テスターの働きを果しながらも二代ちゃんは上手く立ち回れるのか!!
織斑一夏をチェーンソーでギュイィィィィン!!ってやった後にピットに戻った俺ですが、今現在、織斑先生と相対中です。
「……というわけだ、あのチェーンソーの使用は今後一切禁止とする。いいな」
「いいで御座るよ、ちょうど無理をさせたせいで焼きついて使い物に成らなくなってしまったで御座るゆえ」
俺のあっさりとした答えに織斑先生は一種運動きを止めた後、いつもどおりの堂々とした姿でありながらも何処か慎重に質問をぶつけてきた。
「ちなみに、あのような一歩ミスれば人命にかかわるような物はないだろうな」
「……ああ、なるほど、絶対防御が発動したところでそれが用を成さないレベルの武器についてで御座るな」
IS《鹿角》から一つのデータを読み出してそれを表示してみせる。
「Hammer of Dawn、ドーンハンマーと呼ばれる衛星兵器で御座る。これ自体は出力の小さい弱いもので御座るが、もし生身の人間に当てようものなら一瞬でバラバラに成る程度の出力は持っているようで御座るな」
続いてもう一つ。
「対警備組織規格外六連超振動突撃剣、グラインドブレードと言う名の
両方とも、見せるたびに織斑先生の表情は、変化する。
青ざめているような………不機嫌になっているようなわかりにくい変化ではあるが……
「……本多、これらの使用は認められない。今すぐ没収する……といいたいところだがどうせ無理なのだろうな……」
はい、無理です。
「上が盗難防止でいろいろ仕掛けているだろうから、先生方の安全のためにも没収には従えないで御座るよ」
一定距離離れたり、登録者以外が無理に使おうとすると何らかの機密保持が働いて何かが起こるはず。
たぶんドーンハンマーだと、物騒なほうが降り注ぐかも知れんなぁ
「ならば、厳重に注意して置くんだ、わかったな?」
「無論で御座るよ、それで……セシリア・オルコットとの試合はいつ始めるで御座るか?」
「さっき使って破損した刀の交換はいいのか?」
「かまわぬ、それにセシリア殿はISの国家代表、素人相手の慢心や油断は棄ててかかる」
(いや、油断はしてやってくれ)
「それでは、拙者も準備が出来たということでいつでも良いで御座る」
「……わかった、くれぐれも後遺症を残さないようにやってくれよ……」
「御意……って、拙者もそこまではやらんで御座るよ!!」
そんなこんなで試合開始、同じくらいの高度で相対して、舌戦の開始。
「アレだけ大口を叩いたておきながら負けるのではないかと心配していましたわよ」
「うむ、うっかり遊びすぎて一度ヒヤッとしてしまったで御座るよ」
「……………」
「む?急に黙ってしまったで御座るな。まあ、始める前に一言、言って置くで御座るよ」
蜻蛉切りを取り出して構える。
「代表候補らしいのでちょっと本気でいかせて貰うで御座るよ」
気負わず、気楽に笑顔で言い放つ。
しかし、オルコットはその様子が気に障ったのか
「ッ!!嘗めてますの……!!もういいですわ、お話は此処まで!!さあ、踊りなさい。私とブルーティアーズの奏でる
オルコットのISからビットが飛び出す。
「おお、ファンネルで御座るか?」
「違いますわ!!私のブルーティアーズをあんな物と一緒にしないでくださいますか!?」
「………」
セシリア・オルコット、お前は今の一言で
ビットがそれぞれ違った軌道で飛びまわりながらこっちにレーザーを撃って来る。
だが基本は銃と同じだ、撃った瞬簡に銃口の直線状に居なければ良い。
たとえ四方八方から撃ってこようと、此処は障害物の無いアリーナで、ISのハイパーセンサーは360°が見渡せるために死角からの攻撃が無くて弾幕もはっきり言ってしまって四つのレーザービットに本体の持つレーザー砲のみで薄いとしかいえない。実にイージーモードである。
「ック、ちょろちょろと……逃げ回るのだけは一人前のようですわね!!」
ハッハーそんな事言われ様とどうもおもわんなぁ!!
「ならばそろそろ反撃に出るで御座るよ?」
取り出すのは重力制御式加速砲塔、使用方法はいたって簡単、重力制御を用いて何かを砲弾に加工して投入、内部に複数設置してある制御機構がサポートしてくれるので、弾を打ち出すイメージで砲全体に重力制御を掛ければOK、でもやっぱり無駄が出るから慣れてきたらいろいろ試してみよう!!
要するに弾は現地調達!!
「そのビット、一つ頂くで御座るよ!!」
重力制御、イメージは手を伸ばして飛びまわるビットを捕まえる。
その後、圧縮成型。手元に持ってきて重力レールガンにインストール!!
「視線にて穿つで御座るよ!!」
テンションに任せてあの台詞。
《音声認証完了、射出》
パシュッ……!!
火薬の弾ける音はしない。
砲塔から押し出され、吸い込まれる空気の音。
撃ち出された高質量の弾は吸い込まれるように、音の壁を越えて
◆◇◆◇◆◇◆
「ッ…!!」
打ち落とそうと手に持つ砲を構えようとするが、発射直後を狙われて合わせられない。
ビットはついさっきチャージを終えて飛び立ったばかりで近くにはなく、迎撃は横からしか出来ない。
見慣れたビットだからこそ、大きさが変えられているせいで遠近感がずれる。
「ブルーティアーズ!!」
そこでオルコットが使った手段は、ビットを壁にすることだった。
盗られたビットはエネルギーのチャージが終わったばかりのもの、着弾時にそのエネルギーも解放されると考えると、受けるわけにはいかない。ミサイルでは初速が遅くて、近くでの破壊になって危ない。
ゆえに、一つを盾にする事を選んだ。
ゴッ!!
被弾。しかし止まらない、ビットに半分ほどめり込んだまま弾は推し進めてくる。
「クッ……この!!」
だが一瞬は余裕が出来た、手に持つスターライトmkⅢを向けて引き金を引く。
パシュッ、とレーザーが一体となっていたビットを貫き、中心に穴を開ける。
ただそれだけで弾は動きを止めて、爆発した。
◇◆◇◆◇◆◇
なぜだかわからないが爆発した。
あのビット、内部に一体何を仕込んでいるのだろうか……
エネルギーを電気エネルギーとして蓄えているのならばバッテリー……だが、バッテリーが爆発するとは一体どんなに危険な物を使っているんだと言う話になる。
まあ、此処はISゆえの謎エネルギーだと思っておこう。
俺は爆発したときに発生した煙にまぎれて、蜻蛉切りを手に持ち、ビットの一つに急接近する。
「一つ」
蜻蛉切りを刺し、遠心力で投げ飛ばす。
「結べ、蜻蛉切り」
呟く。ただそれで次の手は終わる。
刃に移った、今投げ飛ばしたビットが二つに割れた。
再び爆発
発生した煙に隠れ、兵装を換装する。片梅、まったく使った事がない物ではあるが、遠距離が欲しいので、牽制のつもりでとりあえず撃ってみよう。
ジジ ジ…ジ…
《ユニット接続、ドライバインストール、専用
視界が変わった。
《シールドエネルギーを消費して射撃物の
そしてさらに視界の隅に
《照準添付、準備完了》
弓にエネルギー製の矢が番えられた、腕を動かして照準を合わせる。
煙幕に隠れているにもかかわらずそこに居る事がわかる。
サーモグラフィーだとしてもおかしい、何を使っているのか後で聞こう。
《 会 》
そろった瞬間にその一文字が視界中央に現れた。
同時に弦が指から滑った。
飛び立った矢は真っ直ぐに残った最後のビットに向かう。
「…いけない、ブルーティアーズ!!」
何か命令を出したのだろう。
てんぱっても口に出すと相手に気が付かれるよ。
ビットは高速で、矢の軌道から外れるが、矢はそれを分かっていたかのように追尾した。
「
いいえ、違います。謎技術です。
レーザーでもないしね。
ビットが迎撃しようとレーザーを打つが、矢はそれを器用に避けて、レーザーを撃つために停止したビットを射抜いた。
「さて、これでレーザービットは全部始末したで御座るな」
片梅はビットに矢が当たった瞬間に蜻蛉切りに持ち替えた。
「行くぞ!!」
ここまで蓄積させた『飛翔』による速度を全力で出して接敵する。
オルコットはスターライトmkⅢをこっちに向けて撃ってくる、レーザー故に発射と着弾は同時、如何にして銃口の先に身を置かないかが鍵となる。
だがまあ、魅せることを意識しているオルコットの動きは解り易くて良い。
実に分かりやすい。
射線が合わないようにゆらりと近付く。
銃口を向けるたびに、まるで見えない棒で押しのけるように射線から外れられるのはあちらからすると、とてもイライラするだろう。
距離がある程度縮まったら、蜻蛉切りの伸縮機構の一本をはずし、スターライトmkⅢの銃口に差し込む。
レーザーは火薬の爆発が無いため、暴発は無い。
だがしかし、レーザーと言う物は、光の波長をそろえて発する物であり、光源と、その機構が銃口から一直線に成っているはずである。
わざわざワンクッション置くような訳の分からない真似はしないだろう。
だから、それを打ち抜くつもりで投げ入れて……
さらに回路やらが収まっていそうな場所を槍で一突き。
「かかりましたわね!!ブルーティアーズは六機在りましてよ!!」
ミサイルが撃ち出された。
「結べ!!蜻蛉切り!!」
反射で割断。
ミサイルと、腰周りについていた二つのビット、脚部が割断された。
「な……なにが……」
―――油断しないとか言っておいて、思いっ切り油断してんじゃねえよ!!俺ぇ!!
奥の手を堂々と披露しちまった、そう後悔しながらも次の行動に移る。
とどめだ。
石突でオルコットの腹に一撃、この近距離で武装は全破壊、近接装備を取り出せばもしかしたらだが、避けられはしないだろう。
「落ちろ!!」
伸縮機構を動かし、蜻蛉切りを伸ばしながら、地面に叩きつけるように機体を動かす。
飛翔を発動し、加速に邪魔な空気抵抗を祓う。
「壱秒当たり、シールドエネルギー50消費で『飛翔』発動」
声には出さない。
発動した瞬間、俺とさらにはオルコットのほうも上へと飛行するための機能まで祓われたのだろう。
鹿角の加速+重力加速度で、俺は落下しながら、伸びる蜻蛉切りを捻じ込む。
墜落までは五秒と掛からなかった。
ビーーーーーー!!
「勝者、本多二代」
織斑千冬の実に、事務的な
まさにハイスピード、試合開始直後の舌戦から決着まで約十分。最初の回避のみの時を除けば、五分近く短縮できるだろう。
しかしこの試合中には不可解な点があった。
どうやったのか、突然割られたミサイルと、ブルーティアーズ二機、および脚部装甲だ。槍は当たってもおらず、そもそも振ったところで間に合わないはずだった。
この事について、クラスメートやら、先生やらに群がられて……普段見せないような爽やかな笑顔で二代が脅しに掛かるのは、そう遠く無い未来の話である。