機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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パナマベース―戦場の征服者―

 

「パナマ基地攻略作戦の概要を説明する」

 

 アークエンジェル合流後、フリーデン及びアークエンジェルのクルーを集め、レギンより通達された作戦概要を元にマドックより説明が行われていた。

 

「作戦は今から六時間後の深夜に行われる。戦力の主力であるレギン指令が指揮する大隊が囮として基地へ攻め込む間、我々やそのほかに展開された小隊は海中から基地の中枢に繋がるルートを使って一気に基地を制圧する。海中からのルートはレギン司令直属のスパイの部隊が見つけ、データも送られてきている。これを参考にしてもらう」

「コロニー軍は地球攻略作戦として宇宙で核攻撃の準備を進めているとの情報が入っています。これが事実ならば宇宙へ上がる手段であるマスドライバーは必要不可欠です。みなさんの健闘を期待してます」

 

 マドックが紙面に記された情報を簡潔に纏め説明を果たすと、隣に立っていたルルが一歩前へ進み出て、レギンより知らされたコロニー軍の地球攻略作戦について話すと、その場で初めて知らされた者達はざわつく。

 

「なんであれ今はこのパナマ基地攻略作戦を成功させるのが大きな目標だ。あの基地にはコロニー軍にとっての地上の戦力の大半が集結しているという。激しい戦いにはなるが、この戦いに勝利すればその結果は大きい。作戦開始までの時間が惜しい。各員これにて解散、身体を休めてくれ」

 

 ざわつく者達を制止させるように声を上げたのはフリーデンの艦長だった。

 艦長の言葉はもっともだった。まずは今をなんとかせねば、未来をどうこう出来ないのだ。艦長の言葉でそれぞれ解散して、思い思いの行動に移る。

 

 ・・・

 

「かなり武器積んでますね。重くなるんじゃ……」

「今回はかなり大規模な戦闘だからな。持たせられるMSには武器を可能な限り搭載している。計算的には速度は多少は下がるが、それでもフルバーニアンは高機動機だ。問題はない」

 

 いよいよパナマ基地攻略作戦開始まで残り一時間を切った。

 パイロットスーツに着替え、ブレイカーFBのコクピットに乗り込んだ翔はブレイカーFBの両腕に持つハイパーバズーカ二丁と腰のラックに懸架してあるビームライフルを確認すると近くにいるグレイがパッド型の電子機器でブレイカーFBの最終調整を行いながら答える。

 

「グレイさん、全MS最終調整完了しました! シャイニングも完了してますのでフェズ少尉が帰還したらいつでも出撃できます!」

「了解だ! 状況によっちゃフェズを待ってる暇はないな。パイロットが乗り込んだMSからカタパルトに移動させろ!」

 

 すると其処に部下のメカニックからの報告が入り、グレイはポツリと未だに到着していないフェズのことを考えながら素早く指示を出し、ブレイカーFBの最終調整を済ますと、健闘を祈ると言わんばかりに片手を軽く上げブレイカーFBのコクピットから離れていく。

 

「そろそろ作戦開始だ。お前ら、こんな大規模な作戦は初めてだろうが、グレートキャニオン以上の激戦になるはずだ。気を抜くなよ」

「了解」

「よしグラン達はもう何機かは外に出てるらしい。俺達も行くぞ、あくまで俺達はレギン大隊が引きつけている間に行う奇襲が目的だからな。各自データは確認しておけ」

 

 するとカレヴィからアークエンジェル隊のMS全てに通信が入り注意を促される。

 翔は基地までの海路のデータを改めて出現させながら返事をすれば、外には既にグラン達が出撃しているようだ、カレヴィは再び指示を出し早速、MSを動かし始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────それは唐突に起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・

 

 

「──きゃぁあっ!!?」

「なんだ!?」

 

 

 そろそろ作戦開始時刻だ。

 既に外へ出てMS内で待機していたセレーネ隊は耳を劈くような爆発音と橋頭堡全体を揺るがす振動と衝撃に襲われ、ティアは悲鳴をあげるなか、グランは素早く状況を知ろうと周囲を探る。

 

 ・・・

 

「なにが起きた?!」

「橋頭堡全体で爆発が起きました! どうやら爆弾による同時爆破かと思われます!」

 

 アークエンジェルのブリッジ内でも混乱は広がっていた。

 歴戦の猛者であるマドックが素早く状況確認すると、近くのオペレーターは慌ててはいるものの状況を瞬時に答える。

 

「作戦開始直前を狙ってくるとは……。被害状況を知らせ!」

「カタパルトや一部の武装は使えません! エンジンにも被害で出ていますが、こちらの被害は軽微であり、飛行は可能です!」

 

 作戦の開始時刻を知り、それを狙ったとしか思えないこのタイミングに苦虫を潰したような表情で再び指示を出す。するといくらか平静を取り戻したのかオペレーターは艦の状況を報告する。

 

 ・・・

 

「カタパルトが使えない……!?」

 《ああ、もう敵が来てる! MS隊には物資搬入口から出てもらう。MSではサイズ的に厳しいが、なんとか通り抜けはできる!》

 

 橋頭堡で起きた事件の知らせを聞いた翔はどうすればと焦っている中、グレイはインカムで素早く打開策を出して、メカニック達と共に誘導を行うとMS達は行動を開始する。

 

 ・・・

 

「戦いはもう始まっているわけか……!」

 

 一方、展開していたグラン達は周辺を警戒する。

 メインカメラを動かして、状況を忙しなく確認していると……。

 

「なっ!?」

「誰も動いてはいないのにMS特有の足音が聞こえる……。まさかステルス兵器か!!」

 

 部下のジェガンの一機が爆発したのだ。

 その近くでビームが放たれ、Xは咄嗟にシールドで防ぐ。状況としては各機動いていないはずなのに聞こえるMS特有の足音に勘の良いグランは素早く相手の兵器を察する。

 

 ・・・

 

「──例え気づけたとしてももう遅ぇ」

 

 グランとは別に月を背に上空から降り立つ青い機体があった。

 その名はガンダムアストレイブルーフレームだ。パイロットは先程、橋頭堡にて機器……いや爆弾を取り付けていた顎鬚を蓄えた男性であるシドは不敵な笑みを浮かべて操縦桿を握り締める。

 

「この戦場は俺達が征服した」

 

 シドはカッと目を見開き、口角を釣り上げ操作するとフリーデンの艦首近くへ降り立ち、艦首目掛けてビームサーベルを振るい艦首をバッサリと切り落とす。

 

 ・・・

 

「フリーデンが……ッ!」

 

 モニターに映る艦首を切り落とされたフリーデンを見て、ティアは呆然とする。

 日は兄に比べ短い期間であったとはいえ、それでも過ごしてきた思い出や何よりあそこにいたであろう艦長達との思い出もあり、茫然自失になってしまっているのだ。

 

「クソォオッ!!!!」

 

 そしてそれはティアよりもグランの方が大きい。

 だが今、ここで心を乱してはいけない。そう思い、最後に足音が聞こえた箇所の周辺にビームマシンガンの銃弾をバラまくが、直撃の気配はない。

 

「──当てずっぽうに撃ったって当たりやしないよ!!」

「なに……!?」

 

 気持ちでは理解してもやはり感情的な部分が攻撃に出ていたのだろう。グランに対し咎めるような声が響く。グランは周囲を見渡すと上空には一機の小型の飛行機であるコアランダーがこちらに向かってきていた。

 

「出ろオォオッ! ガンダァアアムゥウッ!!!!!」

 

 コアランダーに乗っているのは、勿論、フェズだ。

 コアランダー内で指を鳴らすとアークエンジェルのカタパルトを自動操縦によって無理やりこじ開けたシャイニングガンダムが飛び出して、コアランダーとドッキングを果たす。

 

「超級覇王……ッ! 電ッ影ッ弾ンゥッ!!!」

 

 ドッキングが成功し、己のファイタースーツを身に包んだフェズは構えを取ると翔との模擬戦で見せた技を繰り出して突撃する。

 

「ハッ……ハハッ…!?」

 

 混乱に乗じて強襲していたシドだが、渦巻くエネルギー体に頭部だけが露出しこちらを向いて突撃するシャイニングに思わず半笑いを浮かべ、超級覇王電影弾の直撃を受けてしまい、地面に吹き飛んでしまう。

 

「一々、モニターなんかに頼るんじゃないよ。心頭滅却、心眼で捉えるんだ」

 

 突然のシャイニングの登場によって相手も動揺していることだろう。

 それはステルス搭載機も同じことのはずだ、フェズは勝気な笑みを浮かべながらアドバイスを送る。

 

「そんな無茶な……」

「いや、俺にも分かるぜ!」

 

 アークエンジェル隊も漸く物資搬入口から出てきていた。

 フェズのアドバイスにそんなこと出来るわけないだろうと翔は表情を引き攣らせるも隣にいたショウマは笑みを浮かべて、Zプラスをその場で変形させ、一気に飛び立つ。

 

「そこっだぁッ!!」

 

 やがて、とある地点に急降下しながら変形する。

 ビームサーベルを引き抜いて、斬りかかるとステルス兵器……ミラージュコロイドを使用していたブリッツガンダムは複合兵装であるトリケロスからビームサーベルを出現させ、受け止めるも、その姿を現した。

 

「クッ!?」

 

 パイロットであるは黒髪赤目の首まで伸びるポニーテールの可愛らしい整った顔立ちの少女……ではなく青年のマヒロ・インスラはバーニアを使用して、Zプラスから距離を取る。

 

「見つけた!」

 

 バーニアを使用したことで熱源も発生する。

 レーダーなどで捉えられば、このままミラージュコロイドを使用し続けてもエネルギーの浪費に繋がると判断した彼はその姿を現す。するとブリッツを見つけたティアはガトリング砲による攻撃を始める。

 

「例えレーダーや視覚的にも姿を消せたとしても生き物には気配ってもんがあるんだよ。そいつも消せないとね!」

 

 シャイニングは起き上がるブルーフレームに向かって拳を付き出すと、シールドで防がれるが、反動は大きく後方へ下がる。

 

「02、そろそろ……」

「ああ、そうだな!」

 

 形成は不利になってしまった。

 マヒロやシドの表情に焦りが見える。マヒロからの通信が入ったシドはブリッツと共にさらに大きく後方へ下がる。

 

「──まさかハイパージャマーやミラージュコロイドが打破されるとはな……。だが、俺達の策はまだある」

 

 更に後方の森林に身を隠していたガンダムアストレイ レッドフレームのパイロットでマヒロの実兄であり、更にはマヒロ、シドを纏めるタクティックス隊の隊長であるティグレ・インスラは無線によるコードを入力して事前にマヒロが取り囲むように設置した五つの無人のミサイルランチャーを一斉に放つ。

 

「ぐぅっ!!?」

「なにっ……!?」

 

 周囲から飛んでくる小型ミサイル群の攻撃により悲鳴を上げる地球郡のパイロット達。

 翔が機体の凄まじい振動に思わず操縦桿を強く握るなか、レーアは振動と爆発に耐えながら周囲を必死に伺う。

 

「02、03、退くぞ。私達の仕事はまだ他にある」

「「了解」」

 

 ティグレからの指示によりシドとマヒロは機体を操作して同時に飛び立ち、レッドフレームと合流すると三機は一気にその場から離れる。

 

 ・・・

 

「無事か……?」

「なんとかな……」

 

 ミサイルによる攻撃がなくなり、カレヴィは全体に通信を入れるとグランが痛む頭を押さえながら答える。

 無事の人間もいるようだが、先ほどのミサイル攻撃により撃沈してしまったMS、そして死んでしまった者達もいるようだ。

 

「兄さん……。フリーデンが……ッ」

「……ああ」

 

 フリーデンの撃沈。それは大きなショックだった。

 悲壮な声を上げるティアにグランもまた歯を食いしばり、感情を押さえつけながら、せめて安らかにと黙祷のため、目を瞑る。

 

「……アークエンジェルの修理はどれだけかかる」

 《……3、4時間もありゃなんとかなる》

 

 カレヴィはグレイに直接通信を入れると、彼は部下達と共に今現在、被害箇所にいるのか通信越しに工具音が鳴り響かせながら答える。

 

「……カレヴィ、俺達フリーデンの隊はアークエンジェルの防衛に当たる。敵に場所は割れてるしな。お前達は当初の予定通り動いてくれ」

「………良いのか?」

「どの道、今の俺達は隊の半分がやられたんだ。反面、お前達は殆ど無事だ」

 

 グランからの通信にカレヴィは現在のセレーネ隊の状況を考えて問いかけるとグランはヘルメットを取って、髪を掻きあげながら困ったように笑って周囲を見る。

 自分の隊は自分の他にティアや2機のジェガンが無事だった。

 

 《ライスター少尉の言う通りだ。機体の性能を考えても今は前に出て道を切り開き、周囲の敵の数を減らして貰った方が良い》

「……了解だ。俺達は当初の予定通り行動する」

「ああ。俺達もアークエンジェルの修理が完了次第、一緒に行動する」

 

 そこにマドックからの通信が入ると、カレヴィはモニターにルートを表示させ、グランの返答に頷きながら操縦桿を握り締める。

 

「話は聞いたな。アークエンジェル隊、俺に続け!」

 

 ベダルを踏み込み飛翔するプロトゼロに続くように4機のガンダムが後を追うようにスラスターを使用して、夜空を飛び立つのであった。




フェズの合流とタクティックス隊との交戦でした。ひとまず彼らとの戦闘は終わり、この後ゲーム通り、パナマ基地へと進攻します。尚、その道中にはエースパイロット達による激戦が待ってますが…。

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