「ひさ子、本当にこんな場所で日の出なんか見られるのか?」
「心配するなって、私は毎年ここで日の出を見てるんだよ」
・・・それなら良いけど。
「綾崎、ひさ子、見えてきた・・・。」
岩沢さんの指を差す方向を見ると少しずつ空が明るくなってきているのが確認できた。
そういえば初の日の出を見たのもコレが初めてだった。そう思うと少し感慨深いものがあった。
「よし、ここらで皆さんの抱負を語ってもらおうか。まずは玲於奈ちゃんから」
「私ですか?えっと・・・、インターハイ出場です!」
「お、良いね~岩沢は?」
「リズム隊を見つけて、本格的な活動を始める。」
「私も岩沢と同じ、去年はちょっと退屈だったからな。じゃあ最後に綾崎!」
・・・俺の抱負か。少し考えてみる。去年は間違いなく騒がしい一年だった。そして今年も間違いなく忙しいだろう。
だから俺はこう答えた。
「俺の問題に全部ケリを付ける」
そう、まだ問題はたくさん残っている。
「うぅ~緊張する~」
「今更何言ってるんだよ。本番は上手くいったんだろ?」
「強いて言うなら怪しい感じが一つだけあったのよね・・・ちゃんと書いてあったかな~?」
今日はレナの合格発表の日だ。俺も去年はこんな感じだったと、少し懐かしい気分になる。
「よし、行ってこい!」
「・・・ま、待って。」
レナの背中を軽く押すと、こちらに振り返って袖を少しつまんできた。
「どうした?」
「い、一緒に来て・・・」
俺もあの人混みの中に入らなきゃいけないと少しため息をついたが、可愛い妹のためだ付き合ってやろう。
「・・・はいはい」
レナに引っ張られる形で人混みの中に突入。幸いお互い平均より高めの身長なので最前列まで行く必要は無かった。
一般合格から順番に探していると、レナの受験番号である205番を見つけた。
合格ランクはなんと特殊生だった。
「おい、レナあったぞ。」
「え?どこ、どこ!?」
「ほら、特殊生の所。」
「え・・・うそ、やだ・・・なんで?」
突然レナは大粒の涙を流していた。この様子だと自分でも何で泣いているのか分からないみたいだ。
「頑張ったな、レナ。」
「うぅ・・・ぐすっ・・・」
そっと頭を撫でた瞬間、リミッターが外れたようにレナは泣きながら抱きついてきた。
「やったよぉ・・・やったよ、お兄ちゃん!!」
レナが落ち着くまでしばらくそのままにしてやった。
先に来ていた平沢姉妹が驚いた顔をしていたが、レナは気が付いていないようだ。
どうやら憂も特殊生では無いが、特待生で合格したようだ。
みんなが落ち着いて校門を出ようとしたときに、見覚えのあるツインテールが揺れていた。