機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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いよいよガンブレ2の世界に到着し物語も進んでいきます!それではお楽しみください


フロンティアⅣ
フロンティアⅣーヒトゴロシー


「誰だ? まだ機体が残っていたのか?」

 

 翔が2機のガンダムに気付いたのと同じくしてガンダム達もまた翔の機体に気付き、ウィングガンダムが対応しようとこちらへ接近してくる。

 エクシアも周囲を警戒しながら後ろ向きで接近してくるなか、コクピット内にウィングからのものだと思われる通信が入ってきた。

 

「貴方、逃げ遅れ? 敵ではないわよね?」

 

 なんと答えるべきか悩んでいると今度はエクシアからも通信が入り、パイロットと思わしき女性の声が問いかけてくる。

 しかし翔は更に返答に困ってしまった。

 ただでさえ自身が置かれている状況も分からぬ今、まさかガンプラバトルシミュレーターに入ったら訳の分からない場所へ来たなどとは言えないだろう。

 

「……うん、民間人……かな……。……逃げてる最中に壊れたハンガーを見つけたら、中にコレがあった……。生身で逃げるよりはマシだと思って乗り込んだんだ」

「……なる程な。操縦は?」

「……多少は出来る。知識だけはあるから」

 

 当たり障りのない返答をしつつ、その後の質問には事実だけを答える

 あの青い光球と同化してから知識だけはあるからだ。

 

「戦力になるなら助かるが……。こんな所には長くはいれないからな」

「……貴方達についていけば安全だと言うなら着いていきます」

「安全かどうかは保証しかねるが、まぁ……こんな場所に一人でいるよりはマシだ。着いてこい」

 

 ウィングのパイロットとのやり取りの結果、何の情報も持たない翔は少しでもこの状況を打開するためにも彼等に着いて行くことを決め、はい、と簡潔に答える。

 

「それじゃあ貴方の機体を味方の識別認証するわ。名前を教えてもらえるかしら? 私はレーア。この機体はガンダムエクシアよ」

「……如月 翔……です」

「翔だな。俺の名はカレヴィ。そしてコイツがウィングガンダムだ。お前の機体も見たところガンダムタイプか。民間人である以上は無理をさせるつもりはな」

 

 先にエクシアのパイロットの女性の名はレーア。そしてウィングガンダムのパイロットはカレヴィという名前らしい。翔も認証の為、己の名を口にする。

 お互いの名前を知り、識別認証を終える事に成功するのと同時に彼方から爆発音が響き渡った。

 

「チッ、もう来やがったか! 脱出するぞ!」

 

 この中でリーダーとしての役割を担うカレヴィはすぐに声掛けをすると行動を起こし、ウィングに続くエクシアに倣い翔もその後を追う。

 

「敵の部隊が来たわ!」

 

 すると上空からは無数の銃撃が襲ってくる。

 素早くレーアが警戒を促すと翔に多大な緊張感が襲い掛かる。センサーが警告を発し、上空からゴーグルのような頭部と完全武装した騎士のような外観のMSが七機、飛来してきた。

 

(デナン・ゾン……? なんだかゴチャゴチャなガンダム世界にでも迷い込んだのか……? さっきもカレヴィとか言う人は俺の機体をガンダムタイプって言ってたし……。だとしたら冗談じゃない……」

 

 飛来するMS……デナン・ゾンにも翔は覚えがある。

 デナン・ゾンもまたガンダム作品に登場するMSだ。デナン・ゾンを見て自身が置かれる状況に困惑して、翔は表情を険しくさせる。

 ガンダム作品と言えば大半は生死のやり取りをする戦争が舞台だ。客観的に映像として見ている分には構わないがその世界へ行き戦争に参加したいとは思わない。

 

「ボサッとしないで! 一機、そっちに行ってしまったわ!」

 

 自身の置かれた考えていた翔にその隙だらけの状態からか、レーアから切迫した通信が入る。

 モニターを見れば飛来する七機のうち、六機ははそれぞれ三機ずつレーアとカレヴィが相手取っているのだが、その内の一機が通り抜けて翔へ迫っていた。

 

「うっ……!? ぐっ……!」

 

 接近してくるデナン・ゾンはショットランサーのマシンガンを連射してくる。

 翔は咄嗟に装備されているシールドで防ぐが、デナン・ゾンはそのまま接近してその両肩の装備される巨大なスパイクアーマーでタックルを仕掛けてくるつもりのようだ。

 

「うああぁぁああっ!?」

 

 反応が遅れた翔はデナン・ゾンのタックルをまともに受けてしまい、身に襲い掛かる衝撃に思わず目を強く閉じて悲鳴をあげてしまう。

 その際に装備しているビームライフルとシールドを手放してしまい、丸腰の状態で後方のビルへと押し込まれ衝撃が身体を襲いかかり、その反動で翔は頭を強く打ち付ける。

 

「翔! チィッ!」

「ダメ、カレヴィ! 援護できない!」

「けど、このままにしていいわけねえだろ!」

 

 カレヴィ達も翔の状況を見て咄嗟に援護しようとするが自分達も3機のMSを相手取っている以上は余裕がなく援護すらままならなかった。

 

「うっ……。あぁっ……!?」

 

 ビルに押し込まれて、前後の衝撃が漸く収まったと思って痛む身体のなか、ゆっくりと目を開けるとすでにデナン・ゾンはタックルから体勢を整え、腕に持つショットランサーを振りかぶっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ──死ぬ

 

 

 

 

 

 

 

 そう認識するのに時間はかからなかった。

 少なくとも今置かれている状況は現実。

 きっとあのショットランサーで貫かれれば死んでしまうだろう。

 

 

 

 

 

 

 ──嫌だ

 

 

 

 

 

 ──まだ生きたい

 

 

 

 

 

 ──死にたくない

 

 

 

 

 

 

 

「いやだ……! 嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だァッ!!?」

 

 

 

 

 

 

 死への恐怖心が生への渇望を大きくさせ半狂乱になり、無様なまでにそして衝動に駆られるままに叫ぶ。

 

「まだ……死にたくっないィッ!」

 

 死にたくはないと無意識に機体を動かそうと、足元のペダルを踏み込んで操縦桿を前方へと押し出す。

 バーニアは全力で吹き出してビルから飛び出るとそのままデナン・ゾンを反対側のビルへと押し返した。

 

 

「うああああああああァァァァァァーーーーァァァァッッッ!!!!」

 

 

 咆哮。

 

 ありったけの叫びだ。翔は自身の乗る機体の両腕をデナン・ゾンへと振るう。どこを殴るかなどは考えていない。兎に角、我武者羅にマニピュレータをぶつけているだけだ。

 

「──ッ!」

 

 マニピュレータを振るっている最中にデナン・ゾンが僅かに動きを見せたことに気付く。

 

 このデナン・ゾンを行動させては自分が危ない。

 そう直感的に感じた翔は今現在の装備を確認しバックパックに装備されているビームサーベルを引き抜くと無我夢中でビームサーベルをデナン・ゾンのコクピット横に突き刺す。

 

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……!」

 

 しばらくするとデナン・ゾンの動きは止まり、翔も落ち着きを取り戻すと額の汗を拭う。死を予感しただけあって全身は酷く汗に濡れていた。

 

「───ッ」

 

 ビームサーベルを背中のバックパックに戻した翔は大量の汗を拭いながらある事に気付いて息を吞むとカメラを操作し、ビームサーベルを突き刺した箇所を見る。

 見てはいけないと直感的に感じた。しかし身体が既に動いて視界から入ってきた情報を脳は確かに認識したのだ。

 

「あっ……あぁっ……!」

 

 コクピット横に突き刺したサーベルはコクピットの半分も生々しく焼いており、中のパイロットの半身だけが残っていた。

 

「うぅっぷっ!?」

 

 焼き焦げたパイロットの半身を見た瞬間、強烈な吐き気に襲われた。

 咄嗟に口元を両手で押さえる。吐き出しそうになるがなんとか抑えることは出来た。

 

「俺……っ……人殺しを……したのか……? あぁっ……ぅっ……!!」

「大丈夫か?!」

 

 目の前の現実と起きてしまった事実に吐き気と共に身体が震える。

 自分は先程まで戦争とは無縁な場所で生活していたのにその数分後には人殺しをしたのだ。

 すると戦闘が終わったのかウィングとエクシアがこちらに接近し、カレヴィが通信を入れてくる。

 

「すまない……。民間人のお前にそんなことをさせてしまって……」

 

 モニター越しに震える翔とコクピット近くを貫かれ動かないデナン・ゾンを見て状況を理解したカレヴィは翔へと謝罪をする。

 戦力になるのなら助かりはするが目の前の明らかに年下の青年はただの民間人であることに変わりなく人殺しをして震えている翔を見てカレヴィの中には罪悪感が湧き出ていた。

 

「……だが、今はいつまでもここにいるわけには行かない。港へ向かおう」

 

 カレヴィの言葉には気遣いも感じられるが、それと同時にどこか厳しさも感じられる。

 実際、この場に長居するのは得策ではなく、すぐに行動したほうがいい。

 

「ちょっと待て。港は真っ先に制圧された筈でしょ?」

 

 すると今度はレーアからも通信が割り込んできて待ったが入る。

 翔からしてみれば訳の分からぬ状況だが、彼が現在の機体のコックピット中に現れるより以前にカレヴィ達は不利な状況下に置かれていたようだ。

 

「あそこにはアークエンジェルがある。アレに乗って脱出する。救命ボートの類は残ってないんでな。避難民も載せる都合上、どうしてもアレが必要なんだ」

「……まったく災難なこと」

 

 カレヴィの説明にこれから更に戦闘が激しくなることを理解したレーアは苦々しくため息をついた。

 

「翔、動けるか」

「……ええ。なんとか」

 

 レーアも一応は納得したのを見て、翔へ再び声をかけるとまだ頭の中はグラグラするが、動く分には問題はない為、返事をする。

 翔自身もここに長居する事は良くないことは理解しているのだ。それを聞いたカレヴィは頷き、通信を終えて三機は港へと向かうのだった……。

 


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