流星のロックマン 思いつき短編集   作:悲傷

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流星のロックマン3、発売10周年!
おめでとう!

記念に一作品書いたが……皆すまん、低クオリティだ!
許してくれ!


甘~いお菓子

 その日、星河スバルは宿題をしていた。ハンターVGのブラウズ画面で、電子ペンをスラスラと走らせる。今日は学校が休みな日曜日。朝からやっていた宿題も、もうすぐ終わるだろう。

 だが、星河家に尋ねて来たお客人は違うらしい。同じテーブルを囲んでいる彼女は、喉から絞り出したような声をあげた。

 

「ねえ、スバルくん……」

「ミソラちゃん、質問回数の上限は三回って決めたよね?」

「そうだけど……」

 

 涙を潤ませて訴えてくるミソラに、スバルは気丈な態度をとった。

 

「分かんないよ、こんな問題……」

「教科書データを見なよ。ちゃんと書いてあるよ。後はそれを応用するだけ」

「う~、ケチ~」

 

 今日のスバルはミソラと宿題をしているのだ。だが真面目で将来宇宙飛行士を目指している優等生なスバルと違って、ミソラはアイドル活動で忙しく、学校にも行かず、勉強らしいことは全くしていない。その結果が宿題の進行速度にそのまま表れた。学校が違うので宿題の内容も異なるのだが、それでもミソラの速度は遅すぎる。

 

「ねえ、休憩しよ休憩」

「また?」

 

 ハンターVGのブラウズ画面を操作して、宿題の画面からホーム画面へと戻って時間を確認する。

 

「まだ30分しか経ってないよ」

「チッチッチ、違うよスバルくん。30分『しか』じゃなくて、30分『も』だよ!」

「いや『しか』でしょ」

 

 スバルがいざ勉強しようと思ったら、一時間は集中できる。機械をいじったり、宇宙関連の資料を読むとなれば、何時間でもできる。

 だがミソラは違うらしい。

 

「い~い、スバルくん? 歌手っていうのは、一曲歌うのにだいたい5分ぐらいの時間で済むの。五分だよ、五分。なのに30分なんて、疲れちゃうよ」

 

 偉そうに人差し指を立てて説明するミソラは、どう見ても元気そうだ。

 

「それは違うでしょ。集中して一生懸命歌う五分と、項垂れて机に突っ伏してるだけの30分を比べたらだめでしょ」

「ウグッ!」

 

 スバルの正論にミソラは苦い顔をした。やっぱり元気そうだ。普段使っていない頭がオーバーヒートを起こしてるだけであり、体力は有り余っているのだ。

 

「え~ん、休みたいよ~」

「……ハァ……」

 

 同い年のスバルがいうのも変な話だが、ここでミソラを甘やかせるのは彼女の為にならない気がする。だからここは厳しくすべきところなのかもしれない。それでも、そうと分かっていても、彼女に甘くしてしまうのがスバルという生物だ。

 

「しょうがないな、10分だけだよ」

「やった!」

 

 元気爆発な笑みを浮かべるミソラに、スバルはもう一度ため息をついた。ブラウズ画面の宿題ページを最小化して、ネット動画画面を開く。

 

「ねえねえ、スバルくん。お菓子食べよう!」

 

 ミソラが鞄からゴソゴソと何かを取り出そうとしている。

 

「食べたら眠くなるよ」

 

 ここで「太るよ」と言わないのはスバルが紳士だからではない。大食漢のミソラが相手だからである。

 動画を適当に開いて再生する。だが、動画の内容より先に広告が始まった。いつものことだ。動画の中でスズカがお菓子の箱を片手に宣伝を始めた。

 

『今日は何の日? そう、ポッキーの日!』

 

「あ、そうか」

 

 今日は11月11日だ。宣伝目的で作られた語呂合わせの日だ。

 

「思い出した?」

 

 ミソラが尋ねてくる。背後の気配と音からすると、ようやく鞄からお目当ての物を取り出したらしい。

 

「うん。僕はあまりこういうの詳しくないんだけどね」

 

 時世の流行とか、そういうのには全く興味のないスバルにとっては、壁一つ向こうの話だ。彼が飛びつく最新の話題と言ったら、宇宙や機械関係の話題ぐらいだろう。

 動画の中ではスズカが変わらずに、決められた台詞を言ながら宣伝をしている。もうそろそろ終わりだ。

 

『あなたも愛しの人とポッキーゲームを……』

 

 最後に彼女はポッキーを口に咥えて、目を閉じた。

 そこで宣伝は終了だ。動画の本編が始まる。

 

「スズカちゃん、たくさん出るようになったよね」

 

 そこでようやくスバルはミソラを振り返った。そこで固まる。ミソラの手にはお菓子の箱……ポッキーだ。

 二人の目が合う。そして連想してしまう。最後にスズカが言った言葉……ポッキーゲーム。

 二人の顔が同時に赤くなる。顔から湯気が出て、頭の中がチカチカとしてくる。互いに目を逸らす。失礼な気がして、相手の様子を窺う。再び目が合う。また勢いよく逸らす。それを二度ほど繰り返した。もう動画本編なんて耳に入っていない。

 

「ご、ごごご、ごめんスバルくん!」

 

 慌ててミソラが立ち上がった。鞄を手に取ると、ハンターVGを掴んで頭上にかざす。

 

「トランスコード004 ハープ・ノート!」

 

 スバルが声をかける間もなく、素早く電波変換するとミソラはピンク色の光になってスバルの部屋から姿を消していた。

 

「あ、み、ミソラちゃ……」

 

 自分もハンターVGを掴もうとして、手を止めた。追いかけて何になるというのだろう。

 

「……はぁ……」

 

 机に伏する。

 

「何してんだお前ら?」

 

 ハンターVGからウォーロックが出てきた。体に絡まっている弦をなんとか取ろうとしている。いつも通り、ハープに拘束されていたらしい。

 

「いや……だって……」

「スズカのCMがどうしたんだよ」

 

 女心が一切分からないこの異星人には、ポッキーゲームという単語が、純粋初心で奥手なスバルとミソラにとって、どれだけ破壊力のある言葉なのか、理解していないらしい。いやそもそも、ポッキーゲームが何なのか理解しているのだろうか。

 スバルは落ち込みながら、どんなゲームなのかと説明した。

 

「…………で?」

 

 やっぱり理解できてないらしい。

 

「なんでお前が落ち込んでんだ。ミソラが勝手に恥ずかしがっただけだろ」

「いや……その……」

 

 たどたどしい言葉でスバルは説明を始めた。

 

「ミソラちゃんに、変な誤解させちゃったかなって……」

「………………は?」

「いや、そのさ……」

 

 目線を別のところに逃がしながら、スバルは言葉を続ける。

 

「目が合ってさ……その、変に意識しちゃったんだよ。それで、ミソラちゃんに変な誤解させちゃったかなって……」

「……で?」

「これで、ミソラちゃんとの関係が崩れたらどうしようかなって……そう思ったらデッ!」

 

 頭にゴツンと何かが当たった。ハンターVGだ。ウォーロックが投げつけたのだ。

 

「グダグダグダグダ、女々しいんだよ。バトルしてる時みてえに、しっかりしやがれ」

 

 相変わらず、この相棒は慰めるという言葉を知らないらしい。いや、慰めはするのだ。ただ不器用なだけなのだ。

 

「おら、行くぞ」

「ありがとう、ロック」

「ケッ、いつまでもそんなお前見せつけられていたら、俺がイライラするんだよ」

 

 そういうことにしておいて、ハンターVGを掲げる。ここはウォーロックの言う通り、悩まずに会って、話をするべきだ。

 

「トランスコード003 シューティングスター・ロックマン!」

 

 青い戦士に変身し、光の塊になってウェーブロードへと跳躍した。

 ミソラの住所は知っている。光の速度で家まで行くと、電波変換を解いて家の前に降りた。インターホンを押す。

 

『はい……ってスバルくん!?』

 

 すぐにミソラの声が返ってきた。

 

「ミソラちゃん、話したいことがあるから、入らせてくれないかな」

『え、えっと……』

『どうぞ、入って』

 

 今度はハープの声が聞こえた。ガチャリと家の鍵が開く。

 

『ちょ、ちょっとハープ!』

『顔を合わせて、ちゃんと話をなさい』

 

 彼女に感謝しつつ、中に入る。顔を赤くして、どこか余所余所しいミソラが出迎えてくれた。

 

「あ、あの……」

「ミソラちゃん。あの……ゴメン」

 

 ミソラが何か言う前に、スバルが謝罪した。

 

「え?」

「その……変に誤解させちゃったみたいで……」

「…………」

 

 ミソラが黙ってしまった。顔は相変わらず赤いままで、スバルの目ではなく胸元辺りに視線を逃がしているのが分かった。

 

「その、ポッキーゲームしたいとかいう訳じゃなくて、その……変に意識しちゃって……その」

「あの、ゴメン」

「え?」

 

 今度はミソラが謝罪した。

 

「そのね……ただ、スバルくんとポッキー食べれればいいなって思ってたの。ただ……スズカのCM見て、スバルくんに誤解させちゃったかなって……」

「……えっと……」

 

 どうやら、お互いに同じようなことを考えていたらしい。

 それに気づくと、2人のどこか余所余所しく、しどろもどろとしていた雰囲気は掻き消えた。プッと笑い声が漏れる。

 

「ハハハ、バカみたいだね僕たち」

「うん、ほんと」

 

 クスクスと笑うと、ミソラは手招きした。

 

「さ、奥に行こう? ポッキー食べようよ」

「うん、それじゃあお邪魔します」

 

 ソファに座ってミソラが箱を開ける。スティック状の焼き菓子にコーティングされた甘いチョコレート。一つとって口に入れる。

 

「美味しい」

「だよね~、私10箱は行けるかな~」

「流石に夕飯が入らないでしょ」

「そうだね~、今日はあかねさんの夕飯をご馳走になるし」

 

 そこでふとスバルは思い出した。

 

「ミソラちゃん、これ食べ終わったら僕の家に戻ろう。そして、宿題の続きやろうね」

「うぐっ、覚えてたか~」

 

 ミソラは頭を抱えると、スバルの隣に腰かけてきた。

 

「スバルく~ん、知恵熱で頭が痛いから休みたい~」

「今こうして糖分摂ってるから大丈夫だよ」

「意地悪~」

 

 手の甲で、スバルの肩を軽く連続パンチする。2人の笑い声が響いた。

 

 

 

「ったく、世話が焼けるぜ」

「ええ、ほんとね」

 

 スバルのハンターVGの中。二人を見守る異星人2人は、ポリッと例のお菓子を口にした。




先日、11月11日はポッキーの日でしたね。
スバミソで何かできないかと考えたのが今回の話です。
スバルもミソラも、初心で奥手なので、ポッキーゲームなんて恥ずかしくてできないと思うんですよ。
でも、あまり面白くできないなと考えて、また当日は疲れていたこともあって止めてました。

で、今日、朝ツイッターを見ていて「あ、今日流ロク3の発売10周年!?忘れてた!!」となって、急きょ作成しました。
でも、やっぱり微妙だなこれ……。

に、二時間で何とか仕上げたんだ。許してくれ……。




改めて……
流星のロックマン3、発売10周年おめでとうございます!
続編は……でなくても良いので、リメイク版をニンテンドースイッチで出してください!
そして、スバミソは永遠に尊いです。
ええ、尊いです。誰が何と言おうと尊いです。
至高です。
大好きです!

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