デイダラに成り代わったようですが生きていける気がしません。 作:龍田
「デイ姉ー!あれ、あれ取って!」
「は!?射的とか苦手だってさっき言ったろうが!!うん!」
「デイ姉、イカ焼き買うからあと十両…」
「土影のじいちゃんから貰え、うん」
「あ、この綿菓子美味しそうだな…」
「デイ姉!そんなもんより射的をするお金を…」
「失礼だなお前!?」
…この会話を聞いて、今どういう状況なのか予想出来た人は少ないと思う。今日は夏休み最終日、夏祭りの日なのだ。ガリさんの修業を終え、ぐーたらしていた私は黒ツチと赤ツチに誘われ、皆で遊びに来たのだ。そこまでは良かったのだが、まさかの二人のお小遣いが足りなくなるというハプニング。私のお金がどんどん無くなっていく。夏祭りという名のブラックホールに吸い込まれていく。
「うっげー…もうお金が五両しかない…。たこ焼きも買えない…」
「デイ姉ドンマーイ」
「ドンマーイ」
「ドンマーイ、じゃねぇよ!!うん!」
そう怒鳴ったらすぐさま顔をぷいっと横に向ける黒ツチと赤ツチ。こいつら忍の『三禁』余裕で破ってやがる。自来也様の言う通り、金の魔力ってのは恐ろしいな…ホントに。
「はぁ…とりあえず土影邸に帰るぞ。この後花火だろ?うん」
「あ!そうだった、すっかり忘れてたよ!」
「普通忘れるだにか…?」
何故土影邸に行くか、確かに花火を土影のじいちゃんと一緒に見るのも理由にあるが、私のなかでの一番の理由はお父さんとお母さんが待っているからである。
私が黒ツチと赤ツチと一緒によく遊んでいるのを見た土影のじいちゃんが、たまに土影邸に私の両親を呼ぶようになったのだ。勿論、任務とかで呼ぶんじゃなく、子供達の話やら世間話の為に。それでいいのか土影。仕事はどうした。
「よっしゃー!しゅっぱーつ!!」
「だにぃー!」
「…うーん」
…あ、ドラ〇もんカステラ買えるじゃん。
・・・
私達が土影邸につく頃には、もう既に花火大会は始まっていた。待ってくれていたお父さんとお母さんには申し訳なかったが、「余り気にするな」とお父さんに言われたので余り気にしない事にした。言われるがままじゃないかと自分でも思った。まぁそれも過ぎた事。これも気にしない。
「天使ちゃん、ほら見て?あんなに大きな花火が…」
「うん…綺麗」
出来ればここで「芸術は爆発だぜヒャッハー!」とか色々皆に聞こえるように大声で叫びたいが、大事な二人に引かれた目で見られたくはないのでここは我慢する。今はお母さんの膝の上にいるのだ、お母さんに迷惑はかけたくない。…にしても恥ずかしいなこれ。子供でよかった。精神年齢は大変な事になってるけど。
「あー!デイ姉顔真っ赤ー!」
「はァ!?ち、違うし!花火のせいだし、うん!」
「?今赤色の花火は出てないだによ?」
「…」
赤ツチよ、マジレスをするんじゃない。これは照れ隠しって言うんだぜ?
「これ、黒ツチ。デイダラをあまり茶化すでない」
「じいちゃん…」
黒ツチの後ろから土影のじいちゃん登場。その横にはお父さんがついている。やはりお爺ちゃんの威力は絶大か。あの黒ツチをたったの一回で静かにさせるとは…。ドロマ先生にも見習ってほしいな、無理と思うけどね。
「あら、土影様。もう花火は始まっていますよ?」
「ユリ…お主は呑気でいいな…」
はぁ…と溜め息をつく土影のじいちゃん。溜め息をつきすぎたら幸せが逃げるのを知っているのだろうか。そんなことを私が思っているのも露知らず、じいちゃんはまた大きな溜め息をついた。
「土影のじいちゃん大丈夫か?さっきから溜め息ばっかりついてるけど…うん。幸せが避雷針の術使って逃げるぜ?」
「いやなに、少しな…。まぁ理由はほぼ黒ツチのせいじゃがな」
「アタイ!?」
「お前しかおらんじゃろ!やった小遣い綺麗さっぱり全部使いおって!!」
…うん、これはフォロー出来ないわ。だってその被害者私だもん。しょうがないね。皆苦笑いだよ。
「お、デイダラ…あれ」
「うん?」
お父さんが微笑みながら私を呼ぶ。お父さんの指指している方向を見ると、ちょうど大きな花火が夜空に咲いているところだった。主に赤を使っている花火で、その他にも黄色やオレンジがキラキラと見える。これ作った人凄いな。
「綺麗ねー…。ね?天使ちゃん」
「うん」
私はその花火に見とれて、それしか感想を言えなかったが、二人が笑っているのは確認出来た。隣にいる黒ツチ赤ツチも花火を見て目を輝かしている。
「お母さん」
「ん?」
「芸術だね」
「…ふふっそうね」
今年の夏祭り、花火大会は私の大事な思い出となった。
今回は会話文多め!
いやー花火いいよね花火。夏といったら花火とプールですよね。
ちなみに
十両=100円
五両=50円…です。