IS×Z.O.E ANUBIS 学園に舞い降りた狼(ディンゴ)   作:夜芝生

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初の戦闘回。
生身ディンゴVS国家代表・元代表候補生装着IS、最強IS操縦者(生身)……こうやって書くと凄い面子です(汗
地上戦だからかもしれませんが、動きを表現するのが非常に難しい……。



Episode.4 泥を食む餓狼

「「織斑先生っ!?」」

 

 ディンゴが黒髪の女性に銃を突きつけた瞬間、後ろのパワードスーツ姿の二人も驚愕を顔に貼り付けながらも、緑髪の眼鏡を掛けた女性がライフルを、青髪の少女が透明な糸のような物体で繋がった矢羽状の刃物をそれぞれ構える。

 

「真耶、楯無、止めろ。余計な動きはするな」

 

 黒髪の女性――織斑と呼ばれた彼女は、ディンゴから切っ先と視線を外すこと無く、二人を制止してみせる。

 その声は、まるで氷のように冷たく、そして鉄のように硬質だった。

 

(……隙が無ぇ)

 

 ディンゴは許されるのならば舌打ちしたい気分だった。

 仮に害意を以て指一本……いや、筋繊維の一本でも動かせば、女は引鉄を引くよりも早く、切っ先をディンゴの喉にぶち込むだろう。

 そして、それを成し遂げる程の冷徹さも併せ持っている――先程の声は、そのような強さを持つ者でしか発せない「凄み」を感じさせた。

 

「――さて、質問を続けるぞ。貴様は一体何者だ? 何処の所属だ?

そしてこの『機体』は何だ? 一切を説明して貰うぞ」

 

 答えなければ容赦しない、とばかりに冷たい声で、「織斑」は続ける。

 

「素直に言うと思うか?」

 

――だが、ディンゴもただの木っ端では無い。

 数多の修羅場をくぐり抜けた、歴戦のランナーであり、軍人なのだ。

 類稀な胆力で、冷たいナイフのような殺気と、喉元から迫る圧力に屈する事無く笑って見せる。

 無論、勝てるとは思っていないが、彼女たちとの会話、そして行動の端々から少しでも多くの情報を引き出そうと試みる。

 

「――ならば、強引にでも聞き出すまでだ。

 生憎とここは他国の法の及ばぬ場所だからな……その気になればいくらでも方法はある」

 

 「他国の法の及ばぬ場所」――この情報は収穫だ……ただし悪い方の。

 つまり、ここは超法規的措置が許される場所だという事に他ならない。

 と言うことは何かしらの軍事施設、もしくはそれに類する機関の施設であるという事だ。

 この場所には彼女達以外にも多くの戦力がある、という事がここで確定となった。

 

(ジリ貧だな……どうするか……)

 

 拮抗状態に見えて、圧倒的に自分が不利であるという事実に、心の中で焦りが膨らみそうになる。

――こういう睨み合いは、先に怯んだ方が負けだ。

 ディンゴは動揺を押し隠すのに必死だった。

 

「なーんだ、どんなのが出てくると思ったら……『男』かぁ」

 

 「織斑」の優勢を感じ取ったのか、「楯無」と呼ばれた少女が僅かに緊張の糸を解き、怪しげな笑みを浮かべ、ディンゴを品定めするかのように見つめる。

 

 

――それはこちらの置かれている状況では無く、「男」という存在そのものを下に見ているかのような響きだった。

 

 

 「楯無」の表情や声色には悪意は感じられない。

……が、ディンゴには、それが地球の人々が、火星以遠に住む人々「エンダー」に対する対応に似ているように思えた。

 

 地球と比べて弱い重力下で働き、生まれ育った人々の肉体は、地球に住む者達のそれと比べて遥かに脆弱になる。

 更に、食料にも様々な制限を受ける事がそれに更に拍車をかけるのだ。

――ディンゴのかつての同僚だった男は、その事実を「エンダーにとって地球人はヘラクレスのようなものだ」と述懐した事がある。

……それ程、地球人とエンダーの身体能力には差があった。

 そのため、地球の人々はエンダー達を「か弱い存在」として認識し、後の様々な争いの火種となっていったのだ。

 

(つまり、男の立場が低いって事か?……そういや――)

 

 宇宙開拓の黎明期……そのような風潮が支配した時期があったと、バフラムの士官学校時代の講義で習った事がある。

 そして「楯無」と「真耶」の纏うパワードスーツ……確かあれに似た資料も何処かで見た覚えがあった。

 確かアレは――、

 

「――楯無。無駄口は構わんが油断だけはするな。

……ともかく、大人しく付いてきて貰うぞ。銃を捨ててその中からゆっくりと出ろ」

 

 しかし、思考が纏まる前に、「織斑」は「楯無」を叱りつけ、刀の切っ先を僅かにディンゴの喉に食い込ませる。

 ちくり、とした痛みと共に、血が首筋を伝った。

――ここら辺が限界か、とディンゴは行動に移る事を決意する。

 

「――まぁ待てよ。こっちは生憎と長旅で疲れてるんだ。

 茶ぐらいは出してくれるとありがたいんだがな」

 

 敢えて軽い口調で、突然友好的な調子で「織斑」へと話しかけるディンゴ。

 

「……それは貴様の態度によるな」

「オーケー、分かった。

 俺の名前はジョン・カーター。タイムトラベルしてきた火星人だ。

……こんな所でどうだ?」

「…………そうか。どうしても言う気にはならんか」

 

 ふざけた態度を取る彼の態度が癇に障ったのか、「織斑」の殺気が膨れ上がる。

 だが、ディンゴはそれに臆する事無く更に軽口を続けた。

 

「お気に召さないか? ならジョン・タイター辺りならどうだ?

 生憎とコイツはタイムマシンじゃないから原理は説明出来ないがね」

「――いい加減にしろ。こっちは貴様の無駄な時間稼ぎに付き合う気は無い」

 

 「織斑」の体勢が僅かに沈む。

 それは、刀を最大威力で叩きこむための準備動作だ。

――正しく、導火線に火の着いた爆弾のような危うさを秘めている。

 

「――気に食わなかったか? そりゃ残念だ」

 

 そう笑いながら、空いた左腕を、ゆっくりと、静かに腰元へと伸ばそうとする。

――「織斑」に気付かれないように、それでいて後方にいた「真耶」に見せつけるような角度で。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 千冬の指示に従い、後方で男の一挙手一投足に警戒していた真耶は、二人が交わす会話――というにはあまりに殺伐としているが――を聞いていた。

 

(ジョン・カーター……? 懐かしいなぁ……)

 

 男が自らの「名前」だと嘯いた人物……それは、幼い頃夢中になった小説に出てきた主人公だった。

 その中の挿絵がとてもかっこ良くて、当時の自分の中ではジョン・カーターは王子様に等しい存在だった事を覚えている。

 

(……そう言えばあの人も良く見たら格好良い……ってダメダメ!! 何考えてるの麻耶!!)

 

 心の中でぶんぶんと頭を振って煩悩を振り払い、警戒を続ける。

 その時、ふと男の左手が見えた。

 

 

――男は左手をゆっくりと自らの腰へと伸ばそうとしていた。

 

 

 コクピットのようなスペースに取り付けられた側壁を挟んで、男と対峙する千冬からは、死角になっている位置だ。

 何か武器を他に隠し持っていたら――!!

 

「……っ!? 動かないで下――」

 

 咄嗟に手にした五十一口径アサルトライフル《レッドバレット》を構える真耶。

――だが、それは千冬と男の均衡を乱す悪手であった。

 

「真耶、止せっ!!」

 

 千冬が真耶へと注意を向けた瞬間、男の膝が瞬時に跳ね上がり、千冬のIS刀の腹を蹴り上げる。

――左手はおろか、男の腰には何も無い……あれは、真耶を騙すためのブラフだったのだ。

 

「……っ!!」

 

 跳ね上がる千冬の刀――そこへ、男が数発発砲する。

 千冬は即座に斜めに倒したIS刀で体を防御し、銃弾を弾いた。

――だが、それは敢えて彼女に銃弾を防御させ、動きを制限するための牽制。

 

「と、止まって下さいっ!!」

 

 その間に身を翻してコクピットを乗り越えようとする男――そこへ自失から立ち直った真耶が銃口を向ける。

 

 

……だが、彼女はその瞬間躊躇してしまった。

 

 

 IS同士の戦いだったならば、麻耶は何の躊躇いも無く引鉄を引けただろう。

――しかし、男は「生身」なのだ。

 もしIS用の銃弾が当たってしまったら、例え狙いを外したとしても、致命傷は避けられない。

 千冬ならば容赦無く発砲しただろうが、真耶はまだまだ彼女のようには非情になれなかった。

 

 

……その動揺を知ってか知らずか、男の口の端がにぃっ……と歪む。

 

――タンタンタンッ!!

 

 乾いた発砲音と共に、男の放った三発の銃弾は、狙い違わず真耶の持つ《レッドバレット》のマガジンを砕き、破壊する。

 

「あっ……!?」

 

 咄嗟に薬室に残った一発で男を狙い打つが、男は肉食獣のような動きで回避。

 

「逃がさん!!」

 

 千冬が追い縋り、IS刀を振りかぶる。

――だが男は肩口目掛けて振るわれた刃の側面を拳銃のグリップで叩いて逸らした。

 目標を失ったIS刀は、土塊をまき散らして地面に突き刺さる。

 

「止まりなさい……なっ!!」

 

 楯無が追撃に放ったラスティ・ネイルの鞭のような攻撃もギリギリでかわし、男は機体の陰へと潜り込んだ。

 

(……あの人、強い!!)

 

 男の射撃技術、身体能力、そしてISに対して臆する事無く立ち向かう胆力に舌を巻く。

 同時に、真耶の頭はまるで現役時代の公式戦を戦った時のように冷えていった。

 

「迂闊だぞ、真耶」

「……ごめんなさい織斑先生。でも、行けます」

 

 千冬に謝りながら、真耶は男を拘束する手立てを頭の中でシミュレートする。

……殺傷のためでは無く、相手を拘束するのならば、方法はいくらでもある。

 

「――更識さん。サポート、お願いしますね」

「んふ♪ 了解しました」

 

 真耶は楯無に協力を呼びかけると同時に、使い物にならなくなった《レッドバレット》を手放す。

 そして代わりに両手に大型ハンドガンをコールし、スラスターを噴かして男の後を追った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

(無謀なのか馬鹿なのか……凄い勇気ねぇ)

 

 更識 楯無は驚愕していた――拳銃を装備しているとは言え、何の躊躇いも無くISへと戦いを挑む男に。

 今や世界を席巻し、全ての軍事兵器の頂点に立った究極兵器の力は、十年前の「白騎士事件」以来、世界中の誰もが知っている筈なのに。

 それに立ち向かうなど、愚の骨頂とも言って良い。

 

(まぁ、そんな馬鹿なオジサマも嫌いじゃないけどね)

 

 そんな事を考えながら、楯無は千冬のIS刀を避け、更に後退しようとする男目掛けてラスティ・ネイルを振り上げる。

 

「止まりなさい……なっ!!」

 

 狙いは足――加減抜きの、切り飛ばす事を目的とした一撃。

先に敵対行動をしたのは男の方――文句は言われまい。

 

 

――ドクンッ!!

 

 

「…………っ!?」

 

 だが、その時楯無は見てしまった――男の射抜くかのような眼光を。

 男の眼に宿る光……それは血と硝煙に塗れながら、泥を食み、血を啜り、最期まで敵の喉元へと牙を突き立てようとする獣の瞳。

 今まで経験した事の無い殺気に当てられ、楯無の心臓が跳ね上がり、身が竦む。

 

 

――しかし、彼女も世界の「裏」を知る更識家の長女。

 

 

 すぐに立ち直り、硬直しかけた右手と共に蛇腹剣を振り下ろした。

 

――ジャリンッ!!

 

 狙いは僅かに逸れ、男の足元を抉る。

 

「ちっ!?」

 

 男は体勢を崩すが、勢いを殺す事無く地面を転がり、乗っていた「機体」の陰に身を飛び込ませた。

 

「――面白い……面白いわよ貴方っ♪」

 

 分かってはいても、顔が緩むのが止められない。

 

 

 どのような人生を送ったら、あのような目が出来るのか?

 

 

 この男の事を知りたい――そんな興味が湧いてくる。

 

 

 楯無の顔はいつしか、学園最強を誇る生徒会長でも、ロシア代表でも、「裏」を統べる楯無の長女でも無く、常に周囲をかき回して翻弄し、それを大いに楽しむ悪戯猫のような表情に変わっていた。

 

「――更識さん、サポートお願いしますね」

「んふ♪ 了解しました」

 

 真耶の言葉に上機嫌に微笑むと、楯無はラスティ・ネイルを収め、四門のガトリングが備えられた長柄のランスをコールする。

 すると、アクア・クリスタルから溢れ出した水がランスの周囲を螺旋状に取り囲んだ。

 「ミステリアス・レイディ」の持つもう一つの武装――「蒼流旋(そうりゅうせん)」だ。

 本来ならばそれなりの脅威と認識したISにしか使わない強力な武装だが、それを使う事に楯無は何の躊躇いも無かった。

 

 

――手など、抜くつもりは無い。この表情になった楯無は、いつも本気なのだから。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

(クソッ!! 冗談じゃねぇぞ!!)

 

――ディンゴは、決死の覚悟で飛び込んだジェフティの機体の陰で、乱れた呼吸と暴れまわる心臓を抑えるのに必死だった。

 ブラフが上手く嵌り、機先を制する事が出来たのは僥倖だったが、初撃を凌ぐだけでここまで体力と精神力を消耗するとは思わなかった。

 それに加えて――

 

(よりにもよって量子変換(インストール)だと!?

 しかも、武器まるごと変換出来るデータ領域のあるパワードスーツなんて聞いた事もねぇ)

 

――量子変換(インストール)とは、物質を量子化させ、データとして保存する技術の事だ。

 これを使えば、重さや大きさを無視して大量の物資を運べる上に、自由に出し入れする事も出来る。

 この技術によって、宇宙・地球上問わず物資のやり取りは非情に容易となり、最小限の装備で最大限の荷物を運ぶ事が可能となった。

 勿論、軍事にも転用され、様々な武装や弾薬のデータを積んだLEVは、「無限火薬庫」とも称されたという。

 

 

……しかしこの量子変換、こと軍事方面に関してはあまり発達しなかった。

 

 

 量子変換には、量子化させる物体の構造が複雑であれば複雑であるほど、必要なデータ領域が増大するという欠点が存在する。

 そのため技術が発達して武装の構造の複雑化がすると、その容量は次第に巨大になっていき、LEV用の武装を量子変換すれば、LEVではデータ領域が足りずに扱えず、OFでは機体性能に対して武装の性能が貧弱過ぎてコストに見合わない、という事態に陥った。

 かと言ってOF用の武装を量子変換すれば、LEVはそもそも武器自体を扱えず、OFもあまりにもデータ領域を食い過ぎて他のシステムを圧迫してしまうという、正に「帯に短し襷に長し」といった中途半端なものになってしまったのである。

 

 更に、アンチプロトンリアクターの開発による内蔵武器の強化、ベクタートラップの発達が進んていった事も関係して次第に軍事に関する量子変換技術は廃れていく。

 ディンゴの生きる時代には、量子変換はLEVの弾薬や推進剤、エナジーパックの輸送や補充などの目立たない部分にのみ使用されるに留まっていた。

 OFに関しては、ベクタートラップの他に、メタトロンを介して一時的に物質を量子変換してデータとして移送し、移送先で再び再構成させるという「トランスプランテーション(データ移植)」と呼ばれる技術が開発された事で、結果として殆ど使われなくなった。

 

 

 ディンゴ自身、弾薬ごと量子変換された武器など、ついぞお目にかかった事が無い。

 ここがAD.2077年であるというエイダの言葉が、今更信じられなくなってくる。

 

(弾薬は……これっぽっちか)

 

 マガジンを抜いて弾数を確認する‥‥残り、十三発。

 かなり節約したつもりだが、敵が量子変換可能な武装をあと幾つも持っていると考えれば、自決用に使った方がまだ実用的なレベルだ。

……何にせよ、これが無くなった時が、ディンゴが制圧される時だろう。

 

――最初は大人しく投降し、捕虜になるつもりだったが、ここが超法規的措置の取れる環境という事を聞かされた瞬間、ディンゴの頭は「抵抗」にシフトしていた。

 最悪の場合、生命の保証はおろか、実験体サンプルとして保存されたり、何かの実験台にされてもおかしくは無いのだから。

 

 

――それに、圧倒的優位を確信している地球人に大人しく捕まるのは、真っ平御免だと思ってしまったことも大きい。

 

 

 アーマーン事件以来、そういったわだかまりを捨てる事が出来たと思っていたが、自分の中で根付いたエンダーとしての「血」が思ったよりも濃かった事に、ディンゴは内心驚いていた。

 

(ま……やっちまった物はしょうがねぇ。今は目の前の事だ)

 

 思考を振り払い、瓦礫の隙間から様子を伺う。

――作戦を変えたのか、今度は「千冬」が後方に回り、2丁拳銃を手にした「真耶」と、水のようなものを纏った長大な槍を構えた「楯無」が前に出ていた。

 

(さて、今度はどう出る……?)

 

 暫しの沈黙の後――「楯無」が動いた。

 一直線に突っ込み、ランスを突き出す――が、それはディンゴの体に届く事無くジェフティのパーツに遮られる。

 ジェフティの装甲は、並のOFでも傷つけるのがやっとの代物だ。

 如何にあのパワードスーツが高性能だったとしても、掠り傷一つ付けられまい。

 

「あら? 随分と頑丈ね……なら、これならどうかしら?」

 

 しかし、「楯無」は嘆く事も無く不敵に笑う。

 その瞬間、ディンゴの背筋を凄まじい悪寒が襲った。

 

「ちぃっ!?」

 

 横っ飛びに地を蹴る――先程までディンゴの頭があった場所を、まるでドリルの如く回転しながら唸りを上げる水が貫いた。

 恐らくは、装甲越しに伝わらせた水を操り、ウォータージェットのように圧縮させたのだろう。

 

「――くそっ!!」

 

 すぐに体勢を整え、二回引鉄を引く。

――だが、二発の銃弾は「楯無」の体を穿つ事無く、彼女の前に張られた淡く輝く青い水の盾によって遮られていた。

 

「無駄よ、無駄無駄♪」

 

 「楯無」の悪戯な笑みと共に、水はしなる鞭となって、ディンゴの手足を拘束せんと迫る。

 無様に転がりながらもそれらを回避し、再び発砲――それも、またしても盾に変じた水に遮られる。

 

 

……その時、背後に風切り音が鳴り響くと同時に、現れる殺気。

 

 

 慌てて振り向くと、そこには逆さまのような体勢のまま、空中でこちらに拳銃を向ける「真耶」の姿があった。

 

「余所見は禁物ですよっ!!」

「何時の間に……!?」

 

 先程まで、隠れていたパーツの向こう側にいた筈なのに、まるで瞬間移動かと思える程のスピードだった。

 すぐに引鉄を引いて応戦するが、銃弾は全て見えない障壁と、装甲によって跳ね返される。

 

(デタラメにも程がある……!!)

 

 圧倒的な火力と機動力、そして強力かつ変幻自在な武装、そして銃弾でも傷ひとつつかない防御力。

 

 これでは……これではまるで――!!

 

 反撃に放たれた「真耶」の銃弾は、ディンゴの拳銃を弾き飛ばし、足元の土を抉って体勢を崩す。

 

(――――OFじゃねぇか……!!)

 

 そこへ、「楯無」の水の鞭が叩きこまれ、ディンゴの体は勢い良く宙を舞った。

 

「がはぁっ!?」

 

 息が止まるほどに激しい衝撃と共に、何度も地面に打ち付けられる。

 そしてアリーナの中ほどまで吹き飛ばされて所でようやく止まったが、ディンゴは最早立ち上がる事が出来なかった。

 

 

――そこへ、再びひたり、と刀が押し当てられる。

 

 

「――まだ、続けるか」

 

 相変わらず冷たい瞳でこちらを睥睨しながら、淡々と告げる「織斑」。

 

「……オーケー、降参だ」

 

 ここら辺が限界だろう――ディンゴは寝転がったまま素直に両手を上げ、観念するように大きく息を吐いた。

 

 「真耶」がほっと息を吐いて武装を解除し、「楯無」が面白そうにディンゴの顔を見つめる。

 

 

――こうして、戦闘と言う名のファーストコンタクトが終わりを告げた。

 




初めてISとの戦闘をすると同時に、多数のフラグを立てるディンゴさんマジ狼(男的な意味で)。
……というのは冗談ですが、初めて書いたISによる戦闘描写、いかがだったでしょうか?
あんまり話が進まないで済みません……。


あと、ちょっとばかりディンゴが強すぎるかもしれませんが、そこは主人公補正という事で一つ……(汗

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