赤い閃光と青い閃光が学校の校庭で走る。
赤い閃光は褐色で赤い服を着た男性が双剣で青タイツを着た赤い槍を持った青い髪の男性に攻撃して出来た閃光で、青い閃光もまた褐色の赤い服を着た男性に青タイツの赤い槍を持つ男性が攻撃を防ぎ、反撃した時に生じた。
高校の校庭に不相応の武器と武器のぶつかり合いによって生じる金属音が響き渡る。
「あれは……」
そんな光景を衛宮 士郎は、友人の間桐 慎二に頼まれて弓道場を掃除し終えて、時間は夕方を過ぎて夜となった時間帯に目撃した。
不自然に赤い閃光と青い閃光がぶつかり、金属音が校庭に響き渡る。
それだけで彼は刺激された。
よくよく目を凝らして二つの閃光を見てみると、それは二人の男性が戦っている状況であった。
片方は赤い槍を。
もう片方は双剣をもって戦っていた。
そんな状況を見て彼の心は決まった。
その時、頭の中に語り掛けてくる声があった。
(介入して良いの?上手くすれば相打ちに成るかもしれないのよ?そのチャンスをみすみすと逃すの?)
その言葉に彼はフッと笑みを浮かべ、口には出さずに返事をする。
(まさっか。こんなビックチャンスは二度とないだろう。でもな、この学校は親友の柳洞 一成が管理しているんだ。親友の管理下にある神聖な学び舎に部外者に、それも武器を持つ無粋な輩に侵入してほしくないんだよ)
(そう。それじゃあ……)
(……ああ、始めよう俺達の聖杯戦争を。援護を頼むよ。俺らの悲願の為に。祝福される未来のため、生贄となる聖杯戦争を。これより武力介入に移行するよ)
(良いわ。私達の悲願達成のため、あなたには生き残って貰わないといけないから全力でサポートさせて貰うわよ)
(ああ、ばれない程度にお願いするよ。俺の愛する伴侶)
(もう!それは聖杯戦争中に言わないって約束でしょ!?)
そのやり取りを終えた後、彼の中に魔力が溢れ出るように湧いて来るのを感じた。
そして、視線を赤い閃光と青い閃光を発する二人の男性に向ける。体の内から湧き出る魔力が指先まで通うのを確認すると彼はその場をかけて二つの閃光のもとへと走る。
彼にかけられたのは強化の魔術。
拳はおろか、目や体全体に強化の魔術が施されている。
強化の魔術が施されているため、赤い閃光と青い閃光しか見えなかった相手がスローモーションで見えるように目が強化された。
赤い服を着た褐色の男性と青タイツの男性が互いに得物を持ち、移動しながら攻撃しあう場面を捉え拳を握ると脚に力を込める。
そして、二人の男性が戦っている場所まで走る。走る。
一般人ならあり得ない速度。
100m1秒いくかもしれない速度で戦う二人の男性との距離を詰める。
二人の男性が走り寄ってくる足音に気付いたのか士郎に視線を向けるより、士郎の方が速かった。
「こんな所で喧嘩すんじゃねえ!!」
二人の男性は強化の魔術を施された士郎の拳を顔面に食らった。
捩じり込むように士郎の拳は二人の顔面を殴り、全身の筋肉というバネをフルに使った渾身の一撃を二人に繰り出した。
二人は顔面にモロ士郎の強化された拳を食らい、二人仲良く吹き飛ばされる。
その様はまるで人間がダンプカー跳ねられた様に吹き飛ばされ、グラウンドのフェンスに激突してようやく止まった。
「痛てえじゃねえか坊主」
暫くしてからフェンスに激突した二人の男性のうち、赤い槍を持った青タイツの男性がゆっくりとフェンスから立ち上がり士郎を見る。
そして、ペッと口から血を吐き出して士郎を観察するようにじっくりと見る。
「察するに坊主……魔術師か?」
「!」
士郎の反応を見て青タイツの赤い槍を持つ男性は、面白そうに笑った。
「ハッ!何で分かったと言いたげな表情だな坊主。んなもん簡単だ。英霊を殴れるような人間なんざそうそう居ねえ。ましてや俺、ランサーのクラスを殴れるような奴なんざ魔術師でもなきゃ無理だろうよ」
そう解説する青タイツの男性、ランサーの解説を聞きながら士郎は内心ほくそ笑んだ。
(まだキャスターの事は、ばれて無いみたいだな)
彼ー衛宮 士郎には強化の魔術が掛かっていた。
この彼にかかっている強化の魔術は彼、衛宮 士郎の魔術ではなく彼が使役するサーヴァント キャスターの魔術による物だった。
「あんたが何者かは知らない。でもな、早々にここ…学校から立ち去ってくれ。ここはそんな物騒な物を持ち込んで喧嘩をしていい場所じゃない。やるなら柳洞寺辺りの人がいない裏山でやってくれ。兎に角、あんた等は邪魔なんだ」
真摯に青タイツの赤い槍を持つ男性、ランサーに訴える。
だが、
「悪いな坊主。聖杯戦争に関わった人間を生かしておいちゃいけねえのさ」
ランサーは赤い槍の矛先を士郎に向け構える。
撤退しようとしないのは明らかだった。
「仕方ないか」
そう言って士郎は握っていた強化された拳を解き、自身の胸に置くと詠唱を始めた。
――――
――――
その時、不意にランサーが顔をしかめた。
「何!?……解かった」
そして、構えを解くと士郎を背にする。
「命拾いしたな坊主。マスターからの撤退指示だ」
そう言ってさっそうと士郎の前から駆け、姿を消した。
ふうと息を吐き、次にフェンスに倒れている褐色の男性に視線を向けると問う。
「それで、あんたはどうすんだよ。起きているんだろ?」
フェンスにもたれかかる様に倒れていた男性は、フッと笑い閉じていた眼を開いた。
「気づいていたか。だが、そんな!?……しかし」
一人悩む褐色の男性に再度士郎は問う。
「だ~か~ら~!あんたはどうするんだよ!この学校からとっととさっきの奴みたいに消えてくれるのか?」
「………」
一人悩む白髪で褐色の男性。
そんな彼に士郎とは別の声がかかる。
「アーチャー、大丈夫!?って、え、衛宮君!?」
声の主に士郎は視線を向けるとそこには、赤い服に黒髪のツインテール同学年の遠坂凛がいた。
「遠坂!?……クラブか何かの帰りか?だとしたら夜遅くまでご苦労様」
「違うわよ!ったく。よりに寄って何であんたなのよ」
「ハア?」
「まあ良いわ。それよりこれから時間ある?貴方を巻き込んじゃったんだし、説明しなきゃね」
「説明?ここじゃダメなのか?」
「ちょっとここじゃ、ねえ。話しづらい話なのよ」
「えっと~、遠坂の家じゃダメか?」
「あんた。レディーの家に上がろうとする、普通?」
呆れたように溜息を吐く遠坂の横で士郎は冷や汗を滝のような冷や汗を流した。
(拙い拙い拙い!今、家にはキャスターがいる!このまま家に遠坂を連れていくのは悪手だ!俺がマスターだってばれる!!どうする!?……そうだ!)
「悪い遠坂!今、家には二万冊ものエロ本があるんだ!絶賛整理中だから俺の家は無理だ!」
士郎がとった行動。
それは、女の子が躊躇うようなものがある事を提示することで家に近づけさせないようにする事。
無論、エロ本二万冊どころか、一冊も士郎の家にはないのだが……
士郎の目論見通りの遠坂は笑顔で引きつり、身を一歩後ろに下げた。
そんな遠坂の後ろに立っていた白髪で褐色の男性は、
「良し。私が処分しておこう」
と何やら家に来る気満々のご様子。
更にピンチの状況に追い込まれた士郎は
「あ、手前!さては処分するとか言っときながら俺からエロ本取り上げて一人で堪能するつもりだろ!!」
何かを失いながら必死に遠坂が家に来ないように白髪で褐色の男性が家に来ないようにする為非難した。
士郎の非難が功をなしたのか遠坂は今度は白髪で褐色の男性を見る。
しかし、士郎の時とは違い今度はまるでゴミ虫を見るような眼で。
「そう言えば、アーチャー。あんた、自分の事解からないと言ってたわね。もしかして、性犯罪sy「違うからな、凛!私はれっきとした英霊だからな!?」……本当かしら」
「無論だ!性犯罪者が英霊になれる筈が無いだろう!」
「いいえ。その後に何か偉大な功績を残してもみ消したとか、歴史の陰から消えたとかありそう」
「信じてくれ、凛!」
「騙されるなよ、遠坂。理由も根拠もなしに信じてくれなんて……まるで浮気がばれた亭主みたいじゃないか」
「お前は黙ってろ!」
「……それもそうね」
「こいつみたいに訳の解からない奴よりかは、エロ本二万冊があるから家に来るなと公言している俺の方がまだ信用あるぞ。何せ女子の視界には入れるべきでない物があると正直に言ってるんだからな」
「それもどうかと思うけど」
「兎に角!話なら明日昼休みか、放課後学校の屋上で話せばいいだろう。じゃあな。俺は今から夕飯を作ってエロ本二万冊の整理に忙しいんだからな!……それとも遠坂、エロ本見たいのか?」
「んなわきゃ無いでしょうが!!」
「なら良かった。それじゃあな!」
そう言って士郎は颯爽と遠坂の前から逃げるように後にすると弓道場の入り口に置いておいた荷物を持つと帰路に就いた。
士郎君の無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)の詠唱を一部を残して変更しました