雨天で子供は3人も居なかったので自分も写真撮影と握手してきました。(もちろん小さい子優先ね)
凄かったのがマッハでTVを見てるようなとても自然な演技をしていました。
超かっこいい……。
「っで、でけえええええええええええっ‼︎」
叫び声の主はタツミ。
タツミはいつものコートを羽織り竜船を見上げる。完全に田舎者の仕草である。一緒に居たくない…。だが、タツミの言う通りこの船はとてつもなくデカイ。それこそ、学校の校舎を優に越し下手したら高層ビルに並ぶ程の高さ。その高さに先が見えない程の横幅があるのだ。
小便ちびっちゃう。
「砦みたいな船だね」
「ここで偽物を迎え討んだよな」
俺達はあらかじめボスから配布されていた乗船券を見せ、船へと続く階段を昇っていく。
数分ほど経ち船は汽笛を鳴らし水を切っていく。どうやら出発したようだな。辺りは燕尾服や蝶ネクタイのタキシードを着込んだ男性や華やかなドレスを着飾った女性が乗船している。貴族や富裕層といったところか。乗船客達は片手にグラスを持ち他の客と談笑を楽しんでいる。
俺達はデッキに出て護衛対象を観察していた。護るべき爺さんは黒スーツに剣を下げた大柄の男達に囲まれている。
「こりゃ暗殺するのは無理だろ。こっちはハズレだな」
溜め息を吐き出したタツミは急に小さく悲鳴を上げる。まるで誰かに殴られたようだ。
「えっ?えっ?何っ⁉︎」
「決めつけてんじゃねーぞタツミ。俺が透明化なんて奥の手持ってんだ。敵も何して来るか分かんねーだろ?」
「アニキっ!」
未だ何が起こったか理解できていないタツミはようやく気づく。俺達のすぐそばには透明化したアニキがいる。
「それにしてもこの鎧ホント便利ですよね〜」
「おう!コイツで南部異民族との戦い抜いたんだ。俺の相棒みたいなもんだぜ」
透明化しているアニキもといインクルシオの鎧をペチペチと触る俺は側から見たら気色悪いパントマイムをやっているヤツにしか見えないのだろう。
「……でも、どんなに頑張っても結局な」
そこからアニキは自分の昔話を始めた。
内容は原作を読んで知っている。だが本人の口から直に言われると今の帝国について考えさせられる。
アニキは尊敬する上司、リヴァがでっち上げの罪で牢獄に送られ自分にも知らぬ罪を着せられ帝国で働くことが馬鹿らしくなった元軍人だ。これから遭遇するであろう三獣士の1人は、彼の尊敬する上司、リヴァその人だ。だがアニキなら戦える。例え尊敬する人と敵になって再会したとしてもすぐに切り替えれる。
透明化の限界が近づいたアニキは一度鎧を外すついでに船倉を調べに行った。アニキは顔バレするため俺達が目立つ場所を警戒する。
護衛対象が船内に戻ったことから俺達も船内に戻る。俺達はできるだけ自然な感じに対象のすぐ近くでスタンバイしている。視界から外すことはないようにしていたが、どうせ眠らされるため無意味だ。
どこからか上品な笛の音が聞こえてくる。ニャウのスクリームだ。次々と辺りの人々は倒れ始めるが、少し様子がおかしい。笛の音が少し汚いのだ。まるで口内炎にでもなっているかのように、引きにくそうな音だ。
タツミはなんとか笛の音に耐えている。そう言う俺はアニメを繰り返し見ていたため耐性がついている。オマケに来ると分かっていたら警戒できて心に余裕が生まれるからな。俺達はとりあえずデッキへと出る。
「くっ!この笛の音、帝具かっ‼︎」
耳を塞ぐタツミ。笛の音が分からない田舎者って……。
「おっ、まだ頑張ってるヤツがいるじゃねぇか。眠ってたら生かしてやったのによぉ」
デッキへの入り口から巨漢の男、ダイダラが歩いてくる。
「っていうことはテメーが偽物のナイトレイドか⁉︎」
「おおっ!ならお前らが本物さんかい⁉︎こりゃいい。ほらよっ」
ダイダラはタツミに向かって剣を投げた。タツミはそれを受け取り怪訝な目でダイダラを睨む。あれ?俺に剣はくれないの?
「俺はさぁ、戦って経験値を得たいんだよぉ!ほら、かかって来いっ‼︎」
「あっそう。……じゃあいい経験させてやる。地獄巡りだ‼︎」
タツミは剣を抜きダイダラめがけて飛び上がる。
「……変身っ‼︎」
俺は静かに変身する。
心なしかこの2人、俺を完全にシカトしている。
ダイダラの帝具、ベルヴァークの上からの振り下ろしをかろうじて避けるタツミ。
「ほぉう、音にやられた体でよく避けたじゃねぇか。だったらこれはどうd……ってお前、この間のっ‼︎」
『……』
俺は何も発しない。タツミやみんなの前だと変身したら翔一のようにキャラを変えるのだが、この間はみんなが居ないことをいいことに大分はっちゃけたからな……。
「何でもいいっ!まとめてくらいやがれっ‼︎」
ダイダラはベルヴァークを分離させ、俺達に投擲する。片方の俺は叩き落としダイダラの手元に戻さないようにする。しかし、タツミは避けて戻って来るベルヴァークをダイダラに当てさせようと突っ込んで行く。
「馬鹿かテメェは‼︎」
横からアニキがタツミをぶっ飛ばす。鼻血を抑えながらタツミはアニキの説教を聞く。めっちゃ痛そうで不意にも『あふぃっ』とか言ってしまったのは秘密だ。
アニキは無気力化の演奏を自分の体を抉って自我を保っていた。アニキとダイダラは互いに名乗りを上げる。
「……タツミ、お前は俺の背中をしっかり見てろ。コウタロウ、タツミを頼むぜ」
『アニキ……』
アニキの背中はいつ見ても広い。しかし、今見せるアニキの背中はきっとこの運河よりも広いのだろう。本当に熱いぜアニキッ‼︎
「インクルシオォォォォォォォォッ‼︎」
アニキはインクルシオを纏う。
正面からはダイダラ。後方でアニキからは死角からリヴァとニャウがアニキに向かって飛びかかって来た。
「アニキッ‼︎」
タツミはアニキと叫ぶ。大丈夫だ。心配ない。なんたって俺達のアニキなんだぜ?
アニキはまず、ニャウのか細い下腹にインクルシオで纏った度太い拳を放つ。次にリヴァの胸に右足蹴りを放つ。そして飛び上がり、ただ見上げるだけのダイダラを一刀両断にする。
全てを合わせて一瞬の出来事。
ダイダラの血の雨が降りかかる中アニキは俺達の方を見つめる。
「お前ら、これが周囲に気を配るってヤツだ。」
タツミは尻餅をつき今起こった出来事を必死に理解しようとしていた。
これがアニキの本当の実力。タツミはアニキの事を褒めている。
「俺の軍人時代のあだ名は『百人斬りのブラート』だからな」
「正確には百二十八人だったがな……」
こちらに近づいて来る人影。
土煙で誰かは判断できないがシルエットで大体分かる。リヴァだ。
「久しぶりだな、ブラート」
「あんたは……リヴァ将軍‼︎」
インクルシオの仮面の下で、アニキは想定外の人物の登場に目を大きく見開いた。
ちょっと今回は長くなりました。
いや、本当に生で見る仮面ライダーは格別でした。