機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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パナマベース─動き出した征服者─

 

「……コロニーの奴等の新型MS?」

「ああ、諜報部が情報をキャッチしてな。上層部から現地に向かいデータの収集及び可能であれば機体の奪取が言い渡された。その基地から一番近い俺達の出番ってわけだ」

 

 2年前、西日が照りつけるフリーデンのブリッジにてグランがフリーデン艦長からある指令を受けていた。

 

 ・・・

 

「っつー訳で俺たちで新型のデータ取りをすることになった」

「うっへー…損な役回りじゃねぇっすか」

「ボヤくなボヤくな……。今からMSでコロニー軍の基地の周辺にまで俺を含めた三名で出撃する。居残り組は副隊長の指示に従え」

 

 艦長から一通りの話を聞き終えたグランは格納庫に自身の隊の部下を集めさせ、これより行われる任務について話すと部下の一人が項垂れる姿を見て苦笑しながら、その部下の肩をポンと叩いて、指示を出す。

 

 ・・・

 

「ガンダムX出るぞ!!」

 

 フリーデンから出撃したグランが駆るガンダムXとグランによって指名されたパイロット二名がそれぞれ狙撃用ライフルとビームマシンガンを装備したジェガンでベースジャバーを使用してガンダムXの後を追う。

 

 ・・・

 

「ッ……」

 

 コロニー軍基地までやって来たグラン達。

 本来ならば、その周辺で様子を探るべきなのだが、燃え盛るコロニー軍の基地を見て、この場までやって来たのだ。グランは燃え盛る炎を見て息を飲んでいた。

 

「隊長、コロニーの奴等が! 攻撃しますか!?」

「いや、待て!!」

 

 すると燃え盛る基地の格納庫から何機かのザグⅡが発進したのを確認して部下が慌ててグランに指示を仰ぐ。

 

 だがグランは部下を制止して、ザグⅡ達の行動を見極める。

 ザグⅡ達は一斉にザクマシンガンのトリガーを引く。

 薬莢を排出させながら弾丸はX達ではなくある方向の爆炎に向かって放たれる。それはまるでX達以上の驚異があるように。

 

「──なっ!?」

 

 だが爆炎の中から極太のビームがザグⅡを一機を除き飲み込まれ爆発を起こす。

 グランはあまりの威力に驚き、目を見開いて、その威力に戦慄する。

 

 すると爆炎から1機のMSが飛び出し一瞬で最後の一機であるザグⅡに接近すると、手に持ったライフルの銃口を突き刺して、そのままトリガーを引くことによって撃破する。

 ザグⅡを撃破した機体……ウィングガンダムプロトゼロはゆっくりとX達に向き直りメインカメラを発光させる。

 

 

 ───こいつはヤバい。

 

 

 そう認識するのに時間はかからなかった。

 ヘルメット内に汗が湧き出る。だがこのまま棒立ちでいるほどグランは愚かではない。仮にも彼はエースと呼ばれているのだ。

 

「──散開!! バズーカをばら撒いてやれ!!」

「りょ、了解!!」

 

 素早く指示を出し、それぞれ散開するX達。

 バズーカを持つジェガンのパイロットはグランの指示を受けて、なぎ払うようにバズーカを打ち続ける。

 迫り来る砲弾を迎撃しようとするプロトゼロだが、Xがビームライフルを撃つことで砲弾は爆発して、硝煙が周囲に広がる中……。

 

「──ウオオオォオッ!!!!」

 

 咆哮を上げながら硝煙を目くらましに使用したXが飛び出して、プロトゼロにタックルを浴びせて組み付く。

 

「チィイッ!!!」

 

 組み合うXとプロトゼロ。

 するとプロトゼロはマシンキャノンを発射し、両肩に被弾したグランは舌打ちをしながらブレストバルカンとショルダーバルカンを同時に放ちながら蹴りを入れる。

 

「撃ちまくれェッ!!!」

 

 落下するプロトゼロを見て、グランは部下達に素早く指示を出すと一斉射撃がプロトゼロを襲い、強固なプロトゼロの装甲に損傷が出る。

 

「なっ!?」

 

 頭部にも損傷を受けるプロトゼロ、カメラ右側には内部メカが露出していた。

 だがすぐさまプロトゼロは反撃をする。ツインバスターライフルをふと体勢を戻して放つ。

 このままではマシンガンを持つジェガンが危ない。無意識な行動でXは動き出し、ジェガンを突き飛ばす。

 

「ぐぅっ!?」

 

 ジェガンは救えたものの、その場にはXだけが残され、ツインバスターライフルのビームの半分は背を見せるXのサテライトキャノンに直撃して、激しい振動にグランは機器に頭を打ち付ける。

 

「ぐああぁぁぁっっっ!!?」

 

 更に背中からプロトゼロの突進を受け、そのまま爆炎の地面に叩きつけられ、遂にはヘルメットのバイザーが割れて、利き目に刺さってしまう。

 

「クッソタレがァッ!! 舐めんじゃねぇえ!!!」

 

 馬乗りのままビームサーベルを引き抜くプロトゼロに気付いたグランは咆哮を上げ、バーニアを噴射して自機ごと近くのコンテナに突っ込んで自身とプロトゼロのパイロットに激しい衝撃を与える。

 

「俺に構うなっ! 撃て!!」

「し、しかしっ!!」

「撃てっつたら撃て! 早くしろォッ!」

 

 グランの指示に戸惑う部下達だが、グランの鬼気迫る声に躊躇いながらでも引き金を引くジェガン達。

 射撃は馬乗り姿勢でバランスを崩しているプロトゼロに直撃する。

 すぐさまプロトゼロの注意がジェガンに向くとグランはバーニアをすべて利用し、プロトゼロの拘束から解放されて、マニピュレーターをプロトゼロに放って吹き飛ばす。

 

 すぐさま大型ビームサーベルを引き抜き、プロトゼロに振るう。サーベルはメインカメラとコクピット周辺の間を焼き斬り、中のパイロットの姿を顕にさせる。

 するとXはショルダーバルカンとブレストバルカンでマシンキャノンを破壊するとマニピュレーターを使い、無理やりコクピット部分を引き剥がし、中を露出させるとプロトゼロに馬乗りになって拘束する。

 

「うおおぉおおっ!!!!」

 

 Xのコクピットから飛び出すグランはアンカー銃を露出されたプロトゼロのコクピット周辺に放ち、そのままコクピットに無理に乗り込む。

 

「うぉおらぁあっ!!!」

 

 コクピットに直接乗り込み、銃を引き抜こうとするプロトゼロのパイロットであるカレヴィの腹部に突き刺すように蹴りを浴びせる。

 

「お前の目的はなんだ!?」

「……俺は俺の敵を倒すんだ。ゼロが……俺に倒すべき敵を教えてくれる」

 

 カレヴィの胸ぐらを掴みながら、その目的を問いただす。

 自分達だけではなく、コロニー軍の仲間まで殺した目の前の男の目的が知りたかった。するとカレヴィはブツブツとうわ言のように答える。

 

「何かに教わんなきゃ自分の敵も分かんないのか?! 俺には分かるぜ……。俺の今の敵は……お前だァアッ!!!」

 

 腹部に強烈な一撃を浴びせるグランにカレヴィは悶絶した表情を浮かべるとグランはすぐさま再び胸ぐらを掴み、そのまま地面に投げ飛ばして気絶させるのだった。

 

「作戦終了だ……。コロニーの連中が来る前に手土産を持って帰るぞ。悪いが……俺とこのパイロットと機体を回収して帰投してくれ」

「りょ……了解!」

 

 フラフラな状態でヘルメットの通信機能で部下に指示を出すと、部下達は鮮血を流し続けるグランの身を案じて、素早く行動に移す。

 

「まったく……。本当に……損な役回りだ」

 

 ふとグランは部下の言葉を思い出しながらプロトゼロのコクピットを背にその場で気絶するのだった。

 

 ・・・

 

(……あの後が大変だったな。利き目は見えなくなるし、思うように操縦できないからもうパイロットは止めた方が良いとか言われるし……。まぁ何とか動けるようにしたからパイロットを続けてるがティアまでパイロットになるとは思わなかったな)

 

 橋頭堡を築きつつある中、物資の近くで腰を下ろすグランはカレヴィとの出会いを振り返って懐かしそうに笑みを漏らしていた。

 大変だった過去も今は良き思い出と言わんばかりだ。だが事実、この騒動のお陰でグランはまた成長することができたのだ。パイロットとしても人間としても。

 

 

 

 

 

「────……あれがガンダムXのパイロットであるグラン・ライスター…か」

「中々の良い男じゃねぇか。まぁ俺ほどじゃないが」

 

 そんなグランを見ていた者がいた。

 帽子を目深く被り、メカニックの作業着を着た二人組の男だった。

 

 グランを見つめ、第一声を発したのはスラリとした高身長とガッチリとした体型の青年と中肉中背であり顎鬚を蓄えた男性が帽子の鍔を撫でながら青年の呟きに飄々と答えながら何やら装置を取り付けている。

 

 《こちら03、周辺準備完了》

「01、了解した、こちらの指示を待て……。早く片付けるぞ」

「はいよ。にしても、お宅の弟は仕事が早いねぇ」

 

 すると青年が身につけているインカムに通信が入る。

 青年は返事をしながら共に行動する男性に声をかけると作業を終えた男性は機材が入ったキャリーケースを引きながら青年の後を追う。

 

 ・・・

 

「よぉ、ベロニカ。部下の回収、ありがとな」

「その代わりにキリキリ働いてもらうよ」

「爺さんに厳しいのぅ」

 

 帰投したカイリは司令部に入室して携帯端末から映し出されるデータをつまらなさそうな表情で見つめるベロニカに海中に取り残された二人の部下を改修してくれた礼に声をかけると彼女の鋭い言葉にカイリはわざとらしく腰の弱い老人のような仕草と口調でおどけてみせる。

 

「……アンタは頼りにしてるんだ。それにアンタの見立て通り、奴らはあの場所に橋頭堡の一つを築いた。レギンの大部隊がどこに作るか知らないが、お陰で今、あの場所にはタクティックス隊が向かった」

「タクティックス隊ってぇと……戦場の征服者って言われた部隊だったな」

「名門出の兄弟とあと一人で構成された部隊だってね。戦場の征服者なんて大層な二つ名を持ってるんだから期待しようじゃないか」

 

 気の許した者にしか見せない柔らかい表情を見せるベロニカにカイリもまた同じような表情を浮かべて大層に蓄えられた顎鬚を撫でる。

 どうやらタクティックス隊と呼ばれる部隊のデータを見ていたベロニカの言葉にカイリは先程まで自分が戦っていた場所の方角を見つめるのだった……。

 




大変長らくお待たせしました。

前回も書きましたが、プロトゼロとXの戦闘を書きましたがアッサリめで終わらせしてしまいました。上手い戦闘が浮かばないもので…。フェズは次回より合流します。

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