ファフニール? いいえポケモンです。   作:legends

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お待たせしました。


診断

「―――本日、一・二時限目は授業予定を変更し、臨時の健康診断を実施する。検査はクラスごとに行う。順番が回ってくるまでは、教室で自習をしているように」

 

 深月が朝述べていた通りに、ホームルームで遥はブリュンヒルデ教室にいる面々にそう伝達し、早足で教室を出て行く―――。

 

「ああ、それと大河大和。少し来てくれないか?」

 

「え? あ、はい」

 

 と、慌ただしい雰囲気で出ていこうとしたが、遥は何かを思い出したような表情をし、大和の名前を呼び訊ね、そのまま彼も教室を出て行く。

 

 リーザ達クラスメイトは、何事かと顔を見合わせている。悠は事情を知っているらしい妹の深月に視線を向ける。

 

 一瞬、大和に何か用事があったのかと多少なりに怪訝な表情だったが、恐らくこの手の事についての説明だろうと思ったのか、深月は素知らぬ顔で自習を始めた。

 

 やはりまだ説明するつもりはないらしい、と悠は感じていた。

 

 しばらくして遥は教室に戻り、「順番だ、保健室へ向かうように」と告げた。

 

 大和の姿を見ていない事に気がかりであったが、あまり気にしていても仕方がないので、彼らは席を立ち、教室を出る。

 

 その途中、深月達の後に付いていこうとした悠の肩に、手で掴まれる感触が伝わる。

 

 見るとそこには、自分の右肩が黒い手でガッシと掴まれているではないか。

 

「なっ!?」

 

 更に視線を後方に向けると、直接手を使わず、背中から黒い影のような手を長く伸ばして腕を組んでいる大和の姿があった。

 

 その様子に、悠は驚愕せざるを得ない。

 

 距離は、およそ十数メートル。棺桶ポケモン、“デスカーン”の能力である割と長い距離で伸びていた黒い手は、悠を手元に引き寄せるが如く、不気味な効果音と共に大和の元へ引っ張られてしまう。

 

「では大河大和、物部悠を頼んだぞ」

 

「イエッサー!」

 

 ズルズルと悠が引っ張られていくのを尻目に、遥は敬礼の姿勢の大和にそれだけを告げ、その場から去っていった。

 

「ちょ……。大和、どういうつもりだよ!」

 

「センセーに言われたんよ。悠と一緒に学園長室に行けってさ」

 

 悠が大和に疑問をぶつけるが、大和が遥に伝えられたらしい言葉を述べる。

 

 余談ではあるが、大和の隣に位置するところまで引き寄せられると同時に、黒い手を離し、それは大和の内へ吸い込まれるように消えた。

 

「篠宮先生が……?」

 

「ああ。何でも『物部悠が検査を受ける時、恐らく場所が分からず女子と一緒に検査を受けるかも知れない。なので強引な手を使ってもいいから学園長室へ君が引っ張っていってくれ』って頼まれたのさ」

 

「そ、そういう事か……」

 

 悠は確かにあのまま行ってしまえば、複数の女子勢の中、一人だけ男子が紛れ込んでいるという、社会的に非常に不味い状況になったと理解し、感謝した。

 

 ただ同時に、遥の強引な手を使うという事を、いささか大和に伝えたのは流石にヤバいのでは? と冷や汗を浮かべていた。

 

「だけど、何で学園長室に行けって大和に伝えたんだ?」

 

 悠は大和に疑問を訊ねる。確かにそう思うだろう。大和は教員やミッドガルの職員及びその該当する役職の立場ではない。なのに一緒に学園長室に行くというのは、不自然に感じる。

 

「オレ学園長室に隔離されてたんだよ。だから多分知ってる奴がいた方が案内も楽なのかと思って」

 

「……ああ、なるほどな」

 

 そんな悠に対して、大和はそう言った。

 

 確かに、悠がニブルからミッドガルに異動する時は、深月の権限によるもので決まった。

 

 しかし大和は違う。深月による“保護”という名目で、学園に入るのを促したのである。同時に、学園長室に隔離された。その後、白の竜を倒した功績等により学園入学が決まったのだ。

 

 この異例の事態は、流石に深月でも不測の事態故に学園側の最高責任者との相談が必要だろうと思ったまで。

 

 そう考えれば、納得出来るところはあるが、悠は同時に腑に落ちない部分もあった。

 

 それは大和が言った「学園長」という言葉。ミッドガルにそんな役職の人物がいるとは思っておらず、てっきり遥がミッドガルで偉いのかと思っていた。

 

 二人が転入してきた際に行われた全校集会でも、学園長などという人物は現れなかったため、今までその存在すら知らなかったのだ。

 

 そんな、思考に耽る悠を余所に、大和はひたすら歩いていき、悠も後に続いていく。

 

 渡り廊下を通り、時計塔のエレベーターに乗り込むと、大和は最上階のボタンを押した。階数を示す表示が、凄い速さで上昇していく。微かな耳鳴りを感じた。

 

「こうして来るのは懐かしく感じるなぁ」

 

 大和が転入以前の出来事をしみじみと思っている中、エレベーターが止まり、ドアが開く。するとその先には、大きく立派な木製の扉が聳(そび)えていた。

 

「ここが……そうなのか?」

 

「イエース。プレートあるだろ、こ↑こ↓に」

 

 大和が何処か変なイントネーションで発音しながら扉の横にあるプレートを指差す。そこには“学園長室”と書かれていた。

 

「なあ大和……篠宮先生ってミッドガルで一番偉いんじゃないのか? 学園長っていう役職の人は今まで知らなかったんだが……」

 

 悠は、先程から思っていた疑問を大和に訊いてみた。

 

「センセーは、ミッドガルの非常時の戦闘司令官だってさ。最高責任者は、この中にいる“彼女”らしいお」

 

 大和はそう言って分厚そうな扉を視線で示す。その言葉に悠は、学園長というのは女性らしいと判断出来た。

 

「ところで、俺達どうしてこんなところに? 健康診断をするはずだったんじゃ?」

 

「いんや、健康診断すんのは間違いねーよ? オレらの検査は学園長自らだってさ」

 

 遥から伝えられた事を平然と述べる大和。

 

「学園長が? 一体どうして?」

 

「流石にそこまで知らねぇ。多分気まぐれじゃね? 遥先生は『普段は仕事も録にせず引き籠っているが、時々こうやって無茶を言う。医師免許を持っている話だから、死にはすまい』だってさ」

 

「……学園長ってそんなに危ない人なのか……?」

 

 上手く遥の声真似をしたが、さらっと不吉な事を大和に口にした時点で、悠は慌てた表情になる。

 

「オレは何度も会ってるけどまあ大丈夫だと思われ。因みにセンセーは学園長と話してると疲れるから、オレに任せたんだと」

 

「え? そうなのか?」

 

「そうそう。ま、悠一人で行くよりかはマシだろ?」

 

「それは……そうだな」

 

 悠は考え込む表情を浮かべたが、すぐに首肯した。

 

 確かに一人で行くのは不安がある。それに一度会っている大和もいるため、そこまで不安がある訳ではなかった。

 

 それはかつて、大和の面談の時に深月が同行したのと同じ事をしているようなものであった。

 

「んじゃ、入るぞ」

 

「分かった」

 

 悠は意を決したのを見て、大和が扉をノックする。

 

「―――どうぞ」

 

 女性の声が返り、大和は慎重に扉を開いた。

 

(そういや前も、こんな感じだったな……)

 

 前回と同様の出来事が、脳裏にフラッシュバックする。

 

 そんな大和とは裏腹に、悠は部屋の中の雰囲気に圧倒されていた。

 

 部屋の中は廊下よりも暗く、独特な香りがした。何か香を焚いているのかもしれない、と悠は感じた。

 

 時計塔の最上階という日当たりの良い場所なのにも関わらず、奥の窓は分厚い遮光カーテンに閉ざされている。

 

 室内にいるのは二人。

 

 立派な椅子に深々と腰かけている金髪碧眼の少女、その脇に立つメイド服を着た女性。

 

 少女は小柄で、一見すると悠や大和よりも年下に見える。が、悠は戦場で磨かれた彼の勘がそれを否定した。

 

 余裕ある表情と、値踏みするような視線、リラックスした体―――彼女は間違いなく彼よりも経験値が上のベテランだと感じられた。

 

 息を呑む悠だが、そんな緊張しているらしい彼に、肩をポンポンと叩きながら大和は声を掛ける。

 

「そう緊張なさんな悠。学園長だからと言ってそこまで強張る必要ないって」

 

「いや、だけどさ……」

 

 何度も会った事のある大和が隣にいるとはいえ、やはりこうして対面するのは何処か強張ってしまう。

 

「よいよい。そなたが緊張しているという事は、私を侮ってはおらぬという証拠だ」

 

 愉快そうに笑う少女。ドアをノックした時に返ってきた声とは違うため、先程応えたのは、隣のメイドの方だ。

 

 じろじろと遠慮なく悠を眺め回した後、少女は言葉を続ける。

 

「私がミッドガルの長、シャルロット・B・ロード。それでこっちがマイカ・スチュアート。私の専属秘書をやっている」

 

「初めまして、マイカ・スチュアートです。以後、お見知りおきを」

 

「物部悠です。よろしくお願いします……」

 

 悠は学園長とマイカに挨拶を返す。

 

 お互いに自己紹介を終えた後、シャルロットは大和に視線を向ける。

 

「そなたにこうして堅苦しい自己紹介するのは二度目だな―――人外並みの力を持つ、大河大和」

 

 悠は、ただ大和に視線を向け、指名しただけなのに何処か身震いを思わせる程の強みを感じた。

 

「そっすね。あと、オレは人外じゃないんで。人間なんで」

 

 そんなシャルロットの言葉に対し、特に物怖じする事なく、手を挙げながらただ反論する大和。

 

 ここまで来れば、最早大物揃いである。

 

「……ふ、流石だな。僅かに凄みを利かせたが物怖じすらしないとは」

 

 シャルロットも、改めて大和の強さを実感したらしい。

 

「……そ、それで、どうして俺達の検査を学園長がわざわざするんですか?」

 

 悠は、そんな両者の仲介をするが如く、シャルロットに言葉を投げかける。

 

「ミッドガルにいるのは職員も含めて女ばかりだ。男の体を見て、うっかり発情されてしまうと困る。ここは清らかな乙女が集う、私の楽園(ハーレム)なのだから!」

 

 シャルロットは両手を広げ、高らかに告げた。

 

「は、はあ……」

 

 悠は反応に困り、頬を掻く。どうやら学園長は、ちょっと変わった人物のようだと感じ、また篠宮先生が会うのを避けた理由が、少しだけ垣間見えた気がした。

 

 大和は、この言葉聞くのもう何度目だよww と草を生やしながら内心で笑っていた。

 

「相変わらず歪んでらっしゃるようで」

 

 そしてシャルロットの言葉にズバッと言い切る大和も、ぶっ飛んでると感じた。

 

「ふん、何とでも言うがいい。故に仕方なく、私が自らそなたらの診断してやる事にしたのだ」

 

 大和の言葉に特に気にする様子を見せず、そう言うとシャルロットは椅子から立ち上がり、二人に近づいていく。

 

「えっと……学園長やマイカさんも女性だと思うんですが……」

 

「ふん、私やマイカを初心な乙女達と一緒にするでない。第一、私は男に興味などないからな」

 

「へー」

 

 さらりと衝撃の事実をカミングアウトしたシャルロット。大和がその事に関しては、男嫌いだという事を既に知っているようで、棒読みで言う。

 

 ……脱線してしまったが、シャルロットは悠を間近から見上げる。そんな中、悠が彼女の外見を見る。身長が悠や大和の胸辺りまでしかなく、白い肌は瑞々しい。だが学園長という名目や、先程の発言から生徒達より年上である事は間違いないと悠は感じた。

 

「……学園長の年齢を聞いてもいいでしょうか?」

 

「気になるか? 教えてやっても良いが、そなたらはもう二度とこの部屋から出られなくなるぞ?」

 

 目を細めてシャルロットは嫌らしく笑う。

 

「やっぱり、遠慮しておきます……」

 

「ふむ、それが賢明だな」

 

 シャルロットは口の端を歪め、悠の左手を掴んだ。

 

「何を―――」

 

「これが、そなたの竜紋か?」

 

 驚く悠に問わず、シャルロットは彼の左手の甲にある小さな痣を見ながら問いかけた。

 

「は、はい……」

 

「近くに傷があるな。これはいつからだ?」

 

 竜紋の横にあるミミズ腫れを指差し、シャルロットは訊ねてくる。これは今朝、悠が目覚める前に出来ていたもので、この腫れで悠が目覚めたのだ。

 

「あ、それは今朝起きたら、いつの間にか……多分どこかで引っ掛けたんだと思います」

 

「そうか……」

 

 シャルロットは傷をじっと見つめると、おもむろに顔を寄せ、柔らかな唇を悠の手の甲に押し当てた。

 

「な……」

 

 温かく、湿った感触が傷をなぞる。金髪の少女が、赤く小さな舌を這わせていく光景に、背筋が震える。傷口が染みる。快感を伴う痛みに、声が出てしまいそうだった。

 

 その後、シャルロットが唇を離し、睡液で濡れた傷口を冷静な眼差しで観察する。

 

「が、学園長?」

 

 状況が分からず、悠は声を掛ける。

 

「黙っておれ、じっとしていろ」

 

 が、シャルロットに強い口調で命令され、口を噤む。

 

 その頃大和はというと、シャルロットが検査しているところから離れ、秘書のマイカの側にいた。彼女と悠の検査の流れを見つめていた。

 

 そして数分が経過した頃、ようやくシャルロットは悠の左手を解放した。

 

「―――大体分かった。もう良いぞ。これで検査は終わりだ」

 

「え……?」

 

 悠はポカンと口を開ける。

 

「何を呆けておる。超絶美少女であるこの私に、全身をくまなく調べて欲しかったか?」

 

「超絶美少女(笑)」

 

 シャルロットの発言に、大和が煽っていく。

 

「だが男相手にサービスしてやる義理はない。今回の健康診断は、生徒の竜紋チェックを行う方便だからな」

 

 しかし、シャルロットは彼の煽り発言を軽くスルーし、皮肉げに笑って肩を竦めた。

 

「竜紋のチェックが目的……? それってまさか……」

 

 悠はそんな事をする理由は一つしか思いつかず、息を呑む。

 

「慌てるでない。状況は健康診断が終わればすぐに明かされよう。それより―――」

 

 シャルロットは悠の腕を引っ張り、顔を寄せる。そして悪戯っぽい笑みを浮かべ、小さな声で囁いた。

 

「そなた……検査が終わって暇であろう? これから共に、冒険に赴かぬか?」

 

「冒険?」

 

 悠はシャルロットの意図が分からず、眉を寄せて首を傾げる。

 

「ああ、現在学園では女子の健康診断が行われている。清らかな乙女達が下着姿を晒しているのだ。覗きに行かぬ手はあるまい」

 

「あんた……学園長だよな?」

 

 あまりの発言に、悠はタメ口でツッコんだ。

 

「な、悠分かったろ? 学園長ってこんな奴なんだよ。レズにも程があると思ったんだけどなぁ」

 

 同時に、大和がヤレヤレと手を広げて呆れ口調で言った。

 

「む。私は特にレズではないぞ。ただ清らかな乙女達が好きなだけだ」

 

 流石に言いがかりだとシャルロットが大和の言葉に物申す。

 

「でもあられもない女の子の姿を見に行くんでしょ?」

 

「そうだ。私は学園長だから乙女達の事を思って行くのだ。だから下着姿を見ても問題なかろう?」

 

「いや問題ありまくりだから。学園長だからって見ていい訳じゃないから」

 

「同性だぞ?」

 

「そういう問題じゃないわい。下心丸出しで行こうとしてるじゃねぇか」

 

 何故か二人が討論をし始めた。その様子は何処か子供っぽかったと悠は語る。

 

「全く……。本当にそなたは女に関してはノリが悪い。共に夜を明かした仲だというのに……」

 

「おい、捏造やめーや」

 

「そこでだ、唯一男の“D”である物部悠。そなたならこの抑えきれぬ衝動を理解してくれると思うが。それともそなた、女に興味がないとでも?」

 

 彼女の捏造発言に大和がツッこむが、軽く流して今度は悠に視線を投げる。

 

「いや、人並みにはありますが……」

 

「それは構わぬではないか! 私は男を愛でる趣味などないが、女に関する方で同じ嗜好を持つ友を欲していたのだ! 今日は私の発見した絶好のスポットを―――」

 

 目を輝かせていたシャルロットが、突如として視界から消えた。

 

 顔を上げると、マイカが片手でシャルロットの頭を掴み、空中へ吊り上げている。

 

「シャルロット様、毎度申し上げますがあなたはご自分のご立場を理解しているのですか? 生徒を悪の道へ引き摺り込むのは止めてください」

 

 近くで見ると、マイカは色々な意味で迫力があった。胸ははち切れそうな程大きく、身長も女性にしては高めで悠とそんなに違いはなかった。

 

 それを、改めて大和も再認識したのだった。

 

「は、離せマイカ! 私は、友と行かねばならんのだ!」

 

 じたばたともがくシャルロットを意に介さず、マイカは彼らに向けて微笑む。

 

「あなた方はもう戻って大丈夫ですよ。シャルロット様については、生徒さん達に粗相をしないよう、私がしっかり見張っておきますので」

 

「は、はい、分かりました」

 

「はぁ……済みませんがシャルをよろしくお願いします、マイカさん」

 

 表情は優しいのに、途轍もない圧力を感じ、悠は先程近づいてくる気配も全く察知できなかった。体の重心から見て恐らく武装もしている。彼女は確実にただの秘書ではないと戦慄した。

 

 しかしそれに乗じてマイカの謎の威圧に物怖じせず、仮にも友であるシャルロットをよろしくと大和は呆れながら言う。

 

 学園長を呼び捨てにしたり、自分と反応が一切違う事から、改めて大和のスゴさに圧倒される。―――もっとも、この光景は隔離されていた頃に何回も見たので、スゴさとか関係なかった。

 

 話が食い違いつつ、悠は回れ右を、大和はゆっくりとした動きで扉に向かう。

 

「物部悠」

 

 だが部屋を出る直前、シャルロットが悠に声を掛けた。

 

 振り返ると、彼女はマイカに吊り下げられたまま口を開く。

 

「そなたの傷は―――“消えぬ勲章”だ。誇るが良い」

 

 ―――消えぬ、勲章?

 

 悠の左手を見つめながら告げたシャルロットの言葉に、どういう意味かと視線で問いかけるが、シャルロットは口元に笑みを浮かべるだけで、それ以上語ろうとはしなかった。

 

「あ、その状態でカッコつけてると思うけど、はっきり言ってダサいよシャル」

 

「ええい、うるさい! さっさと戻らぬか!」

 

 そして何度目か大和の煽り発言に、何処か締まらぬ空気だった。

 

 その後はシャルロットが宙ぶらりんでマイカに部屋の奥へ連れられていった。多分説教のお時間だろうと大和は確信する。

 

「何だったんだ……?」

 

「知らね。気まぐれじゃねーの? 先生も言ってたし」

 

 意図も分からないまま大和が先導し、悠は首を傾げつつ扉を閉じ、教室へ戻ったのだった。


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