遊戯王ARC-Ⅴの世界に廃人がログインしました   作:紫苑菊

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|ω・`)コソ

||д・) ソォーッ…

||д・)っ『第4話』

|彡サッ!



第4話

   ◇

 

 菊兄さんが融合次元へ旅立った後、俺たちランサーズは、シンクロ次元へと向かうことになった。

 理由としては、シンクロ次元が、敵か否かの判別。敵でなかった場合は、融合次元へ攻め込むときの協力要請。味方の人数が足りてない今、戦力の補充と、それから現状の把握が必要、とのことだった。

 

『と、言っても多分本当の狙いは他にあると思うけどねー。』

 

 兄さんはこの侵略の前に行っていた合宿の時に、そう言って笑っていた。

 

『多分、融合次元とシンクロ次元の挟み撃ちに会いたくない、っていうのが本当のところだと思うよ?あの黒咲の言うことを信じるなら、融合次元とシンクロ次元は手を結んでいる。そんな中で、融合次元の動きだけ注視することは出来ないからね。』

 

 だから、融合次元ではなく、シンクロ次元に来るのだという。

 

『零児くんはシンクロ次元を敵でない、と感じているんだろう。それでもって、協力者を得られるかもしれない、と思っている。だから、柚子の捜索の件も含めて、こっちでの行動を優先した、っというところだろう。』

『でも、それって。』

『大丈夫、零児君は柚子のことを重要視しているよ。少なくとも、狙われている、と言うことには気づいている。』

『狙われている?!どうして?!』

『敵の動かし方が明らかだったからね。』

 

 そう言うと、兄さんは簡単なマップを俺のディスクに転送した。

 

『柚子がいたエリア、そこに敵の幹部らしき人物が、柚子と接触していた。デュエルのログもあるし、音声データも幸いなことに残っていた。でも、部下らしき人物は、こっちのエリアには来ようとせず、更に戦いはアクションフィールド内で行われた。

 これから何を読み取れるか分かる?』

 

 と、言われてもてもさっぱりわからない。

 

『陽動、だよ。』

 

 陽動。兄さんは確かにそう言った。

 

『兵の大半が、明らかにこのエリアを避けて動いている。つまり、部隊は二分化されていた。敵を倒す部隊と捕獲する部隊。そして、最優先で動いていたのが。』

『柚子の捕獲・・・?』

 

 そうだ。そう言って、兄さんは俺にもわかるように説明した。

 

『俺はあの日、アカデミアに攻め込まれた日に、俺と同じ顔をしたやつと戦った。そして思い出した。ユートのことを。』

 

 ユート。ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴンの持ち主。そして、あいつは俺の中にいる。それが、今回の戦いでなんとなく理解したことだった。

 

『俺と遊矢。ユートが言うには、柚子とおなじ顔をしたやつがいるはずだ。そしてそれは、このアカデミアの事とは無関係ではないんだと思う。

 柚子のそっくりさん、瑠璃だっけ?彼女もアカデミアに連れ去られた。柚子はアカデミアに狙われている。なら、シンクロ次元もおんなじ存在がいるはずだ。』

『それは・・・たしかに。』

『遊矢。一つ頼みがある。』

 

 そう言うと、兄さんは今までにない真剣な顔をした。

 

俺を探せ(・・・・)。俺の事だ。柚子に等しい存在がいるならきっと、力になろうとする。そうでなくても、仲間に引き入れろ。』

 

 それって。

 

『かなり無茶ぶりじゃない?仲間になる保証、ないんだろ?』

『大丈夫だよ。』

 

 だって、俺だぜ?そう言って、兄さんは笑った。

 

『俺は、大切な存在の為なら、どんなことだってやって見せるさ。』

 

 だから、遊矢。

 

『お前のターンだ。最低でもこのデッキに勝てないようじゃ、アカデミアには勝てないぞ。』

 

 兄さんは、この鬼畜な盤面(ランク4を3体と神の宣告3枚)を作り出してなお、勝てと言ってきた。

 

『同じ事すればお前も勝てるんだよ。』

 

 いや、大分ハードル高いんですが。

 

 

 

   ◇

 

「遊矢、何黄昏てるんだよ。」

「黄昏たくもなるんだよ、だって、この状況だぞ?」

「う、それは、すまん。」

 

 沢渡が謝るが、俺がしてほしいことはそんなことじゃない。これは多分、八つ当たりなんだとは思う。

 だって、そう言いたくなる気持ちは分かって欲しい。今現在、俺たちは・・・。

 

「なんでこんなことに?」

 

 刑務所の中にいる。なんかよくわからんが速攻でぶっこまれた。

 

「いや、でも狙いは遊矢だったんじゃ。」

「沢渡、何か言った?」

「あ、はいすいません。」

 

 なんか、性格変わった?あの合宿の時か?とぶつぶつ言う沢渡は無視し、ここで再会した権現坂に、ここがどういう場所なのか大まかに聞いてみた。

 沢渡め、そう思うならあの地獄の合宿を勝ち抜いてみればいいのだ。結局、1勝すらできずに終わる、あの鍛錬。終わった時の喜びようは、あの赤馬零児とすら喜び合えるものだったというのに。赤馬零児は準備がある、とかで少ししか参加できなかったみたいだが、その短いスパンでいじめ・・・もとい訓練された様子は、少し可哀そうだった。沢渡は、新しいデッキの動きを覚えるのが先決、とかで別の講義を受けていた。

 

『いや、プロが手の内を明かしながら訓練してあげてるんだから鬼畜も何もないと思うよ?』

 

 そう言う兄さんは少し加減を覚えてほしい。勝つ、と決めた時とそこそこで組んだ、時の差が激しすぎてついていけなかった。最低限の合格ラインをクリアした暁には『源氏万歳』としか言えなくしてやる、と言っていたのは決して比喩ではないと思う。 

 

   ◇

 

俺たちはここのボスの所に行くこととなった。ここを取り仕切る、徳松長次郎、通称『エンジョイ長次郎』とのデュエルで勝利した俺は、ここのボスであるデュエリストのところに連れていかれるのだという。

 

「ここの奴らは、俺が実質的に取り仕切ってるんだがな、あいつだけは別だ。」

 

 長次郎はそう言って、彼がどういう存在なのかを教えてくれた。

 

「少し前の話だ。ここのボスは俺だった(・・・・)。それがある日落ちてきたあいつがな。『ここのボスはどいつだ!』って道場破りみたいにやってきてな。俺はそいつに負け、ボスの座をそいつにくれてやった。だが、あいつはここの管理、なんて屁とも思っちゃいない。ここの奴らを落伍者、とよんで、自分は看守を脅したのか、この中に立派な基地を作って引きこもりやがった。」

 

 全く歯が立たなかったよ。そう言う長次郎の言葉を、今までの俺ならば、到底信じられなかっただろう。

 だが、今は違う。兄さんが言っていた。

 

『誰かを楽しませる、そういうことに主軸を置くデュエリストは多い。特に、お前の父さんみたいなタイプだな。

 だが、そいつらは勝利を二の次にしやすい。そう言うやつらは、俺みたいに、勝利を主軸に置くやつからすれば、カモ同然だ。むしろ、勝って当たり前、とすら思う。

 厳しいようだがな、遊矢。お前が言っているのはな、相手を、そして観客を楽しませるデュエルをした上で、確実に勝つ。そんな化け物を目指す、と言うことだ。お前はお前の父さんの真似は出来ない。するべきじゃない。だから、自分のなりたいものをちゃんと見ろ、見つけろ。』

 

 なんとなくわかる。兄さんがやったみたいに、相手に何もさせない盤面を作ることは出来る。だけど、それをせずに楽しむ道を作り、そして必ず勝つデュエリスト(ヒーロー)。俺がなりたいもので、そしてその道を進んで挫折したのが、きっとさっきの長次郎なのだ。

 ただ・・・。

 

『なりたいものを明確に。そうすれば。』

 

 そうすれば、俺のようにはならない。あの時の兄さんの顔だけが、いまでも忘れられない。

 

「お、そろそろだ。」

 

 どうやら、目的地に着いたらしい。『独房』『特別房』なんて言われているところにVIP待遇。話は聞いていたが、どうやらとんでもない『ろくでなし』らしい。

 

「おい、新入りで、そして俺に勝ったデュエリストを紹介しに・・・ておわぁ?!」

「おい、ノックもせずに入るんじゃねぇよ。つい手元がくるって投げちまったじゃねぇか、落ち武者。」

「落ち武者じゃねぇ!てか、テメェ何投げてくれてるんだ!」

「コントローラーだよ、見ればわかるだろ。手元にあったのがそれなんだよ、へっぽこ徳次郎。」

「コントローラーは、投げる、もんじゃ、ねぇ!徳松長次郎だ!テメェは年配者はうやまえ!」

「やだねぇ、過去にしがみつくデュエリスト。そんなもん落ち武者呼びで十分だし、何よりそんな奴の名前なんざ呼びたくはねぇ。」

「ぐッ・・・。」

 

 長次郎が言葉に詰まった。それを見計らったのか、彼は俺に近づいてこういった。

 

「やあ、ユーゴ・・・じゃなかった。榊遊矢、そしてユートだったか。そちらはお連れさんかな?」

「え?」

 

 この人、俺の名前を知っている?

 

「ああ、アニキから聞いてないのか?」

「いや、ちょっと待って、理解が追い付かない。」

 

 なんだ、ちゃんと説明してないのか。『融合』のやつ、適当なこと言いやがって。そう独り言ちた後、改めて自己紹介を、と彼は言った。

 

「俺の名は(はやて)。話は早いほうがいい。さっさとかいつまんで話してやるから、きちんと覚えろよ?」

 

 俺は、二度同じことは言わない主義なんだ。そう言って、颯さんは、『シンクロ』の兄さんは笑った。

 

 

 

   ◇

 

「行ったのか?」

 

「ああ、行った。ここに戻ってくることはねぇだろう。

 俺の知ることは全て伝えた。ロジェの事も教えたし、柚子の現状も伝えてある。

 やり残したことはもうないよ。」

 

「本当にいいのか?」

 

「くどいぞ?お前が提案したんだろ?つか、説明するならきちんと全部説明しろ。二度手間になる。そう言うのは、俺が一番嫌いなんだ。適当言いやがって。俺から遊矢に全部説明する羽目になったじゃねぇか。言葉が足りないにもほどがあんだよ。」

 

「・・・本当は、俺がするべきだ。」

 

「話聞いてた?言葉が足りないんだよ。まあでも、効率的にはお前が適任だ。結局、最終決戦は融合次元で行うんだろ?だったら勝手知ってるお前が行くべきだ。俺は大人しく吸収されるよ。」

 

「すまない。」

 

「よきにはからえ。・・・頼んだぜ、ユーゴとリンのこと。あいつらの子供の顔をを拝むのが、俺の楽しみなんだ。」

 

「俺もだ。だから、あいつの計画だけは止めなくちゃいけない。」

 

「オッケー、意見が一致した。さっさとやれよ。怖いんだぜ?これ。」

 

 

 

    ◇

 

 

「そろそろ、破壊活動にも限界があるな。」

「そう思うなら、菊。そろそろやめにしませんか?」

 

 私は、菊にそう提案した。彼の行為はこれで止まるものでは無いと知っているのに。

 でも、帰ってきた答えは意外だった。

 

「そうだな、もうやめよう。」

「え?」

 

 なんだよ、お前が言ったんだぞ?と彼は返すが、こちらの気持ちも考えてほしい。

 

「そろそろ、次の段階に行くべきだ。」

「次の段階?」

「ああ、第三フェーズだ。」

 

 一体何をたくらむというのか。

 

「なあに、やることは簡単だよ。」

 

 そう言うと、私の肩をぽん、っと叩いて。

 

「ちょっと俺が自首してくるだけだ。」

 

 

 

 

 その言葉の理解を、全私が放棄した。

 

 




シンクロ次元編、完!

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