【ライダー陣営】
「ちくしょう!何で僕はこんな家に生まれてきたんだ!!」
間桐 慎二は、自室のベッドの中に入った状態でガタガタ震えていた。
何故なら………
『ぬほおおおおおお!!良いぞ桜。流石儂が見込んだ女ぞ』
『黙りなさい!この薄汚い虫が!!』
『ああ、そのゴミ虫を見るような眼……わしゃあ、果報者じゃ~』
『虫に人権も発言権はありません!』
地下からピシャリピシャリと鞭を打つ音が聞こえ、その後に年老いた男性の歓喜の声が絶え間なく間桐 慎二の部屋に聞こえるからだ。
歓喜の声を上げる年老いた男性の名は、間桐 臓硯。間桐家の館の主だ。
この間桐 臓硯、本来はその容姿と同じく醜く歪んだ外道へと落ちてしまった。
しかし、彼が鞭に打たれ歓喜を上げるようになったのには、訳があった。
それは、数年前の事だ。
間桐 臓硯に鞭打つのは、間桐 桜。間桐 慎二の血の繋がっていない妹。
彼女が遠坂家から間桐家に養子として引き取られた時に起こった。
間桐 臓硯は、間桐家に来た桜を地下の虫蔵に連れて行き、桜の魔術回路を強引に変える為、刻印蟲による凌辱が行われようとした時、事態は起こった。
桜が口に入った刻印蟲を噛み殺したのだ。
刻印蟲は、その形状男性性器に似ている。
その様子を見た間桐 臓硯は、年甲斐もなく頬を赤く染め恍惚とした表情で呟いた。
「―――良い」
と。
この時に彼の中にあった何かが瓦礫の如く崩れ落ちた。
そして、桜を蟲蔵から解放すると逆に自分を縛り付け蟲蔵の中に入っていき桜に鞭を持たせ、自分の体に鞭を振るわせた。
この瞬間、彼の中で新たな生き甲斐が生まれた。
今までの長い年月、魂まで疲弊しきり、醜く歪んだ彼に一つの生きる希望が生まれたのだ。
それは―――
―――幼女に凌辱される事。
そして、彼はそれから今日に至るまで毎日のように桜を蟲蔵に連れてくると自分を縛らせ、鞭を震わすようになった。
「ああ!畜生、普通の家に生まれて来たかった!」
一方の桜の兄 間桐慎二は心からの叫びを布団の中であげていた。
幼少期から聞こえてくる年甲斐も無く歓喜の声を上げる爺。
鞭のぶんぶんと振るわれる音。
幼少期から聞こえてきて何か変だな~とは、思っていたが中学の頃からあれ?やっぱり可笑しくないか、うちの家?と、疑問を持つようになり。
そして、高校に入り、やっぱり変だ!?と思う様に成ったのである。
「……マスター?外に出ます?」
「あのさ、気遣いは嬉しいんだけどやめてくれる?その天井からぶら下がるの。僕の部屋の天井が穴だらけに成ってんじゃん!?」
【セイバー&キャスター陣営】
バリンという窓ガラスが割れる音共に青い閃光が衛宮家の食卓に突撃してきた。
部屋の中には窓ガラスの破片が宙を舞い、青い閃光は一人の人間の形を作るとその手に赤い槍を持っていた。
ソファーに座りテレビを見ていたアイリとイリヤ。せっせせっせと作られる夕食を運ぶ上半身裸の巨体 バーサーカー。リズとセラと共にトランプをするセイバーが突入してきた青い閃光に一斉に視線を向ける。
「こんちわ~、お届け物にあがりました~。言峰運送会社の者なんですけど~……あ、イリヤさんって、います?」
脇に小包を抱え、片手で槍を持ち、帽子をかぶった青タイツを来ている青髪の青年がそこに居た。
「イリヤなら私だけど?」
キョトンと首を傾げるイリヤ。
「あ、そっすか。ハンコあります?無いんならサインでも良いすけど?」
イリヤのもとに寄ろうとしたその青年の首を軽々と猫の様につまみ上げる者が居た。
バーサーカーだ。
「あ、おい!こらでかぶつ!!仕事の邪魔すんな!俺はこの仕事をおわらさなきゃいけないんだよ!じゃなきゃ、今日から俺の飯が試作激辛麻婆豆腐に成るんだよ!聖杯戦争が始まる以前に俺が誰とも戦わずにリタイアに成っちまうんだよ!!」
喚く青年をそのままつまみ上げた状態で門の外まで運ぶとポイッと放り出すバーサーカー。マスターであるイリヤを守るため、敵かも知れないサーヴァントは、お外へポイである。
「ちょっ、おい!この荷物渡さねえと帰れないんだって」と門をドンドンと叩く青年。
しかし、門はがっちりとバーサーカーによって施錠されてしまっている為、開く事が出来なくなっていた。
アイリとイリヤは、突然のことに一体なんだったのかしら?と親子そろって首を傾げる。
一方、士朗とキャスターは
「ほら、キャスター。こうやって、こうするんだ」
「あ、マスター」
そんな、ちょっとしたハプニングがあったことなど気付かずに終始、士郎が抱き着く様にキャスターの背後に回り、イチャコラしながら懇切丁寧に今日の夕食のメインであるハンバーグの作り方を教えていた。
「衛宮君、おはよう。早速で悪いんだけれども、ちゃ~んときっちりかっちり説明してくれるかしら?昨日の事を」
翌日の早朝、校門で待ち構えていた遠坂凛に衛宮士郎は捕まっていた。
朝が弱いのか少し不機嫌そうな彼女を見て、士郎は「ゲッ!?」と遠坂に聞こえないように呟いた。
「遠坂……あいつは、やっぱり性犯罪者だったんだな!?」
遠坂凛が連れていた褐色の男性英霊が性犯罪者で目の前の遠坂凛が自身の貞操を守るため、朝まで苦戦し遂に先程勝利を持って貞操を死守したと言う構造が脳内に浮かび上がっていた。
そんなビジョンが思い浮かんだため凛を見る士郎の視線が労りと心配の色を含んでいた。
「マスター、すまないがこいつを始末して来る」
額に青筋を立て、霊体と成っていた遠坂凛の弓兵サーヴァントアーチャーが姿を現して衛宮士郎を始末しようとする。
ハアと溜息を吐く遠坂凛。
「落ち着きなさい、アーチャ―。衛宮君、心配してくれてどうもありがとう。でも、恐らくあなたが思っていた事は何も無かったわ」
「朝起きたら部屋、もしくは家がイカ臭く無かったか?」
心配そうに凛に尋ねる士郎。
「ほう!貴様はどうあっても私を性犯罪者扱いしたいらしいな衛宮士郎」
そして、そんな遠坂を心配する士郎にブチ切れの弓兵の英霊。
ぶっちゃけ、大人気無い様にも思える。
「だってお前、遠坂と一緒に住んでいるんだろ?」
「…ああ」
「なのに、一つ屋根の下で暮らしているのに名前を名乗らないなんておかしいじゃないか!?」
「!?あ、いや、私には記憶が「はいはい、自演乙」……」
「っていうか、お前なあ。都合よく記憶喪失とかSNG(それ、なんてエロゲ)だよ。在り来たり過ぎんだろ。もうちょっと説得力のある言い訳をしろよ。そんな言い訳中二病患者の中学生でも思いつくわ」
弓兵の英霊アーチャ―のプライドはズタズタだった。
英霊として聖杯戦争のよるべに従い現界したのに、現れてみれば性犯罪者呼ばわり。
召喚の時に凛が予定より速い時間で、しかも英霊の召喚触媒と成る聖遺物無しでの召喚の為、記憶が混濁し自分が誰だかわからない状態で召喚された。
そんな、どうしようもない状況で事実に程近い言い訳すれば、中二病患者の中学生以下の言い訳だとダメ押しされるありさま。
しかも、目の前の人物に喧嘩なら余所でやれと命を賭ける神聖な儀式とも言えるこの戦争、言わば聖戦中に乱入してきて自分と殺しあってたランサーの二人を殴り飛ばした。一般人に。否、厳密にいうなら一般人では無く魔術師見習いである衛宮士郎に殴り飛ばされた。一般人に程近い存在の相手に英霊と呼ばれる功績まで昇華した自分が殴り飛ばされた。幾らランサーと殺しあっていた最中油断があったとはいえ、殴り飛ばされた。その事実のみだけでも消し去りたい過去を作られた一般人に程近い魔術師見習いに。
ぶっちゃけ、英霊としてのプライドがズタズタにされたのだ。
今すぐにでも殺したいのだアーチャ―は。
そのせいで、頭はプルプルと怒りで震え額には青筋が3つほど更にできていた。
ぶっちゃけ、怒りの臨界点を突破しようとしていた。
「……アーチャ―。あなた、今日から家の外で寝てね。後で魔術で犬小屋を作っとくから」
そんな彼の様子を見た凛は、彼が真実を指摘されて焦りで怒っているのと勘違いしていた。
「凛!?君は、自分のサーヴァントの言う事を信じずに、見ず知らずの男の言う事を信じるのかね!?しかも、犬小屋!?私は君にとって犬扱いなのか!?」
「俺ならこんな図体のデカいかつ不細工な犬はいらないな」
「お前は黙ってろ!お前の所為で私の存在は犬扱いなんだぞ!!」
「遠坂……流石に犬小屋は木製で人間の家と同じ造りにしてやれよ」
「ええ。私がやらないから 綺礼にやらせるから心配しないで。そこら辺は大丈夫でしょう。あ、アーチャ―。この前首輪貰ったからあげるわ。これを付けなさい。付けないって言うんなら令呪を使うから」
「……遂に私は犬扱いか」
遠坂凛はポケットから首輪を取り出すとアーチャ―に渡した。
アーチャ―はその首輪を受け取ると自身の首に付けた。
因みに、その首輪にはred one chanseと書かれた銀のプレタブがあった。
★★★