用事から帰る途中、アニメイトでWHITE ALBUM2のCDを見つけました。
初めて見つけて、嬉しくて即購入。
結果、帰りの交通費がなくなり、救援を呼んだという今日この頃。
『姐さんっ‼︎』
俺は、既にロクゴウと対峙している姐さんの元へ駆けつける。
「遅かったなコウタロウ」
姐さんはロクゴウへの視線をずらさぬまま応える。
俺は姐さんと並び、鞭を構えるロクゴウを見つめる。ロクゴウの左腕は不自然な千切れ方をしており、どうやら俺が腕を蹴飛ばしたうちの一人だということが分かる。
俺達との間合いは10メートル程。
先に動いたのはロクゴウ元将軍だった。
「…ん?届いてないぞ?」
グランドフォームの視力では目視できない程の速さで鞭を振るうが、俺達にはあと少しといったところで、ただ地面を抉るだけだった。
しかし、それがいけなかった。
抉れた地面から排出される砂は、こちらへの追い風に乗り、俺と姐さんだけを覆う。
『姐さん!俺の後ろに‼︎』
「……分かった‼︎」
ただでさえ鞭に着いていけないのに、砂埃の中ではもっと視界が悪くなり、お手上げになる。
胸の装甲に無数の衝撃が走る。
ロクゴウの鞭だ。どうやらあいつは最初からこれを狙っていたらしい。
流石だ。
死体人形とは言え、元将軍であることに変わりはない。しかも帝具持ちではなかったらしい、鞭の技量と実力でのし上がった男は、そう簡単には勝たせてくれなかった。
『…くっ!』
一発一発の威力はさほど高くもないが、それが視認不可能、ましては視界が悪い状態ではダメージも嵩んでいく。
俺は右腰のスイッチを押し込み、ベルトから剣を取り出す。柄を握り締めると、俺の身体は歪み始め、一瞬の閃光と共に紅く染め上がる。
『捉えた‼︎』
この砂埃の中で迫り来る鞭を、俺はフレイムセイバーでその先端を切断する。
ロクゴウは手応えの無さを感じたのか、すかさず鞭を手元に戻した。
辺りは砂埃も薄まり、姐さんでも視認できるようになった。
「よし!お手柄だ!」
姐さんは俺の背後から飛び出し、居合の要領で構える俺の右隣に立つ。
同時に俺達に向けて鞭の猛撃が始まる。
風を切りながら襲いかかる鞭を、ただひたすらに斬る。俺達は近接格闘タイプだ。ロクゴウのように鞭や飛び道具を使う相手とは、頭を使って戦わなければならない。
俺は、鞭を斬り飛ばしながらロクゴウの元へ走り出す。それに続くように姐さんも走り出した。そして、俺達との距離が大分近くなった頃に飛び出し、ロクゴウを思いっきり殴り飛ばす。
「よくやった二人とも!」
ボスは吹っ飛んでいるロクゴウに義手での追撃を浴びせ、地に押さえ込ませる。
「ロクゴウ将軍。元同僚として一刻も早く、貴方を呪縛から解き放ちます」
「ボ、ボス!」
「お前達、この人の鞭を見たか?」
『見ましたよ!とても速かったです』
ボスはロクゴウを押さえ込んだまま語り出す。
「お前達が見たあの速さは、本気ではない」
『……は?』
「このロクゴウ将軍は、隻腕だったろう?いくら利き腕で鞭を振るっていても、左腕がないと相当速度と威力は落ちるものだぞ」
「どいうこと?」
「鞭を振るうには、腕を大きく振る必要があるだろう?当時の将軍は、この右腕を大きく振るい、そして休む暇を与えることなく私を鍛えてくれた」
ボスは懐かしそうで、そして悲しそうに続ける。
「右腕を大きく振ると、体のバランスをとるのが難しいんだ。だからそれを左腕で支える。体幹の均衡守衛役ってとこだな。左腕がない今、体を崩さないよう力をセーブして戦っていたんだ」
「……なるほど。おっさん、凄いんだな」
姐さんがそう言い終える前に、俺は姐さんに向けられた殺気を感知する。
『姐さんっ‼︎』
俺は姐さんの腕を斬り飛ばそうと仕掛けてきたクロメの刃を受け止める。
「……ちぇっ、気づかれちゃった」
クロメは悔しそうに、元居た高台へと戻る。
「……ごめんコウタロウ」
『ここは戦場だから、油断は大敵ですよ‼︎』
姐さんは俺の注意に、分かった、と答え顔を叩く。
「よし!もう油断しない!」
「二人とも、ここは私に任せろ!レオーネはアカメ、コウタロウはタツミの援護に行ってこい‼︎」
「『了解‼︎』」
戦いは、まだ始まったばかりだ。
嫌だぁ……課外なんて行きたくないよぉ……