機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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今回は戦闘メインです。


グレートキャニオン─ホイール・オブ・フォーチュン─

 

「ちぃっ! どんどん来やがる!!」

 

 アドラステアから発進したダブルタイヤのように並べて接続したツインラッドに搭乗するデナン・ゾンの部隊がビームキャノンを放ちながら襲いかかってくる。

 プロトゼロを駆るカレヴィは舌打ちしながらウィングシールドで防ぎ、マシンキャノンで応戦する。

 

「マシンキャノンを防ぎやがっただと!?」

「──カレヴィ!!」

 

 だがマシンキャノンによる弾丸はツインラッドのタイヤに直撃するが大した損傷にはならなかった。

 驚くカレヴィにレーアが通信をいれたのと同時にGN粒子を放出しながらエクシアがツインラッドに接近していた。

 

「ここは私とショウマで引き受けるから、カレヴィはあの大型機動兵器を! そのツインバスターライフルの威力は期待できるわ!!」

「……俺が直接、あのバイクババアをぶっ倒したいけどZプラスの武装じゃ心許ない……。おっさん、先生のことを頼んだぜ」

「……分かった!」

 

 フェズ同様にショックを受けているショウマの通信に彼の心情を察したカレヴィのプロトゼロはアドラステアに向かっていく。

 

 ・・・

 

「けど、どうする……!? さっきのおっさんを見て分かったけど生半可な武装は使えないぞ!!」

「……切り札ならあるわ」

 

 ツインラッドの攻撃を避け続けるZプラスとエクシア。

 ショウマからの通信にレーアは意を決したように目を細め、機体を操作するとモニターに【TRANS-AM】の文字が浮きあがる。

 

「行くわッ! トランザムッ!!」

 

 するとエクシアが放出するGN粒子が赤くなり、それに伴って機体自身も赤く発光したのだ。

 

「スッゲーな……。ならぁっ!!」

 

 出力を大幅に上昇させたトランザム状態のエクシアが近くのツインラッド目掛けて突き進みGNソードを振るうと、デナン・ゾンごと切断し次の目標へ向かう。

 一騎当千の働きをみせるエクシアに、ショウマも触発されたように行動を起こしWRに変形する。

 

「──もらったぁあっ!!!」

 

 WR状態で空を飛びながら近くのツインラッドに狙いを定め攪乱しながら、機体の側面に向かって突進すると、変形してMS状態から蹴りを浴びせデナン・ゾンを吹き飛ばす。

 

「ソイツ使えるの?」

「どうだかな……。よしっ!!」

 

 Zプラスはツインラッドに搭乗する。

 レーアからの通信にショウマはZプラスとの認証接続をしながら答えると接続は成功したのか操作を始める。

 

「ったく……どいつもコイツも光りやがって……! 大丈夫だろうな、翔……!」

 

 Zプラスが乗ったツインラッドは敵のツインラッドにビーム砲を発射しながら、この戦場内で光り輝くシャイニング、エクシア、ブレイカーFBをそれぞれセンサーに捉え、突然発光したブレイカーFBに、ショウマは翔の身を案じて、心配そうに呟くのだった。

 

 ・・・

 

「更に強くなってい……! そしてこの感じ……ッ!?」

 

 空中で何度も切り結ぶブレイカーFBとストライクノワール。

 以前の戦闘に比べ、ブレイカーの戦い方に雑さがないことをルスランはすぐに見抜いた。

 

「っ……! だがぁっ!!!」

 

 だが覚醒状態のブレイカーFBの肥大化したビームサーベルとの剣戟はストライクノワールの二対のビームブレードを切断してしまう。

 驚くルスランだが素早く両掌からアンカーランチャーを射出して、ブレイカーFBを拘束する。

 

「鹵獲しろとは言われたが無傷ではとは言われていないッ!」

「──ッ!」

 

 ルスランは素早くバックパックに備わっている二つのレールガンを発射すれば、ブレイカーFBに直撃し翔は表情を強張らせる。

 頭部に備わっているバルカンでアンカーランチャーを破壊し、自由となったブレイカーFBはそのままストライクノワールを蹴り飛ばす。

 

(何故だ……!!)

 

 両腰部のビームライフルショーティーを取り出し回転しながら連射するストライクノワール。パイロットのルスランの頭の中には疑問が湧きあがっていた。

 

(何故、今のコイツと戦うとあの人の事が頭の中を過るのだ!?)

 

 どこか悲壮な表情のルスランだが、ブレイカーFBは狙撃用ライフルに持ち替え、狙撃用ライフルの出力では出せないほどの威力と速度を持ったビームが放たれ、咄嗟に回避するも間に合わず右腕に直撃し破壊される。

 

「なんだコイツ……!? この力……本当に人間が作ったMSなのかッ!?」

 

 すると今度は再びビームサーベルに持ち替え、何度もX字にビームサーベルを振るうと斬撃波が放たれ、ルスランは驚愕しつつも何とか避ける。

 

「──上っ!?」

 

 避けることに集中していたルスランはブレイカーFBを見失ってしまう。

 周囲を見渡すルスランだがセンサーが上方を示し、見上げる。するとそこにはブレイカーFBが右足を突き出し全速力でストライクノワールめがけて降下してきていた。

 

「グゥッ……! ヴァルター様の為にも……負けるわけには……ッ!」

「──……ヴァルター。そこまでの価値がある人物なのか?」

 

 まさに飛び蹴りのような攻撃を受けるストライクノワールは、メインカメラが吹き飛ぶ。

 両機は密着したまま、ヴァルターの為にも戦意を燃やすルスランに接触回線で聞こえたのか翔が通信越しに声を発する。

 

「当たり前だッ!! ヴァルター様は戦争を早期に終わらせようとしているお方だ!! あのお方の為ならば私はどんなことだって出来る……!」

「───……そこまで言えるなら……なんで間違った道を行くのを止めなかったの……!? 俺には……ッ……私には……今のあの人は理解出来ない……!」

「ッ!?」

 

 自分の主であるヴァルターのことを己の覚悟を持って叫ぶ。

 だがふと、翔の喋り方も雰囲気も変わりそのままストライクノワールは地面に叩きつけられる。

 

「……」

 

 ブレイカーFBのコクピット内の紫色の瞳の翔は本当に今までの翔なのだろうか?

 モニター越しのストライクノワールを悲しげに見つめた後、ふとその表情は消え去り、いつもの翔が見せる近い表情だが、今の覚醒状態が負担になっているのか焦燥したような表情を見せつつも空に飛び上がり、アドラステアに向かう。

 

「……なんだ……今のは……? まるで……シーナお嬢さん……? ッ……バカな……! そんなことが……ッ!! 私は……惑わされ……私はまた……ヴァルター様の厚意を踏みにじるようなことをしてしまった……!! 私は……私はァアアッ!!!!!」

 

 

 ルスランは先程の翔に想い人のことが頭に過るが、すぐさま頭を振りその考えを否定する。

 後から湧き出るのは自分自身への不甲斐なさから来る自己嫌悪。ルスランは機器に頭を打ち付けながら叫ぶ。すると半壊したストライクノワールが一瞬、ブレイカーFBのように赤く発光するのだった……。

 

 ・・・

 

「はぁっ……はぁっ……。クソッ……!」

 

 アドラステアに向かうブレイカーFBのコクピット内で翔はヘルメットを脱ぎ捨て額の汗を片手で拭う。

 

 思い出すのは先程のストライクノワールとの戦いの最後。

 一瞬、自分の意思が自分とは違う何かになったような感覚だった。そんな妙な感覚を覚えているとふとアドラステアが爆発する。見れば両隣の兵装が破壊されていた。

 

「翔……!? 大丈夫なのか!!?」

「ああ……。それより終わらせよう……!」

 

 合流したブレイカーFBにカレヴィが翔を心配するが、翔はブレイカーFBのビームサーベルを再び抜刀しながら答える。

 

「なら……ッ!!」

 

 すると両隣にいたシャイニングがビームソードを取り出し天へ向ける。

 

「愛と怒りと憎しみのォオッ!!! シャイニングフィンガァアソオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーードォオッ!!!!!!!!!」

 

 するとシャイニングの持つビームソードはブレイカーFBのように肥大化し、半壊したアドラステアへ向ける。するとそれを確認した翔とカレヴィはそれぞれ己の最大の攻撃を繰り出す。

 

「ッ……!!!」

「コイツを食らえェエッ!!!」

「ウオオオオオオォォォォォォォォォォォーーーーーーーーッッ!!!!!!!」

 

 ブレイカーFBの持つビームサーベルを再びX字に斬る事で斬撃波を飛ばし、プロトゼロはツインバスターライフルをシャイニングはシャイニングフィンガーソードを繰り出しアドラステアに直撃させる。

 

「───…まっこんなもんだろうさ」

 

 爆発を始めるアドラステアに疲労を見せるフェズだが、轟音を上げるアドラステアのハッチからベロニカが搭乗した白いブレイカーFBのようなガンダムタイプのMS……GP03と副官のデナン・ゾンが出てくる。

 

「パナマに戦力を集めさせろ。それと……あのお坊ちゃんも拾ってやりな。司令のお気に入りだしねぇ。借りは作っとくもんだ」

「待てッ!!」

 

 ベロニカが副官に指示を出すとデナン・ゾンは素早くストライクノワールを回収して、戦域を離脱する為に飛び去る。フェズは手を伸ばし、追いかけようとするが……。

 

「───おい、翔!! しっかりしろッ!! 翔!?」

 

 カレヴィの焦った声が聞こえ視線を向けると覚醒状態が消え糸が切れた人形のようにダラリとしたブレイカーFBとそれを支えるプロトゼロがいた。

 それを見たフェズは冷静さを幾分か取り戻したのか追撃を止めスーパーモードを解除する。

 この数分後、グレートキャニオン攻略戦は成功との報告が地球軍に届き、グレートキャニオン攻略をしたアークエンジェル隊にはレギン大将から新たにパナマ基地の攻略作戦への組み込みの命が下るのだった…。




グレートキャニオン攻略作戦は一応、終わりです。アドラステアをオマケのように扱ってすいません…。ルスランとの戦闘の方が大事だったので、あんな風になりました。といっても覚醒した状態でのEXactionブッパですが…。アドラステアへのトドメはアービターブレイカーの予定でしたが序盤の覚醒では確かBurst actionは使えないのを思い出し今後の展開を考えてやめることにしました。

そして次回はいつものように日常話を挟みつつパナマ基地攻略作戦編が開始されます。


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