機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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客商売の仕事をしているのですが、土日は軽く死ねる勢いでお客様が来るお陰で帰っても飯食って風呂入ってすぐ寝ちゃう…とまぁこんな生活が続いてます。


グレートキャニオン―作戦前夜―

 

「アウドムラのMS隊隊長のフェズ。階級は少尉だ」

「アークエンジェルの艦長代行を勤めていますルル・ルティエンスです」

「副長代行のマドックだ」

「アークエンジェルのMS隊を纏めるカレヴィだ。同じく少尉だ、よろしく頼む」

 

模擬戦が終わりブレイカーFBをアークエンジェルに運び込ぶと、運んできたシャイニングから降りたフェズは予め格納庫で待機していたルル達と挨拶を交わす。

 

「ああ、ルルル・ティエンス艦長、今回の作戦、よろしく頼むよ」

「あの……ルルです。それと艦長代行です……」

「おっとそいつは悪かったね。じゃあ今回の作戦について話をしようじゃないか」

 

握手をそれぞれと交わすフェズはルルの名前を間違えてしまう。

代行という立場もあるが、自分ではまだ艦長の器ではないと、困ったように訂正するルルにフェズは軽快に笑う。

 

「翔、大丈夫?」

「……なんとかね」

 

今後の話し合いをする為にフェズ達が格納庫から去っていくのを尻目にブレイカーFBのコクピットから出てきた翔に差し入れのドリンクとタオルを持ってきたレーアが声をかけると差し入れを受け取りながら翔は疲労感を滲ませながら答える。

 

「強いよ……。あの隊長さん」

「でしょうね、カレヴィと同じくらいかしら」

 

ドリンクを一口飲みながら先程の模擬戦を思い出す。

同じく模擬戦を見ていたレーアもその戦闘の様子でフェズは熱くはなっただろうが本気ではないことは見抜いていた。

 

「……強くなりたい、今度は勝ちたいから。それに弱いままじゃ死んじゃうし」

「その意気よ。上昇志向は悪いことじゃないわ。カレヴィじゃないけど私だって戦法に関しては貴方よりは知ってるから教えてあげるわ」

「頼むよ」

 

負けたことに関しての悔しさもあるが、今の実力ではどこかで戦死してしまう未来しか見えない。

現にこれまで二機のMAと戦い、Vガンダム小隊では死ぬ可能性すら感じたからだ。そんな向上心を見せる翔にレーアは微笑むと指導役をかって出る。

 

(しかし、このドリンクなんだろ? スポーツドリンクみたいなのにブドウみたいな味もする)

 

レーアの後に着いて行きながら以前にも食文化の違いを感じた翔だが改めて世界が違えば飲み物一つでも存在するものが違うことを感じるのだった。

・・・

 

「まず状況としてアタシ等アウドムラ隊が橋頭堡を築くため先遣隊を務めさせてもらった。橋頭堡は出来ているから後でアークエンジェルを案内するからそこで停めておくれよ」

「分かりました。それで戦力は?」

 

ブリーフィングルームにてモニターにはグレートキャニオンの地形がこと細かく記された立体地図と作戦の内容が纏められた文面、ポインターが映っている。フェズの説明にルルは自軍の戦力を伺う。

 

「うちのアウドムラはアタシのシャイニングガンダムと他6機のZプラスの部隊で構成されている」

「……そんでうちのガンダム二機か」

 

フェズのアウドムラ隊の戦力の説明にカレヴィは自分達の戦力と照らし合わせる。成功するか否か微妙なところだ。

 

「ちょいと待ちな。二機ってどういうことだい? あの坊やとアンタだけってのかい?」

「いや、さっきお前と戦った翔とガンダムエクシアに乗るレーアっていう女パイロットがいるだ。俺の機体は半壊しててな、戦力にはなれない。だから今から新しい機体を受領しに行く。地上作戦開始時にはいられないが合流する予定だ。早くて二、三日ってところだ」

 

そこで待ったをかけられた。

カレヴィの発言と先程の模擬戦での翔の発言が噛み合わない。それを察したカレヴィが自分の機体の状況に合わせてこれからの予定を説明する。

 

「成程ね。つまりは二人のお守りも引き受けるってことだ」

「悪いがそうなる」

「良いさ。レーアって子は会ったことないけど、あの翔ってのは見込みあるよ」

 

フェズの発言に少し申し訳なさそうに笑みを取り繕う。

そんなカレヴィを見て肩を竦めながらもフェズは翔へ期待感を寄せていた。

 

「それではグレートキャニオン攻略作戦の第一手となる哨戒基地を牽制するため、明日の夜、作戦開始します」

 

話が纏まって来たのを見計らいルルが話を纏めると、そこにいた全ての者が頷くのだった。

 

・・・

 

「凄いわ、ロングライフルをもう扱えるようになってる」

「……神経を今まで以上に使うけどね」

 

数時間後、橋頭堡まで移動したアークエンジェルの格納庫に設置されているシミュレーターを使い、翔はレーアからの指導を受けていた。

今、シュミレーター内で使用している武器はロングライフルだ。シミュレートを終え、高スコアをたたき出した翔の成長速度に驚くレーアを横に気疲れからかため息をつく。

 

「グレイ、翔の武装案なんだけど」

「ああ、ロングライフルか? あるぞ。コイツの性格を考えればロングライフルなんかが良いだろう。もっとも適正があればの話だったが心配いらなそうだ」

(ジムスナイパーか何かのライフルか?)

 

レーアが近くで様子を伺っていたグレイに声をかけるとクレーンに吊るされていたロングライフルを見やる。

翔もつられて見れば、そこには無骨なロングライフル……狙撃用ライフルに首を傾げていた。

 

「──おーい!」

 

ロングライフルを見ていた二人に声をかける人物がいた。

聞き覚えのない若々しい声だ。視線を向ければ同い年ぐらいの茶髪の青年がこちらに向かってきていた。

 

「あんた等がアークエンジェル隊のパイロットの二人か?」

「ええ。カレヴィはもう出発してしまったようだし、今ここにいるパイロットは隣にいる翔と私……レーアよ」

「そっか。俺の名前はショウマ。アウドムラ隊のパイロットの一人さ。同い年くらいのパイロットがいるって先生……。フェズっていう人いたろ? その人に聞いて気になったから来てみたんだ」

 

茶髪の青年の問い掛けに翔と自分のそれぞれの名を口にすれば、アウドムラ隊に所属する茶髪の青年……ショウマは先生と慕うフェズから聞き、興味を引かれて訪れたようだ。

 

「でもアンタ等民間人なんだろ? なのに戦ってんのか?」

「……いけないかしら?」

「そうは言ってないさ。気を悪くしたんなら謝るよ、ごめんな」

 

ショウマの何気ない一言が気に障ったのか、不機嫌そうに顔を顰めるレーアを見て失言だと気づき、ショウマはバツが悪そうに両手を合わせて謝罪をする。

 

「別に良いわ。それよりも作戦のことだけど……」

「明日の夜からだろ? 詳しくは二時間後に作戦についての説明があるらしいぜ。兎に角、今回の作戦よろしく頼むな」

 

そこまで怒ってはいなかったのか表情を和らげたレーアは作戦について伺うと、ショウマも詳しくはないのか首を横に降りながら、目的も達成し、満足そうにその場を後にするのであった。

 

「結構若い人だったけど……」

「……どこもそうよ。戦争なんてあるせいで戦場になって人が死ぬ。そして新しい兵士がまた出てくる。その繰り返し、変わることなんて何もないわ。兵士の生存率を高められるモノ、なんてあれば良いんだけれど」

ショウマは自身とあまり年が変わらないだろう。

その事について触れると複雑さとどこか怒りの感情を見せながら吐き捨てるように答えられた。

 

(……ッ……! なんだ今、胸がズキって……?)

 

そんなレーアの表情と言葉に胸が一瞬、チクリと痛んだ。

まるで心の奥底にいた何かが反応したかのように。

 

「さっ、シミュレーターの続きをしましょう。今度はシュミレーター内で私と模擬戦よ。シャイニングのように接近されないようにしないといけないわ」

「……お手柔らかに」

 

どこか不機嫌な部分もあるが翔に原因があるわけではなく、すぐに穏やかな表情で声をかけるレーアに翔はなんだったのだろう、と不可解そうにしながらもシュミレーターによる訓練に励むのだった……。

 

・・・

 

一方、コロニー連合軍の司令室にてヴァルターとその背後に立つルスラン。その二人と机の上に表示された立体映像を挟んで緑髪の女性、コロニー連合軍将校ベロニカ少佐がいた。

 

「ほぉ……。ディビニダドを降ろすのか」

「そうだ、だが、いましばらく時間がかかる」

 

だらっと姿勢を崩しながら、ヴァルターより地上攻略作戦についての概要を聞いたベロニカは感心するように声を上げるが、ヴァルターから時間が必要であることを説明される。

とはいえ、今のベロニカの態度は上官を前に決して褒められたものではなく、控えるルスランは不愉快そうに顔を顰めていた。

 

「核攻撃で地上をすり下ろすか……。指令も良い趣味してるじゃないか」

「無礼だぞ!」

 

くつくつと愉快そうに笑いながら、楽しそうに話すベロニカについに耐え切れなくなったのか、ルスランが怒鳴りあげる。

 

「指令は……戦争を早期に終わらせるために……ッ!」

「あー……理由はいいんだよ、アタシが面白ければそれで。地上にいる奴らを宇宙へ上げなければいいのだろう?」

 

元々、ベロニカ自体を好んでいなかったのとヴァルターを侮辱するような発言にルスランの怒りを買ったベロニカだが、どこ吹く風か、気にせずにヴァルターへ視線を向ける。

 

「そうだ、期待している。だが今回のグレートキャニオンだが……ルスランにも同行してもらおうと思う」

「はぁ?」

「なっ!?」

 

ヴァルターからの突然の命令に互いに気が合わない二人は露骨に不快そうに反応をする。

 

「ディビニダドの調整にはまだ時間がかかる。その間、ルスランにはあのガンダムとの戦闘記録を録ってもらいたくてな。場合によっては鹵獲して欲しい」

「GN粒子ではなく変な光を放つガンダムのことか? 忠犬エイナルが無様に負けたそうじゃないか。奴は確か今、別任務で地球へ降りてるんだって?」

 

ヴァルターはどうにもグレートキャニオンに降りたというアークエンジェルに身を置くガンダムブレイカーが気になるらしい。

ガンダムブレイカーについての話は聞いているのかベロニカはエイナルが気に食わないのもあってか馬鹿にしたように話す。

 

「地球軍に寝返ったパイロットと一緒に渡ったゼロシステム搭載型の奪還、もしくは破壊にな。それとルスランには新型を用意した。活用して欲しい」

「GAT-X105E……ストライクノワール…ですか」

 

ルスランの持つ端末にデータを送信される。

データを確認したルスランはその漆黒のガンダムの名を呟く。

 

「ったく……どうでも良いがアタシの邪魔はしないでおくれよ」

「当たり前だ! 前の屈辱は晴らしてみせる!」

 

デンドロビウムの失態は耳に入っているのだろう。

ベロニカが嫌味のようにルスランに声をかけると、ルスランは反発しながらもベロニカとその場を後にする。

 

(例の光……。偶然なのか? フォン・ブラウンの時は発動しなかったようだが……。シーナ、私はお前の影をあのガンダムに重ねているのかも知れんな)

 

一人、残ったヴァルターは物思いに耽る。

もう一度、あの光がなんであるのかを確かめたかったからだ。

その脳裏に思い出すのはかつての愛娘。ヴァルターは自嘲気味に笑みを漏らすのだった……。




ショウマ君登場です、ガンダムブレイカー2では一番好きなキャラですかね。彼関連のイベントや台詞、成長、彼だけグラフィックが二つも用意されたり、ガンダムブレイカー2のラスボスなどを考えて、アレこれショウマが主人公でも良くね、と考えたりしたことも。

まぁ、ガンダムブレイカーの主人公は基本無口で何も言わないキャラだからこそ感情移入出来るという意見もありますが。

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