機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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パナマベース─孤独な黒獅子─

 

「邪魔をするなぁっ!!」

 

 レンが駆るFインパルスがビームサーベルを引き抜いて、ショウマのΖプラスとの剣戟を繰り広げる。レンの頭の中には一刻も早くジェイクの援護をという逸る気持ちで一杯だった。

 

 だがショウマは目の前の相手に全神経を研ぎ澄まして相手をしている。

 その差が生じた結果は単純なモノである。突き出されたビームサーベルをショウマはキッと目を細め……。

 

「こいつでぇっ!!」

 

 突き出したビームサーベルを持つマニピュレーターを掴まれ、己の迂闊さに気付くも、それはもう遅くショウマはビームカノンを素早く発射して、コクピット近くに直撃すると、その振動に襲われたレンは目をギュッと閉じて振動に耐えようとしていた。

 

「どうっだぁっ!!」

 

 機体を反転させて沈めてから肩越しにFインパルスを地面に投げつける。

 所謂、一本背負いのようなモノだ。そのまま 地面に激突したFインパルスの周囲は派手に砂煙を上げ、レンは気を失ってしまう。

 

「……っ!」

 

 一方で翔のブレイカーFBはレンとは別に機体のFインパルス2機との戦闘を繰り広げていた。

 右側のマニピュレーターに持つバズーカを発射するが、Fインパルス2機はそれを軽やかに避けてしまう。

 

「翔、どうする!?」

「……ッ」

 

 攻撃を繰り返したところで避けられてしまう。

 ショウマのZプラスも合流して戦闘をさらに激化させるが、平行線を辿るだけだった。

 ショウマの通信に翔は顔を険しくさせたままだ。答えられるものなら答えて状況を打開している。

 

「「なっ!?」」

 

 次の瞬間、翔とショウマは目を見開いて驚愕の声を上げる。

 なんとFインパルスはその特徴とも言えるバックパックのフォースシルエットを分離させ同時にブレイカーFBとZプラスへ射出したからだ。

 

 ブレイカーFBは腕部ガトリング砲でZプラスはビームライフルでそれぞれ対応、フォースシルエットを破壊することには成功する。だが2機のインパルスの目的はそれにあった。

 

「っ!!?」

 

 赤太い二つのビームがブレイカーFBを襲う。

 間一髪、シールドで防げたものの、シールドは爆発してその衝撃でブレイカーFBは落下する。

 確認すればそこにはバックパックを緑色の砲撃戦に特化したブラストシルエットに換装して、機体色を濃紺へと変化させたブラストインパルスがいたのだ。

 

「翔!? ちっ、こいつもか!!」

 

 なんとか体勢を戻すブレイカーFBに翔の名を叫ぶショウマだが、すぐに自分へ襲いかかる真紅の機体に反応を向ける。

 そこには二つの青白い刀剣を持ったソードインパルスがいたのだ。予め呼んでいた2機のインパルスはフォースシルエットを射出して、それにブレイカーFB達が気を取られている隙に換装したのだ。

 

「ッ」

 

 Bインパルスは複数のミサイルを発射してくる。

 息を呑む翔はギュッと操縦桿を握り締め、腕部ガトリングを発射して迎撃すると硝煙が周囲に漂う。

 

(状況は似ている……。行けるか……ッ!!)

 

 思い出すのはガンプラワールドフェスタ2024でのZZガンダムとの戦闘だ。

 あの時も似たような状況だった。そしてその後の行動でZZガンダムを撃破することに成功した。

 ただこれは現実だ、失敗するとどうなるかは分からない。翔は覚悟を決めブレイカーFBの全てのバーニアを使用する。

 

「ッ!?」

 

 全てのバーニアをフル使用して爆煙から飛び出したブレイカーFBに、その圧倒的速度にBインパルスのパイロットは反応するが、ブレイカーFBに迎撃は悉く避けられた。

 直撃は避けたとはいえ、操縦している翔には凄まじいGが襲う。そのGに耐えながら翔は歯を食い縛る。

 

「これ……でぇえッ!!!」

 

 左側に持つバズーカを逆さに持ち、そのまま、まるで鈍器のようにBインパルスの頭部メインカメラに叩きつけ爆発させる。

 VPS装甲のBインパルスには実弾などの損害は期待できないがそれでも中のパイロットへは振動が襲うことだろう。すぐさま空いたマニピュレーターでビームサーベルを引き抜いてBインパルスを一刀両断して撃破する。

 

 ・・・

 

「随分と長い剣だな……! でも先生が言ってたぜ!」

 

 エクスカリバーを連結させて、襲いかかるSインパルスに対してZプラスは素早く変形、かく乱をしながら徐々に接近する。

 

「どんなモンも使いこなさなかったら意味ないってなァッ!!」

 

 Sインパルスの下方に回り込み、そこから一気に突進するように加速するとSインパルスは後方に僅かに下がって、それを避けるが機体同士が水平に重なった瞬間、Zプラスは脚部だけ変形させ蹴りを浴びせるとその勢いでMS形態に変形させて、更にバーニアを吹かして接近する。

 

 そのままSインパルスに組み付いて地面に激突する。

 猛スピードで地面にぶつかったせいで激しい衝撃がSインパルスのパイロットとショウマを襲い、身体が痛み、さらには視界がぐらつく。

 

 一刻も早く決着をつけねばと視界が定まらないままビームサーベルでコクピット周辺かと思われる場所、そして周辺を素早く斬りつけて撃破する。

 

 別にショウマは不殺を心がけているわけではないが、やはりゲームで相手を倒した時などと違い“やった”などとは言えない。あるのはただの人殺しの虚しさだけだ。しかしそれに囚われていては軍人なんて出来ないし、戦場でそんなことを考えれば命取りだ。ある意味ではドライに思考を切り替え、次の行動に移るのであった。

 

 ・・・

 

「やられた……っ!? 俺の隊の奴らが……!?」

 

 一方、激しいドッグファイトを繰り広げるプロトゼロとAGE-2だったが、ジェイクは自身の部下達がほぼ全滅したことに驚く。

 驕っていたのだろう。空の支配者と言われた自分とそしてその部下達ならば、何の問題もないと。

 

「もらったッ!!」

 

 それが攻撃の手を緩める切欠になったのだろう。

 それを隙と見たカレヴィはプロトゼロのバーニアを停止させ、ふわりと浮き上がりAGE-2の後方へと回り込んで変形し、ビームサーベルを引き抜いて斬りかかる。

 

「サーベル振り回しちゃってさ……! 交通整理のバイトがお似合いなんじゃないッ!?」

 

 だがジェイクもエースパイロットだ。

 AGE-2を素早く変形させ自身もビームサーベルを引き抜いて受け止める。その際に強いGが身体を襲うが歯を食いしばって耐える。

 後方へ下がるAGE-2だが、プロトゼロは再度斬りかかりながら追撃しジェイクは忌々しそうに呟く。

 

「味方反応……? おいおい、こいつらは最終防衛ラインの奴らだろ……? 童貞じゃないんだから前に出てきてまでがっつくなよ。……童貞だったらごめん」

 

 するとAGE-2のセンサーに反応が。

 見れば最終防衛ラインを守備する予定だった部隊のうちの何十機かがこちらにやって来ていた。それを見てジェイクは思わず苛立ち気に呟いてしまう。そんなジェイクのヘルメットにベロニカからの通信が響く。

 

 《よぉ、ジェイク》

「どういうことです? 第三防衛ラインが危ういってんで俺達が駆り出されたってのにこんなこと……」

 《その第三防衛ラインも後、半数で押され始めてるじゃないか。愛弟子を守りたいって思うのは当然のことだろ》

 

 ベロニカの意図が理解できないジェイクは目の前で剣戟を繰り広げることに集中しながら疑問を口にすると、通信越しに彼女はくつくつと笑いながら答える。

 

「うっへぇ気持ち悪……っ! っんで、そのこころは?」

 《ハイゼンベルグのお人形ちゃんが出撃したがっててねぇ》

「お守りってわけですか。生憎、おしゃぶりやおしめは持ち合わせてないんですけど」

 

 露骨に顔を歪めるジェイクだがベロニカの意図を聞き出そうとする。

 すると彼女の言葉に更にげんなりとした表情を浮かべた。

 

 《ただお人形ちゃんの戦果は目を見張るもんがあってね。大人しそうな顔してとんでもない暴れっぷりだよ》

「来るならもうちょっと早く来て欲しかったんですけどね……!」

 

 愉快そうなベロニカに内心、苛立ちが募る。

 自分の不手際とはいえ部下を二人亡くしてしまった。増援が来るのが早ければ結果は違ったかもしれない。

 責任転嫁したくはなるがそれは逃げだ。部下を失った原因は自分の未熟さである。そう思い、深くは言わず、AGE-2とプロトゼロは再び空中で交差する。

 

 ・・・

 

「ぐっ……!?」

 

 突如、頭に電気が走るような妙な感覚が翔を襲う。

 その気持ち悪さに翔はヘルメット越しに片手で頭を押さえていた。

 

「敵部隊接近! 二人共気をつけな!」

「……っ!」

 

 フェズから通信が入り、モニターを確認すれば数10機のガフランやザクⅡの混戦部隊がこちらに接近してきていた。

 敵部隊はこちらに行動を移させまいと射撃で牽制してくる。その中から一機の黒いMSがブレイカーFB目指して突っ込んできた。

 

「翔、大丈夫かよ……っ!?」

「ショウマ、集中しな! 翔は戦えないなら下がるんだ!」

 

 様子のおかしい翔を気遣うショウマだが敵部隊の攻撃は緩めることはない。

 フェズは注意を飛ばしながら翔に後退するよう促して敵増援部隊との交戦に入る。

 

「──…見つけた」

 

 シンプルな外見の黒い機体のパイロットのリーナはポツリと呟く。

 相変わらず頭痛に苛まれる翔だが、その機体のことは知っていた。

 

「自分だけど自分じゃない人が近くにいるこの感じ……。気持ちが悪い……っ!」

 

 リーナは不快感を露にしながらブレイカーFBをモニター越しに睨みつけると彼女の負の感情に呼応するように、そして目の前の機体のパイロットに反応するようにその機体……ユニコーンガンダム2号機バンシィはデストロイモードに変形する。

 

「私は私を見たくなんてない! 消えてよッ!」

 

 目の前の機体のパイロットに自分に近いなにかを感じ、そしてヴァルターから笑顔どころか突然、愛情をもらえなくなった自分を思い起こさせて不愉快な気持ちが起きる。

 

 ヴァルターは彼女の全てなのだ。

 そしてその全てから見向きもされないというのは彼女にとってどれだけの苦しみだろう。

 

 その現わになったツインアイが禍々しく発光すると感情を露にすることが少ないリーナは感情をむき出しにして突っ込み、ブレイカーFBのメインカメラをマニピュレーターで掴むと、そのまま地面に押し付けながら移動する。目の前のガンダムを邪魔されずに確実に仕留めるために……。




サブタイは最初、獅子の瞳が輝いて、とかにしようと思ったんですがそれじゃどっかのレオ兄さーん!になってしまうので止めました。

新キャラ達は大体、主人公達と接触しましたが次回はタクティックス隊やカイリとレーアの様子が出てきます。主人公は活躍しません。

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