アギトが蹴る!   作:AGITΩ(仮)

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最初に言っておく。




コウタロウは変態だッ‼︎


第15話 潜入

帝都の色町。

それは一見、江戸時代の吉原をイメージさせる町だった。

ピンク色のネオンが怪しくもあり色気を漂わす。辺りは着物を着崩した遊女が町行く男性を眺めている。

 

「ここが帝都の色町か…。ドキドキするな……」

 

「そうだね。気を抜くと前かがみになっちゃうよ」

 

俺とタツミは色町初心者。

タツミは田舎者でこんな場所は初めてらしく、俺は前世から童帝のため無縁であった。

 

「お、そのストレートな反応可愛いね〜。だけどコウタロウは自重しろよ」

 

姐さんは俺の反応を見て呆れている。

 

「さて、そろそろお仕事して借金返さないと!……確か、こうかな?」

 

姐さんは気合いを入れ腰に巻いているベルト〈ライオネル〉を整える。

そして、両手を素早く左腰に持って行き手首を交差させる。左手はそのまま、右手を前に勢いよく突き出し今度は右胸に引っ込める。

ま、まさか……その構えは⁉︎

 

「……ハァ〜………変身っ‼︎ライオネルッ‼︎」

 

姐さんの変身の掛け声と共に、姐さんの背後に気高き灼熱の獅子のオーラが浮かび上がる。まず変化したのは髪。肩にかからない程度の髪は獅子の鬣〈たてがみ〉のように伸びてゆく。

次に尾骨のあたりから尻尾がはえる。最後に猫耳と言っていいのか獅子耳と言っていいのか分からないが、とにかくネコ科の耳が生える。

 

姐さんは俺がアギトへと変身する際のプロセスを自身の変身に組み込んで俺達に披露してくれた。あぁ……感無量です。

 

「よし!この姿になると昂ぶる昂ぶるっ‼︎」

 

姐さんが決めポーズをとっている背後で俺とタツミは拍手をあげる。

自分で言うのもなんだが、これから潜入するんだよね?

 

「ほら!コウタロウも変身して!」

 

「……え?俺も?」

 

早く早く!と急かされる。

まぁ、いいもの見せて貰ったんだから俺はいつもよりキレのある動きで変身する。一瞬の閃光と轟音。やっぱりアギトだと燃えるな。

 

「なら、コウタロウがタツミを抱えて私に着いてきて!」

 

タツミは嫌々ながらも俺に捕まり頼んだぜ、と一言かける。

姐さんは脚に力を入れ飛び上がる。その際に、姐さんがいた瓦が砕け散ったのを見てタツミが震える。

 

姐さんは足音を立てず、その上タツミの全速力と変わらぬ速度で駆け出す。タツミに騒がれるのも面倒なので、脇に抱えるタツミの口を塞ぎ俺は姐さんの後を追った。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ふぅ〜……到着」

 

姐さんは綺麗な笑顔で汗を拭う。

俺はタツミを降ろし一息つく。……タツミは酔ったのか口を手で塞いでいた。

 

それにしても足を止めることなく上手く護衛の目を掻い潜って来た姐さんは、本当に一流の殺し屋なのだろう。

 

「見てみろ」

 

姐さんは天井の板をずらし俺達を呼ぶ。

 

中を覗くと、部屋はたくさんの遊女が部屋の中央から炊き出されるクスリに溺れていた。

酷いな……。

 

タツミはまた口元を塞ぐ。

俺も吐き気を堪えながらも視線はずらさない。

 

すると部屋に2人の男がやってくる。

 

「おお〜やってるね。お前らもっと稼げばクスリを回してやるからな。」

 

部屋の遊女達は力が入ってない声で応える。

すると1人の男がある遊女に目をつける。

 

「ん?コイツ、完全に壊れてますぜ。魚臭えし、もうダメなんじゃないですか?」

 

「そうだな……廃棄処分」

 

廃棄処分と言われた遊女は、自分の事とは分かっておらず、1人の男にクスリを求め、手を伸ばす。

 

「おーらよっと‼︎」

 

男はその遊女を一切の加減もせず殴り飛ばす。

 

姐さんはそれを見て殺気を尖らせる。

もう姐さんの眼は、獣の眼と化している。俺だって我慢の限界だ。

 

「……今殴られた娘、スラムの顔馴染みだった。ムカつくッ‼︎さっさと標的を始末しよう‼︎」

 

「『了解」』

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「親分〜〜。もっとクスリのルート広げましょうよ」

 

「そうだな、明日チブル様のとこに相談しに行ってみるか」

 

そう親分と呼ばれた男が言い終わると突然天井が崩れ、3人の男女が降りてくる。その内の1人は仮面と鎧を纏っていて顔は分からなかった。

 

 

「『「お前達が行く所は……地獄だろう‼︎」』」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「なぁ、あの壊れた女の子達、これから一体どうなるんだ?」

 

夜道を街灯が照らすなか、タツミが姐さんに聞く。

 

「…そこは私達の領分じゃないだろう?」

 

でも、と何か言いかけたタツミは顔を下げ下を向く。

 

「…え?でも俺、あの娘達治してきたよ?」

 

「「……え?」」

 

そんなに不思議な事だろうか?

あの殴られた遊女を治していたら、クスリの中毒や性病も治ったのだ。それに気づいてからは全ての娘達を治して連れ出すのに少し骨が折れたが……

 

姐さんは俺を不思議な表情で見つめてくる。

その表情はどこか儚く、そして愛おしい乙女の顔だった……。

 

「…結局オイシイところは全部コウタロウかよ〜」

 

タツミは一安心といった顔で俺と拳を合わせる。

コツン、と音が鳴る。

 

「………コウタロウ、ありがとうな」

 

姐さんも俺に拳を突き出す。

俺はそれにはにかみながら拳を合わせるのだった。

 

 

「…ごめん2人共、ちょっとお腹が痛くなって来たから先に帰ってて。

俺は近所の民家でトイレ借りてくるから」

 

その場の雰囲気は台無しだが、それどころではない。

ろくな言い訳が思いつかず若干焦り気味2人に告げる。お大事にの言葉を貰い、2人を見送り俺はマシントルネーダーを呼び出す。

 

どこからともなく俺の元へ走ってくるその愛車に跨る。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はマインとシェーレの帰還ルートを目指し愛車を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近、文字数がバラバラになって来ています……。

今回の話は2000文字越しちゃった……。


次回、コウタロウは原作の悲劇を止めることができるのか⁉︎




次回、第16話 ご都合主義

デュエルスタンバイ‼︎

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