「グ!」
道場に着いた俺はアイリ義母さんに稽古でしごかれていた。強化した竹刀を持ってアイリ義母さんに襲い掛かるが…
「甘いわ、士郎!」
俺の攻撃は義母さんに容易く回避され、逆に義母さんの竹刀が俺を襲う。
スパーンと防具をつけていた俺の胴に目掛けて竹刀が振られ、衝撃と共に竹刀の良い音が俺の胴から発せられ俺は道場の壁に叩きつけられる。
「ッ!」
衝撃が背中から生じ息が出来ない。拙い、先程の義母さんの一撃で壁に激突した瞬間後頭部も打ったみたいだ。頭がじんじんして視界が揺らぐ。視界が揺らぐ中竹刀を杖代わりに立ち上がろうとするが揺らぐ視界の中でイリヤ姉とバーサーカーを見たが、バーサーカーの奴本当に狂戦士なのか?イリヤ姉を壁にしてその後ろの隠れてやがったぞ!
……いいや。考えればバーサーカーは本当に狂戦士なのかもしれない。
ただ、野生の感というか戦士の感みたいなのが働いてビクビクとマスターであるイリヤ姉の陰に隠れるほど怯えているのだろう。
そう、俺の対戦相手が規格外すぎるだけでバーサーカーの反応は至って普通の反応なのかもしれない。
アイリスフィール・フォン・アインツベルン。アインツベルンの結晶にしてアインツベルンの対聖杯戦争用ホムンクルス。円滑な聖杯戦争をする為に作られた史上最強のホムンクルス。過去の聖杯戦争のデータを元に英霊に襲われた際にでも円滑に聖杯戦争を進めれるように常に中立の立場を維持しながらも襲ってくるサーヴァントに対して厳格なルールの下でペナルティーとして鉄拳制裁を行う事も目標に創られたホムンクルス。
第四次聖杯戦争でその役割を終えた義母さんなのだが、まあ切嗣が義母さんがホムンクルスであり聖杯戦争の重要な鍵である事をアハト翁に説明されていたにもかかわらず駆け落ちと言うか結婚旅行みたいな感覚で冬木市に来たわけだが、まあ冬木市っていったら霊脈とかも凄く良いわけで、しかも聖杯戦争を作ったアインツベルン以外の他の御三家もいる訳。そんな土地に聖杯戦争の鍵となる義母さんが冬木市に来ればもう聖杯戦争始まったんだと勘違いして第四次聖杯戦争が始まった訳だが……まあ、結果悲惨なものとなった。義母さん一回肉体が瀕死に成っちゃうし、中途半端な聖杯のせいで冬木市が何故か大量の津波の様な麻婆豆腐に襲われちゃって俺は勿論の事、麻婆豆腐によって全身の大火傷を負った人も少なくない。未だにひどい火傷のせいで意識が戻らない人もいるという。それにその麻婆豆腐が発生した冬木の公園は未だに麻婆豆腐臭いし。と言う散々な結果をもたらした第四次聖杯戦争も終了し、切嗣はアハト翁にこっぴどくなじられ弄られ怒られ罵倒されたらしい。
んで、アインツベルンの技術を極限まで使った新たなる肉体が義母さんに与えられたわけだが……これがまた強いのなんの。並大抵の英霊じゃ太刀打ちできないほどの肉体を持ったわけなんだよ。なんでもアハト翁曰く、神話の時代のヘラクレス並みには強いらしい。
……んな訳あるか!そのヘラクレスがビビってんだけど!
詐欺もいい加減にしてほしいわ!
「あら、士郎。もうお昼寝かしら?」
美しい規格外のバケモノが小首をかしげておりますよ。ったく、今度一発アハトの爺さんぶん殴らなきゃ割に合わんぞ!
「……んな訳あるか!」
俺は竹刀を杖に立ち上がる。少し時間が経過したせいか、さっきよりも観やすい。若干ふらつくが、それでもなんとか動けるまでには回復した。
「良い子ね、士郎。それでこそ男の子よ」
微笑を浮かべるアイリ義母さんは美しかった。
母性と慈愛に満ちた表情とは裏腹に圧倒的強さを持つアインツベルンの最高のホムンクルス。流石、アハト爺さんがアインツベルンの技術は世界一イイイイイ!!と豪語するだけある。因みに、アイリ義母さん他のホムンクルスたちからもその畏怖と敬称を込めてゴッドマザーと呼ばれてたりする。
ジンジンと痛む体に鞭打ちながら立ち上がる。
立ち上がる俺を見て義母さんはフフフと満足そうに笑う。
「うんうん、流石私の士郎ね。これでキャスターちゃんも惚れ直すわよ~」
「そ、そうかよ」
義母さんはそう言うが、俺がキャスターを惚れ直すなら解るが、キャスターが俺を惚れ直すと言うイメージがわかない。
まあ、キャスターが俺に惚れてくれるならば嬉しい事この上ないけれども、それでも聖杯戦争を生き残らなければ意味がない。
立ち上がり竹刀を構えなおす。竹刀はアイリ義母さんへと向け息を吐き呼吸を整える。
足の指先のみでアイリ義母さんとの距離を少しずつ詰める。体は動かさずに脚の指先のみでの移動。
「――!」
アイリ義母さんの胴に目掛けて竹刀を振るう。
「良い子ね、士郎。貴方の真剣さ、それに応えて私がアインツベルンで監禁されていた時にジャンプの某主人公が使っていた技を再現してみたの。今こそ、その技を貴方に教えてあげる――九頭龍閃!!」
アイリ義母さんの竹刀がぶれ、アイリ義母さんが持つ竹刀が俺に襲い掛かる。
何かイリヤ姉が、え、嘘!?
アイリ義母さんの技が防具を付けた俺の体に衝撃が走り俺が意識を失うのにそんなに時間はかからなかった。