流星のロックマン 思いつき短編集   作:悲傷

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ジョーカーサンタの長い夜

 世界の治安を守る組織、サテラポリス。そのなかで、とりわけ優秀なのは小さな島国を守るニホン支部だ。

 基地の正門には指紋認証システムが設けられ、リアルウェーブによって作られた何者も通さぬ強固な防壁。警戒を怠ることなく見張りに徹する隊員とウィザード達。

 正門を一目見ただけで、物々しい雰囲気が伝わってくる。

 

「え?」

 

 その建物内で、間抜けな声が上がる。

 

「私がですか?」

 

 声の主はジョーカー。メテオGの一件でロックマンたちの敵となり、自爆して果てたウィザードだ。今はルナやシドウと同じ方法で蘇り、改心してヨイリーのウィザードとなってサテラポリスで働いている身だ。

 

「その通り、君にやってもらおうと思っているんだ」

「いいでしょ、ジョーカーちゃん?」

 

 見た目は40代のおじさんにちゃんづけなんてして欲しくない。だが、何度言っても改めないヨイリー博士に、ジョーカーも諦めている。

 ニホン支部最高責任者の長官の、ジョーカーへ送られる同情の視線が痛い。

 

「しかし、私がサンタクロースをするだなんて」

 

 長官とヨイリーに渋る。筋肉ムキムキで、基本的に笑わない自分がサンタなんて、絶対に似合わない。

 

「仕方ないじゃない。シドウちゃんが風邪引いちゃったんですもの」

「馬鹿は風邪を引かないのでは?」

(身も蓋も無いな)

 

 長官は内心シドウに同情した。

 その横で爆笑するのがジャックだ。彼と姉のクインティアも、あの事件以降、保護観察処分となってサテラポリスに勤めている。

 

「ギャハハハ! シドウの奴、ジョーカーにまで言われてやがる! ってえ!」

 

 クインティアがジャックの頬を抓ったのである。恋人を馬鹿にされたら、誰だってそうする。

 見なかったことにして話を進める。

 

「まあ、プレゼントを配る対象はスバル君達だけだ。夜にこっそり入ってプレゼントを置く。それだけだ。簡単な仕事だと思っておくれ」

(それって、不法侵入では?)

 

 サンタの所業を全面否定するツッコミは、思っても口には出さないでおいた。そして、ちょっと真剣な顔つきになる。

 

「私は、スバルたちの敵でした。ルナをとても恐い目にあわせてしまった。そんな私には、彼らのサンタになる資格なんて無いかと……」

 

 ジョーカーの肩に手が置かれる。長官の優しい笑みがそこにあった。

 

「やれ」

「え?」

 

 顔つきと台詞があっていない。

 

「上官命令だ。四の五の言わずにやりなさい」

「でも」

「やれ」

 

 長官の背後に黒い炎が立ち上がる。相変わらず、人のよさそうな笑みのままだ。

 

「わ、分かりました」

「そうか! やってくれるか! いやあ、快く引き受けてくれて助かるよ」

 

 にんまりと笑う長官。ちょっとむかついた。

 

(パワハラとか労働組合って、ウィザードにも適応されるのだろうか?)

 

 サテラポリスのホットラインに電話してみようと、ジョーカーは真剣に考えた。

 

「じゃあ、プレゼントの用意を頼むよ」

「……えっ? そちらで用意してくれるのでは!?」

「そんな経費無いよ。全部自腹だ。それでは、頼んだよ」

 

 その後、電脳内でウィルスに八つ当たりしているジョーカーの姿が合ったらしい。

 

 

 

「で、なんでこんなことをしているのです?」

「ああ、スバルたちが何を欲しているのか、調査せねばならん。協力してくれ、弟だろう?」

「誰が弟ですか? っていうか、無駄に真剣ですね」

 

 ジョーカーもアシッドも同じプロジェクト内で開発されたウィザードだ。兄弟といえば兄弟だっが、アシッドはあまり乗り気で無いみたいだった。

 

「学校に忍び込むとか、サテラポリスのやることじゃないと思うのですが」

「民家に忍び込むサンタを祝福しているのがニホンだぞ。問題無い」

(架空上の存在と、実在する不法侵入者を比較しても……)

 

 ため息をつくアシッドを気にかけることなく、ジョーカーは壁から顔を半分だけ覗かせてスバルたちの様子を探る。もう、変なおっさん以外の何者でもない。

 

「……よし!」

 

 ある程度情報を集めたころ、チャイムが鳴る。近くの電子機器の電脳内に入って一休みする。

 

「こうやって小まめに姿を隠せば、学校にも迷惑がかからぬだろう。さて、次は……体育館で体育か。移動せねば」

「ところでジョーカー。知っていますか? 『学校に不審なおっさんがいる』『急に消えた』『おっさんストーカーの幽霊』とか、このコダマ小学校で噂が立っていますよ?」

「なに? 本物の幽霊がいるのか!? それとも、本物の不審者? くっ、サテラポリスの一員として、事件を解決せねば……」

(あなたのことですよ)

 

 自分が見えていないらしい。

 

「あ~……私がそっちの情報集めますから、ジョーカーはスバルたちを」

「そうか、頼んだぞ!」

 

 後に、おっさんストーカーは、コダマタウンの七不思議に数えられることとなる。

 

 

 

 クリスマスイブの夜、ジョーカーとアシッドはウェーブロードの上で待機していた。

 

「なぜニホン人はクリスマスイブで盛り上がるのだろうな? アメロッパとかではクリスマスに盛り上がるのだろう?」

「まあ、ニホン人が間違った形でイベントを輸入しちゃったんでしょう」

 

 そんな話をしているうちに、ルナがいるマンションから人が出てくる。クリスマスパーティーを終えたスバル達が出てきたのだ。

 

「えっと……スバル、ゴン太、キザマロ、それにミソラか」

「ミソラは仕事を終えて、急いできたみたいですね。情報によると、ミソラはこのままスバルの家に泊まるらしいです」

「そんなプライベートな情報、どこで集めて来たのだ?」

「ふふ、色々とあるのですよ」

 

 きらりと目を光らせるアシッドが、ちょっと黒く見えた。

 

「にしても、終わる時間が早くないか?」

「小学生ですから」

「そうか……では行くとするか」

 

 プレゼントが入った袋を広げると、一番上に赤い服が用意されていた。

 サンタ服だ。XLサイズの上着とズボンを履き、長靴を身に着けて帽子を被る。最後に、白い髭をつける。

 

「これで、どこからどう見てもサンタだ!

「かけているサングラスが無ければね……」

「こ、これは私のトレードマークだ! 外せぬぞ!」

(そんなこだわりが!?)

 

 後ずさりながらサングラスを抑えているジョーカーの意外な一面に、ちょっと驚いた。

 

「では……」

 

 ゴホンと咳払いする。必要なのだろうか?

 

「ジョーカーサンタ、いざ始動!」

「意外と楽しんでませんか?」

 

 高らかに宣言するジョーカー。

 

「あ、彼らが寝るまで待たねばなりませんよ?」

「うぬう!?」

 

 結局、そのまま一時間ほど冬空の下で凍えることになった。

 

 

 

「目標を補足」

「暗殺じゃないんですから」

 

 最初に尋ねたのはキザマロの家だ。

 こそこそとキザマロの家の周りを歩き、キザマロの部屋の窓まで来る。

 

「鍵がかかっていますが?」

「では、施錠解除だ」

 

 防犯システムにアクセスし、電子キーを外す。

 

「どう考えても、犯罪ですね?」

「何を今さら、もう私は止まらぬぞ」

「止める気も無いです」

 

 ちょっと疲れ気味のアシッドがため息混じりに言う。しばらく、ジョーカーは止まらないだろう。

 

「では、突撃!」

「ラジャー!」

 

 窓を開け、二人は部屋へと飛び込んだ。

 

「はい?」

「え?」

「うん?」

 

 三人の視線が合う。キザマロは起きていたのだ。

 

(やっちまったー!!)

 

 ジョーカーの心の叫び声である。

 

「う、うわあ! 強盗です! 強盗です~!」

 

 叫びだすキザマロ。このままでは近所にまで悲鳴が聞こえて騒ぎになってしまう。

 ジョーカーは最悪の未来を想像した。このままでは、明日はこんなニュースが流れるだろう。

 

―サテラポリスのウィザード。サンタの格好をして不法侵入―

―ニホン支部に責任追及―

 

(これだけは避けねばならん!)

 

 キザマロは未だに騒いでいる。白い髭のせいでジョーカーだと気づいていないようだった。

 

(不法侵入者ではなく、サンタだと知らせねば!)

 

 ジョーカーのやることが決まった。袋を手放し、キザマロの肩に両手を置いた。びくりと強張ったキザマロと目が合う。

 

「さ、サンタさんだよ~!」

 

 似合わない上に気持ち悪い猫なで声と共に、素敵な笑みを浮かべる。

 歯はむき出しにされ、口角が気持ち悪いくらいに上がっている。目は血走り、丸い目が飛び出さんばかりに開かれる。

 

「…………」

「あ……」

 

 キザマロが動かなくなった。白目をむいて泡を拭いている。

 

「えっと……」

「ジョーカー?」

 

 アシッドの視線が痛い。

 

「結果オーライ!」

(開き直りやがったよ、こいつ)

「いや、とりあえずプレゼント置いていこう!」

 

 袋からキザマロのプレゼントを取り出し、慌てて逃げ出した。

 

「ジョーカー、あなた笑い方を知りませんね?」

「しかた無かろう! あれが精一杯なんだ! というか、気絶しなくてもいいだろう!」

「間近であんな気持ち悪い笑顔見せられたら、気絶くらいしますよ」

 

 不法侵入して、子供を気絶させる。もう立派な犯罪であることに、二人は気づいていない。

 

 

 

 次はゴン太だ。

 

「同じ手口を使うぞ」

「もう犯罪者の言葉ですね」

 

 窓を開け、ゴン太の部屋に入る。

 

「ぬおおおっ! なんだこれはっ!?」

「め、目があああ!」

 

 入ったとたんに汚臭が二人を襲った。

 

「鼻が麻痺する……アシッド、これは?」」

「牛島ゴン太。整理しない、掃除しない、洗濯しないと3Sそろった問題児です」

「これでこの汚臭か……うわ、汗だらけのシャツが置いてる」

「食べかけのパンがかび生やしています」

 

 さっそく、綺麗に片付いていたキザマロの家が懐かしくなった。

 

「は、早く撤収しましょう! 一刻も早くここから出たい!」

「同感だ!」

 

 ジョーカーが足を前に出す。そこに、バナナの皮があることに気づかずに。

 漫画のようにジョーカーの大きな体が宙に浮き、反転して落っこちた。大きな音が鳴る。

 

「がああ! い、痛い!」

「ああ、ちょうど後頭部におもちゃが!」

「ちゃんと片付けておけ!」

 

 ガチャリとドアが開いた。ゴン太がいた。二人と目が合う。

 ゴン太の口が大きく開く。予想される言葉は分かっている。「あー!」とかそんな風に叫ぶのだ。

 

―サテラポリスのウィザード。クリスマスイブの夜に犯罪に手を染める―

 

 ジョーカーの脳裏に新聞の一面を飾る自分の姿が浮かび上がる。

 

「させぬわ!」

 

 超高速になったジョーカーの手がゴン太の口を塞いだ。軽めに鳩尾に一発入れておく。

 

「これで良し」

「いえ、何も良くなってませんよ。犯行重ねちゃってますよ?」

 

 不法侵入に児童虐待だ。

 

 

 

 ゴン太とプレゼントを置いてきた二人は、スバルの家に来ていた。運のいいことに、スバルはもう寝てしまっているらしい。

 

「っていうか、なぜここにミソラがいるのだ?」

 

 スバルの部屋に布団を敷いて寝ているミソラがいた。

 

「部屋のスペースの都合だったんでしょうね。まあ、恋人同士ですから、同じ部屋でも……」

「小学生だぞ。自粛しろ」

「何を想像しているんです?」

「さあ、プレゼント置いてさっさと」

「あれ? 誰かいるのか?」

「ギクリッ!」

 

 アシッドが思いっきり焦り始めた。

 恐る恐る振り返ると、ハンターVGからウォーロックが出てきたところだった。

 

「何、ロック?」

「ん? どうしたの?」

 

 まずいことに、スバルとミソラも目を覚ましてしまった。スバルはベッドから這い出し、ミソラは布団から起き上がる。

 

「あれ? おじさん誰?」

「ささ、サンタさんだよ!?」

「サンタに見えねえよ」

 

 上ずった声でジョーカーが説明する。挙動不審すぎて、全くサンタに見えない。

 

(くそ、こうなったら!)

「な、何するんです!?」

 

 ジョーカーはアシッドを抱え、スバルとミソラに背中を見せる。ポケットからあるものを取り出した。

 

「ちょ、やめ! ぐうう!」

 

 アシッドの悲鳴が小さく上がり、寝ぼけている三人は首を傾げる。

 ジョーカーが向き直り、両手に抱えたものを見せ付けた。

 

「トナカイさんだよ」

 

 赤い付けっ鼻をつけられたアシッドがいた。ご丁寧に、頭には角もついている。

 ちょっとむかついたアシッドがひそひそとジョーカーに耳打ちする。

 

「無理があり過ぎますよ。ジョーカー」

「良いから合わせてくれ」

「こんなのでごまかせるわけが……」

「トナカイがいるならサンタかな?」

(通ったー!?)

 

 頷きあうスバルとミソラに内心驚きながらも、ジョーカーはガッツポーズをとった。

 その隣で、ウォーロックは直も首を捻ってアシッドを見ている。

 

「う~ん、誰かに似ているような……」

 

 視線が痛い。とりあえず、ジョーカーに合わさなくてはならない。

 

「サンタさんでーす」

「トナカイさんでーす」

 

 陽気にはしゃいで振舞ってみせる二人。

 ところが、またしても二人は首を傾げる。

 

「肌が黒いですよ?」

「日焼けしたのさ!」

「これ? トナカイですか?」

「流行に乗ってウィザードにしたんだよ」

「似てなくないですか?」

「あ~、うまく似せれなかったんだ」

 

 スバルとミソラから交互に投げかけられる質問に、ジョーカーはたくみに返していく。

 

「不細工なトナカイだな」

「だよね?」

 

 これは失敗だ。アシッドの頭に怒りマークが生まれていく。

 

 

 

「すまん! 許せアシッド!」

「許しません!」

 

 無事にスバルたちをごまかしたジョーカーは、アシッドに追いかけられながらウェーブロードを駆け抜ける。喧嘩相手のウォーロックにあんな醜態を見せてしまったのだから相当ご立腹だ。

 爪を振り下ろしながら追いかけている。

 

「さ、さあ! ここまでだ! ルナの家に着いたぞ」

 

 最後の一軒はルナだ。

 ジョーカーはルナの部屋の窓を開けて中に入る。

 

「なあ、アシッド……これって……」

「真夜中に少女の部屋に忍び込む。変体の極みですね」

「こう考えると、サンタって本当に変な存在だな」

 

 完全に変体おっさんに成り下がったジョーカー。忍び足で、ルナが寝ているベッドのそばに近づけば、もう庇う言葉が見つからない。

 

「それでも、枕元にプレゼントを置くのがサンタだ」

 

 頭まで布団を被っているルナに近づいていく。

 

「ジョーカー、辛くないですか?」

「……辛いに決まっているだろう」

 

 ジョーカーは、ルナを一度消したのだ。

 彼女への罪悪感が胸に渦巻いている。その身で彼女にプレゼントを渡しに来る。複雑な気持ちだろう。

 

「だが、ここで逃げてはいかん。そう思うのだよ」

 

 ジョーカーがベッドのそばによってきた。袋から最後のプレゼントを取り出した。

 

「ルナ、メリークリスマスだ」

 

 置こうとしたとき、部屋が明るくなった。灯りが点いたのである。

 

「え?」

 

 途端に飛び込んでくる制服に身を包んだサテラポリスの隊員が一人。後ろに人が何人もついてくる。

 

「わあ! 待て! 私は!」

「ジョーカーちゃん、よくやったわね」

「……へ?」

 

 いかついおっさんの「逮捕だ!」とかそんな声が聞こえてくると思ったら、老婆の穏やかな声だった。

 落ち着いて見てみると、制服に身を包んだ青年が勝ち誇ったような笑みを見せている。

 

「フフフ、作戦通りだな、アシッド」

「はい、シドウ」

「え? ええ?」

 

 シドウの元にアシッドが帰っていく。

 

「風邪じゃなかったのか!? って、お前達、グルだったのか!?」

「アシッドだけじゃないぞ?」

 

 長官がゆっくりと入ってくる。

 

「長官!? っていうか、ニホン支部最高司令官がこんなところで何やっているんです!?」

「年休取った」

 

 ケラケラと笑っている長官に、ジョーカーは呆れた。

 

「スバル君たちにも協力してもらってな。君にドッキリを仕掛けさせてもらったのだよ」

 

 シドウと一緒に入ってきたスバルたちは無邪気に笑い合っていた。いつの間にかルナもいる。

 盛り上がっているベッドを見てみると、モードがひょっこりと出てきた。

 

「いたずらのために年休使わないでください」

「ただのいたずらじゃないよ」

 

 スバルが子供達を代表して前に出てくる。

 

「ジョーカーは、僕達と一緒にいることに抵抗があったでしょ? 特に委員長に」

「わ、私のために……?」

 

 子供達の顔を見てみる。ミソラもゴン太もキザマロも、こっちに笑っている。

 

「では、皆の反応は演技だったのか?」

「キザマロの気絶は素だぜ」

「ちょ、ジャック君言わないでください!」

 

 ジャックがからかって笑い、キザマロが恥ずかしそうに抗議している。よくよく考えたら、彼らのウィザードの内、ウォーロック以外が出てきていない。邪魔にならないようにと、自粛していたのだろう。

 ルナがジョーカーの前に立つ。かつて、自分が消した少女が正面から向き合っている。

 

「さあ、プレゼントいただけるかしら?」

「……ああ……」

 

 袋に残った、最後のプレゼントを取り出す。

 

「メリークリスマス。ジョーカー」

「メリークリスマス。ルナ」

 

 

 

「パーティーを早く終えたのはこのためだったのだな」

「ええ、そうよ。というか、あれも演技よ」

「ですか」

 

 ルナの家では本当のクリスマスパーティーが行われていた。ルナの両親を含め、長官達が酒を飲み交わし、子供達はジョーカーから貰ったプレゼントを開けている。

 

「見て! 最高級の縦ロール制作セットよ!」

「おめでとうです、ルナちゃん!」

「この厚底靴最高です!」

「身長+40cm! すごい!」

「お前ら、それで良いのか?」

 

 ジャックがモードとペディアと一緒に喜んでいるルナとキザマロに哀れんだ目を送る。

 

「うおおお! 牛丼うめえ!」

 

 レトルト牛丼100食分を貰ったゴン太は、オックスと一緒に早速ほおばっている。ケーキの匂いと混ざって、ちょっと不快だ。

 

「何、僕のプレゼント……」

「良いじゃん。私には嬉しいな。見よ見よ!」

 

 スバルに渡されたのは『女性をエスコートできない君へ』と書かれた本だ。よく見つけてきた物だ。

 嬉しそうにしているミソラに促され、早速二人で読み始めている。

 

「アシッドの真似。トナカイさんだよ~」

「ギャハハハハハ!」

「何それ受けるー!」

 

 ウォーロックはコーヴァスとヴァルゴと一緒にアシッドをからかっている。

 

「なら、今のウォーロックの真似。トナカイさんだよ~」

「な、てめえ!」

 

 弱みを握っても、結局ウォーロックがアシッドにからかわれるというのは変わらない。二人の追いかけっこが始まる。

 そんな光景を見ていたジョーカー。彼にシャンパンが注がれたグラスが渡される。

 

「さあ、ジョーカーちゃんも楽しみましょう」

「はい、博士」

 

 グラスをかわし、ジョーカーはシャンパンを口に運んだ。

 一方、クインティアと共に、大人たちに混じってジュースを飲んでいたシドウが立ち上がる。ウォーロックと遊んでいるアシッドを呼び寄せる。

 

「皆さんご注目! これから上映いたしますは……」

 

 アシッドがハンターVGに入り、テレビに電波を送信した。

 

「ジョーカーサンタの長い夜です!」

『ジョーカーサンタ、いざ始動!』

 

 盛大にシャンパンを噴出した。

 サンタ服に身を包んだジョーカーが映っている。

 

「まさか!?」

「おう、ずっとアシッドに撮影してもらっていたんだ!

 

 シドウとアシッドは満面の笑みで笑って答えた。

 慌てるジョーカーを止めるのはヨイリーだ。

 

「こういうのも悪くないと思うわよ」

 

 見てみると、キザマロ相手に必死になっているジョーカーを見て笑っている皆の姿があった。

 皆の笑顔を見て、ジョーカーは手を下ろした。

 

「そうですね、博士」

 

 穏やかな笑みを浮かべた。




 今回のクリスマスネタはこんなものになりました

 久々にギャグ挑戦してみました。
 私には向いていないのかなw

 ジョーカーはあの事件以降は復活して、皆の仲間になっていて欲しいなというのが私の気持ちです。

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