「おっ、もうこの肉焼けてんぞ!」
「ラバの肉もーらいっ‼︎」
「あっ⁉︎ちょっ姐さん⁉︎」
タツミや俺が鎧泳ぎをしていた川。自然に囲まれ緩やかで透き通った水の音が心地よい。
俺達は今、ナイトレイド全員でバーベキューを楽しんでいた。
きっかけはラバックとアニキ
曰く、あの出来事で暗くなったマインを楽しませ、空気を変えるためである。
アニキは流石だが、ラバがそんな気遣いができたことに感服である。
そんな2人の気遣いが心に通じたのか、マインはこのバーベキューを楽しんで心から笑っているように見える。
殺し屋という稼業で生きるということは、いつ報いを受けてもおかしくない。タツミや俺という後輩ができたことに少し浮かれていたマインは、改めてそれを実感した。一方のシェーレは、あの出来事の後もいつものように自慢の天然ボケでのほほんと過ごしていた。
いや、シェーレらしいって言ったらシェーレらしいんだけど………
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タツミside
あのバーベキューから数日。俺はひたすら訓練に打ち込んでいた。
マインのような殺し屋でもミスを犯し、死を直前まで垣間見たのだ。
このナイトレイドで一番弱いのは俺だ。コウタロウは俺と同じ時に入ったが、あいつは帝具持ちな上に実力もある。槍の扱いはアニキと同等だし……
「タツミ。そろそろ休憩を入れよう」
「休憩なんてできるかよ!言ったろ、実戦と同じノリで来てくれって!行くぜええええっ‼︎」
アカメは俺に休憩を促すが、そんなことでは強くなれない。
アカメに一太刀入れるべく俺は勢いよく間合いに飛び込む。が、その途中でアニキの拳が俺の顔面にクリーンヒットした。
「何すんだよアニキッ⁉︎」
「実力と同じノリってんなら、周囲にも気を配れよ。敵がどこに潜んでいるか分からねぇんだぜ」
正論を言われ俺は顔をしかめる。
「……アニキッ‼︎なら俺に槍を教えてくれよ‼︎」
「望むところだッ‼︎俺の槍(意味深)は甘くないぜぇッ‼︎」
なんか少し違和感を感じたが気にしない。俺は木刀を置き槍に持ち変えアニキとの訓練を始めた。
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雪が舞い落ちる帝都から離れた廃れた村。
火を囲む村人は皆顔が暗い。そんな村を通る馬車。
「……この村もまた酷いな。民有っての国だと言うのに」
「そんな民を憂い、毒蛇の巣である帝都に戻る父上は立派だと思います‼︎」
馬車の中には帝都の元大臣、チョウリとその娘であるスピアが乗っていた。チョウリは良識派である故、今の帝都を快く思っていない。
「ワシはあの腐れ大臣ととことん戦うぞ!」
「父上の身は私が守りますっ‼︎」
「いい娘に育ったな…。勇まし過ぎて嫁の貰い手が……」
嘆く父に、それに頬を赤く染めながらも拗ねる娘。
親馬鹿と親思いである。
馬が急に足を止め、その勢いで車内は揺れる。スピアが外を見ると、行く手には3人の男がいた。
「また盗賊かっ!治安が悪いにも程がある‼︎」
「これまでと同じように成敗してくれる!皆、油断するな‼︎」
スピアは馬車から飛び降り、10人ほどの部下を引き連れ3人の男の1人、ダイダラと呼ばれた大柄の男に向かって駆け出した。
だが、現実は非情だ。
ダイダラの持つ斧の横薙ぎの一閃で、部下達は全滅。スピアは獲物が壊れ、腹を斬られていた。
「…強過ぎるっ‼︎」
「へー、おねえちゃんやるねー」
地面に膝をつくスピアに近づく少年。
「でも、これから起こる事を考えると、死んでた方が良かったよ」
その少年は懐からナイフを取り出し、スピアに近づける。
「嫌っ……‼︎」
これから何をされるか察したのか、スピアは涙を零す。
泣いても無駄だと、少年は冷酷に笑い刃を彼女の頬に当てようとする。
だが、どこからか現れた手によりその刃を掴まれる。
『はいザンネーン‼︎』
その手の主は、赤い大きな複眼を持ち金色の鎧に身を包んでいた。
少年は察する。
これから起こる喜劇と言う名の一方的な暴力を。
「父上の身は私が守りますっ‼︎」
「ならスピアさんの身は俺が守りますっ‼︎」
はい出ましたー。鬱ブレイカー、コウタロウ。
後書きらしい後書きなんですが、活動報告でアンケートがあるので是非投票?してくださるとありがたいです。