デイダラに成り代わったようですが生きていける気がしません。   作:龍田

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夏のラスボス

夏、それは恐らく全アカデミー生徒が今か今かと待ち望んでいる季節であろう。

ある者は虫取網を片手に蝉を追いかけ、ある者は浮き輪を装着し海水浴へ、またある者はクーラー全快で自分の部屋にて引きこもり生活などの夢の季節が両腕を思いっきり広げて待っている。そんな夢の季節も、もうすぐここ…岩隠れにもやって来る頃だ。

通知表という悪魔からのプレゼントと共に。

 

「えー、約半年間よく頑張ったな。明日からは待ちに待った夏休みだ」

 

通知表を配られ、沈んでいた皆の顔が一瞬にしていい笑顔になる。うん、去年よりは輝いている。…去年という言葉を聞いて、頭の上に?マークを出した人がいるかもしれないので一応説明しておく。

 

私、デイダラは二年生になった。それは黒ツチと赤ツチも同じで、一緒に頑張って進級したのだ。一年生の頃は、前世でいう小学三年生までの授業を受け、二年生になってからは四~六年生レベルの勉強をさせられている。七才児に分数のわり算を解けと申すか。平成の世を生きている子供達に見せてやりたい。多分発狂する。

勉強のレベルが上がっているとなれば、夏休み最大のラスボス、宿題のレベルも相当上がっているだろう。だが、高校生の頭脳を持っている私には関係無い。全ての宿題を一週間以内に終わらせられる自信がある。

卑怯?ちょっと何言ってるか分かりませんね。

 

「夏休みと言っても、遊ぶだけじゃ駄目だからな?喜べ、宿題を大量に用意してやったぞ」

「「「えー!!」」」

 

クラスにブーイングの声が響く。ドロマ先生の手には、先生の言った通り大量のプリントが握られていた。

 

「えーい、やかましい!それ以上ブーブー言ったらこの宿題を二倍に増やしちまうぞ!」

 

ブーブー言っていた人が一気に静かになる。こういうところだけ団結力が良いんだよなこのクラス。

 

「そうだ、それでいい。それじゃあ配るぞー」

 

宿題であるプリントの束が後ろの席へ次々と回されていく。私は一番後ろの席なので、自分の分のプリントしか渡されなかった。当たり前か。

パラパラとめくって見ると、小学生内容の問題がズラリ。これなら余裕のよっちゃんイカだ。

ふと、隣の黒ツチと赤ツチを見ると、二人共プリントと睨みあって呻き声をあげている。今度勉強会でも開いてやろう。

 

「それでは、今日はもう終わり!始業式にて待っているぞ!」

「「「ありがとうございました!」」」

 

バッと扉へ駆け出す者達を見て、少し笑みがこぼれる。どんだけ家に帰りたいんだ君達は。

帰る準備をしていると、黒ツチが何やらプリントを持って私の方をチラチラ見てくる。勉強でも教えてほしいのだろうか。粘土造りも大歓迎だがな。

 

「…黒ツチ、どうしたんだ?…うん」

「へ!?ぁ、いや…あのだな…」

「勉強を教えてほしいみたいだに」

「お、おい赤ツチ!?」

 

私の予想はどうやら当たっていたようだ。

赤ツチに八つ当たりしようとしている黒ツチをとりあえず止める。殴りかかっていたんでな。

 

「そういうことなら、今日私の家に来るか?お父さんとお母さんが任務で居なくて…少し寂しかったとこなんだ。うん」

 

そう言うと、黒ツチの顔がキラキラと輝く。赤ツチが「良かっただにな」とか言ってるけど、赤ツチ、お前も強制だぞ。

 

「…行く!絶対行く!!」

「そうと決まったら早速行こうか…うん。おい、赤ツチ置いてくぞ!」

「だにぃ~!」

 

その後、皆で楽しく勉強した。

 




だに!

だにぃー!

だァにィィーーー!!

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