「確かに気配は消せていたが、明らかにその絵の場所だけ違和感がある。と言うか、普通に足が見えていた」
そういうことか……。なら、計画変更だな。
『なるほど……。でも、貴方はスーさんじゃないですよね?』
「へぇ……気づいてたんだ」
チェルシーはそう言うと変身を解き、飴を咥える。
『スーさんは腰にタオルなんか巻きません…。あの人はふんどしですからね!』
仮面の下でドヤ顔する俺。顔を見らずとも、俺がおちょくってるというとことを理解したチェルシーは心底悔しそうな顔をする。
「くっそぉー!悔しいなぁ……。なかなかやるじゃないコウタロウ」
『やられてばっかりじゃ、俺の性にはあいませんからね』
俺は変身を解く。その際の光でチェルシーは目を眩ませ、一瞬俺から目を離す。
「って、アンタ!何で腰にタオル巻いてんのよ⁉︎最初から入る気だったの⁉︎」
「あ、バレちゃいました?」
そう。ぶっちゃけ俺は最初からタツミやラバックのことなんて信用しちゃいない。あいつらが絵を描いてる時の怪しい笑顔ったらありゃしなかったからな。
「はぁ〜、呆れたわ」
なんかゴミを見るような目で俺を見てくるチェルシー。
「まぁ、いいわ。変装を見破られた私も私だしね…。ほら、入りなさい」
チェルシーは湯に浸かると、俺を手招きする。え?これは夢かな?
「えっ…と、本当に良いんですか?」
「良いって、最初からそれが目的だったんでしょ?早く入りなさいよ。風邪引いても知らないわよ?」
「そ、それじゃあお言葉に甘えて……」
俺はゆっくりと湯に浸かる。足の先から触れる湯はとても心地よく、まさに極楽だ。
というか、チェルシーさんサービスし過ぎでしょ!本当女神ですよ!
「ねぇ、コウタロウ。聞いてくれる……?」
「え、はい、何ですか?」
この女風呂は結構な広さを誇るのに、俺達の距離はそんなに離れていない。と言うより、あと少しで肩と肩が触れ合う距離だ。
「この間ね、私が仕事を終えてアジトに帰ったらさ、チームの皆が全滅してたんだ……」
これは知っている。チェルシーは地方の暗殺チームで、たった一人の生き残りだ。仲間とも上手くいっていただろうに、それを全て失った。その悲しみは俺には到底想像できない。
「ここの連中には、そうなって欲しくないの……」
けど…、と彼女続ける。
「私だって皆と仲良くしたいのに……なかなか上手くできないよ……」
チェルシーの頬を伝って涙が零れ落ちる。
揺れる水面に、その顔は映らない。
「チェルシーさん……」
「……ごめん、忘れて!今のナシね‼︎」
チェルシーは顔を真っ赤にし、大袈裟に笑う。その笑いはどこか悲しげだ。皆の為を思って辛辣に当たっていたが、とうとう限界なんだろう。皆と仲良くしたいのに、死んでほしくない。だから自分が汚れ役になるってか……。チェルシーなりに悩んだ結果出した答えがそれなら仕方ないさ。
「そんな悲しそうな顔を…忘れられるわけないじゃないですか」
でも、俺は男だ。美少女の涙を見過ごす訳にはいかない。
「例え皆がチェルシーさんの事を嫌いになっても、俺だけはチェルシーさんの味方ですから!皆だって本当は気づいてますよ。チェルシーさんの優しさに」
「……コウタロウ」
実際姐さんは気づいていた。何かにつけて悲しそうな顔をするチェルシーを姐さんは見逃さなかった。シェーレだってそうだ。あんな天然なシェーレでも、すぐにチェルシーの本質を見抜いて俺に相談に来たんだ。
「何でそこまでしてくれるの?」
「何でって……。チェルシーさんは皆の為を思ってやってたんでしょ?それに……」
「……それに?」
「俺達、仲間じゃないですか‼︎」
その言葉に、チェルシーは大きく目を見開いた。次第に彼女の顔は赤く染まっていく。
「……コウタロウ」
「ん?何ですか?」
「……変なヤツ」
俺達は笑いあう。そこからはくだらない世間話をした。やがて結構な時間になるため、俺は風呂を出るため立ち上がる。
「……ありがとね、コウタロウ」
俺が風呂を出るときにチェルシーの発したその言葉を、俺は聞き逃さなかった。
チェルシー、堕ちましたね(ゲス顔)
さあ、姐さん、エスデス、チェルシーとヒロインが揃いました!
エスデスはストーリー進行上やむなくですが、ナイトレイドの2人はある共通点があります。
それは、変身です。
そうなると、エスデスは2人に勝ち目はなくなりますかね……。