリを突き破って更に背後のデブリにぶつかり、ルスランは悲鳴を上げる。

 

 《敵機動核兵器は現在、宇宙艦隊によって三機を破壊することに成功! 後一機です!!》

「了解……」

 

 あのヤクトドーガでは何も出来ないだろう。

 アークエンジェルのオペレーターから通信が入る、

 

 オペレーターの言葉に熱が入っている。

 後一機で核兵器落下を阻止出来るのだ。

 今は兎に角ディビニダドを止めなくてはならない。

 ブースターや損傷が激しいためバランス調整が難しいが、それでもエクシア達と合流する。

 

 ・・・

 

「───……俺は俺の意思で俺の為に戦う、か……」

 

 デブリを背にルスランは遠くなっていくブレイカーFBをモニター越しに見つめる。

 ヤクトドーガが発していたエヴェイユの光は消えていた。

 しかしディビニダドが残り一機だというこの状況で彼に焦りの色は見えなかった。

 ただ静かに翔が言った言葉を口にする。

 

「……だが、お前個人の意思でどうなる? 戦争が終わらせられるのか? そんな訳がない……。お前が……お前達がなにをしようと……」

 

 機器を操作し、サブモニターに行動不能になった筈の二機のディビニダドがブレイカーFB、ゼータプラス、エクシアの三機を捉えていた。

 

「それでも結果は変わらない」

 

 ・・・

 

(あれは憎しみを生み出す代物だ……。憎しみは絶対に生まれる……。けど生み出される憎しみは少ない方が良い。これ以上は……)

 

 極度の疲労が翔を襲う。

 それを現すようにブレイカーFBを包むエヴェイユの赤い光は弱弱しくなっていた。

 だがそれでもあのディビニダドを止めなければ、そう思いペダルを踏み込み、合流したゼータプラスとエクシアと最後のディビニダドと交戦しようとするが……。

 

「──嘘だろ、こっちに来るぞッ!?」

「翔、危ないッ!」

 

 ショウマの焦った声とレーアの危険を知らせようとする通信が聞こえる。

 注意力が切れかけていた翔は目の前のディビニダドに集中していて気が付けなかった

 

「ッ……!?」

 

 センサーが左右から急接近する敵機を知らせ翔がモニターを確認し言葉を詰まらせる。

 そこには自分達三機を挟むように翔が憎しみを生み出す代物と形容した悪魔のようなMAが自分達を共に死へ誘うように自分達をその巨大なアームで包み、瞬間、大爆発を起こすのだった……。

 

 ・・・

 

 

「クソッ……自爆かよ……!」

 

 絡みつくような熱気がコクピット内に充満し何とか意識を保っていたショウマは悔しそうに呟く。

 その場には何とか原型は残っているもののどれもボロボロなガンダム三機が漂っていた。

 行動不能で何も出来ないと思っていた二機のディビニダドがまさか道連れに自爆するとは思っていなかった。

 

 あれからどれだけ経ったか分からない、が所々にノイズが走るモニターには最後の一機であるディビニダドが地球へ降下する為大気圏に突入しているのが翔には見えていた。

 頭を打ち付けたのか額から血が流れ、今にも薄れゆく意識の中、ディビニダドへ向かって手を伸ばす。しかしそれが限界なのか、伸ばした手は静かに落ちる。

 

 

 

 そうだ限界だ。

 

 

 これ以上はどうしようも出来ない。

 

 

 自分に出来ることは精一杯やったのだ。

 

 

 きっと誰も自分を責めやしない。

 

 

 弱い自分の心は意識を手放す為にそう自分に言い聞かせようとする。

 

 

 体力も精神も限界なのか遂に翔は重くなった瞼を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【───最後まで諦めるなよ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ッ!!」

 

 

 

 

 

 意識を手放そうとした瞬間、閃光の果てに散った仲間の今にも消えそうな声が聞こえハッと目を開く。

 幻聴か……。それとも……。そう思い残り少ない体力を振り絞って周囲を見る。

 

 

 

 そして見つけたのだ。

 

 

 

「バスターライフル……!」

 

 

 そこにはプロトゼロとディビニダドの撃ち合いの際に吹き飛んだバスターライフルが漂っていたのだ。翔の口から小さな笑い声が漏れる。

 

「そっか……。そうだよな……。諦めるわけには……いかないよな……ッ!!」

 

 何のために涙を振り払ってここまで来たんだ。

 カレヴィはその身をもって自分達に最後まで諦めるなと教えてくれたのに自分はなんて事を考えたのだと恥じる。ここで諦めてはカレヴィの死が無駄になってしまう。

 

 

 もう諦めはしない

 

 

 奮い立ったその心でペダルを踏み込みディビニダドを追う。

 デブリにぶつかり火花が散る中、ボロボロの機体はそれでも前へ進む。

 ブレイカーFBがバスターライフルを掴もうとマニピュレーターを向け、何とか掴み取って降下しているディビニダドへ向ける。エネルギー残量は一発分なら何とかあった。

 

「ッ……」

 

 しかし照準が定まらない。

 翔の視界には額から流れる血が滲み、まともに見ることすら出来なかった。

 

 手が震える。怖いのだ。

 自分の機体はボロボロ。しかもその状態で大気圏に突入しているディビニダドへ接近する。

 地球の引力に引っ張られ大気圏に入ればいつ爆発したっておかしくない。

 それを現すように左足部も爆発する。

 

 しかもこれを外せば地球に核が落ちて沢山の命が失われてしまうだろう。

 プレッシャーも重く圧し掛かっていた。

 遂には残ったブースターポットは爆発してしまう。

 

 

 

「──ッ!」

 

 

 

 震える手を支えるように半透明の手が背後から操縦桿を持つ手に添えられる。

 そこには閃光の果てに未来を掴んだ友がいたのだ。

 

 ここに来て自分は幻を見ているのだろうか? 

 遂に頭がおかしくなったのだろうか?

 しかし機体を包むエヴェイユの毒々しかった赤い輝きはこのカレヴィを出現と共に優しい青白い光へ変わり、その光は翼のように広がる。

 

「……」

 

 例え幻であろうと構わない。

 お陰で手の震えは止まり、照準はまっすぐディビニダドを捉えていた。

 

 自分と共にトリガーとなる操縦桿を持つカレヴィを見る。

 半透明ながらその優しげな笑みは彼のものだ。

 互いに顔を見合せた後、ディビニダドへ意識を集中させ引き金を引く。

 

 引き金を引くのに言葉は必要ない。

 ただ静かに引き金を引き、まっすぐ伸びたビームはディビニダドを撃ち抜き大爆発を起こす。

 

 遂に限界を超えた翔は操縦桿から手を離し、意識を失う。

 それと同時に満身創痍のブレイカーFBから放たれる青白い光の粒子は天使の羽のように姿を変え周囲に撒き散らしながら、ブレイカーFBは流星のような軌道を描いて大気圏へ突入していく……。

 

 ・・・

 

 

「──動けッ……動けよッ! 翔が落ちちまう!!」

 

 ノイズ交じりにモニターに地球へ落下していくブレイカーFBを見てショウマは必死にコクピット内の操縦桿やペダルを動かすがゼータプラスはうんともすんとも言わない。

 

 このままでは翔が危ない。

 フェズやカレヴィを失った今、翔まで失いたくはないのだ。

 

「なんで動かねぇんだよ!? なんで俺は……ッ……いつも見てるだけなんだ……っ!?」

 

 ショウマの瞳から頬を伝って涙が零れる。

 翔の印象など最初はなにも喋らないつまらない男だと思ってたが、百式を共に撃破したり私生活でも交流をしていくうちに"友達"と呼べる存在だと思えたのだ。

 そんな友が命を張ってディビニダドを撃破し、地球へ落ちていくのをただ見ている事しか出来ない。

 

 これではフェズの時と同じだ。

 グレートキャニオンから自分は何も出来ていない、成長できていない。

 そんな不甲斐なさが涙となって流れショウマは今にも押し潰されそうな表情で泣き叫ぶ。

 

「っ……どう……なったの……?」

 

 エクシアのコクピット内で意識を失っていたレーアは漸く目を覚ます。

 

「あれ……は……?」

 

 ディビニダドはどうなったのだろうかとメインカメラを動かし地球を見る。

 そこで地球へ落ちていく一筋の流星のようなものを見つける。

 

 そう、あれはまるで……

 

 ・・・

 

「───……流れ……星……?」

 

 地球からシャトルに乗って宇宙(そら)に上がっていたリーナも同じ光景を窓に手をついて見つめていた。

 

「綺麗……」

 

 純粋にそう思えた。

 あれが何なのか分からない。

 もしかしたら父が言っていた地球攻略作戦の為の兵器なのかもしれない。

 自分にとって地球だとかコロニーだとかはどうだって良い。

 だだあれが父にとって良い物になればと手を合わせて願う。

 流れ星に向かって願いを唱えればそれが叶うと聞いたことがあったからだ。

 

 ・・・

 

「……まさ……か……」

 

 ルスランもまたディビニダドを撃ち抜いたブレイカーFBを見ていた。

 

 信じられない。

 何故、あのパイロットはそこまでしたんだと。

 あそこで動かなくともきっと誰もあのパイロットだけのせいにはしないだろう。

 なぜ、そこまで……。あんな事をすれば死んでしまう筈だ。

 

 そこまでして止めたかったのか?

 それがあのパイロットが言っていた自分の意思で自分の為に動くということなのか?

 

 《ルスラン……》

「ッ……ヴァルター様……」

 

 敬愛しているヴァルターの声が静かなヤクトドーガのコクピット内に重く響く。

 ヴァルターからの通信もあってか、目を見開いてすぐに答える。

 ヴァルターからの通信にすぐに答えないという選択肢などない。

 しかしそれ以上にルスランの額に冷や汗が流れる。自分がこの作戦の要を担っていたからだ。

 

 《作戦は成功だ。よくやってくれた》

「ハッ……。ありがたきお言葉」

 

 ヴァルターの口から作戦成功の知らせを聞かされルスランは安堵の表情を見せる。

 センサーに味方機の反応があり、見ればこちらに接近する味方機の姿がある。

 

 自分を回収しに来たのだろう。

 このままエクシアの回収なども考えたが、地球軍の残った艦隊がこちらに接近してくるのもセンサーに感知している。ここは諦め、素直に戻ったほうがいいだろう。

 

「……お前が何故、そこまで出来るのか私には分からない……。しかしお前の意思とやらに敬意を表しよう。だが何度も私は言う」

 

 ルスランは静かに地球へ落ちていくブレイカーFBを見て呟く。

 その行動は賞賛に値されるだろうが……。

 

「それでも結果は変わらない」

 

 作戦は成功した。

 地球軍にとって核兵器落下を阻止したとさぞ喜んでいることだろう。

 だが水面下で行われていた真の地球攻略作戦を気づいていない筈だ。

 役目を果たしたルスランは目を閉じ自分を回収する味方機を待つのだった……。




第一部完…といったところでしょうか、物語の前半はこれにて終了です!

この話を見て分かるように原作から変わっていきます。変わっている所はもう結構ありますが…。

さぁ次からいよいよ物語の後半へ、これからもがんばって行きます!

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