ファフニール? いいえポケモンです。   作:legends

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今回は最初、悠の視点から始まります。


白の竜の復活

「来ないで……来ないでよ……」

 

 深月は小さな肩を震わせて、訴える。

 

 家や道路、木々や車などを無慈悲にも踏み潰していく彼方より近付く青い巨人、“青”のヘカトンケイルに上位元素(ダークマター)を生成し、黒い球体を彼女はぶつけていく。

 

 相対して、悠はその光景を唯々見ているしかいなかった。彼は深月よりも力が弱く、何も出来ず終いになっている。

 

 彼は力が欲しかった。深月の願いを叶える力、あらゆる苦難を振り払う力、深月を悲しませるあの竜を倒せる力を。

 

 ―――ノイン、要求、確認―――

 

 その時、悠の頭の中に無機質な声が響いた。ぴきっとアスファルトの地面を突き破って小さな木の芽が顔を出す。

 

 ―――全知回路、一部開放、検討、利害一致、取引、提案―――

 

 尚も声が響く。断片的な単語が脳に直接流れ込み、ぶつ切りだった声は、段々と滑らかになっていく。

 

 悠が誰だ、誰だと疑問に思っていると、その声の主は答えた。

 

 ―――我、は、ガイア最古の、竜種、トゥーエ。アハトによる呼称はキスカヌ、もしくは“ユグドラシル”―――

 

「な……」

 

 小さく声を漏らす。

 

 それは地球上に突如現れた七体の超常生物。伝説上の存在と同種であると発表され、ドラゴン総称される怪物達。その内の一体と、声が告げた名は符合していた。

 

 グリーン・ドラゴン、“緑”のユグドラシルである。

 

 悠は小さな芽を見下ろして戦慄する。何故なら、ドラゴン自ら人間に話し掛ける事など、聞いた事もない上にドラゴンの知能が、どの程度なのかが、明確になっていないのだ。

 

 竜災関連のニュースですら、ドラゴンとはコミュニケーション不可能な生物だと扱われているのに……。

 

 ―――再度、確認、我との取引、検討要求―――

 

 ユグドラシルは、先程にも述べていた事を言う。無論、悠はその言葉の意味を理解していなかったが。

 

 ―――提供するのは、力。求めるのは、殲滅―――

 

 殲滅するのは、一体何なのか。

 

 ―――我以外の、竜種―――

 

 お前達は仲間、及び同じドラゴンではないかと今一度悠が問う。

 

 ―――否、我らは別のモノ、あれらは既に役割を終えた守護者、無為に生き長らえ、害を為す者、来たるべき時において不要な存在、星が求めしは、ノイン―――

 

 守護者、害を為す、ノイン……。悠は余りにも唐突過ぎて、言葉の半分が理解出来なかった。

 

 理解したのは唯、ユグドラシルは他種の竜を敵と見なしている事。目の前にゆっくりと町へ近付く青き怪物が共通の敵ならば、利害は一致する。

 

「来ないでぇぇぇぇっ―――――!!」

 

 悠が思考に耽っている間、深月が絶叫しながら全力の一撃を放つ。

 

 その攻撃はヘカトンケイルの体を大きく抉り取ったが、傷は瞬時に回復してしまう。どれだけ傷を付けても修復する不死身の怪物。

 

「ッ……!」

 

 それでも尚、深月は巨人に立ち向かおうとする。

 

「深月は―――諦めないんだな」

 

 悠は静かな声で話し掛けた。

 

「諦められる訳……ないもん」

 

 掠れた声で深月は答える。

 

「どうしてだ? 父さんと母さんは避難した。他の皆だってとっくに逃げ出してる。ここまで守るものなんて―――」

 

「あるよっ! 私達の家があるもんっ! あの町は、私達が家族でいられる場所なんだもん!!」

 

 悠の声を遮って深月は叫んだ。

 

「……そっか、分かった」

 

 小さく息を吐くと、悠は深月の頭に手を乗せる。

 

「兄さん?」

 

「あとは―――俺に全部任せとけ」

 

 悠が強い目で決心した―――その時だった。

 

「待って! 兄さん!」

 

 深月が悠に静止を掛ける。

 

「大丈夫だ。そんなに心配するな。アイツを止めるためにひと仕事しようとしてるだけだ」

 

 彼の身を心配してくれているのか、深月の言葉に対して悠は微笑み、格好付けるようにに大丈夫だと説明する。

 

 が、深月はそうじゃないと首を振って否定する。

 

「兄さん、あそこ……」

 

 深月が指を差し、悠も釣られてその方向を見据える。

 

 

 

 

 

 

『キリュリリュリシィィ………ッ!!』

 

「なっ……!?」

 

 そして―――驚愕。

 

 それは、突如として現れた。

 

 東洋龍のような外見をしている緑色の蛇形の竜。更に、その竜の傍らに佇む漆黒の翼を生やした少年の姿。

 

 彼の元で浮遊している竜は七色の光を帯び、顎が刃状で粒子が発生している長い髭、その姿が変化したと同時に強い乱気流が吹き荒れ、まるで彼らや、悠や深月を守っているようだった。

 

「「!?」」

 

 その一連の流れに驚愕しつつも、何とか二人は正気に保ち、緑色の竜が体と同じ色のオーラを纏い、ヘカトンケイルに突進する光景を見届けた。

 

 少年が竜に跨って直後の突撃。衝撃と共に吹き飛ばされ、ヘカトンケイルは地に伏せた。

 

 その一連の状況は、正に圧巻、驚愕の一言だった。

 

 更には、少年から上位元素よりも禍々しいと言わんばかりの暗黒の球体が放たれ、続け様に緑色の竜から竜を彩ったような七色のエネルギーが放たれ、ヘカトンケイルを圧倒していた。

 

「な……何なんだ、あいつ等は……」

 

 悠はドラゴンを蹂躙、肉薄している流れの途中、そう呟いた。

 

 深月はその光景に釘付けになっていたが、常時呆然としていた。

 

(だが、あいつ等が戦っているのに、俺だけ黙って見てる訳にはいかない!)

 

 名も素性も知らない者達の登場には驚きや戸惑いがあったものの、彼等がドラゴンを攻撃している所を見る限り、不死身とは言え倒そうとしているのに違いない。

 

 つまりそれは、自分等が成すべき事をするのと同じ。淡い期待を抱いた悠の心は覚悟を決めていた。

 

 ―――力が、欲しい。その取引、受けてやる!

 

 絞り出すように心の中で告げる。

 

 相手が誰であろうと、どんな対価を支払おうと構わない。

 

 もうすぐ消え去るであろう町の運命を変えられるなら、それで十分だった。

 

 ―――承認、接続―――

 

 ヘカトンケイルと対峙している者達の影響か、定かかは分からないが、淀みを含んだユグドラシルは、そう呟いたのだった。

 

 その時流れ込んできたものは、悠が想像していたものとは違い、全くエネルギーが付随しない、それ単体では無意味なものだった。

 

 膨大な―――かつて存在した力の情報。

 

 悠はその時を以て、多くのものを失った。あの時から―――もっと別の“何か”に変わってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ……」

 

 悠がサイレンの音で目を覚ますと、目の前にイリスの姿があった。それも、息の掛かる距離で。

 

 昨日から彼はイリスの護衛役になり、そのお目付け役という名目で、イリスの部屋立ち入ったのだ。

 

 その後、イリスの一緒に寝て欲しいという言葉で、渋々ながらもベッドの中に入る事になったのだが。

 

 無論、深い意味ではなく、イリスの“もしかしたら自分にとって最後の時間・人生になるかもしれない”と、自身の恐怖と一人の寂しさに耐え切れなかったに過ぎない。

 

 いくら“D”という強い能力を持っているとはいえ、彼女も一人の少女。誰かが側に居て欲しい気持ちがあったのであろう。

 

 それが、落ちこぼれであったイリスに優しくしてくれ、手を取ってくれて信頼している悠である。

 

 一方で、当の悠はイリスに何度も迫られて、年頃の男性故か理性や煩悩の戦いがあったものの、それでも堪えて就寝した。

 

 一緒に風呂に入ろうとしたり、二人きりで共に寝るというのは、思春期の少年には強烈な行為であったが、強靭な精神力で持ち堪えた。

 

 ……話が逸れてしまったが、悠はベッドから降りて明るくなっているモニターに目を向ける。

 

 未だに鳴り響いているサイレンは、連絡用のスピーカーから響き渡り、これはリヴァイアサンが警戒区域に接近している事を示す。

 

 攻撃体制を敷いている環状多重防衛機構(ミドガルズオルム)の外側には、ニブルの軍艦がリヴァイアサンの進路を阻んでいる。

 

 対策を済ませた中、海の中に揺らめく大きな影。本格的な侵攻のためか、昨日よりも浅い場所を泳いでいる。

 

 そこから判断してか、ニブルの軍艦から魚雷を一斉掃射し、周囲にいくつもの水柱が上がった。

 

「始まったか……」

 

 攻撃が開始された合図だ。

 

 その瞬間、海に“穴”が開く。それはリヴァイアサンの能力―――万有斥力(アンチグラビティ)。あらゆるものを突き放す、拒絶の力。

 

 押しのけられた海水が高波となって、何隻かの艦艇を沈めてしまう。

 

 豆粒のような船の大きさから、十キロ前後はあるであろう穴の直径。そしてその穴から巨大な生物が姿を現す。

 

「あれが……“白”のリヴァイアサン」

 

 悠は、写真で目にした事はあったものの、こうしてリアルタイムで実際の映像を見ると、圧倒的な存在感に気圧される。

 

 画面の一つが艦艇からと思われるものに切り替わり、悠は映し出されたリヴァイアサンの威容を見る。

 

 しかしその生物には、異様な部分があった。

 

 覆われた全身の外殻には、まるで巨大な剣で切り裂かれたような跡が残り、頭部に生えてある大きな一本の角には多少な罅がある。

 

 他にも前ビレや尾ビレにも僅かな傷があり、幾多の傷から血らしきものが無い事から、古傷かと思われる。

 

(まさか、大和の奴が? こんな大きな傷を付けれるなんて普通は無理だが……)

 

 悠はその光景から推測する。三年前、彼がニブルに移住された直後に大和はリヴァイアサンと遭遇、対決した。

 

 その後、完全とは行かないまでも撃破されたとある。

 

 悠は何度もまさかまさかと思うが、銃火器では傷を付けるのは到底不可能な筈だ。

 

 だが、現時点では抉られたような傷がある。リヴァイアサンの斥力をかいくぐり、且つ強靭な体に傷を生み出せるのは戦ったあの男以外に思い付かない。

 

 というか、そうとしか思えない。

 

 複雑な思考に悩み耽っている中、第二波として艦隊から一斉に、対空砲や対空ミサイルを撃ち始める。しかしそのどれもが空中で静止、押し返されてしまい、戻ってきたミサイルに直撃した艦艇が爆散した。

 

 実弾で斥力場を突破するには、大きな慣性力が必要だ。しかしニブルの可能な限りの高速弾でも不可能であった事から、斥力場の出力が上回っていた。

 

「今ので、いっぱい人が死んじゃったのかな?」

 

 背後から震える声が響いた。悠が振り返ると目を覚ましたイリスが、モニターを凝視していた。

 

「……多分大丈夫だ。前線で攻撃を行うニブルの軍艦は、制御された無人艦がほとんどだからな」

 

 悠はニブルでの経験上からそう述べる。

 

 だが、現時点での防衛勢力を以てしても、撃破出来ていなかった。

 

 ニブルで開発された、ミスリルが用いられ、ドラゴンの表皮を突き破ってから内部で爆発する大陸間弾道ミサイルや、環状多重防衛機構のエネルギーレーザーですらもドラゴンを倒すには至らない。

 

「ああ……第一次防衛ラインが突破されちゃうよ」

 

 イリスはその光景から、落胆の息を吐く。

 

「いや、越えさせるのは作戦みたいだぞ。竜伐隊が第二次防衛ラインで待機してる」

 

 悠は別の画面を指差す。

 

 二人は環状多重防衛機構のレーザーユニットの上空で少女達がそれぞれ武器を構える。

 

 その中央にはリーザの姿があった。架空武装―――射抜く神槍(グングニル)を構え、リーザが何かを叫ぶ。

 

 それと同時に防衛ラインのユニットからレーザーが放たれ、リヴァイアサンに直撃する。

 

 しかし対象が大きな分、痛みを感じる程ではないのか、多少傷付く事など構わず侵攻を続ける。

 

 そこに、リーザを筆頭とした竜伐隊の攻撃が放たれる。

 

 空間湾曲による防御のキャパシティを既にオーバーしていたリヴァイアサンは、攻撃を捌き切る事が出来ず、リーザの放った極太の閃光が、リヴァイアサンの左ヒレを貫通した。

 

 その攻撃に牙を剥き出し、痛みを感じたのか反応を示す。

 

「っ……」

 

「おい、大丈夫か?」

 

 悠の隣にいたイリスが、突然脇腹を押さえた。

 

「……ダメ、怒ってる……皆、逃げて―――」

 

 イリスが着用しているネグリジェの生地を透かして、竜紋が強く輝いていた。

 

 リヴァイアサンの巨大な角を中心に、周囲の景色が歪む。

 

 巨大な口を開けて咆哮を上げるリヴァイアサン。その瞬間、海が、裂けた。

 

 斥力場を前方に展開し、砲弾として放ったのだ。

 

 それは心なしか、大和と対決した時よりも向上している。恐らく、復讐鬼と化したのだろう。

 

 悠達の居るシェルターにまで振動が伝わり、悠はイリスに地震から守るように覆い被さる。

 

 その攻撃が止むと、リヴァイアサンの進路上にあったものが一直線上に全て吹き飛ばされ、レーザーユニットが千切れ飛び、周辺の海に落下。

 

 隊列を組んでいた竜伐隊も、散り散りになってしまう。

 

 おまけに第二次防衛ラインどころか、第三次と最終防衛ラインの大半が崩壊している。

 

 以前のリヴァイアサンであれば、ここまで被害拡大は無かったと思われるが、大和に戦闘不能に追いやられ、深海で力を蓄えていたのだろう。

 

「良くないな……」

 

 悠は苦々しい声で呟く。

 

 今の一撃により、竜と人間の力量差を明確にされる。

 

 竜伐隊は再集結し、攻撃を再開。リヴァイアサンとミッドガルの距離は大幅に縮んだ訳ではなく、猶予がある。

 

 画面に一瞬映ったリーザの横顔には、諦めの色など微塵もない。

 

 しかし、ここまでの戦況で結論を出してしまう者がいればどうなるか―――。

 

(けど、あいつ……大和ならどうするんだ)

 

 再び三年前、ヘカトンケイルを圧倒していた場面を思い浮かべる。

 

 自身はあれ以来、記憶が部分的に欠けていたのだが、その瞬間は鮮明に記憶している。

 

 あまりにインパクトが強かったのか、はたまた余りに常軌を逸していたためか、心理は定かではないものの、とにかく覚えているのは確か。

 

 ドラゴンを圧倒した少年。上司であるロキですら一目置く存在。その気持ちが悠に少し伝わった気がした。

 

 様々な思考に耽っていると、シェルターのスピーカーから音声が響いた。

 

『ブリュンヒルデ教室、出席番号八番、物部悠―――至急、時計塔作戦司令室へ来て下さい。繰り返します―――』

 

 イリスが驚いた表情で悠を見据える。

 

「モノノベ、呼ばれてるよ?」

 

「ああ……そうだな」

 

 悠の内心で嫌な予感が確信へと変わる。恐れていた事態が現実のものとなってしまったらしい。

 

「どうしたの? 怖い顔してるけど……」

 

「イリス、急いで制服に着替えろ。俺と一緒に司令室に行くぞ」

 

 悠は早口で告げる。

 

「え、あたしはシェルターから出ちゃいけないんじゃ……」

 

「いいから早く! ここにいたら―――多分、殺される」

 

 悠は彼女の安全を図るためにも、予感していた出来事を避けるためにも、動き出す―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……」

 

 場所は変わり、第二次、第三次防衛ラインの中間地点。

 

 深月達竜伐隊はリヴァイアサンの万有斥力に悪戦苦闘していた。

 

 此方の攻撃はことごとく防がれ、僅かなダメージを積み重ねて倒そうとする方法を実施し、竜伐隊の総力を挙げて攻撃しているものの、強力な斥力場に阻まれ、更には深月の弓型架空武装から繰り出される切り札、反物質弾を放つも大打撃には至らなかった。

 

 更に、もう一つ分かった事もある。

 

「自壊」

 

 深月が弓を構え、万有斥力が及んでいない部分に向けて細く小さな矢が放たれ、リヴァイアサンに突き刺さる。

 

 “壊れる”という概念物質の矢であり、撃ち込んだ物の状態を無理矢理変化させるという高等技術。

 

 その次の瞬間にはリヴァイアサンの体に亀裂が走るが、突き刺さった鱗の部分が急に切り離され、海に着水する。

 

 今の行いで亀裂は広がる事なく、傷の進行を防いだ。

 

 そう、斥力場も強力だが、自身の肉体の切り離しも厄介なものと化している。

 

 リヴァイアサンは斥力を応用して肉体の切り離しが出来る上、切り離してしまえば毒や連鎖系統の攻撃も無効化。更には全長も大きい分、さほど体を切り離していない。

 

 非常に厄介で、苦戦必至である。

 

(絶対、ミッドガルには届かせはしない!)

 

 だが、深月は決して最後まで諦めず、自分達の学園までは届かせないためにも迎え撃つ。そう闘志を燃やしていた時だった。

 

 

―――ドクンッ。

 

 

 深月は急に身震いした。

 

 急に何故? 目の前の敵が怖くなったから? 違う。既に戦闘に入っている。今になって恐怖が湧いたという事も無きにしも非ずだが、そういった類ではない。

 

 ―――これは別のものからくる。戦いに考え事をしてはいけないはずなのに、何故か急にそれがきた。

 

 そして、それは思い過ごしにならず、すぐに分かる事だった。

 

『こちら作戦司令室、竜伐隊に緊急連絡! 交戦中のリヴァイアサンの場へ謎の飛行物体が高速で接近中!』

 

「え―――」

 

 急に耳に入るその言葉。それはオペレーターらしき女性の声で、高速で此方に“何か”がやってくるとの情報が。

 

「それは、航空機じゃありませんの?」

 

 同じ竜伐隊のメンバーであるリーザが問う。しかし、向こうはいいえと口にした。

 

『その物体は船舶でも航空機でもありません! 凄まじい速さです! もう間もなく第二次防衛ラインに到達します!』

 

 オペレーターらしき人物の言葉に耳を疑うが、今嘘を言えないこの状況に皆が困惑する。

 

 しかし、目の前で相対しているリヴァイアサンが何かに気づいたらしく、急に動きを止めた。

 

 何事かと竜伐隊が見つめた時だった。後方で衝撃音が響いたのは。

 

 皆が振り返った瞬間―――海が、裂けていた。

 

『『『!?』』』

 

 竜伐隊の全員が驚愕する。だが、それだけでは終わらなかった。

 

 海が裂けたと思われる、第二次防衛ライン周辺の場に―――奴はいた。

 

 ゆらゆらと揺れる陽炎のような白いオーラを纏い、ボロボロの黒い翼を生やしていた者。

 

「てめえみたいな竜のフレンズなんか―――」

 

 “彼”が呟きながら勢いを止める事なく突き進んでいき―――。

 

「―――いらねえんだよおぉぉコラァァァ!! 気合ィィィパアアァアアアァアンチッッッ!!!!!」

 

 そして、怒りの声にも似た大声を張り上げながら、白いオーラを纏っていた“彼”が腕を勢いよく振りかぶった。

 

 ―――その瞬間。

 

 斥力場を展開していたにも関わらず、超特大の衝撃が鳴り響き、リヴァイアサンを後退させていた。

 




申し訳ない……。本ッ当に申し訳ない! 本格的な戦闘は次回からです!

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