サブタイトルで何が起こるか気付かれた方もいるかも…
翌日。
結局同じベッドで眠るはめになり、エスデスの抱き枕とされた俺。普段の戦闘狂も、眠る時は可愛らしい顔をしていた。しかも、おっぱい。俺を正面から抱いていたため俺の顔は丁度エスデスの胸に触れるくらいの距離になっていた。
こんなの寝れるわけないじゃないですか。
「なんかお腹空いたな…」
ちょっと小腹が空いたので、キッチンを借り適当に何か作ろうかとした時に、後ろから声がかかる。
「おや、コウタロウ君」
「あ、ランさん」
昼前だったので適当に挨拶をする。
「これから適当に何か作ろうと思ってるんですけど、ランさんも食べます?」
まぁ、他人が居るのに自分だけ作って食べるのは何かと気まずいからな。
「そういえばコウタロウ君は料理人でしたね。では、なにかさっぱりしたものをお願いします」
さっぱりしたものねぇ。冷奴でも作るか。ここの冷蔵庫にある豆腐はなかなかの素材だ。麻婆豆腐にしても美味そうだな。
冷蔵庫から豆腐を取り出し、皿に置く。その上に生姜やネギなどの薬味を添え、上から醤油を垂らす。簡単だがめちゃくちゃ美味いんだな、これが。
今この部屋には俺とラン、そしてウェイブがいる。ウェイブはソファで足を組み新聞を読んでいた。とりあえずウェイブの分も作っておく。
「はい、冷奴ですよ〜」
お盆に乗せ、3皿の冷奴を運ぶ。
「へぇ、冷奴かぁ。久しぶりだな」
「……ひ、冷奴ですか」
冷奴と聞いてランの顔は険しくなる。ん?豆腐が苦手なのか?
はい、とランとウェイブに渡して、俺は2人の食べっぷりを観察する。俺が作った料理だ。どんな感想を言われるのか気になるから、俺は最後に食べる。
「うん、豆腐も美味いが薬味が清涼感があって美味いぞ‼︎」
「ありがとう‼︎」
よかった。ウェイブは俺の冷奴を大変気に入ったようで、昼食にも出して欲しいとねだった。うんうん。やっぱり美味いって言われると嬉しいな〜。そういえば、さっきからランが一言も発してない。気になりランの方を見る。
「…くそっ!……ああっ!」
豆腐を掴めずにいた。
否、掴めてはいるのだが、口に運ぶまでに箸から崩れ落ちてしまっているのだ。さっきからずっとそれを繰り返していたらしく、冷奴は既にグチャグチャである。
「あーあー、ランさん何してんですか〜。冷奴くらいちゃちゃっと食べて下さいよ〜」
「ちょっと待って下さい!なんで豆腐料理に箸を出すんですか⁉︎普通スプーンでしょ⁉︎」
いや、普通は箸だけど?
もしかしてラン、氷川さんみたいに意外に不器用な人?
「…ランさん、不器用なんですね」
「な、ぶ、不器用⁉︎」
ウェイブの不器用という言葉に過剰に反応するラン。この人メッチャ恥ずかしいだろ。
「ランさん、なら箸で冷奴を食べれるよう特訓しましょう‼︎」
「そうですよ。冷奴をスプーンで食べるランさんなんて見たくないです」
「……分かりました」
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さて、改めて作り直した冷奴をランの前に並べる。特訓のために結構作ったぞ。材料費って、もちろん経費で落ちるよね?
「…それでは」
一口サイズに箸で冷奴を切り、箸で掴む。だが、空中で崩れ落ち、ベチャっと醤油の飛ぶ音が響き渡る。
「……もう一回」
また落ちる。
掴んでは落ちて醤油が弾け飛ぶの繰り返し。エンドレスだ。10皿程並べた冷奴もほとんどがグチャグチャになっていた。
もうここまで来ると才能である。
「………」
とうとう最後の一皿になってしまった。
「ランさん、手の力を抜いてください。ゆっくり自分を信じて」
「……ゆっくり、自分を信じて」
俺のアドバイスを復唱しながら冷奴に手をつける。
ゆっくりと箸を入れ、持ち上げる。ゆっくりと口に運び、いざ口に入れようとする。今までで1番進んでいる。
ベチャッ‼︎
過程はどうあれ結果は同じだった。プルプルと箸を持つ手を震わせるラン。
「ああああああああああっ‼︎光になれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ‼︎」
ランはどこぞの勇者王のように叫びながら皿と箸を床に叩きつける。
「ちょ、ランさんっ‼︎」
「うわあああああああああっ‼︎」
叫び声を上げ、俺達の制止を振り切り扉を突き破ったランは何処かへと走り出して行った。
イェーガーズ、残り7人…。
はい、キャラ崩壊したのはランでした。
実はこの話は最初から考えていて、早くこの話を書きたくてウズウズしてました。
ちなみに、ちゃんとランは復帰します。