ローゼンメイデン プロジェクト・アリス   作:Ciels

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皆様ご無沙汰しております
続きが思い付かずに逃げてました……(小声)


第三章
sequence 26 変態覚醒


 

 

 

 

 

 

 悲鳴が聞こえて来た上の階へ急ぐ。

道中敵は見当たらない。どうやら水銀燈の配下にある人形たちは全部出払っているようだ。

 

そりゃあローゼンメイデンが二体も攻めて来たら全勢力を向けてでも進行を阻止するだろう。

加えて、まさかただの人間であるマスターが本命の攻撃役だとは思いもしないはずだ。

いくら水銀燈が残虐で、クッソ汚い会話をする人形を手下に取っていたとしても、それは変わらない。

 

次第に女性の悲鳴が酷くなっていく。

礼とは関係ないだろうが、一体ここで何が行われているんだろう?

仮に俺がそれを助け、女性に感謝されたらどうなる?

もしかしたら、恋に発展して……なんてこともあり得るんじゃないだろうか。

 

 

「ないです」

 

 

「あ、ない」

 

 

心を見透かされたように琉希ちゃんが釘を刺す。

ほんとこの子恐いし酷い……人間ホモ化もするわけですわ。

 

と、まぁそんなクッソくだらない事を考えていたら頂上の部屋の前に着いた。

そのまま扉を蹴り破って突入しようとする琉希ちゃんを制止する。

何事も作戦が大事なのだから。

 

 

「待て。まず俺が突入する」

 

 

「でも戦力的に私の方が強いのは目に見えて……」

 

 

「だからだよ」

 

 

そう、俺の怪我の治りは凄まじい。

それは対翠星石戦で発揮されているのだ。

 

仮に突入と同時に水銀燈から恐ろしいくらい激しい攻撃をされても、俺なら死なない可能性もあるのだ。

むしろ、ローゼンメイデンという美的センスに溢れた可愛い人形を前に死ぬ気はない。

だが、琉希ちゃんに最初にダウンされてはこっちも困ってしまう。彼女は貴重な戦力なのだから。

 

 

「ちょっとやそっとじゃ俺は死なん、俺が最初の攻撃を受け止めるからその隙に君が水銀燈を押さえろ」

 

 

「……いいでしょう、あなたの回復力がどれだけ優れているか、見させてもらいますよ」

 

 

相変わらず可愛げが無いが、それがこの子の魅力でもある。

いつか絶対俺に屈服させてやるんだ(ノンケ)

 

俺はトマホークを構え、扉のドアノブを狙う。

そして勢いよく振るうと、ドアノブを何度もトマホークで打ち付けて破壊した。

破壊している最中、これは軍人がスタングレネード投擲もセットに入れて行う行動であることを思い出したが、もう遅い。

 

ドアノブを壊され鍵もなにもないドアを勢いよく蹴り飛ばすと、俺は部屋の中へ突入する。

 

 

「礼ッ!」

 

 

真っ先に弟の名前が出る辺り、俺は兄としての自覚があるんだろう。

だが、予想していた水銀燈の攻撃は来なかった。

それどころか、何やら愉快な光景が目の前に広がっている。

 

礼が、水銀燈相手に一転攻勢をかましていたのだ。

 

 

「オラッ!人形なら人間様にもっと媚びろ!」

 

 

「だ、誰が……あん!」

 

 

礼が……四つん這いになっている水銀燈の尻を蹴っている。

なんだこれは……たまげたなぁ。

 

突入と同時に勝手にたまげてた俺の後から琉希ちゃんが突入する。

最初こそ水銀燈を討ち取らんと意気込んでいた彼女であったが、まさか目の前で人形と人間のSMプレイが行われているとは思うまい。

彼女は唖然とした様子でその光景を眺めていた。

 

 

「反抗するともっと痛くするぞ」

 

 

「やれるもんなら……いぎぃ!」

 

 

水銀燈の尻を思い切り叩く。

スパンキングとはこの中学生……どこでそんな情報を得たんですかねぇ……

 

あっそうだ(唐突)この前俺の部屋の同人誌が読まれた形跡があった。

確か内容もそういうヤツで、その時は雪華綺晶が勝手に読んだんだと思ってたけど……

そういう、関係だったのか(納得)

 

 

「手を使って叩くと響きが違うだろう、ん?ホラホラホラホラ」

 

 

「んはぁああ!ん、んあああ!」

 

 

この喘ぎ声がセクシー、エロイ!

なんて言ってないでどうにかしてこの場を治めよう。

俺の弟はもっとまともな人間だったはずなんだ、お兄ちゃんみたいになっちゃいかんで。

 

 

「礼くん!礼くん何やってんだ!自宅へ戻ろう!」

 

 

「あ、兄貴!?」

 

 

驚いた礼が叩く手を止める。

いや今更止められても事実が覆る訳じゃないんですけど(正論)

琉希ちゃんはまだ止まっちゃってるし。

 

いきなり叩く手が止まった事に不満を持った水銀燈が困ったような目でこちらを見てくる。

そして、一瞬混乱したのか目を見開いた。

 

 

「え、あ、なによあんた!」

 

 

「こっちの台詞なんだよなぁ……」

 

 

弟に調教される変態人形ってなんだよ(哲学)

しかしどうするか、水銀燈が正気を取り戻した以上交戦は避けられない。

礼を背中の後ろに隠すようにして追いやると、俺はトマホークを構えた。

 

だが、なぜか水銀燈は戦うどころか立てずにいる。

どうやら腰を抜かしてしまったようだった。

お父様、あなたの娘がこんな有様なんですがそれは……

 

 

「まだ終わってねぇぞ変態人形!」

 

 

「ひっ!?」

 

 

怒鳴る中学生を心の底から恐れる黒薔薇のお姉様。

その見た目から想像できない姿になんか俺までそういう気持ちになっちゃう、ヤバいヤバい。

 

 

「落ち着け。おい水銀燈、よくも人の弟を攫ってくれたな」

 

 

そして調教されてくれたな、とは言わない。

ミイラ取りがミイラになってどうすんだ。

 

 

「フン!手段を選ばないのが私のやり方なのよ!」

 

 

この期に及んで強気になる水銀燈。

もう遅いんだよなぁ……お前、一番Mっ気強いって礼に言われてるぞ。

 

しかしこの後どうしようか。

まさかこんなだらしない事になってるとは思ってもみなかったからなぁ……

てっきりそのまま交戦して倒すもんだとばかり思っていたから、こういう状況は対処しきれない。

 

 

「どうすっかこいつ……」

 

 

「ローザミスティカを差し出しなさい」

 

 

と、こちらも正気に戻った琉希ちゃんがカランビットナイフの切っ先を水銀燈に向けていた。

エロイことに耐性のない女の子ほんとかわいい。嫁にしたい(クソノンケ)

 

だがそれに対抗する様に、礼が俺の後ろから飛び出し水銀燈を脇で抱えて言った。

 

 

「待てッ!こいつは俺のだ!」

 

 

「何言ってんだお前」

 

 

兄として当然である。

今まで自分の性癖をぶちまけていた人形に対し俺のだなんて……

でもよく考えたら俺も雪華綺晶相手に色々してしまってるからそれ以上言えないの。

 

そんな若干中立になりつつある俺を他所に、二人は対立を続ける。

 

 

「河原郁葉の弟ですか。その人形を渡しなさい、あなたには関係のない事です」

 

 

「そうよ!誰があんたなんかの所有物に……ひゃっ!」

 

 

水銀燈がいきなり声を上げる。

よく見てみれば、彼女を抱えている礼が、開いている手で水銀燈の胸を思い切り掴んでいる。

 

お兄ちゃんそんな事教えてません(憤怒)

 

 

「礼!ちょっと破廉恥だぞ!」

 

 

「破廉恥なのはお前だ!」

 

 

「ファッ!?」

 

 

まさか弟にそんな事言われるとは思っていなかった。

 

 

「兄弟そろって私の邪魔をするのですか」

 

 

「ちょっと待って!俺協力してたじゃん!」

 

 

急に怒りの矛先が俺にも向く。

この人頭おかしい……(小声)

 

だが、このまま行けば頑固な礼は琉希ちゃんと敵対してしまうだろう。

それだけは避けなければならない。

 

 

「二人とも落ち着けって!礼、お前もそんな誘拐犯庇う必要ないんだぞ!」

 

 

珍しくまともな事をいう俺。

 

 

「黙れボンクラァッ!そもそもテメェが雪華綺晶と契約しなければこんな事にならずに済んだんだぞッ!」

 

 

「テメェ兄貴に向かって調子こいてんじゃねぇぞコラァッ!!!!!!」

 

 

弟に正論を言われて逆切れする兄貴。

我ながらかっこわるいが、まさか弟にこんなこと言われるだなんて……

 

 

「河原郁葉、あなたはやはりあの時消しておくべきだった」

 

 

「君ももうちょっと賢くなることをお勧めします」

 

 

一方で琉希ちゃんには冷静に対処。

怒らせたくはないけど、リードはされたくない。

 

 

まさかの三つどもえ。

男二人、女一人の空間(人形一人)、密室、何も起きないはずもなく……

 

 

 

「そこまでですぅッ!」

 

 

いや、起きなかった。

突然翠星石と雪華綺晶が、俺が破ったドアから侵入してきたのだ。

 

冷静さを欠いていた三人が一堂に驚く。

 

 

「す、翠星石!?」

 

 

「なにやってるですか琉希!キレやすいのはお前の弱点だっていつも言ってるでしょうに!」

 

 

どうやら翠星石相手だとこの子も弱いみたいだな。ははは、ざまーみろ。

 

 

「マスター」

 

 

「雪華綺晶オッスオッス!」

 

 

対して俺は軽快な面持ちで彼女に挨拶するが、なんだか雪華綺晶の顔が怖い。

笑ってるのに笑ってない。夢だけど、夢じゃなかった。

 

 

「どうしてあなたはそうやって人を煽るのですか?私心配です、これから先マスターが碌な人間関係を築けるのか……」

 

 

「申し訳ないが唐突な人生批評はNG(迫真)」

 

 

なんで人形に俺のこの先の人間関係を心配される必要があるんですか(正論)

 

 

ミーディアムが人形と合流し、それぞれ説教を受けている。

その間、礼とその脇でジタバタしている水銀燈は何も言わなかった。

 

ただ、少しそんな感じが続き、変化が起きる。

抱えていた水銀燈を、礼が対面する様に目の前に抱きかかえたのだ。

 

 

「な、なによ急に!?」

 

 

「お前、名前は?」

 

 

俺たちがいざこざに巻き込まれてるのをいいことに一人口説く弟。

 

 

「す、水銀燈よ。ローゼンメイデンの誇り高い……」

 

 

むちゅ。

ローゼンメイデン特有の名乗りをしようとしていた水銀燈に、礼は口づけした。

なんだこのプレイボーイ!?

すると常軌を逸した行動に水銀燈の頭がついていけなかったのか、黙り込む。

その顔は真っ赤である。

 

 

「お前、俺と契約しろ」

 

 

そして、これまた唐突に礼は告げた。

ノンケばっかりじゃないか。

 

 


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