「すごいの……」
地上にいたティアは大和の力を見て驚き、呆然とする。
彼女は大和の力を初見で見たので無理もないとはいえ、いとも簡単にヘカトンケイルの手を砕き、腕を抉って破壊させるといった所業を繰り出したのだから無理もない。
それは他の面々も同様だった。上空で浮遊する竜伐隊も彼には驚かされてばかりだが、尚も驚愕していた。
此方側は竜に触れる事自体が禁忌なのに、容易く物理攻撃でヘカトンケイルを攻撃していたのだから。
空中で青く輝いている彼には、一体どれだけ未知数の力があるのだろう。そう思わざるを得なかった。
「さーてと……」
顔面以外をブラックキュレム状態に変貌させた大和は首をゴキリと鳴らし、空中での体勢を整える。
そう言う彼からは、闇夜に一際目立つ青く弾けるオーラが放たれていた。
これは、理想を追い求めたポケモン“ゼクロム”と、現時点で大和が能力を発動させている“ブラックキュレム”が持つ、独自の特性“テラボルテージ”。
相手の特性の影響を受ける事なく攻撃できる、数少ない“型破り”の同じ力を有している。
流石にヘカトンケイルの不死の力をも無視する事は不可能だったが、特性による恩恵か、再生速度に時間がかかっていた。
そんな巨人も、見れば先程まで爆発に呑まれていた左腕は完治していた。やはり腐っても不死身の能力。その力は絶大であった。
「ま、逆に言っちゃえばいくらでもサンドバッグになるって事だよな」
中々ゲスい事を言う大和。ただ今回はティアの捕獲をヘカトンケイルは目的としているため、木偶の坊とはならない。
その証拠に、向こうから動き出したのだから。
「とはいってもオレとポケモンの前にはやられまくってたけどな、三年前も。所詮、
嘲笑しながら見下す大和。
実はあの巨人が正式な竜ではない事は既に推測していた。キーリの言葉だと、「さすがの私でもあんな巨大な架空武装は作れない」と言っていた。
だが、言い換えれば
悠も最初はそう推測していたが、確信に辿り着く事はなかった。
だが、大和はある理に適った考えを持っていた。
これもキーリが散々言っていた―――「お母様」という台詞から合致した。それは一年前のあの時、キーリが言っていた言葉―――。
『ティア、あなたは―――“ドラゴン”よ』
『ドラゴン……』
『そう、そして私達の母は―――』
そこまで出かけた次の瞬間には、ヘカトンケイルの右腕により握り潰されてしまう。
下から悠達の叫び声が聞こえる。焦ったような声。しかし次の出来事でそのような声は出なくなる。
「……戦闘中考えていた自分も悪いとはいえ、いきなり握り潰す攻撃とかやめてくれませんかねぇ」
握り潰されたと誰もが思っていた大和が、憤りを含めた顔で易々と両手で手を開けていた。
そこから―――ヘカトンケイルの手を弾いて飛翔。
「上等! お前も喧嘩売るってーんなら
そう言った直後、大和の発電機のような尾部が青く発光し始める。見方を変えれば、回転してその摩擦で発光しているようにも窺える。
右腕も同時に青く発光し始め、ホワイトキュレム時同様、両肩の氷からトゲ部分がコード状、及びチューブ状に伸び、それが尾部に接続される。
すると先程までの炎ではなく、膨大な量の電気が大和から発生する。
「パワー全開ィィィ! 喰らえッ! クロスサンダー!!」
そして、改めて特性“テラボルテージ”を発動し、次から次へと力が溢れてくる感覚を覚えた大和は、その力を保ちながら彼は巨大な電気の球体を纏い、突進した。
ヘカトンケイルの距離は開いていたが、凄まじい速度で迫ってきた電気の球体は巨人の土手っ腹に直撃。ヘカトンケイルの上半身が電気の奔流に呑み込まれた。
そして―――またも爆発。
「ぐっ……!」
巨大な爆風が発生し、悠達を巻き込み込んでしまうが、皆その場で風に負けないよう踏ん張って耐える。
ただ、集結した竜伐隊をも巻き込む爆風には、空中では抗えず後退してしまう。
「あ、やっべ。ヘカトンケイル近いから攻撃する度に悠達巻き込まれんじゃん。しょうがねぇ」
ぶつかった後、既にヘカトンケイルから距離を取っていた大和が、やっちまったとばかりの表情をする。しょうがないと言いながらも爆散したヘカトンケイルに接近する。
「ふんぬッ!」
彼の追撃とばかりに、残った下半身を“片手で”持ち上げてそのまま投げ飛ばした。
ブラックキュレムの物理攻撃力はドラゴン中最強で、そのパワーは圧倒的なもの。加えて大和自身の力を含めれば、下半身だけとはいえ、余裕で片手で持ち上げて投げられる程のパワーに。
復元途中でヘカトンケイルは地面に叩きつけられた。悠達はその衝撃によるものか、大きな地響きが鳴動する。そこから大和の凄さを改めて実感する。
「けほっ……すごいな」
「……うん」
竜伐隊の内、爆煙で咳き込みながらアリエラと、フィリルが先程のティアと同じ感想を漏らす。
流石に彼女らも改めて大和の勇猛ぶりに凄いとしか言いようがなくなったのだろうか。
「物理が高いからといって特攻が低いと思うなよ!」
ヘカトンケイルを投げ飛ばして距離が開いたのだが、大和は攻撃の手を緩めない。
そう言いながら大和は、常に溢れ出てくる電気のオーラを胸の前に収束させていく。
次第にバランスボールより一回り大きく、大砲の玉のような電気の塊が出来上がっていた。
「いきますよ~1919。電磁砲!!」
そして―――殴って飛ばす。
「電磁砲」と呼ばれた電気の塊は肩回りまで再生していたヘカトンケイルに炸裂し、再び大爆発を起こした。本来、この技は命中率が五十と半分が当たらない確率だが、二重で特性“鋭い目”を使用し、確実に当てられるようにしたのだ(ロックオン+電磁砲でいいのではと言ってはいけない)。
再度彼らの元に風が押し寄せるが、先程より距離が開いていたためか耐えきれない程ではない。
左上半身が跡形もなく抉れ、膝より上がなく不自然に立っている巨人。更に全身には電気が走っている。この技は当たると確実に対象を麻痺させる事を可能とする。
しかし、傷を全て治すヘカトンケイルには一時的なものに過ぎず、修復途中で邪魔するなと言わんばかりに健在している右腕を此方に伸ばしてくる。
それでも大和は防御姿勢を見せず、赤く沸騰したかのようなオーラを纏わせる。
「げきりぃぃぃぃんッッ!!!」
高らかに声を上げながらエルボーを繰り出す形で突進を仕掛けた。次第に巨大な手と大和が接触し、その途端大型トラックが勢いよく追突したような音が響き渡る。
次いでヘカトンケイルの腕をひしゃげながら消し飛ばし、肩から脇腹付近を大きく抉らせた。それだけには留まらず、ヘカトンケイルを抉った瞬間、後方の地面にも巨大な衝撃を走らせた。
地面を抉り海面付近ギリギリまで及ぶ衝撃から察して、それだけ凄まじい威力だったのだろう。
尚、この「逆鱗」という技は「暴れる」、「花びらの舞い」による攻撃と同じく、通常なら二・三度繰り返した後、“混乱”状態になるが大和は事前に特性“マイペース”を一時的に使用していたので、混乱する事はなかった。元々マイペースなのかも分からないが。
「そしてぇ……雷撃ッ!!」
膨大な電気を纏った大和は、再生途中のヘカトンケイルに向けて再び突進した。この技はゼクロムのみが習得できる技で、威力が百三十と電気タイプの中で物理技最強である。
直撃した瞬間、周辺に無数の稲光を迸らせる。更にそこから大和は力を込めると、ヘカトンケイルの体を地を抉りつつ滑らせながら後退させていく。技が収まる頃には海の手前まで後退させていた。
「そろそろ頃合いかな……カモン! オレのポケモンよ!」
ミッドガルの手前まで後退した大和は何かを思い出したような表情を出すと、そう言いながら指を鳴らす。
刹那―――夜の帳に天から海と大地を照らす光が訪れた。大和とヘカトンケイルを除いたその場の皆が上を見上げると、東洋の龍のような姿をした生物らしきものが下りてきていた。
―――キリュリリュリシィィィィィィィィ……!
空からその生物が咆哮を上げる。よく見れば黄色い曲線のような模様があり、体を錐揉み回転しながら下りてくるその姿には、悠と深月にとって見覚えのある姿だった。忘れるはずもない、三年前のあの頃、大和と共に戦っていたポケモン―――。
『―――ゲップ。レックウザさん隕石食べまくって腹いっぱいだぜ』
「何やってんのお前」
―――自ら言っていたが、天空ポケモンの“レックウザ”が大和の側に現れたのだった。
『いやぁ、オレァ腹減っちまって(悟空)』
「おっそうだな(適当)」
本来であれば大和のボールから出てくるはずなのだが、伝説のポケモンが何故、空から現れたのか。また、何故ゲップを漏らしているのか。
その真相は、大和が戦う前に時が遡る―――。
「あっそうだ(唐突)。三十億年……いや、三年ぶりの再開なんだ。
大和が、腰に巻いてあるポーチに手を忍び込ませる。
「悠や深月達も奴を倒すのに必死こいてるだろうけど、ここは一つ、オレも仲間に入れてもらいましょうかね。よし、出てこい!」
モンスターボールをポーチから取り出すと、放り投げた。
『キリュリリュリシィィ……!』
鳴き声と共に現れたのは、東洋龍のようなデザインをしており、至る部分に黄色い曲線のような模様が生えているとぐろを巻いているポケモンだった。
「はいはいきゅうりきゅうり」
特に感情に出る訳でもなく、跳ね返るボールをキャッチしながらそう言う大和。
『殿様ぁ、それはちょっと酷くね?』
念話で聞き取りできるようにすると、聞こえてきたのは大和を殿様呼びするレックウザ。そして、ネタにされている事を気にしているらしく、彼にツッコんだ。
「冗談よ。それよりもレックウザさん、力を貸してくれね? ヘカトンケイル倒すのに」
『ヘカトンケイル? …………もしかして、三年前のアイツ?』
レックウザは少し思考すると、三年前に大和と彼? が共に戦った相手だと理解する。
「そ。“青”のヘカトンケイルだったかな確か」
『把握。んー……殿様の命令なら従わない事はねえが、ちょっと頼みがある』
「何?」
レックウザに頼み事を言われ、多少怪訝な表情になる大和。
『腹減った』
「は?」
唐突な腹減り宣言。大和は間抜けな声を上げる。
『いやだから腹減った。塵とか隕石食わして』
「なんでこんな時に? そういうのは自分で管理できるようになってんじゃないの?」
『そうなんだけど、隕石が恋しくて。それにもうちょっと隕石食わないと、メガシンカ? ができるぐらいのエネルギーが足りないっぽい』
レックウザの生態は、主にオゾン層に生息しており、そこで空気中を漂う塵や水、及び隕石を摂取する。それだけで生きていられるのかと疑問に思うところはあるかもしれないが、何億年も生き続けられるという。
また、レックウザのメガシンカについては、キーストーンといったようなものから通じる「人間の祈り」と、長い時の中で摂取した隕石のエネルギーを呼応させて「メガシンカ」を可能とする。
「そういう事ながらまあ納得かな。分かったよ。けど腹膨れたとか、オレが何か合図したら来てくれよ」
『勿論そういう時はちゃんと来てやるぜ。オレは仁義深い性格だからな!』
「どの口が言うかね」
半ば呆れ口調の大和だが、彼は幻のポケモン“フーパ”の能力を使用し、金色のリングを手の上に顕現させる。それを操り、レックウザの手前に移動させるとリングが巨大化する。その大きさは、体を伸ばしたレックウザがすっぽり入られる程。
更にリングの内側の空間が歪み、見るとそこには雲が見られ、星空が見える。どうやらリングが夜の上空にも繋がったようで、行き来できるようになったと思われる。
「これで行けるようになったはずだ」
『サンキュー殿様!』
そう言ったレックウザはリングが出てくるなり、勢いよく突っ込んでいった。
レックウザの体が全部リングに入り、リングの中を見てみると、空を自由自在に翔けていた。
大和は何も言わずリングを操って小さくさせると、そのまま消失する。
「……アイツ、前に戦った時は勇敢な性格だと思ったけど、マイペースかよ!」
大和は一人、静まった体育館の中でツッコミの声を上げたのだった。
―――そして、時は戻る。
「大事な時だってのによー……腹一杯になったか?」
『おうよ! 満足満足! 万全だ!』
呆れながらレックウザに問うと、ばっちしと返答が来た。まるで上司が部下を呆れながらも気に掛けているような様子。
「そっか。それならよし。じゃあアイツを倒すぞ!」
『あいよ!』
「あん時の再現をしてやるぜ……!」
大和は意気込むと、手の甲に埋め込まれたキーストーンに触れる。するとガントレット状のリムから光が溢れ出す。
「メガシンカッ!!」
そして、大和とレックウザから夜の帳を明るく照らす七色の光が発せられる。レックウザが光に包まれながら姿形を変えていく。その様子を、誰しもが見つめていた。これぞ進化を超えた進化、それがメガシンカ。
光から解放され、レックウザの姿を見る。顎が万年筆状になり、粒子を放つ黄色い髭と尾びれが生え、皮膚の何か所にも黄色い斑点が出来ていた。
「―――メガレックウザ、ここに爆誕ッ!!」
『――――――キリュリリュリシィィィィィィィッ!!!!!』
大和が腕を組みながら意気揚々に宣言すると、呼応したメガレックウザが大気を揺るがす巨大な咆哮を上げた。
「風よ、荒れ狂え―――デルタストリーム!」
そして、大和が真横に右手を翳した瞬間、先程まで星空を見せる程の良い天候から一変、雲に覆われると同時に謎の乱気流が発生する。
メガシンカしたレックウザの特性、“デルタストリーム”。天候を変化させる技や特性を無効にする特性で、レックウザ及び味方の飛行タイプの弱点となる技のダメージを通常のダメージに半減する事が可能。
一見すると、空を飛ぶ竜伐隊にとっては不利になるかもしれないが、空気によって自ら飛行しているので相性が良かったのか、何の問題もなかった。寧ろこの特性はどちらかといえば、自分達よりも相手の方が不利になる事が多いためである。
その時だった。
―――ノイン、起動要求―――
悠の頭の中に無機質な声が響いたのは。
「ユグドラシル……か?」
声の主は“緑”のユグドラシル―――三年前、悠がヘカトンケイルを倒すために取引をした相手。
悠の心情とは裏腹に、ユグドラシルは感情の見えない機械的な声音で、一方的に言葉を流し込んでくる。
―――フィーア・リヴァイアサン殲滅時に、権利は継承済み。起動要求、コード・フィーア。起動要求、
「アンチ、グラビティ?」
確かそれは、リヴァイアサンが持っていた斥力場を発生させる能力―――。
彼がその言葉を口にした瞬間、左手の竜紋が熱くなり、純白の光を放つ。まさかとは思った悠は掌に
―――ビシッ!
左手の前に生成してあった黒い上位元素の塊に、白い亀裂が走る。パリンと殻が割れるように黒から白へと反転する上位元素。
その途端、全身が浮遊感に包まれる。
「きゃあっ!?」
イリスの悲鳴が聞こえて悠が目を向けると、周りにいた皆が宙に浮いていた。地に落ちていた木の葉も水中にあるかのようにふわふわと漂っている。
「ん~?」
空中に佇んでいた大和も不思議に思ったのか、周りの様子を眺めていた。自力で飛行しなくてもその浮遊感に身を任せて、落ちずに済んでいた。
また、メガレックウザが発生させた乱気流の影響によるものか、そこまで不安定さはなかった、
「兄さん……それはまさか、反重力物質……?」
深月が悠の手にある白い球体を見て、驚愕の声を挙げた。
「なーるほど、“白”のリヴァイアサンの
大和が宇宙にいるかのように、逆さまの状態でそう言い放つ。
「何故俺が……」
使えたのか。何故突然それが使えたのかその確証は何もないし、自分にとっても分からない。
だが今大事なのは、この好機を逃さない事。
上位元素から生まれた白い球体は、徐々に小さくなっていく。これが消えた時に今の現象が終わるのなら、急がなければならない。
「深月! 今のうちにもう一撃だ!」
「っ―――分かりました。総員、次撃用意! 目標、対象の胸部中央!」
すぐさま竜伐隊隊長の顔に戻った深月は、全員に指示を下す。
皆、空中にいる中で架空武装を再生成し、遠方にいるヘカトンケイルに照準を合わせた。
「大和さん、どうしますか?」
大和とポケモンの力を借りたいという意図を含めた深月の言葉を瞬時に読み取り、頷いて指示を仰いだ。
「よし、ならヘカトンケイルの胴体目掛けてレックウザに突進させる。その直後に皆の空気変換による攻撃お願いできる? 連携攻撃って感じで。カウントをお願い!」
「分かりました! カウント
「オケイ! レックウザ、ガリョウテンセイの準備!」
『ヒャッハー! ぶちかましてやるぜぇぇ!』
大和がレックウザに指示を出すと、言われた本人はテンションが上がると同時に、体表の黄色い斑点が輝き始める。
「4、3、2、1―――」
「行けッ!」
深月がカウントを数え終わる直前に、大和が手を前に突き出しながらレックウザに言った。
そして、レックウザが体表と同じ緑のオーラを纏い、勢いよく突進した。その姿はまるで「
「―――放てっ!」
その直後、島の至るところから放たれた風が束ねられ、レックウザを後押しする。自身の体色と同じ巨大なオーラを纏って突進する「ガリョウテンセイ」は「インファイト」の飛行タイプ版で、生半可なものではない。
それ故か―――いつの間にか突き出していたヘカトンケイルの腕を消し飛ばし、胸部に直撃する。ヘカトンケイルは衝撃に大きく上半身を“く”の字に曲げ、突進が止まらないレックウザと巨大な風により空中へと運んでいき、その体を貫いた―――その頃には、ヘカトンケイルの巨体は高く宙に舞っていた。
そこでとうとう白い球体は消失し、辺りに重力が戻る。
「きゃんっ!?」
イリス達は尻餅をつく中、悠と大和は地面に降り立ち、空を睨む。
あの巨大なヘカトンケイルが、信じられない程の高さまで吹き飛んでいた。このまま行けば狙い通り海へと落下するだろうが、その衝撃は計り知れない。高波でミッドガルに大きな被害が出るのは確実だ。ならば―――。
「ティア、俺に力を貸してくれ。あいつを、空中で消滅させる」
悠はそう言ってティアに左手を差し出す。
「手……握ればいいの?」
「ああ、頼む」
悠が頷くと、ティアは小さな指を絡ませ、彼の手をぎゅっと握った。
「じゃあ、オレもいっちょやってやっか!」
協力すると言わんばかりに大和は衝撃を伴いながら、空中へと飛翔する。
(済まないな……大和)
「ティアはユウのお嫁さん……だから、旦那さまと頑張るの」
「ありがとう―――ティア。じゃあ、大和と一緒にあいつをブッ飛ばすぞ!」
内心で大和に感謝すると同時に悠は右手を真横に翳し、脳内の設計図を生成した上位元素に流し込む。
ティアの架空武装である紅い翼が細かな粒子となり、彼の上位元素と混じり合う。
「対竜兵装―――マルドゥーク!」
構築される砲塔は、かつて存在した前文明の
しかしこれは、マルドゥークという巨大な兵器の一部でしかない。リヴァイアサン戦で決定打を与えたのは、マルドゥークの主砲。そして、今から作り出すのは三年前にもヘカトンケイルを屠った殲滅兵器。追加データを得た今なら、その名も分かる―――。
「―――特殊火砲、
巨大な砲身が物資変換によって具現する。外観はどこか奇妙に幾何学的で、他文明の異質な雰囲気が漂っていた。あくまでも巨大な兵器の一部であるため、その機構は不完全。
至る部分がパイプや回路が剥き出しで、一発撃てば自壊する。
だが、一発で十分だ。
「クロスサンダー……!」
一方大和も、ヘカトンケイルに向けて電気の球体を纏いながら突貫していく。悠が対竜兵装を構築していた事を後方の巨大な力で感じ取れたので、その射線上から外れて向かっていた。
『キリュリリュリシィィィ―――――ッ!!』
甲高い咆哮が聞こえたので軽く目を凝らして見ると、ヘカトンケイルの真横―――からメガレックウザが此方に向かってきていた。互いに反対方向へと突き進んでいたので、瞬く間にすれ違っていく。
「レックウザ、破壊光線ッ!!」
すれ違いざま、大和はレックウザに向けてそう言い放つ。
勢いよく交差した大和はヘカトンケイルよりも更に上空へ、レックウザは海面ギリギリで止まって落下していくヘカトンケイルに頭を向ける。
大和は数十メートル先にいるヘカトンケイルに向けて大技の準備を始める。先程まで全身を纏っていた
海面の上に浮遊しているレックウザも、口元に強大なエネルギーを収束していく。
悠も星空に浮かぶヘカトンケイルを見据える。精神と連動した砲塔は自動で動き、ゆっくりと落下に転じた巨人へ照準を合わせた。
「行くぞ―――」
「うんっ!」
悠の掛け声に、ティアが応じる。強く繋がった手から流れ込む上位元素を、砲弾のエネルギーへと変え―――。
「―――――
境界を焼く蒼炎から蒼い砲弾を放つ。
「フリィィィズ―――ボルトッ!!」
大和は溜めに溜めた巨大な氷を、全身を纏っていた電気ごと―――撃ち放つ!
『――――――――ッ!!』
レックウザも仰け反りながら巨大な黒い光線を撃ち放った。それは、海を裂く程の衝撃。
蒼く輝く砲弾、黒い光線、そして電気が入り混じった氷の塊が、一直線にヘカトンケイルに吸い込まれ……巨人の体をも呑み込む閃光が巻き起こる。
あまりの眩さに空からは星が失せ、大地には濃い影が刻まれるが、それは唐突に小さくなっていく。
そして、あまりのエネルギーの密度の膨大さによるものか定かではないが―――。
夜の帳に勢いよく光が弾け、特大の爆発が海の上にて巻き起こったのだった。
次にあなたはヘカトンケイルェ……。と言う!
……済みません、やりすぎました。
今更ですが、今までのホワイト・ブラックキュレムの姿につきましては、擬人化ないしポケモンReBURSTのアレに近い形です……が正直に言って個人的に後者はあまり好きじゃないですね。
自分ポケモン大好きだし、宝石にポケモンを封印するってなんなんアレ。割りたい(本音)
唯一の評価点は女の子達になりますかね(適当)
今回、レックウザが大和を殿様呼びしたのはノブナガの野望を参考にしています。