短いです。
第1話
あの日から、いろんなことがあった。
学校では、1日中質問されたし、カードを狙って沢渡とかいう奴が勝負を仕掛けてきたりもした。以前の生活からは全く違う対応もされたし、いろんな奴が話しかけてきた。時には全く接点のなかったひとにまで。
まあ、原因は分かってる。あの試合が原因だ。
ストロング石島戦。父さんがいなくなった3年間、この舞網市のアクションデュエルのチャンピオンとして君臨した男。その人相手の非公式試合で俺は新たな召喚法を生み出した。
『ペンデュラム召喚』
石島との試合の中、俺が無我夢中で行った新たな召喚方法。そして、憧れの人達に近づくことが出来るかもしれない力。
なぜ、あんなことが出来たのか、自分でも不思議でならない。だけれど、これなら父さんのような、みんなを笑顔に出来るデュエルを俺がすることが出来る。
だから、そのためにも、今出来ることをやらなきゃ。
そう思って今日も塾で勉強だ。頑張ってジュニアユース選手権で優勝し、プロになるんだ!
その事を電話でアメリカにいる柚子の兄ちゃんに相談したら、「頑張れ、お前ならできる。」とか言われて切られてしまった。多分、ものすごく眠そうな声だったから、仮眠中だったんだと思う。悪いことをした。
一足先にプロになった、兄のように慕ってた人。俺の憧れの人の1人。そんな人から激励の言葉を貰ったんだ。プロになってからは忙しそうだったけど、父さんがいなくなってからはいつも気にかけてくれていた。今は試合がどうのこうのとかで少しの間アメリカに行っている。早くデュエルしてみたい。まあ、あの人なら「ペンデュラム召喚?それがどうした!」とかいって簡単に倒される気さえする。
なんてったって、父さんとデュエルして勝率が五分五分だったんだ。小学生だったあの人は。今はもっと強くなっているかもしれない。
だからって負ける気もない。次合うときはあの人を超えてやる!
でも、気にかかっていることもある。柚子のことだ。この前からなんだか様子がおかしい。素良がデザートを授業中に食べるものならハリセンがいつ飛んできてもおかしくないのに、今日はなんだか物思いにふけっている。何があったかわからないが、元気をだしてほしい。なんだか調子が狂う。
授業中、そんなことを考えていたら、大声が聞こえた。権現坂の声だ。何があったんだろう?
とりあえず塾長やみんなで玄関に向かってみることにしよう。
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驚いた。権現坂が怒鳴り声をあげていたのは、沢渡の取り巻き3人組だった。
いや、権現坂が声を荒げてたことでも、相手が沢渡の取り巻き3人組だったから驚いたのではない。何より驚いたのは取り巻き達の話だった。
沢渡や取り巻き達が工場の倉庫で俺へのリベンジを決意していると、いきなり俺が闇討ちしにきたらしい。
だが、俺は当然ながらも襲ってなんかいない。だけれど、その時一緒にいたらしい柚子ははっきり否定しないし、その時の俺のアリバイは立証できない上、近くにいったから疑いは濃厚。さらに目撃証言まであるときた。その件についてLDSの人、赤馬日美香とかいう女の人が、この件をたてに塾の存続をかけたデュエル3本勝負を持ち込んできた。
それにしても暴論だと思う。俺はやってないし、本来関係ない話。だけど、俺に似たやつに負けたからお前が責任取ってデュエルしろって話だ。
だけどやるしかない。そうしなければ塾長にだって迷惑がかかる。
向こうはこれを機にペンデュラム召喚を手に入れようとしている。せっかく手に入れた力だ。やすやすと手放すわけにはいかない。
俺が頑張らないと!
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とりあえず1勝1敗1引き分け。現在の勝率は引き分けとなった。
本来関係のないはずだった権現坂まで協力してくれて、感謝してもしきれない。
だけど、嫌な予感は当たるのか、赤馬理事長はこう言いだした。3回戦で勝負がつかないので4回戦として向こうが勝った融合使いと俺がデュエルすることで決着をつけようと。
「そんなの卑怯だ!!」
「「そうだそうだ!!」
こんな風にアユ達もいっているが、決定権は実質向こうにある。だけど俺ならやれるはず。そう思って「やります!!」と言おうとしたとき、その声があたりに響いた。
凛とした声だった。
「なら、決着は私がつけよう。」
「ああ、来たのね零児さん。」
零児?また誰か来たのか?それにしても聞いたことがあるような?
まあいい、気合十分!
「このデュエル決着を「悪いけどちょっとまってくれるかなぁ?遊矢君?」え?!」
この声は、でもなんで?アメリカにいるはずじゃあ?
「ヤッホー、遊矢君、柚子に権現坂君。元気してたかい?」
「兄さん?!どうしてここに?!」
柚子も吃驚している。ということはこの帰国は柚子もしらなかったんだな。
「いや、みんなを驚かせたくてね。そこの子達は新しい塾生かい?」
アユ達を指したのだろう、兄さんが塾にいた時にはいなかったから。
「鮎川アユです。」
「原田フトシ。」
「山城タツヤです。」
「紫雲院素良。」
「そうか、俺は柊菊。柚子の兄だ。よろしくね。」
いやいやいや。
「なんでここにいるんだよ?!アメリカは?仕事は?!」
「だからさっき答えただろう?驚かせたくて帰るのを秘密にしてただけだよ。仕事は、これ以上学校を休むといくら公欠扱いでもやばいからって言ったらしばらく休めって言われたしね。」
そこまで驚かれるとは秘密にした甲斐があったって笑いながら、あ、こういう人だったなと半分諦めの境地でいると・・・。
「お久しぶりです。柊さん。」
「やあ、2年ぶりかな?零児君」
「いえ、1年前の大会の時に挨拶にいきましたのでその時以来かと。1年前は私は2回戦敗退だったので。」
「ああ、あの遠征の時かい。たしかあれの開催地はアメリカだったかな?」
「ええ。」
「・・・零児君なんだか変わった?雰囲気が」
「そうでしょうか?」
いやいやいや?顔見知り?!この人と?!
「そうだよ。この子がプロ試験のとき、俺が担当していたんだ。」
それよりも・・・、と次の句を告げる。
「一体どういう状況なんだい?まったく展開が分からないんだが?」
ああ、そういえば説明してなかったなぁ。塾長、お願いします。
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塾長の説明が終わると、少し考えたあと、菊兄さんは言った。
「赤馬理事長。その4回戦、俺が出ます。」
「なんですって?」
「そちらが出るのは仮にもプロの赤馬零児。それならこの塾の関係者でプロである、もしくは元プロの父が出た方が勝率は高い。それに、塾の命運を決める勝負で生徒に負担をかけたくないというのもあります。」
「しかし・・・。」
言いよどんでいる。多分、向こうとしては断りたいのだろう。プロランキング、世界トップ10に入る兄さんは向こうにとっては脅威でしかない。しかし、断れば同じ途中介入者である赤馬零児の参戦をこちらが拒否出来てしまうから、悩んでいるのだろう。
そこに菊兄さんは言い出した。
「なら、こうしましょう。今回そちらが連れてきた3人の代表者、私がその3人とデュエルし、私が負けたのなら今回の代表戦には参加しないっと言うのは?」
それは向こうにとってメリットでしかない提案。だけど赤馬のおばさんはさらに付け足した。
なら、この3人と同時にデュエルし、勝ったのなら構いませんと・・・。
さっき戦ったから相手の実力は嫌でも分かる。1人1人なら菊兄さんなら大丈夫だろう。しかし、3人となるとかなりきつい。いや、そんなのは無理だ!
でも、あの人は。
「分かりました。ルールはライフはそちらは1人4000。こちらはその3倍といいたいですが、4000で構いません。先行ドローは無し。ただし先行はこちらからで、そちらのターンからは攻撃しても構いません。順番は私、そちらの1人目、2人目、3人目、私。その条件でよろしければ。」
そんな、無茶だ。バトルロイヤルでもないのに、そんな条件!先行は攻撃できない上、ドローも出来ない。その状況でターンを返せば間違いなく返しのターンでやられる!更に3ターン何もできないのに!!
「構いませんよ、そちらがよろしいのなら。」
「なら始めましょうか。こんな消化試合、さっさと済ませて寝るに限ります。」
その言葉を聞いて向こうの3人組はかなり怒っている。
そんな様子を知ってか知らずか、怒らせた本人はさっさとアクションフィールドがセットされた場所に向かい、デュエルディスクを構えた。
「さあ、始めようか、破壊と暴力のパジェントを!!」
アクションフィールド セットオン 『星の聖域』スタンバイ!
「戦いの殿堂に連なりしデュエリスト達が!」
「モンスターとともに地を這い宙を舞い!」
「フィールド内を駆け巡る!」
「見よ、これがデュエルの最強進化系!」
「アクショーン・・・」
「「「「デュエル!!」」」」