機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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機動戦士ガンダム INFINITY─めぐりあい台場─

 

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……!」

 

 遂に迎えたガンダムグレートフロント最終日。

 皆が思い思いの行動をするなか、一人の少年が息を切らし肩を上下させながら人混みを掻き分けて進む。

 周りの人間達は皆、上を向いて何かを熱中して見ていた。

 だが今の場所では少年にとっては満足に見えない。

 

「わぁっ……!」

 

 やっと自分にも見える場所へたどり着いた少年は肩で息をしながら周りの者達と同じく顔を上げ、そして感嘆の声を漏らす。

 ここはライブステージ。そして流れる映像は勿論、バトルライブGの映像だ。

 今、2機の巨大なマスターガンダムを3機の見たことない小さなガンダムが撃破していた。

 

 ・・・

 

「ふぅっ……」

 

 バトルシュミレーターから出てきた翔は身体を解そうと、首を一周動かし肩を上下させている。

 たった今、ダイテツとLYNXと共にミッションを行い、最後に出てきたPGマスターガンダム2機を撃破したところだった。

 

「二人共よくやってくれた」

「計算通り上手くいきましたね」

 

 そんな翔にダイテツとLYNXが駆け寄って互いに労い合う。

 年の差など関係ない。

 共に戦うガンダムブレイカー隊として彼らの繋りは大きなものとなっていた。

 

 ・・・

 

「いよいよ我々に最後のミッションが与えられた。作戦目標は敵中枢部に存在する機体の破壊だ」

 

 ガンダムブレイカー隊の面々が集まり、隊長を中心にしていよいよ最後のミッションについての話が行われていた。

 

「これを撃破することが、我々ガンダムブレイカー隊の最後のミッションとなるだろう。心してかかれ!」

 

 今日はGGFの最終日、

 それぞれの表情には感慨深いような表情が浮かぶ。

 

 名残惜しい訳ではないと言えば嘘になる。

 しかしそれだけではない。

 何よりも充実感があった。この大会に参加したからこそ得られた知識。そして繋りがあるのだから。

 

 ・・・

 

 最後のミッションまで後、5分を切るなか、翔は最後までガンダムブレイカー0の調整をしていた。

 見た目は変わってこそいないが、ガンダムブレイカー0を作成して以降、何度も調整を繰り返していた。それだけガンダムブレイカー0は自分の手に余る機体に仕上がっていた。

 

(最後か……)

 

 そこで想う。

 今日は最終日だ。

 

 短い期間であったが、今まで生きてきた人生にとって、これほどまで学び、成長し、進んできた濃密な時間はあっただろうか。

 例えそれが趣味の範囲のことで、鼻で笑う者もいるかもしれない、だが彼にとっては何よりもかけがえのないものだ。

 

「!」

 

 すると翔のスマートフォンにメールの着信音が鳴り響く。

 見れば、自分の家族がGGFの会場に来ているとのことだ。

 

 両親は苦笑し、なんでそこまでガンダムにのめり込むんだと言っていたが、自分のガンプラが雑誌に載った時は自分の事のように喜んでくれた。

 それが気恥ずかしく突っぱねるようなことも言ってしまったが、それは反省している。

 メールには写真も添付され、家族全員がガンダム立像の前で写真を撮っていた。

 それを見た翔は微笑を浮かべ、いよいよ最後のミッションに臨む。

 

 ・・・

 

 《これが最後のミッションだ。短い期間であったが私は皆の隊長としてあれたことを、共に歩んできたことを誇りに思う》

 

 ガンダムブレイカー隊の面々がバトルシュミレーターに乗り込み、出撃の時を待っていた。

 すると、そこに隊長からの通信が入る。それは隊長だけではなく隊の皆が感じていたことだ。

 

 《だからこそ必ずや勝利を収めて来い!》

『了解!!』

 

 隊長の激励に一同、声を揃えて高らかに答える。

 

 

 

 

「NOBELL☆GIRL、ヤマモト✩ルミカっ!」

 

 

 

 ──そうだ、勝つんだ。

 

 

 

「BLACK DOLL……全てを終わらせてやろう」

 

 

 

 ──そうじゃなきゃ今まで戦ってきた意味がない。

 

 

 

「Z.S.F、行こう!」

 

 

 

 ──でもただ勝つんじゃない。

 

 

 

「ユニコーンガンダムカスタム、ユーゴ・オカムラ!」

 

 

 

 ──みんなで勝つんだ。

 

 

 

「フルアーマーダイテツ! ネオヘビーアームズ【獄炎王】ッッ!!」

 

 

 

 ──だってみんなで一緒に進んできたから

 

 

 

「今こそジオンの精神を見せるときッ! シナンジュカスタムッ!」

 

 

 

 ──みんなに会えたから強くなれたから

 

 

 

「今、あたしの全てをぶつけるんだから! そうよね、バーニングゴッド!!」

 

 

 

 ──今までの人生の中で何よりも満ち足りたモノになったから

 

 

 

「F・ナイチンケール、あやこ!」

 

 

 ──【新しい名場面が無限に生まれる】それがこのゲームのテーマだ

 

 

 

「行こうぜ、ストライクレッド改ッ! そして、みんなっ!」

 

 

 

 ──だったら作ってやる

 

 

 

「ガンダムブレイカー0……如月 翔ッ!!」

 

 

 

 ──誰も見たことのない新しいガンダムの世界を

 

 

 

「「「「「「「「「「行きます!」」」」」」」」」」

 

 

 

 ──ここにいるみんなで!

 

 ・・・

 

 

 《敵巨大機体を確認! これは……グランドマスターガンダムですっ!!》

 

 

 最後のミッション。

 それは今までのジオラマの戦場やスロットやテーブルとは違い、デジタル空間のようなジオラマが戦闘の場として選ばれた。

 そして最後に立ちふさがるは【機動武闘伝Gガンダム】に登場するグランドマスターガンダムだ。

 

 現れた場所はガンダムブレイカー隊の面々にとっては射程外の位置にいる。

 しかしグランドマスターガンダムにとってはそうでないのか、ヘブンズダートやグランドキャノンによる無数の攻撃を仕掛けてきた。

 

「させるかぁっ!!」

 

 このままではガンダムブレイカー隊の面々が危ない。

 

 真っ先に動いたのは獄炎王だった。

 その自慢の火力により迫り来る攻撃を撃ち落とし、相殺させる。

 

「流石に一人では無理だ、行くぞ、如月君!!」

「了解!!」

 

 しかし流石に獄炎王1機で全てを対処するなど困難だ。

 それを素早くシンイチロウが翔に声をかけ、同時に全てのファンネルを飛ばし、迎撃する。その間に残った機体は一気にグランドマスターガンダム目掛けて進む。

 

「きゃぁあっっ!?」

「ひぃっ!?」

 

 しかしそれを黙って見ているわけがない。

 グランドサンダーが放たれ対処しきれなかったルミカとレイジの機体に直撃し、スタン状態にあるのか機体を動かすことができなかった。

 

「二人共、大丈夫ですか……っ!?」

 

 あやこが二人を心配し、動けない2機の前でその大きなシールドを構えて、攻撃を防ぎつつアーマーリペアを使用するが、それでも彼女にかかる負担は大きい。

 

「このままじゃマズイわっ! LINX君っ!!」

「分かってます!!」

 

 三人の危機を見兼ねてアカネがLINXに声をかけると二人の機体は一気に上空へ舞い上がり、EXアクションを使用する。

 

「アタシのこの手が真っ赤に燃えるッッ!!」

「このためのEXだッ!!」

 

 アカネのバーニングゴッドは光り輝く掌を突き出し、LINXのZ.S.Fは飛び蹴りの状態で一気にグランドホーンへ接近する、二人のEXアクションによってグランドホーンを破壊し、2機は交差した。

 

「うっぐっ!?」

「くっ!?」

 

 しかしヘブンズダートやグランドキャノンによる攻撃によってバーニングゴッドとZ.S.Fは直撃して、吹き飛んでしまう。

 

「うあっ!?」

「し、死ぬ程痛いぞ!!」

 

 それは近くにいるストライクレッド改とユニコーンガンダムカスタムにも向けられる。

 全てのバーニアを使用して避けていたのだが、全ては捌ききれずに直撃して、両機吹き飛んでしまう。

 

「っ……!?」

 

 尻尾として構成されている球体型のウォルターガンダムがあやこ達の機体をすり潰さんと凄まじい速度で突っ込んでくる。

 

 今からでは回避できない。

 しかしその速度から衝撃が凄まじいのは容易に想像できる。

 あやこは目をギュッと瞑るも……。

 

「──……待たせた」

 

 だが、衝撃は来ない。

 恐る恐る目を開けて見るとフィンファンネルによって強化された四角錐型のビームバリアが防いでいた。

 それはブレイカー0のモノだ。

 すると翔の声が聞こえ、あやこは嬉しそうにモニターを見れば、そこにはブレイカー0をはじめとしたシナンジュカスタムと獄炎王が接近していた。

 

「怯えろぉっ!!」

「竦めぇっ!!」

 

 シナンジュとサザビーのニコイチによって作られたシナンジュカスタムの腹部メガ粒子砲と獄炎王の砲撃がウォルターガンダムの装甲を削っていく。

 その間にブレイカー0のフィンファンネルはバリアを解除して追撃する。

 

「あやこちゃん、ありがとっ! でも、もぉ大丈夫っ!!」

「褒めてやるぞ、白き天使」

 

 ようやく動けるようになったNOBELL☆GIRLのビームリボンによるEXアクション・ボルテックスチャージがウォルターガンダムを攻撃して、更に深い一撃を与えると、背後に控えていたBLACK DOLLがビームシザースを振りかぶり、EXアクション・デッドエンドバスターによってウォルターガンダムを撃破する。

 

「……二人共行けるか?」

「当然!」

「狙い撃つ!」

 

 遂にグランドマスターガンダムに近づいたブレイカー0はストライクレッド改とユニコーンガンダムカスタムに並び立ち、確認すると二人の返事を聞き、EXアクション・スペクトラルショットがグランドマスターガンダムの装甲を一点集中で削っていく。

 

「っ……!」

 

 グランドマスターガンダムへの攻撃を続けていく中、突如、グランドマスターガンダムはその場で回転、その際に極太のビームを放ち、ブレイカー0達はなんとか避けるものの、一度喰らえば次はないと言うのはすぐに分かった。

 直後、ヘブンズダートやグランドキャノンによる攻撃が再開され、ブレイカー0も手に持つビームライフルが破壊されてしまう。

 

「──諦めちゃダメよ!!」

「そうですよ!」

 

 手立てがない。

 そう思った瞬間、アカネの強く凛々しい声が聞こえる。

 

 ハッとした瞬間、グランドマスターガンダムの巨体が揺らぐ。見ればEXアクション・バーストフィンガーを使用したバーニングゴッドが下から持ち上げるように装甲を貫いていた。

 すると同じく下から飛び出て来たZ.S.Fがスペクトラルショットでブレイカー0達が傷つけた箇所に直撃させて、更に抉る。

 

【Never give up!】

 

 ブレイカー0のモニターに文字と共に電子音声が流れる。

 GAIOSのモノだ。

 GAIOSは僅かに感情を搭載されていると聞いた。

 そう、GAIOSもまた諦めてはいないのだ。

 

 それを見た翔は表情を力強いものにし、機体を覚醒させる。

 赤みを帯びた光はブレイカー0を包み込む。

 

 そうだ諦めてはいけない。

 ここで立ち止まるわけには行かない。勝つんだ。

 

「ッ……!」

 

 覚醒したブレイカー0は弾幕が張っているグランドマスターガンダムへ突っ込んでいく。

 

「如月さん!?」

「なにか考えがあるのか……? ならば!」

 

 思わずあやこが声を上げ翔の行動に一同、一瞬ばかり唖然とするが、直後、シンイチロウの言葉とともにブレイカー0を援護するために射撃攻撃でグランドマスターガンダムを傷つける。

 

 

 

 

 ──無謀だ

 

 

 

 ブレイカー0の行動にライブステージ前にいた観客の一人が思わずそう呟く。遂に自棄になったかと失笑までしていた。

 

(これからも俺は色んなことを知りたい、挑戦したい! 笑われたって良いッ! 俺は前に進んでいくんだッ!)

 

 今まさに自分は直感で動いている。

 ブレイカー0は仲間達の援護もあり遂にグランドマスターガンダムへ接近する。一点集中で傷つけた箇所に取り付き、二本のビームトンファーを拳を打ち付けるようにその箇所へ叩き込み、覚醒状態で強化されていることから背後の装甲まで貫く。

 

 

「いっっっっけえええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!」

 

 

 普段叫ぶことのない翔が無我夢中で叫ぶ。

 それは勝ちたいという想いから来るモノだ。

 それに呼応するようにブレイカー0のビームトンファーは更に肥大化し、上方へ振り上げるとグランドマスターガンダムを真っ二つにして撃破し、ライブステージ前で大歓声が起きる。

 

 《敵巨大機体、撃破確認っ! ミッション成功ですっ!!!》

 《現時刻をもって全作戦の成功を確認……! 我々の勝利だ!!》

 

 いまだ響き渡る観客の歓声。

 ついに最後のミッションを成功させたことからオペレーターも隊長も大興奮で叫ぶように通信を入れ、ガンダムブレイカー隊の面々も喜びに浸るのだった。

 

 ・・・

 

「──おめでとうございます!」

 

 遂に最後のミッションを終えた翔は皆で全ミッションコンプリートを喜びを分かち合った後、一人、余韻に浸っていたところに声がかけられた。

 なんだと思ってみれば、個人的になのかイベントMCが一人でこちらに向かって来ていた。

 

「あなた方がグランドマスターガンダムと戦っている間、殆どのお客様がライブモニター前に集まり、みなさんの戦闘を固唾を飲んで見守っていました……。そして最後の敵が倒れた瞬間、会場中を大歓声が包んでいたんですよ」

「そう、ですか……。それは光栄です」

「世界を脅かす敵……。そしてソレに対する勝利……。全てはゲームの世界での作られた出来事なのに、それが達成された時、会場の皆さんは涙を流さんばかりに喜んでおられました……。きっとオンラインでバトルを見ていた全国の皆さんも同時に同じ気持ちを味わったのではないかと思います!」

 

 イベントMCが腰掛けていた翔の隣に座り、戦闘中の様子を翔に伝えると、凄い格好だな、と改めてイベントMCを見ながら気恥ずかしそうに思いつつ返事をする。

 するとイベントMCはどんどん声を震わせながら言葉を続ける。

 

「私も何だか凄く感動してしまって……っ……。私……このイベントの司会をやらせていただいて本当に良かったな……良い経験をさせていただいたなっと思っちゃいました……」

「それは……俺もですよ……」

「ふふっ……さて、そんな貴方に大事なお知らせがあります!」

 

 感慨深いものは彼女にもあるのだろう。

 目に涙を溜め、しみじみと言葉を繋げる。それは嘘偽りのない言葉だった。

 そしてその想いは彼女だけではないのか、翔もまた頷く。

 すると彼女は再びいつものMCとして翔の前に立ち上がり、なにかを伝えようとする。

 

「貴方の戦績は大変高く評価され、見事、最終選抜プレイヤーの一人に選ばれました! Congratulations!!」

「あっ……」

「今日は最終日……。そのグランドフィナーレに選抜プレイヤーによって行われる最終ミッションへの参加をお願いいたします!」

 

 翔は選抜プレイヤーに選ばれたのだ。嬉しくはあるが、正直、仲間との勝利に酔いしれて完全に忘れていた。それを知ってか知らずか彼女はまだ言葉を続ける。

 

「それではそれまでごきげんよう!最後の時まで楽しんでいってください!!」

 

 そう言ってイベントMCである彼女は去って行ってしまった。

 今、なんと言って良いか分からないが、喜びを表すように翔は小さいながらもガッツポーズをとるのだった……。

 

 ・・・

 

 

 《──GGF会場前広場にお集まりの皆様、そしてこの放送をご覧の全国の皆様、史上最大のガンダムイベント【ガンダムグレートフロント】遂に本日を持って閉幕いたします。【ガンダムワールドがいま“現実”となる】をテーマに開催されたこのイベント……中でも特に人気だったのはガンプラバトルシュミレーターによるバトルイベント・バトルライブG! 皆様がご覧になった参加プレイヤーによる白熱のバトルはガンダムワールドの新たな名シーンとして今後も語り継がれていくのではないでしょうか》

 

 あれから数時間が経過し、それぞれが思い思いにイベントを楽しみ、そしてガンプラの調整を行っていた。そしていよいよ、夕暮れ、イベントMCによる放送が開始される。

 

 《それではガンダムグレートフロント閉幕にあたりグランドフィナーレとしてバトルライブG参加プレイヤーによるエキシビジョンマッチを開始いたします! GGFの驚きの展示物の数々……。その根幹を支えたのは最新のホログラム技術でした! これを利用して、なんとこのお台場を【ガンダムの戦う戦場】に変えてしまいます!》

 

 イベントMCから伝えられた言葉に観客がざわつく。

 まったくもって想像がつかないからだ。

 しかしその場にいる従業員達が外へ出るように促すと何だろうと首を傾げながらもそれぞれ外へ出てガンダム立像を見る。

 

 《選抜プレイヤーの操る機体の登場です!!》

 

 その場にいた観客は唖然とする。

 なんとガンダム立像が聳え立つその隣に翔のガンダムブレイカー0を始めとした選抜プレイヤーの機体が現れたからだ。

 

 《実物大ガンダムと同じサイズに拡大投影された選抜プレイヤー機体による華麗なるエキシビションマッチ! 【お台場ファイナルバトル】をお楽しみください!》

 

 漸く我に返った観客はみんな笑顔になって歓声を送る。

 まさにグランドフィナーレに相応しいからだ。

 イベントMCの宣言と共に選抜プレイヤーの機体は空に舞い上がり、出てきた敵MSを撃墜していく。

 

「ふっ……!」

 

 ブレイカー0は旋回しながら接近して、至近距離でビームライフルで撃ち抜き、敵機を撃破する。シミュレーター内で操縦する翔の口元に笑みがこぼれる。

 

「っ!?」

 

 すると前方から鋭い射撃攻撃が翔に襲い掛かり、翔は咄嗟にバーニアで回避する。

 見ればストライクレッド改がこちらに銃口を向けていた。

 

「なぁ翔……。俺達何だかんだでずっと一緒に戦ってきたよな。それこそ最初のミッションから」

「……ああ」

 

 すると翔のシュミレーター内にナオキの声が響き、翔は静かに答える。

 その表情はナオキの言いたい事は分かっている、そんな顔だ。

 

「ずっと一緒に戦ってきた。だから俺、ずっと考えてたんだよ。お前と本気で戦ってみたいって」

「俺もだ」

 

 ナオキの想いを間髪いれずに答える。

 翔とナオキは最初のミッションから、そして要所要所の大切なミッションでは必ず一緒に出撃し共に戦い、友となって互いを高めあってきた。

 二人の気持ちは必然のようなモノだった。

 

「そっかそっかぁっ! じゃあ……!!」

「ああ……ッ!」

 

 嬉しそうなナオキは思わず手を叩いているのか拍手音が聞こえ、そして好戦的な笑みをうかべると、翔もまた同じように笑う。それはもう少年のような表情だ。

 

「「ガンプラバトルレディー……ゴォーッ!!!」」

 

 同時に叫ぶと二人の機体は同時にぶつかり合う。

 そして弾かれ合うように宙を舞い、何度も何度も交差する。

 

「でぇやぁっ!!!」

「ッ……!!」

 

 再びガーベラストレートとタイガーピアスによってブレイカー0を肉薄するストライクレッド改。

 しかしただやられているわけはない。

 ブレイカー0も素早くビームトンファーを展開し、何度も剣戟を結ぶ。

 

「フィンファンネル!!」

 

 バッと離れ、ブレイカー0はフィンファンネルを全て射出する。

 複雑な動きで一斉にストライクレッド改に襲い掛かるが……。

 

「パターンは分かってるんだ! ビームコンフューズッ!!!」

 

 するとストライクレッド改は2本の刀を戻し、ビームサーベルを引き抜くとブレイカー0へ投げる。

 回転するサーベルのビーム部分にビームライフルを撃ち、ビームを拡散させフィンファンネルを全て撃ち落していく。

 翔の戦い方はずっと見ていた。

 だからこそ翔の戦い方は手に取るように分かるのだ。

 

「ファンネルに集中し過ぎたな!!」

「うぉっ!?」

 

 回転するビームサーベルのビームに当てるなど至難の業だ。

 それをファンネルを撃破するために使用する。

 そこに集中し過ぎたせいで上空から飛来しビームトンファーを展開して襲い掛かってくるブレイカー0に気づかなかった。

 なんとか2本の刀を瞬時に引き抜いて防ぐも、更に腰部のレールガンを受け、メインカメラを損傷してしまう。

 

「まだぁっ!」

「ぐっ!?」

 

 だが、瞬時にEXアクション・ブーストタックルでブレイカー0にタックルを浴びせると、ブレイカー0は姿勢が崩れ、その隙にガーベラストレートを振るう。結果、右側のレールガンごと右足部を斜めに切断されてしまう。

 

「ふっ……」

「へへっ……」

 

 姿勢を戻し、再びストライクレッド改とぶつかり合うブレイカー0。

 互いの表情はどこまでも楽しそうに喜びに満ち溢れている。この戦いで死人が出ることなどない。

 だからこそ全力で戦えるのだ。二人の戦いは他の選抜プレイヤーや観客が見守る中、台場を舞台に何度もぶつかり合うのだった。

 

 ・・・

 

 

 

 

 

 ガンダムグレートフロントは大盛況のうちに幕を閉じた。

 ファイナルバトルが終わりイベントの閉幕も宣言された後もその思い出は今でも語り草になっている。あれから月日が経ち、参加プレイヤー達はそれぞれの生活に戻っていた。

 

「やぁいらっしゃい。良く来てくれたね」

「こうして会うのは初めてですね」

「ああ、だがその前にGGFの全ミッションをクリアしてくれてありがとう。イベント開催期間中に良くぞ全ミッションをクリアしてくれた」

 

 翔はバトルシュミレーターの開発リーダーの招待があり、ゲーム開発会社の研究所の特設開発ルームに訪れ、出迎えた開発リーダーと握手をする。

 二人は覚醒の一件で知り合ってはいたが、面と向かって会うのは初めてなのだ。開発リーダーは感謝の言葉を翔に伝える。

 

「開発者の我々としても不安は大きかった。期間内に全てのミッションをクリアするプレイヤーが現れなかったらどうする? 折角盛り上がったあのイベントを消化不良のまま終わらせてしまうことになりかねないかとね……。だが君達に全ミッションをクリアしてもらう為に敵機体のパラメータの下方修正などの対応はどうしてもしたくなかった……。なぜならそれは懸命に戦う君達に失礼だと思ったし、それに君達の敵は【ガンダム】だったからだ」

「……」

「【ガンダムは最強の機体である】或いは【最強の機体だからこそガンダムと呼ばれる】……そこだけは変えたくなかった。変えることが出来なかった……。だが君と君のパートナーGAIOSはソレを乗り越え勝利した。だから君のガンプラも新しいヒーロー……いや、新しい伝説の【ガンダム】だ! プレイしてくれてありがとう……。全てクリアしてくれて本当に……ありがとう」

 

 開発リーダーの想いとその夢を追い続ける少年のような輝かしい表情を見て、翔もまた微笑を浮かべる。年の差など関係ないことはあのイベントが教えてくれた。二人はまた友といえる仲になっている。

 

「さて、GGFのバトルライブGは中々好評でね。社長からも全国に展開できるバージョンの開発をしろと言われている。そこで君にも新しいバージョンの開発に協力して欲しいんだ」

「その為にここにいるんです」

「頼もしいな。やることは同じだ、今まで通りプレイしてくれ。我々の目的はこのバトルシステムに対し、プレイヤーがどこまで対応できるかの限界を測ることにある。なので新しいミッションは今までのモノよりも格段に難易度を上げてある。ある意味、手加減なしだ」

 

 開発リーダーは案内をしながら翔を呼んだ目的を話すと予め知らされているのか翔は答えると、その言葉に頷きながらある扉の前まで辿り着く。

 

「他の選抜プレイヤーにも声をかけてある。また彼らと共にプレイ出来るよ」

「……望むところ。俺は今、この感情のまま進み続けていたい……。だから、これからも挑戦し続けますよ」

 

 開発リーダーによって扉が開かれる。

 そこには隊長やオペレーターの少女、他にもガンダムブレイカー隊の面々が翔を待っていた。

 それを見た翔は楽しそうにクスリと笑い、開発リーダーに告げると仲間達と新たな戦いに身を投じていくのだった……。

 

 ・・・

 

「──んっ……。俺……寝てたのか……」

 

 あれから年月も経ち、2024年。

 翔は19歳となった。

 机に突っ伏していた翔は上半身を起こし、時間を確認すると今は朝の7時だ。

 

「はぁっ……最近、変な夢ばかり見る」

 

 生活は充実している。

 大学に通いながら同じ大学のナオキ以外にもまだガンダムブレイカー隊の面々とは繋がりがあった。

 

 ここ最近の悩みと言えば、ガンダムに登場するMSが戦闘行為をしているリアルな夢をやたら見ることだろうか。

 

「……遂に明日か」

 

 ふとカレンダーを見る。

 明日はガンダムワールドフェスタ2024と呼ばれるガンダムグレートフロントを超える大規模なイベントの開催日だ。

 自分やナオキ、それに他のプレイヤーも招待され、ガンダムブレイカー隊の面々も顔を出すそうだ。

 

「ガンダムの歴史にまた1ページ……。俺達が書き足そう。なぁ、ブレイカー」

 

 そんな風に考えていたほうが楽しい。

 そしてこの気持ちのまま前へ進みたい。

 どこまで挑戦していたい。

 

 そんな風に考えながら、机に置かれているガンダムブレイカー0の隣に置かれている初代ガンダムを彷彿とさせるようなガンプラを手に取り、更なる調整を施す。

 

 これはこのイベントの為だけに0から進み作り上げたガンプラ……ガンダムブレイカーだ。

 0ほどの性能はないが、それでも今の自分の力量とスタイルにあったガンプラに仕上がっていた。

 

 これを明日、新しいシュミレーターで動かせる。

 そう思うとワクワクして調整を行う手に力が入る。

 

 しかしこの最終日、彼はこの世界から消え去り、ガンプラバトルとは違い、その心身を大きく傷つけていくようなそんな戦いに身を投じていくことになるとは、彼はまだ知る由もなかった……。




これにて記念小説は終わりです。詰め込んだ割にあっさり感はありますがご容赦を

この話を書いていて私はやっぱりガンダムブレイカーが好きなんだなと再認識させられました。なので3の発売も待ってます。3では1の頃のような味方もカスタマイズ機とが自分の保存した機体に変更出来たら良いなぁっと思ったり…

兎に角、次回から本編に戻ります。これからもどうぞよろしくお願いいたします!

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