ローゼンメイデン プロジェクト・アリス   作:Ciels

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ウェルカムドリンクでございます。


Sequence 02 まきますか、まきませんか

 

 

 

ーーー次に目が覚めた時、既に事故から一週間が経っていた。

 

その間に両親の葬式は親族が終わらせていたようで、そのことを手足や頭に包帯を巻いた弟の礼(れい)が、病室のベッドで動けない俺に伝えに来た。

 

弟は酷く落ち込んでいたものの、怪我は一番軽かったようだ。骨折も無く、打撲や擦り傷だけで済んだのは幸いだと言える。

まだ育ち盛りの中学生だ、骨折なんてしたら友達とスポーツなんかもできなくなるからな。

 

一方、俺はというと、生き残ったのが不思議なくらい重症だったらしい。

ナースに押さえつけられていた右腕はやはり骨折、そして内臓の損傷。

脳にも多少ダメージがあったらしいが、どれも驚くほど問題無いまでに回復したらしい。

 

驚くのも無理は無い、なんてったって骨折はもう治り掛けてるし、内臓と脳はほぼ完治しているらしいからな・・・・・・本当に人間なんですかねぇ、俺。

 

まぁ、そんな事だから俺たち兄弟が退院するのも時間は掛からなかった。

手術してくれた先生には念のため三週間は入院するようにと言われたが、それだと大学の単位を前期から落としかねない。結局、退院は目覚めてから三日後になったのだ。

 

 

そして。

退院から一週間経ち、ようやく気持ちに整理がついた頃合いになった。

 

今、俺と弟の礼は、土曜日という素晴らしい休日を丸一日使って、寂しくなった自宅で身辺整理をしている。

主に、両親の荷物を片付けるためだ。

 

あ、そうだ(唐突)

俺と礼は、社長をしている仲のいい親戚へ引き取られる計画もあったそうだが、俺と礼が親戚に断り、更に俺たちだけで自炊などもできるという理由でおじゃんになった。

 

親戚のおっちゃんは親父と兄弟のように仲が良く、優しくて、豪傑で、たまに盛大に酔って道端で吐いて環境を汚す以外は優れた人なので、断る時は申し訳なかった。

それでも、俺と弟は血の繋がった家族で、帰る場所はこの家しか考えられない。

そう言うとおっちゃんは渋々承諾してくれた。

 

代わりに、生活費と学費は出してくれるそうで、金には困らない。

 

 

 

「兄ちゃーん、こっち終わったよー」

 

寝室から礼が声をかけてくる。

 

「あー、お前休んでていいぞ。あとは俺の部屋の掃除だけだから」

 

「うん」

 

 

ちなみに、身辺整理という名目で自室を片付けてもいる。

そうでもしないと片付けない性分だから仕方ない。それにしても相変わらず汚ねぇ部屋だなぁ……

机の上には趣味のサバイバルゲーム関連のものが散らばっており、棚には無造作に電動ガンやプレートキャリアというベストのようなものが置かれている。

 

 

「とりあえず机から片付けっか。あーつまんね」

 

 

愚痴を言いつつも手は動かす。

もう使わないだろうという物を片っ端からゴミ袋へ突っ込んで行く。

空のBB弾の袋、ドットサイトが入っていた空き箱、空の紙袋・・・・・・空ばっかじゃねぇか俺の部屋ァ!!!!!!

あ痛ぇ、BB弾踏んだ。ふざけんな!!!!!!(迫真)

 

 

心の中でそんな下らないやり取りをしながら掃除していると、ふと机の引き出しが気になった。

そういえば、長いこと引き出しなんて開けてないな。きっと俺の黒歴史が入っているに違いない。

捨てなきゃ(使命感)

 

思い立ったが吉日、俺は机の引き出しを開ける。

 

 

「あーやっぱりあったよ黒歴史。なんだよプロフィールカードって(哲学)」

 

中学生の頃に女子から渡されたわけのわからないカードを見つけ、内容を読まずに丸めて捨てる。

今の中学生や小学生ってこういうの書いてんのかな・・・・・・なんて思いながらゴミでしかないクソダサプロフィールカード君を捨てていると、

 

 

「なんだこれ(素)」

 

 

綺麗な封筒を見つけた。

封はまだ切られておらず、状態も良い。

そもそも、こんなもの買った覚えも無ければ、もらった覚えもなかった。

 

ラブレター?そんなん貰ったことあるわけないっしょ(半ギレ)

 

 

「まぁ、あれだ。開けなくちゃ(使命感)」

 

 

1人でそう言って封筒を開ける。

中には一枚の手紙が入っていた。

 

そこに書かれていた言葉は、

 

まきますか? まきませんか?

 

 

それのみ。

しかも、女の子が書いたような字だ。

よく見てみればこれは印刷じゃない。どうやら、カラフルなボールペンで誰かが書いたようだった。

 

 

「まきますか?まきませんか?そうですねぇ・・・・・・僕はやっぱり、王道を征く、まきますかですね(王者の風格)」

 

そう言って手元にあったサインペンで「まきますか」を囲う。

 

何と無く、本当に何と無く。

どちらかを選ばなくてはならかい気がした。

 

俺は少なくともそう感じたのだ。

 

 

「兄ちゃーん!ちょっといいー?」

 

 

 

はっ、と、俺の意識が戻る。

危ない危ない。事故以来、なんだか集中力が異常に増したような気がする。

 

こんな下らない手紙を読んでいても、その集中力が発揮されてしまうあたり、俺の脳はやはりどこかおかしくなったんじゃないか。

 

俺はとりあえず手紙を机の上に置いて目をこする。

 

 

「今行くぞ〜」

 

下の階のリビングにいる礼へと返事をして、俺は部屋を立ち去ろうとする。

開けっ放しの扉を横に、部屋から出ようとした時、不意に手紙が気になって振り返った。

 

 

「・・・・・・あれ?手紙どこいった?」

 

 

さっき机の上に置いた手紙が無くなっていた。

確かに置いたはずだ。

 

まさか本当に頭おかしくなったんじゃないだろうな。

まぁどうでもいいわ(レ)

こういう事は深く気にしたら負けだって、それ1番言われてるから。

 

「礼〜兄ちゃーん頭おかしくなったぽい〜(夕立)」

 

「馬鹿言ってないで早く来てよ」

 

 

 

弟に馬鹿にされながら俺は部屋を去る。

 

その後ろ姿を、窓ガラスの中から見る者がいるとも知らずに。

 




ちょっとシリアス過ぎるんちゃう?
まま、ええわ(妥協)

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