機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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グレートキャニオン─大峡谷を血に染めて─

 

「行くぜ翔! 目にモノ見せてやる作戦だッ!」

「だからその作戦名は却下だと言ったろう!!」

 

 通信越しに聞こえるショウマの声にツッコミを入れながらも、狙撃が開始される。

 だが百式は素早く避け、それどころか距離を詰めて、接近してくる。

 

「──今だッ!!」

 

 腕部ガトリングを足元に放たれた百式は急停止してビームライフルを放つとブレイカーFBは攻撃を緩めず回避して。Zプラスは変形して空に飛び上がる。

 

 空を飛行するWR(ウェイブライダー)は太陽を背に急接近することで目眩ましになり、百式は堪らず後方へ飛び退く。

 

 だが、その間にもブレイカーFBとZプラスの追撃は続く。百式はバーニアを吹かし後方へ下がりながら右手にはビームライフル、左手にはグレイバズーカを構えて、それぞれブレイカーFBとZプラスに対応する。

 

「──後ろはとったぜッ!!」

 

 Zプラスにはグレイバズーカの散弾が向けられた。

 散弾を回避しつつ太腿部のビームカノンを発射して、WRからMS形態に変形すると、百式の背後に降り立つ。

 

「おっとッ!!」

 

 百式はグレイバズーカを捨て、すぐにビームサーベルを引き抜いて、Zプラスに斬りかかるが、軽やかに避けると、マニュピレーターを掴む。

 

「接近戦で負けるわけには行かねぇんだ!!」

 

 膝の裏の部分をZプラスの右足部で蹴り、ガクッと体勢を崩させるとZプラスは姿勢をまるで格闘家のように腰を深く落とし……。

 

「蒼天紅蓮拳ッ!!!」

 

 マニュピレータを錐もみ回転しながら放つアッパーカットを百式に浴びせる。

 機体を揺らさせる百式だが、すぐさまブレイカーFBによって、ビームライフルを撃ち抜かれ爆発させる。

 爆発したビームライフルの爆煙が上がるなか、荘園を突破して近づいたZプラスが強く殴り飛ばす。

 

「うおっ!!?」

 

 地面に殴り飛ばされた百式は地面に捨てたグレイバズーカを拾い、Zプラスに放つとショウマは驚きつつもシールドでガードしブレイカーFBの元へ下がる。

 

 バズーカの散弾は今度はブレイカーFBにも向けられ、ブレイカーFBはブースターを操作して空に舞い上がる。その間に百式は起き上がった

 

「このまま弾切れになるのを待つか?」

「まさかッ! 翔、男の意地を見せてやろう作戦だ! 頼むぜ!」

「だから……!」

 

 バズーカの散弾を浴びせる百式に対しシールドで防ぎ続ける二機。

 翔の問いかけに対しショウマが好戦的な笑みを浮かべて答え、ブレイカーFBの背後に移動すると、プラン名を聞いた翔はシールドを構えながら……。

 

「その作戦名も却下だァアッ!!!」

 

 シールドを構え散弾を防ぎながらブースターを吹して突進するブレイカーFB。

 その背後にはZプラスも同様に突き進む。

 

 至近距離まで距離を縮めたブレイカーFBはビームサーベルを引き抜くと、百式もグレイバズーカを捨てビームサーベルを引き抜き横一文字に振るう。

 だが、ブレイカーFBはその場の地にマニュビレーターを付き、半ば強引に屈むと百式のビームサーベルは虚空を斬った。

 

「オォォラァアッッ!!」

 

 ブレイカーFBの背後に隠れていたZプラスはブレイカーFBが屈んだことによってその姿を現し、ブレイカーFBのバックパックを両方のマニュビレータで突いて、反動を利用すると、とび蹴りを浴びせる。

 

「借りは……ッ」

「返すぜッ!!」

 

 ブレイカーFBは右腕を、Zプラスは左腕をそれぞれ振り上げ、風を切って轟音を立てながら百式に叩きつけると、そのまま近くの岩場まで吹き飛んで動かなくなった。

 

「翔が武術を活かせないのは勿体無いって言うからやってみたけどなんとかなったな。翔が予めサポートに徹してくれるって言ってくれたお陰だぜ」

「まさかMFではなくMSの操作で武術を使えるとはな」

「流石に擬似的だけどな! MSの操作じゃ完璧に出来ないさ」

 

 百式を無力化すると、WRに変形するZプラスの背に乗るブレイカーFBは地上のアストレイ部隊へ狙撃を始めるとショウマが通信をいれる。

 話には聞いていたとはいえ、目の辺りにして驚いたように話す翔にショウマは肩を竦めて、おどける。

 ・・・

 

「おらよっとぉっ!!」

 

 数十分後、敵基地へ進攻したプロトゼロはウィングシールドをエースが乗るエールストライクに突き刺し、すぐさまサマーソルトを浴びせる。

 

「中々やるね、どでかい獲物を持つだけの男じゃなかったわけだ」

「惚れたかい?」

「はっはっ! 最低限、アタシの師匠並みに強くないとねぇっ!」

 

 エールストライクを撃破したカレヴィにフェズが労いをかねて声をかけると、カレヴィはウィンク交じりに軽口で答え、フェズは豪快に笑う。

 

「おーい、先生ー!」

「おっと、来たかい」

 

 すると今度はショウマからの通信が入る。

 フェズはセンサーが反応する場所にシャイニングを振り返らせれば、こちらに向かってくる二機のMS……ブレイカーFBとZプラスを捉える。

 

 ・・・

 

「良かった……! 無事だったのね」

「なんとかね」

 

 漸く合流を果たすと、安堵したように通信を入れるレーアに翔は微笑を浮かべながら答える。

 

「その様子じゃ勝てたんだね」

「へっ! 俺達だって弱くないんだよ!」

「調子に乗るんじゃないよ」

 

 二人の様子から逃げてきたわけではなく、リベンジを果たせたのを察したフェズに得意げで話すショウマだが、すかさzyシャイニングのマニュビレーターでメインカメラを軽く小突れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《──────隊長助けてください!! 隊長ぉおおッ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「!!?」」」」

「今のはウチの隊員だ……! この先の地点から反応がロストした! 行くよッ!!!」

 

 

 突如、通信越しに響いたZプラスの隊員の悲鳴と共に破壊音が響く。

 驚く四人にいち早く、それが自分の隊の者であると気付いたフェズは返答を待たずして、突き進む。

 

 ・・・

 

「これ……は……」

 

 まるで闘技場のような大きく半球体型に窪んだ荒野にたどり着いたブレイカ-FB達はその光景を見て絶句する。その場には何か踏み潰されたように破壊されたZプラスの残骸達があったからだ。

 

 《た……隊長……》

「っ!」

 

 するとそこに隊員の一人からの通信が入りフェズが目を見開く。

 周囲を見渡せば、まだ無事のZプラスが一機だけあった。

 

「なにがあった!? いや、今助けてやる!!」

 《逃げて……くだ……》

 

 フェズがすぐさま駆け寄ろうとするが、Zプラスの隊員はそれよりも逃げるように促してきたのだ。

 

「ッ!? なんだ!!?」

 

 そんなことが出来るわけがない。

 だが突然、地面が大きく揺れ動くと聞きなれない音が耳に届く。

 一体、何なのかカレヴィは周囲を警戒していると……。

 

 

「アーッハッハッハッハッ!!!!!」

 

 

 なんとバイクのような戦艦……アドラステアがこの場に飛び出してきたのだ。

 外部スピーカーから聞こえる甲高い女性の高笑いが聞こえ、アドラステア共々翔達はあまりの出来事に圧倒される。

 

 《アイツにみんな……! 隊長……逃げ──》

 

 Zプラスの隊員は忌々しそうにアドラステアを見つめるも、フェズ達に逃げるように再び促すが、次の瞬間、無残にアドラステアの車輪に潰されてしまった。

 

「なっ……!?」

「っ……!!」

 

 あと少し近くにいれば助けられたかもしれない。

 手を伸ばしたまま固まるシャイニングと衝撃的な光景を目の辺りにして、翔は目を見開く。

 

 

 《良い光景だったろ。態々見せてやるために1機だけ残してやったんだよ! お前らもみんな、ひき肉にしてやるよ!!》

 

 そんな中、アドラステアからオープン回線でブレイカーFB達に届くと、そのまま襲い掛かってくる。

 咄嗟に飛び散るエクシア、プロトゼロ、Zプラスだが、ブレイカーFBとシャイニングはその場に残っていた。

 

 

「──お前が……ッ……! お前がやったのかァアアッッ!!!!!」

 

 

 怒りの咆哮を上げるフェズはそれに呼応するようにシャイニングの機体も黄金に変化し各種の装置も展開して、【スーパーモード】に変化させると飛び上がる。

 目的はただ一つ、アドラステアを破壊する為だ。

 

「翔、なにをやっているの!?」

 

 だがブレイカ-FBはいまだ動かない。

 レーアが急いで通信を入れるが、翔は虚ろな目でブツブツ呟いていた。

 

 

 

 

 

『おいおい、ショウマ。また隊長に言われてんのかよ!』

 

 

 

 ──あの人達が死んだ?

 

 

 

 

『ったくお前もいい加減、隊長離れしろよなぁ』

 

 

 

 ───少し前までにショウマをからかってたのに?

 

 

 

 

『まるで親子みてぇだな』

 

 

 

 

 ────あんなにアッサリ?

 

 

 

 

『君がショウマと行方不明になってたガンダムのパイロットか。コイツが迷惑をかけちまって悪かったな』

 

 

 

 

 

 ─────あんなに簡単に命が散った?

 

 

 

 

 まるでうわ言のように呟く。

 その頭の中にある映像がフィードバックする。

 

 

『兵達が死んでいく姿は見たくないのだ』

 

 

『兵の生存率を上げるためには……』

 

 

『お父さん、無理しないで』

 

 

『だが今もこうしている間にも戦いは起き、兵が死んでいくんだ。戦争をなくさなきゃいけないのだ……。それが出来なくても兵の生存率を上げるためには……』

 

 

 

 

 金髪の女性と壮年の男性の会話。

 ひき潰されたZプラスが鍵となったかのように頭の中で止まることなく映像が流れ、心の中で自分とは違う何かがざわつき、水紋が広がるような感覚を覚える。

 

 

 

 

「うあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 悲鳴に似た咆哮を上がる。

 するとブレイカーFBはそれに呼応するようにフロンティアⅣでエイナルからレーアを助けた際に発動した赤みを帯びた光を解き放つよ、フワリと浮き上がってアドラステアの突進を回避する。

 

「──待っていた…その光を!!」

 

 赤い光を放ちつつその場にフワリと浮き続けるブレイカーFBにその場にいた者達は驚くのも束の間、、オープン回線で声を張り上げながらブレイカーFBに襲い掛かる黒い機体があった。

 2本の大剣を振るうその機体に肥大化したビームサーベルで受け止める。

 

「ヴァルター様の命でお前のデータをいただきッ……あの時の借りを返す!」

 

 漆黒の機体……ストライクノワールに搭乗するルスランは声高らかに叫ぶと翔の心の中で何かがざわつきながらも戦闘を開始するのだった。




ということでグレートキャニオン最終戦のアドラステア戦です。序盤のガンダムブレイカー2でストーリーの中じゃ苦戦したかもしれません。

出来るけどやたらしなかった覚醒。久しぶりに出ました。覚醒を出すタイミングは本当に迷うのでこういう場面じゃないと出せないんですよね。一応、設定的に翔は自分の意思というより感情で覚醒する感じです。

後、ショウマやフェズの拳法は以前にも書きましたが流派東方不敗準拠ですがゲーム内でも次元覇王流が使えるので、流派東方不敗+次元覇王流のような感じの流派にしようということであんな感じになりました。

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