ローゼンメイデン プロジェクト・アリス   作:Ciels

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sequence73 恋なんて……霊夢ったら、バカァ〜(石を投げる)

 

 

 

 さて、今日も今日とて大学へ行けば講義を耐え、愛するドールが待つ我が家へと帰るのだ。一先ずはあのクソロリコンホモ野郎が考えていることは置いておく。こっちの身がもたない。

 近所のスーパーで晩飯の材料を買う。今日の晩飯はなににしようかなぁ、昨日は麺類だったから〜、肉類?

 

「もしもし蒼星石?」

 

 困った時の蒼星石。電話して何が食べたいか聞いてみよう。俺が作れるもんなら何でも作ってあげるよ(ん?)

 

『うーん、マスターは何が食べたいの?』

 

「それが決まらないから電話してんじゃねーか(激怒)」

 

『あ、そうなの。じゃあ僕オムライス食べたいな』

 

 ふむ、オムライスか。まぁいいでしょう!(名車再生)俺が作ると卵かけケチャップご飯になるけどしょうがないね。自分、不器用ですから。

 蒼星石との電話を終え、俺はカゴを片手に売り場をウロつく。カゴの中にはすでにケチャップなんかの材料が入っていて、あとは卵だけ。

 じゃあ卵を……ないです(NYN)というすごくどうでもいい会話が頭の中で流れる。あいつほどじゃないが俺もいよいよ頭わるわるになってきたな。

 

「お、こっちの卵なんかさ、見てみろよ」

 

 一人呟きながら卵パックの値段を見る。中々に安い。鮮度的にも長持ちしそうだから買いだろう。あと一つしかないから早いとこ手をつけなければ。

 そうして俺が卵に手を伸ばすと、

 

「あっ」

 

「あっ」

 

 隣で同じく卵に手を伸ばそうとしていた人と触れ合う。そのせいで肉丸みたいな間抜けな声を出してしまった。俺は少し恥ずかしくなって頭を適当に下げながら謝った。

 

「すいません(小声)」

 

「あ、いえ、こちらこそ」

 

 若い女性の声だった。綺麗な声に俺は顔を上げて顔をチラチラと確認する。

 もし今郁葉といたのならば、俺は間違いなくファッ!?と言っているに違いない。だって目の前にメイド服着た姉ちゃんがいたら誰だってビビるだルルォ!?

 

「あの、卵……買うんです、よね?」

 

 困惑する俺を他所に、メガネのメイドさんは恐る恐る尋ねてくる。そばかすがあるが、顔は可愛らしくて、可愛い(語彙力不足)背もまぁまぁちっこくて愛くるしくて……OCです(ゼウス)

 

「え、はい。あ、買います?」

 

 生まれながらのコミュ障が炸裂した。しかしメイドさんはそんな俺にも優しく対応してみせる。

 

「えっと……欲しいですけど……お兄さんも買いたいんですよね?」

 

「いや大丈夫ですよ、気にしないで下さいさしすせそ」

 

 俺のうちに潜むカーリーが出てしまった。ボロが出ないうちに俺はさっさと退散しようとする。可愛いけど、どうせ俺なんて見向きもされないだろう。こんなに可愛けりゃ彼氏だっているだろうし、そもそもこのメイド服だって彼氏の趣味だ。そうに違いない。クソ、俺も帰ったら蒼星石にメイド服着てもらおう。あ、その前に槐のところでメイド服買わなくちゃ。

 頭の中で思考が二転三転する。

 

「ありがとうございます。では……」

 

 そう言って卵を取るメイドさん。その可愛らしい一つ一つの仕草に俺は魅了された。

 

「か゛わ゛い゛い゛な゛ぁ」

 

「え?」

 

 思わず声が漏れてしまった。しかも最悪なことにキモオタボイスだ。

 

「あ、いやなんでもないですよ……」

 

 顔面真っ赤で訂正する。そんな俺を、メイドさんは笑った。

 

「ふふ、お世辞でもありがとうございます。でもこんな格好してる女なんて変じゃありませんか?」

 

「そんなこと、ないです(NYN)!ない!(お菓子の材料屋さん)」

 

 反射的に彼女の謙遜を否定する。しまった、最近身内以外とろくに話してないからつい興奮してしまった。

 女性は少しぽかんとすると、またひまわりのような笑みを浮かべて口を開いた。

 

「お上手ですね。ふふ。でも貴方みたいなお兄さんにはもっとお似合いの人がいますよ」

 

「ハハァ」

 

 自嘲気味に笑う。すげぇ恥ずかしいこと言った挙句これじゃあフラれたみたいで惨めすぎるだろ。

 疲れ果てる俺を他所に、メイドさんは背を向けて立ち去ろうとする。あぁ、いい女なのは本当なのになぁ。もっとちゃんとメイクとかすればもっと可愛くなるだろうに。

 

「……あの、お兄さん」

 

「えっ(月曜先輩)」

 

 ふと、メイドさんが足を止めた。振り返らずに、顔を隠すように言う。

 

「褒めてもらって、私……嬉しかったです」

 

 心なしか耳が赤いメイドさんは、それだけ言うと足早に去っていく。え、これは……(判定不可)もしかしてちょっとフラグ立った?

 しばらくその場で呆然としていると、俺は卵を買わずに店を出る。なんだか知らないが、その女性のことで頭がいっぱいだったのだ。結局今日はオムライスではなく、ただのケチャップご飯で夕飯は終わった。蒼星石は割と困惑していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 家政婦としての仕事が終わり、私は与えられた部屋へと戻る。風呂を終え、安物のパジャマに着替えるとベッドの上に横になり、天井を見上げた。

 深呼吸する。普段焚かないアロマも焚いてリラックスしようと努める。ふぅ、と一人ため息交じりの呼吸を持って、今日のことを振り返った。

 

 

 

 

 

「〜〜〜〜!!!!!!」

 

 ダメだった。顔を真っ赤にして、私は枕に顔を埋めて悶えた。極力音を立てないようにしていても、恥ずかしさと嬉しさとよく分からない感覚で心が暴走し、身体が暴れる。

 生まれて初めて、可愛いと言われた。ちょっと言い方は変だったけど、年齢=彼氏なしの私の容姿を褒めてくれた男の人はあの人が初めて。ここに雇われてからはメイドとしての教養を身につけたけれど、今まで散々地味だとか痛い人とか言われてきたからすっごくこう、嬉しい(重複)

 

「な、何かしら!?なんか暴れてるのかしら!?」

 

 カバンを開けて就寝中だった金糸雀が慌てる。

 

「み、みっちゃん!?どうしたのかしら!可愛い人形でも見つかったのかしら!?」

 

 心配する金糸雀が尋ねてくるも、私はそれどころじゃなかった。そのうち訳がわからない金糸雀が恐る恐る寄ってくる。私は勢いのままに金糸雀を抱き寄せて暴れた。

 

「ギャー!捕まったかしらー!?」

 

 全力で期待していた反応を見せる金糸雀。私は数分はそうしていただろう、ようやく気持ちも収まってくると、ややぐったりした金糸雀と会話を試みた。

 

「ねぇカナ」

 

「なにかしらみっちゃん……」

 

「恋、しちゃったかも」

 

「そう……ふぁっ!?」

 

 今までの疲労が嘘のように金糸雀が驚く。

 

「どうしたのいきなり!?あの万年人形Loveなみっちゃんが、恋ぃ!?天変地異

がおきるかしら!」

 

「カナが私のことをどう考えてるのかようく分かったわ」

 

 それはさておき、私は最も信頼しているドールに話をする。今日スーパーで会った男の人についてだ。私が見て聞いた全てを話すと、金糸雀はうーんと唸った。

 

「なんか変態っぽいかしら」

 

「えー?まぁちょっと変わってたけど、いい人そうだったよ?」

 

「類は友を呼ぶかしら……」

 

「何か言った?」

 

「ないかしら」

 

 しかしここで金糸雀が一つの疑問を呈してきた。

 

「そんなにときめいたのに、どうしてみっちゃんはその人の連絡先を聞いてこなかったのかしら」

 

「え!?いやだって、そんなの初めてだったし……うぅ〜、でも確かに、聞いておけばよかったかも……どうしようカナ!?」

 

 猫型ロボットに頼るあやとりガンマンのように縋ると、金糸雀は考えた。

 

「少なくとも、あのスーパーを使うってことはこの辺の人間かしら……よし!」

 

 なにかを決めたらしい金糸雀。

 

「張り込みするのかしら!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「郁葉、ハーレムって作ってもいいと思う?」

 

『え、なにそれは』

 

 夜。蒼星石も眠りにつき、俺はオンラインゲームをしながらマイクに向かって喋る。もちろん通話先はこの手に詳しい郁葉だ。

 他のプレイヤーが死体撃ちしたり屈伸運動したりとクソほどモラルもない事をしている中、俺は相談した。

 

『いやそれ俺がとやかく言える事じゃないけど……あ、戦車。隆博RPG、俺持ってないや』

 

「俺好きな人できたかも知れへん」

 

『あそう、とにかく撃ってくれない?俺すげえヘイト稼いでさっきから戦車追っかけてきてんだよ』

 

 ゲームをしながらもスーパーで会ったメイドさんが頭に浮かんで集中できない。俺は味方の郁葉にRPGを撃ち込む。

 

『は?(威圧)』

 

 郁葉が操るキャラの死体が吹っ飛んでいく……ああ、俺もあれくらい吹っ切れて行動できたらいいのに。

 

『馬鹿かお前なぁ?死んでるんだよ俺のキャラァ!』

 

「賢太とそういう関係になった時ってさ、雪華綺晶どうだった?」

 

『怖かったよ!お前もうゲームやめろ!電話しろ電話!キチゲェが!』

 

 やたらと興奮している郁葉が怒鳴れば、あいつのアイコンがオフライン表示へと変わった。何怒ってるのか知らないが、あいつはもう少しカルシウムを取った方がいいだろう。

 言われた通り電話に切り替え、ベランダに出てタバコを吸いながら通話する。夜の冬は冷える。とてもじゃないがタバコを吸いながら通話するなんてできないはずだが、今はなんとも思わなかった。

 

『んで?何があったか説明してみろよ』

 

 少しは落ち着いた郁葉がそう言ったので、俺は頭の中を整理しつつ今日の出来事を話してみる。途中から雪華綺晶も参加し出したのか、定期的にスピーカーから話し合う声が聞こえてきた。

 

「どう思う?」

 

 少し神妙な声色でそう尋ねれば、唸る郁葉が何かを言い出そうとした瞬間に雪華綺晶が喋り出した。相変わらずおジャ魔女やってそうな声してるなこの子な。

 

『それはズバリ、恋ですわ』

 

 どこか興奮した様子の雪華綺晶が言う。

 

「やっぱりか……でも俺には蒼星石が」

 

 そうだ。確かにあのメイドさんの事を思うと下半身がビンビンになってくるが、それは蒼星石でも同じだ。アリスになった暁には言葉に出せない変態プレイの数々をしてママになってもらうんだ。

 

『貴方らしくもありません隆博さん。いつもの欲望に忠実な貴方はどこへ行ったのです!?』

 

「え、俺そんな危ない感じかな?」

 

『少なくとも普通じゃねぇよ』

 

 失礼な。ロリコンでショタコンなお前に言われたくないわボケ。

 

『一体誰が恋に制限を設けたのでしょう?少なくとも神やお父様はそんな事しません!そう、恋とは本当に愛があれば自由にすべきなの!』

 

『え?俺の時散々怒ったじゃん』

 

『マスターは黙ってらして!』

 

 郁葉の困惑した声が響いてくる。しかしなるほどな、確かに国で重婚は認められてないし世間体もかなりヤバイが、国や宗派によっては重婚アリだもんな。

 なんだか希望が湧いてきた。だが問題はある。一先ず目の前の目標は、蒼星石にどう伝えるかだ。彼女は優しいが故に自分を追い込むから、きっと気を遣うだろう。それはいけない。

 

『蒼のお姉様にもきっと分かっていただけますわ。しっかりと、貴方の深くて優しい愛を向けてあげて下さいな』

 

 こちらの考えを読んだかのようにそう言う雪華綺晶。この子本当に雪華綺晶か?前の誘拐事件の時は死ぬほど物騒だったぞ。

 

「そうか……そうだな。ありがとう雪華綺晶。俺、なんとかやってみるよ。郁葉、雪華綺晶の人間化頑張れよ」

 

 え、何で知ってるの?と戸惑う郁葉とご武運を、と励ます雪華綺晶。俺は電話を切ると、タバコを吸い直したが寒すぎて草も生えないためにさっさと部屋に戻った。

 

 

 蒼星石が、窓の横にポツンと座っていた。体育座りで俯いて、しょんぼりしているのが目に見えて分かった。同時に聞かれたのだと言うことも理解できた。

 

「聞いてたのか?」

 

「……うん」

 

 俺は腹をくくる。彼女の真正面に正座で座ると、ハイパー猫背を無理やり正した。

 

「マスターは……やっぱり人間がいいんだね」

 

 今にも泣き出しそうな蒼星石に、俺は自分の気持ちをぶつけた。

 

「俺には何もなかった」

 

 そう始めれば、蒼星石は目だけをこちらに向けた。

 

「郁葉のように兄弟仲が良い訳でもなければ……良いのかな?分からんわ、確証が無いわ。まま、ええわ……とにかく俺はただ日常を何となく過ごしてた。本当にやりたい事があるわけでもない。それでも何となく過ごしてたんだよ。好きな人が居なかった訳じゃないけど、そいつらは大抵彼氏がいたり、俺に見向きもしなかったり。そんなこんなで俺は淫夢ばっかり見てたんだ」

 

 自分の人生を振り返る。そうだ、俺はいつも何かしら諦めていた。恋を諦め、苦手な事は挑戦しても諦めて自己嫌悪して。

 

「でもな、蒼星石。俺はお前と会って変わったんだ」

 

「僕と?」

 

「俺は欲張りになった。蒼星石をアリスにしたいと思った。そのためなら他人を殺す事だって何とも思わなくなった。もっともっと、お前を欲しいと思ったんだ。郁葉ともツルみたい、でも負けたくないって。もっと幸せになりたいんだ、俺は」

 

 蒼星石に近寄る。彼女の頭を撫でて髪を指で梳かすと、こちらを不安げな表情で見上げる彼女の頬をさすった。

 

「俺は俺のためにお前を捨てはしない。でも、同時に違う欲望も達成したい。こんな俺が嫌いか?」

 

 彼女はぷくっと頬を膨らませると、

 

「ずるいよ……断れない事知ってるくせに。でもね、隆博くん。僕だってそうなんだ。僕は不器用だけど本当は優しい君が、大好きなんだ」

 

 困ったように笑う蒼星石。

 

「君と一緒にいるときだけ、僕は男装の人形じゃない……女の子でいられる。それが、嬉しいんだよ。んっ……」

 

 俺はたまらずキスした。長く、お互いを感じるキスだった。口を離せば、お互い息を切らして糸を引いている。蒼星石はその糸を舌で絡め取ると、こちらに顔を近づけて俺の口を舐めまわした。

 蕩けた顔の蒼星石は言う。

 

「こんな事するの……君にだけだからね」

 

 もう下半身が限界だった。俺は蒼星石を抱き上げると、ベッドに向かう。

 

「えっ!?早くない!?」

 

 困惑する蒼星石をベッドに下ろすと、俺は彼女の上にのしかかる。そして彼女の口を貪った。

 

「んんぅ……!もう、ほんとに欲張りさんだね?いいよ、ハーレム。僕負けないもん。いっぱいいっぱい愛して愛されて、一番だって分からせてやるんだから、ひゃう!?」

 

「(声にならない声のため表記不可)」

 

 ここでは表現できないのが残念でならない。とにかく凄かった。次の日蒼星石が立てなくなるくらいには、ハッスルした。


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