番外編 第一回 チキチキ!ナイトレイドお料理対決‼︎
「赤コーナーの料理人、アカメッ‼︎」
ボスのアナウンスで他のメンバーがやんややんやと騒ぎ出す。
「続いて、青コーナーの料理人、タツミィィッ‼︎」
タツミはエプロンを締め直し、皆んなの方へ手を振る。
「最後、黄コーナーの料理人、コウタロウッ‼︎」
俺の姿は純白のコック服に包まれていて、襟には黄色の短いタイが巻かれている。
第一回 チキチキ!ナイトレイドお料理対決‼︎こんなバカげた企画を持ち出したのは紛れもない姐さんだ。俺達ナイトレイドの調理メンバーは俺とタツミとアカメ。皆それぞれ得意分野があり、役目があったのだが、『一番料理が上手いヤツ決めようよ』とかどうでもいいことを言い出すから、それにボスも便乗して実際に行っているのだ。普通ならわざと負けて、空いた時間で愛車をまじまじと鑑賞するのだが、優勝者には景品がある。それは、優勝者には好きな異性の下着が進呈されるというもの。参加するしかない。絶対。
俺とタツミは男だから仕方ないが、アカメは好きな異性は居るのだろうか?恋愛には無縁のような雰囲気だし。
アカメの他を見ていると、何故か姐さんがアカメにアイコンタクトを送っていた。瞼を閉じたり開けたりするモールス信号だ。えっと、なになに…………『頼むぞアカメ、コウタロウのパンツが欲しい』ってええええッ⁉︎グルかよ‼︎そんなに欲しいならいつでもあげたのに…。というか、姐さん意外に乙女だな。だが、俺も負けられない。料理人のプライド1割、姐さんのパンツ9割が俺の出場理由。バカにはさせない。これは…男の勝負なのだ‼︎
「お題は自由に一品。それでは早速、いってみようっ‼︎」
なんかボスのキャラが崩壊している気がするが気にしない。気にしたら負けだ。
俺達料理人は、ボスのアナウンスと共に一斉に作業に取り掛かる。一品か……。アカメは絶対にヘヴィーな一品だろうな……。だがタツミが何を作るか分からない。とんだjokerが紛れ込んだもんだ。
「調理をしている間に、審査員を紹介しよう!頭はポンコツだが舌は正確。皆の癒し、シェーレッ‼︎」
「すみません。公平にジャッジできるよう頑張ります」
ボス失礼過ぎだろ…。
「頭は煩悩だらけ、その味覚は如何に⁉︎ラバックッ‼︎」
ラバックの反応がないかと思えば、ラバはうずくまり涙を滝のように流していた。憐れ…ラバ。
「そしてこの私が審査員長だぁっ!!」
結局アンタかよ……。
残りのメンバーは興奮していて、騒いだり酒をがぶ飲みしていたりする。
数十分後には終了のホイッスルが鳴り響いて、俺達は共に手を止めた。俺は3分程前から既に完成している。時間はどうであれ、結局は味だ。今回はとても自信がある。この勝負とパンツ…貰ったな。
「赤コーナーの料理人、よろしくぅっ‼︎」
「私の料理は…これだっ‼︎」
クロッシュを一気に外し、皆に披露する。
「私の料理…カレー天丼だ‼︎」
分かっていたがヘヴィー過ぎる。見てるだけでお腹いっぱいになって来た。
審査員と他のメンバーに配膳し、俺もいざ口に運ぶ。
まずカレールゥ。スパイスが強めに効いていて食欲を刺激する。その下にある天ぷらと混じると、サクサクとした衣を包むカレーが妙に滑らかに感じる。最下層の白米もふっくらと炊かれており、カレーと天ぷらにとって最高のコンディションになっていた。
あれだけヘヴィーと言いつつも、実際美味いからまたタチが悪い。
「青コーナー、頼むぞ‼︎」
「俺の料理はパエリアだ!」
パエリアって…タツミ万能過ぎだろ。そんなにバリエーションが多いなら店でも出したらいいのに。
そんなことを思いつつ、パエリアを口に運ぶ。
「ふ、普通に美味い……。」
アカメのカレー天丼と比べると見劣りするが、それでもカラフルな色付けにされており、味も丁寧に整えられている。なかなかやるな。
「そして最後、黄コーナーの料理人、ぶちかませっ‼︎」
「俺の料理は……、ほうれん草のおひたしだぁっ!!」
アカメ、タツミと続いた俺の料理は2人に比べると大きく見劣りする。しかし、それも計算の内だ。このほうれん草は素材にこだわり、研究も進んでいる。
「う、美味いな…。」
「このほうれん草、コウタロウが育てのか?」
「ほーれす‼︎」
完全に空気が凍った。
あれ?今回はいけると思ったんだけどな………。
俺のギャグはさて置き、2人の料理で穴が開きそうな胃袋を優しく撫で細めるほうれん草は最高だ。ラバの顔も、俺の料理を口に運んだ瞬間美味すぎて白目をむいていた。ホラー過ぎる。
「さぁ、結果が出たぞ‼︎」
俺の料理も食べ終わり、審査の時間も先程終わった。
食器の片付けも終わり水気もない。結果発表か…パンツは一体誰の手に渡るのだろうか。
「第3位、タツミッ‼︎」
おおっと、歓声が上がるなか、タツミはクソっと悔しげに顔を歪める。タツミが3位かよ…。
「普通に美味かったけどよ、もうちょい味がついてても良かったぜ」
悔しがるタツミにラバックは正確に欠点を指摘する。普段おちゃらけたラバがなんでこう、真面目な感じで指摘するのだろうか。一番審査員してるよ。
「第2位と1位は同時に発表する」
つ、遂に!あと少しで俺の手に姐さんのパンツが‼︎
涎が垂れそうになる口元を引き締めて目を閉じる。イメージしろ、姐さんのパンツを。ボンキュッボンのグラマーな体型の姐さん。男勝りの性格で考えるより動くタイプ。その引き締まったお尻を包むパンツは動きやすいTバックなのだろうか。はたまた、その見た目に反してクマさんパンツを愛用していたり……どっちもアリだな。
「第2位、コウタロウ!そして優勝者はアカメだぁぁっ‼︎」
………へ?
ナンデカナ?いかん、正気を保ってられそうにない。こういう時は素数を数えろ!……素数って何だっけ。
「俺はコウタロウの方が美味いって思ったんだけど…」
「私もそう思いましたが……」
ラバックとシェーレは苦虫を潰したような表情だ。どういうことだ?
「私がアカメを推したんだ。審査員長は3人分の投票権を持つからな」
出来レースじゃねぇか‼︎そんな3人分あるなら審査員いらねぇだろ‼︎うわあああああああっ‼︎
「それではさっそく、下着進呈式を行う。誰の下着が欲しい?」
「コウタロウだ」
質問もアレだが、それに即答するアカメもアレである。というか、呼ばれた俺の気持ちになって欲しい。顔は真っ赤になり脇汗も噴き出してくる。
「第一回 チキチキ!ナイトレイドお料理対決‼︎優勝者アカメ。貴殿にコウタロウの下着を進呈する」
本当に俺のパンツだった。
本当に下着を進呈することにドン引きしながらも、もし表彰台に立つのが自分だったらと考えると、悔しさが溢れる。
ボスから受け取った俺のパンツを、アカメは姐さんに手渡し頭をぐしゃぐしゃに撫でられる。
「よくやったアカメ!それでこそ私の親友だ‼︎」
完全に利用されてますやん……。
もう何もやる気が起きない。……待てよ?第一回ということは、二回目も開催されるのでは?キタキタキターッ‼︎俺の時代だ‼︎
ニヤけが止まらない顔にマインが引いていたことに俺は気がつかない。
第二回があるなら、どんな出来レースをも覆せる料理を作るのみ。騒ぐ皆をよそに俺は料理の研究のためにキッチンへと向かうのだった。
後半、自分でも書いてて酷いと思いました……。
本当にすみません。
第一回があるなら二回目もあります!
ということで、本編も、次回の番外編も是非よろしくお願いします‼︎