ローゼンメイデン プロジェクト・アリス   作:Ciels

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とうとうオリジナルドールが登場


第四章 昏睡レ○プ!野獣と化した雪華綺晶
sequence38 新たなドールはおじゃ百合


 

 

休日の昼間、とある人形屋さん。

店長である槐は、この日もいつもと変わらぬように人形やドレスを作り、たまに来るコアな客を相手して過ごしていた。

この店は、いわゆる閑古鳥が鳴いているようなものである。1日に一人客が来れば良い方で、場合によっては来ない週もあるらしい。それでも潰れないのは、彼が今までに貯蓄してきた莫大な財産(一部ローゼンから借用)があるからだろう。

だから別に、人が来ようが来まいが、彼には関係ない。愛娘と遊んで、悠々自適に過ごせればそれでいいのだ。

だからこそ、急に二人も客がやって来た事には驚いた。一人は見知った青年。もう一人は知らないが、メガネをかけた細い男だ。

 

「いらっしゃい、また来たんだね」

 

棚を掃除する手を止め、和かな笑顔を向ける槐。だが、客二人は何やら物々しい雰囲気を向け、店主へと迫って来る。

 

「テメェかぁ、ローゼンの弟子ってのは」

 

メガネの青年が威圧するように言った。明らかに怒っている彼の態度は十分すぎるほど槐を萎縮させたが、それよりもローゼンの弟子というワードが彼の頭を真っ白にさせた。

 

「え?な、なんですかあなたは?ローゼンって、え、なんですか」

 

「テメェこの野郎おい隆博、ひっ捕らえろ!」

 

白いパーカーの青年が叫ぶと、メガネ男子がタイラップのような簡易手錠を懐から取り出して迫って来た。あまりにも唐突な出来事に、槐は後退りして逃げようとするも、パーカーの青年がいつのまにかこちらに拳銃を向けていたために身体が固まった。

そしてメガネ畜生が槐の後ろに回り、壁に彼の身体を押し付けた。

 

「いて、いてて!なんでこんなことを!」

 

「このやろ〜テメェ〜」

 

激昂しながら槐の手を後ろに回し、手錠をかけるメガネ。話は通じていないようだ。

続け様に槐をテーブルへとうつ伏せに押し付けると、今度はパーカーの青年が槐の頭に拳銃を突きつけた。ひぃ、と小さな悲鳴をあげる槐を他所に、パーカーの青年は怒鳴った。

 

「おい薔薇水晶出せ!」

 

「え、なぜそれを」

 

「うるせこの野郎、出せコラ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、人形屋。

先程まで怒鳴り声が響いていた店内は、今では恐ろしいくらいの沈黙が流れていた。まるで取調室のように、俺と店長がテーブルを挟んで向かい合っている。その横では、タバコを吸って立っている隆博が店長を睨んでいる。まるでヤクザ映画のワンシーンみたいだ。薔薇水晶は店長の膝に乗って、こちらをマジマジと眺めている。

 

「どうもすみませんでした」

 

店長が頭を下げて、小さな声で謝る店長。

 

「すみませんって言われてもね、こっちは殺されかけてるんですよ。あんたがちゃんと教育しないで、おたくの娘さん放ったらかしにしてるからこうなるんですよ。分かります?」

 

まるで万引きした子供の代わりに謝る親のようだった。何度もすみませんと平謝りする店長。薔薇水晶も小さくごめんなさい、と頭を下げる。

 

「僕らもね、こんな事はしたくないんですよ。本当はね。でもね、やった事のケジメはつけてもらわんと。分かりますよね?」

 

「け、ケジメですか」

 

恐る恐る聞いてくる店長。俺は頷いて、懐から一枚の紙とペンを取り出した。そしてそれを机の上に上げ、店長に見せる。

そこに書かれていた内容は、今後二度と河原 郁葉含む同盟に対し敵対しないという事と、全面的な協力の取り付けであった。要は、こちらの味方に(便利屋)になれという事だ。どうやら店長は指でも詰められると思っていたらしく、内容を読んで少しホッとしていた。

 

「あんたにとっても悪かねぇだろ、さっさとサインしろや」

 

隆博が急かすと、店長は急いでペンを手にして紙に署名する。

 

「はい、出来ました」

 

紙にはたしかに、店長の名前が。よぅし、これで強力なバックアップができたな。俺はにっこり笑って、

 

「じゃあ、これからよろしくお願いしますね、店長」

 

と、片手を差し出した。店長はブンブン頷いて、その手を取って握る。さて、これで第一段階通過だ。

握手の後、俺は立ち上がって店長の横へと移動した。そして彼と肩を組んでそっと尋ねる。

 

「それで、店長。ちょっと聞きたい事、あるんですけどね」

 

「と、言いますと」

 

「まさか貴方ほどの人形師が、薔薇水晶だけしかお持ちでないはずがないでしょう。まだ、動く人形をお持ちですよね?」

 

そう言うと、店長の心拍数が一気に上がった。脈を計らなくても、肩越しにわかるくらいだ。挙句生唾を飲み始めたくらいだ、こいつまだ人形持ってるな。

 

「どうなんだこの野郎、さっさと吐いちまえ!ブチ殺すぞこの野郎!」

 

世界の北野並に隆博が怒鳴って机を叩く。ビクッと店長と薔薇水晶の身体が震えた。そしてようやく観念したのか、店長は頷いて、

 

「わかりましたよ、見せます」

 

 

 

 

 

 

店長に連れられて全員で裏の工房へとやって来る。表と違って工房は結構散らかっているが、一人の男の子としてこういう場所は結構好きだったりもする。別に何作るわけでもないけど、工房とかって欲しくなるよね。

壁には製作中の人形のパーツが干されていて、なんだかホラーだ。しかしそれ以上に目を引いたのは、一番奥の机に座っている一人の人形だった。

 

「彼女です」

 

店長がその人形を指さす。俺と隆博は感嘆のため息をついた。

純白のドレスに、革のコルセット。そして左肩の銀のプレート。まるで戦う事を意識した装飾だ。スカートは膝下まで伸び、そこから見える茶色のブーツが映える。ドレスの腕部分の装飾は左右非対称で、右はゆるふわフリルでかわいく仕上がっているが、左はシュッと締まっている。そして、手首の部分になにかを装着しているようだった。

 

「アサシンブレードやんけ!」

 

隆博が左手首を指差す。

 

「ちょっと……あのゲームにハマりまして。意識して付けました」

 

どうやら店長の趣向が武装にも現れているようだ。

さて、服装はとにかく、大事な顔はというと。透き通るような色白な肌、真紅を連想させる流れるような金髪。髪はサイドテールに結ってある。かわいい。

 

「名前は?」

 

興味が尽きない俺は店長に尋ねる。

 

「主途蘭です。主人に一途な、白く美しい花。けれども毒があると……」

 

「主途蘭……この子はまだ動かせないんですか?」

 

「いえ、もう動かせますが、その、もったいなくて」

 

「動かさない方がもったいないと思うんですがそれは」

 

見たーい、見たーい、主途蘭が動いてるとこ見たーい、と心底思う。どんな声なんだろう。どんな喋り方なんだろう。性格は。瞳の色は。あぁダメだ、最近人形を見る度に、こんな事を考えてしまう。

 

「まぁ、これも何かの縁ですし……」

 

そう言う店長は懐からゼンマイを取り出す。こういうところはローゼンメイデンと同じなんだなぁ、なんて思いながら、俺は携帯を取り出した。画面にはふくれっ面の雪華綺晶が。きっと、俺が新しいドールにワクワクしているから嫉妬してるんだ。

 

「あらマスター、何か御用で?」

 

「きらきー、念のために近くの鏡を通ってこっちに来てくれ」

 

「はいはい、分かりましたわ。古い型遅れのドールはちゃんと仕事しますわ」

 

「そう怒るなよ、後で可愛がってあげるからさ」

 

そう言うと、雪華綺晶はまだ拗ねた顔で、

 

「……約束ですからね!」

 

と、だけ言って画面から消える。そして、後ろにあった姿見から出現し、俺の足をぎゅっと抱きしめた。やっぱ雪華綺晶が一番かわいい。

 

「蒼星石も見てないでホラ」

 

「はいはい」

 

隆博もいつのまにか蒼星石を召喚し、いちゃつこうとしている。まるで子供のワガママに付き合うかのように隆博の背中にしがみついた。

と、そうこうしている間に店長がネジを巻いたらしい。彼は少し離れて、新たに命を吹き込まれたドールを見守る。

ギギギ、という擬音がよく似合う。少しずつ、まるで雪華綺晶を最初に起こした時のような動きだった。

ゆっくりと頭が上がり、瞼が開く。そこには赤い瞳が、まるで宝石のように嵌め込まれていた。

虚ろな瞳でこちらを見据える主途蘭。

 

「……ほう、まさか最初に見る光景が父上だけでないとはのぅ」

 

まさかののじゃろり口調で話し始める主途蘭。声は、うーん、ゴシックのあの幼女みたいだ。ちょっと低め。

彼女は机から降り、あくびしながら背伸びして身体をほぐす。ちらりと見えるお腹がセクシー、エロイっ!あぁだめ雪華綺晶、太ももつねらないで。

 

「眠っている間にも貴様らの喧騒が聴こえておったわ。まるでヤの付く暴れん坊供のようじゃったぞ」

 

どうやら先程の脅迫まがいのアレが聞かれていたらしい。俺と隆博は顔を見合わせた。

 

「す、主途蘭、僕だ、僕がお父様だよ、分かるね?」

 

店長は興奮しつつ、主途蘭に近寄って確かめる。だが、次の瞬間彼女は店長の脛を思い切り蹴飛ばした。結構な鈍い音がしてうずくまる店長。

 

「ああぁああ痛い痛い、痛いんだよぉ!!!!!!」

 

「蹴りが痛いのは分かっておるわ。娘の前でこんな醜態を晒しおって、何がお父様じゃ。恥ずかしいわ馬鹿者」

 

えぇ……目覚めた瞬間から絶賛反抗期なんですがそれは。俺たちは言葉もかけられないくらいドン引きする。おい隆博、こっちをチラチラ見るな。助けを求めるんじゃねぇ。

だが、この場において一人だけやりたい放題の主途蘭に刃向かうものがいた。薔薇水晶である。お父様が蹴られた挙句罵倒され、心底怒っている彼女は、紫色の水晶の剣を取り出して妹に切っ先を向ける。

 

「お父様への侮辱……許さない……!」

 

お楽しみのところ突然失礼、拙者クーデレ娘大好き侍。クーデレの娘が静かに自分のためにキレるのっていいよね。義によって助太刀いたす!

だが、対する主途蘭は動じずにそれを見据えているだけ。身体も脱力させている。

 

「姉上か。貴様も貴様じゃ、そんなに父上が大切ならばなぜ先程の動乱の際に守ってやらんのだ」

 

「私が……悪かったから。でも、これは違う。あなたは、一方的に、お父様を虐めた」

 

実の娘に虐められる父親。薔薇水晶、それ遠回しに店長のプライド傷つけてるぞ。こら雪華綺晶、揉めろ揉めろ〜なんて小声で言わないの。

 

「ま、待ってくれ!姉妹なんだから仲良く……」

 

「黙らんか。姉上は貴様のために剣を振るおうとしとるんじゃぞ。それを止める気か」

 

ゲシ、と今度は脇腹を蹴りつける主途蘭。うっわ痛そう。ブーツだし。

 

「殺す」

 

とうとうブチギレた薔薇水晶が剣を振りあげる。止めようとしてももう遅い、どうする主途蘭。

 

「はっ」

 

主途蘭が鼻で笑った瞬間だった。シャキン、と彼女の左手首の籠手からブレードが伸びる。うぉすげ、リアルアサシンブレードだ。

主途蘭は振り下ろされる剣を、ブレードで受け流すと、身体を薔薇水晶に密着させて彼女の襟首を掴んだ。そして一気に背負い投げ。ドスン、と薔薇水晶の身体が仰向けに倒れる。

 

「きゃん!」

 

子犬のような声を上げる薔薇水晶。主途蘭はそんな彼女にまたがって首元にブレードを突きつけた。

 

「殺しとは、こうやるんじゃ。覚えとけ」

 

にやりと笑う主途蘭。やべぇよやべぇよ、めっちゃ強いじゃんあの娘。

 

「私が言うのもなんですけど、結構Sっ気ありますね」

 

「きらきーは夜になるとMだけどね」

 

「やんっ、マスターったら」

 

ここぞとばかりに惚気る俺と雪華綺晶。空気を読めと蒼星石が視線で訴えるも無視する。

 

「ほーう、姉上、間近で見れば別嬪さんよのぅ。ふふ、少しばかり悪戯しとうなったわ」

 

「ひっ……」

 

意味深な事を呟く主途蘭。薔薇水晶は恐れた表情で小さく呟いた。一体何が始まるんです?

と、主途蘭はブレードは突きつけたまま、右手で薔薇水晶の胸を鷲掴みにした。え、なにそれは。

 

「あぁっ……!」

 

「ふふ、良い声で鳴くのぅ姉上」

 

主途蘭はそう言うと、薔薇水晶の頬を舐める。お前ホモかよぉ!(歓喜)

 

「え、蒼星石、こういうのってドールズの間だと普通なの?」

 

「なわけないでしょ」

 

あぁ^〜たまりませんわ。

 

「や、やめるんだ主途蘭!僕の薔薇水晶になんてことを!」

 

と、言いつつ店長も鼻血ダラダラで股間を押さえて這いつくばってる。NTR百合ってなんて闇が深いのだ。

 

「くふふ、どうじゃ姉上?実の妹に悪戯される気分は」

 

「く、狂いそう……!(静かなる怒り)」

 

こっちの台詞なんだよなぁ……お、どうしました雪華綺晶。なんで息荒くしてこちらを見上げてるんですか。あ、ちょっと、ここで握ったらダメですって!止まれ!止まれ、ウワァー!

 

 

 

 

「やべぇ、ついていけねぇ」

 

「奇遇だね、僕もさ」

 

地獄絵図と化す店内。唯一、隆博と蒼星石だけがそれを傍観していた。

 


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