「出てこいですぅ!正々堂々と翠星石と戦うですぅ!」
一方、翠星石は相変わらず俺たちの捜索に必死になっていた。
実際探している方向は俺たちが隠れている場所とは反対方向。
鬼は完全に混乱していた。
今にもマグマが吹き出そうな表情で、蔓を使い手当たり次第に水晶を破壊していく。
彼女が焦っているのは誰が見ても明らかだ。
焦った的は、
焦りは迂闊な行動を生み、隙を増やすからだ。
しかし当事者である翠星石からしたらそんなことはどうでもいい。
彼女には圧倒的な力がある。向かってくる者は、その力でねじ伏せれば良いだけだ。
それに、
よって、見つけ次第パワーで捻じ伏せてくるであろうことは容易に想像できた。
「・・・・・・雪華綺晶、聞こえるか」
『良好ですわ』
そんな翠星石の後方40メートルから、俺は水晶に身を隠してその姿を伺っていた。
俺が話しかけているのは、現在別行動中の雪華綺晶。
どうやら、彼女のような
便利なもんだ。
「今翠星石の背後を取っている。相変わらずやりたい放題だな」
気付かれないように声を潜めながら会話する。
『お気を付けて、マスター。お姉様に見つかればただではすみませんわ』
「身に染みてるよ。そっちも用意しておいてくれ、アウト」
彼女との通信を終了する。
雪華綺晶の言う通り、翠星石に見つかれば
それこそミンチにされてしまうだろう。
武器は軍用の斧だけで、空中にいる翠星石には届かない。
投げれば運よく当たるかもしれないが、外したら位置はばれてしまうし、何より武器が無くなる。そんな運任せなことは流石にしたくない。
確信的なチャンスが来るまで攻撃は控える。
さて、翠星石であるが、行動は変わらない。
ただ力に任せながらひたすら前進あるのみ。
だが、その大技故に細かいことに気が付かなくなる。
「あれ、なんですかここ」
怒りに任せて水晶を破壊していたのは良いが、いつの間にか彼女は、一際水晶が密集している地域へと前進していたのだ。
戻ろうにも、同じような水晶の柱が方向感覚を狂わせてしまうため、引き返すことはままならないだろう。
一瞬悩んだが、それでも彼女は前進、破壊を選択した。
「イライラする場所ですぅ!なら全部こわしてやるです!」
スィドリーム!そう叫ぶと再び緑の発光体を操って彼女の前方を薙ぎ払うように進む。
実質、翠星石自身は何もしていない。
ほとんどあの蔓が攻撃行動している。
雪華綺晶によると、あの蔓以外にも攻撃手段はあるとの事だ。
そう、あの手に持っている鈍器・・・・・・もとい庭師の如雨露。
あれを振るってくるらしい。
人形の力はバカにならないらしく、一発でも如雨露の打撃を食らえば弾き飛ばされるそうだ。これも正面から攻撃が出来ない要因の一つである。
ならば、上か後ろから仕掛ければいい。
「ッ!?」
不意に、翠星石が何かの気配を上から感じた。
瞬間的に上を見上げる。
そこには水晶の柱の上から、翠星石に向かって飛びかかってくる俺の姿があった。
ちょっと短めです。