アギトが蹴る!   作:AGITΩ(仮)

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サブタイ通り長くなりそうなので2つに区切りました。


第35話 覗き 其の壱

 

 

時は進み夜。

俺とタツミとラバックは、適当な切り株に腰掛け火を囲んでいる。パチパチと音を立てて、火の粉が小さく弾け飛ぶのをぼんやり眺めながら、タツミは口を開く。

 

「うーん…ギャフンと言わせる方法かぁ……」

 

俺達は今、マインからの命令でチェルシーをギャフンと言わせる方法を考えていた。マインはいつもチェルシーにからかわれており、只でさえストレスが溜まりまくりなのに、今日のチェルシーの言動で一気にそのストレスが爆発したらしい。それで、このままだと悔しいから俺達になんとかしろとのこと。

 

「帝具でも使って何か……」

 

「…どうしたんだ?」

 

「閃いたぜ!閃いちゃったぜ‼︎」

 

覗きですね、分かります。

 

「どうせ……いや、やっぱり覗きでしょ?」

 

「流石兄弟!そろそろチェルシーの入浴時間だ。タツミが透明化して裏から温泉に行け」

 

「えっ⁉︎俺かよ⁉︎」

 

「透明化できんのはお前だけだろ!」

 

確かにその通りだ。インクルシオの奥の手は透明化。よって覗きにはタツミが最適だ。

しかし、だ。俺だって覗きたい。覗きたくてたまらない。ここは悪いがタツミには代わってもらうしなかないな。

 

「いや、俺が行くよ」

 

「は!?」

 

「正気か兄弟⁉︎お前は透明化できないんだぞ‼︎」

 

「透明化できなくても…俺は覗きたい。だから協力してくれ!俺だけの力じゃ無理だ‼︎」

 

タツミとラバックは目を大きく見開き、口を開けている。

 

「……分かったよ。そこまで言うんだったら、何でも協力してやらぁ」

 

「ありがとうっ‼︎」

 

俺は今猛烈に感動している。ラバック…いや、兄弟。例えそれが仮初めの絆だとしても、俺にとっては最高の絆だ。

 

「なら、頼んだぜ!」

 

「うん!行ってきます‼︎」

 

今日、俺は確かにチェルシーの味方でいようと誓った。だけど、覗きをするんなら……心を鬼にするしかないな‼︎

 

 

 

♢ ♢ ♢ ♢

 

 

「ふぅ…」

 

チェルシーが湯に浸かる音が聞こえた。計画通り俺は今、岩陰に隠れている。

 

『……よし、行くか』

 

既に変身している俺は立ち上がる。俺が今変身しているのはストームフォームだ。

仮面ライダーアギト ストームフォーム。超越精神の青。実際変身すると分かるが、このフォームになるととても心が落ち着く。そのおかげもあってか、気配も普段より格段に消せ、足音も立たないようになる。

 

俺はストームハルバードを前に突き出す。このハルバードには今、ラバックとタツミが急遽描いた辺りの風景の絵が吊るしてある。この絵をクローステールの糸で括り付け、忍者の隠れ身の術の要領でチェルシーに近づくのが俺達の計画だ。

完璧。

そばに置いてあった桶をそっと手に取る。チェルシーに桶を被せるべく、ゆっくりと近づく。途中で、チェルシーが後ろを振り返る。いつもの俺だったらその場の雰囲気に負け、気配を一気に漏らすだろうが今の俺は違う。多少びっくりしたものの、気配は漏れてない。

 

あと数歩というところで、チェルシーは立ち上がる。湯けむりに紛れスーさんに変身している。

 

「そこにいるんだろ?分かるぞ」

 

スーさんの声だ。その声はいつものクールな声と変わらず、俺の方をじっと見つめている。

 

『……何で分かったんです?気配も消したし、足音だって立ててないですよ?』

 

このスーさんはチェルシーだ。原作知識がなかったら俺も思いっきり騙されていただろう。しかし、そんな事より、俺達の完璧な計画があっさり見破られたという事実に俺は受け入れられなかった。

俺はハルバードを投げ捨て膝をつく。

 

「確かに気配は消せていたが、明らかにその絵の場所だけ違和感がある。と言うか、普通に足が見えていた」

 

 

あっ…。

変身したら背が伸びるの考えてなかったわ……。

 

 

 




次話は出来次第すぐに投稿します!

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