デイダラに成り代わったようですが生きていける気がしません。   作:龍田

10 / 11
引きこもりからの脱却

 

アカデミー三年生。この年から授業は義務教育が少なくなり、体力作りを時間一杯まで永遠にする授業が多くなる。走って走って走って、とにかく運動場を走り回るのだ。だが、それだけじゃ皆すぐに飽きてしまうだろう、と言うことで、ドロマ先生による鬼ごっこもあったり無かったり。毎回これだったらいいのに。

とか思ってたら体力がいつの間にか凄くついていた。一時間全力で走っても息切れが二、三回あるだけ。こんなこと前世ではあり得なかった。やっぱり前の世界とNARUTOの世界では身体の作りが違うらしい。そうじゃないと恐ろしくなる。色んな意味で。

…まぁ私の三年生ライフはそんな特に何もない感じだった。夏祭りも雨で中止、花火も無し、結局何もなかった。

 

まぁそんな話は時空の彼方に投げ飛ばし、今日は日曜日…つまりは休みだ。忍にとっても忍見習いにとっても休みというのはとても嬉しいものである。何時もの私なら迷いなく部屋に引き込もって新たな芸術を見つける為に粘土をコネコネしているのだが、何故か今日に限って甘い物が食べたくなって外に出てきた。あのニートまがいな私が自分から食べ物を買うために外出したのだ。ここで知り合いにでも会ったら「…熱でもあるんじゃないのか?」とでも言われそうだ。…想像がついてしまう自分が恨めしい。

 

「…あ、着いた」

 

ほぼ無意識で歩いていたら目の前に甘味屋が。今はおやつの時間三時。人も結構賑わっている。で、このままぼーっと店の前に立ち止まっている訳にもいかない。大きく“和”と書いてあるのれんをくぐる。店に入ると定員の皆様から「いらっしゃいませー」という定番の声が聴こえてきた。今日も頑張ってるな店員さん。おい店長、あのお姉さんの給料だけ上げてやれよ。男の人は百円くらいでいいから。ってことを心の中で言いつつ、ケースに置いてある和菓子達をしゃがんでどれがいいかと選ぶ。ふむ、団子がいいか大福がいいか…。羊羮もあるが私はあまり好まない。あの大人の味みたいなのが苦手なのだ。今日はあまーい物が食べたくてわざわざ外に出たんだろう?だったら甘いもん食べろよ!デイダラ!

 

「すいません。この苺大福ってのを一つ」

「苺大福を一つ…ですね。店内でお食事されますか?」

「うん」

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

そう言って奥へと消えていった店員さん(男)。大方お皿を取りに行ったんだろう。空いている席に座って苺大福が来るのを待つ。数分じっとしていたらさっきの店員さん(男)が来て綺麗なお皿に乗せられている苺大福を置いて行く。できればお姉さんが良かったなと思っちゃったり。

出された苺大福を一口食べる。あ、美味しい。これだよ私が求めていた食べ物は。一緒についてきたお茶を飲む。まったく…最高だぜ。

 

「…ん?あ、お前っデイダラか!?」

「え?あぁ本当だ」

「あ?」

 

至福の時間を邪魔されて少しイラッとしたが、大声を出した人を見ると、その怒りもちょっとだけ消え失せた。私の名前を読んだ二人組の一人はイッタンさん。私より五歳上の先輩である。一昨年下忍にになったらしいが、未だに中忍にはなれていない五月蝿い人だ。だからこの人に敬語は使わない。だって五月蝿いもん。

 

「珍しいな…引きこもりのデイダラと下忍のなかで言われている奴が一人で外出など…」

「何その異名!?」

 

この失礼な人はキリさん。イッタンさんと同期で、医療忍術と奇襲作戦を練るのが得意な真面目君である。

 

「で?どうしたんだ?」

「どうしたって…何が?…うん」

「お前、この時間にはずっと家にいるだろ。どういう風の吹き回しだよ」

 

そこまで私が外にいることが珍しいのか?確かに、アカデミーが終わったらそそくさと用事が無い限り家に帰ってるけど…。

 

「ただ甘い物が食べたくなっただけだよ…うん」

 

また一口苺大福をほうばる。あと二口分しか無いや。

その光景を見てイッタンさんは

 

「…こりゃ明日はクナイが降るな」

「だな」

「降らねぇよ!!」

 

…何だかこの頃口が悪くなった気がするなぁ。

 

 

・・・

 

 

その頃黒ツチと赤ツチは

 

「なぁ赤ツチ、知ってるか?」

「なんだに?」

「今日デイ姉が “一人”で外出したらしいぞ」

「……………そんなバカな~」

「なんだ今の間は!?」

 

平和だった。

 




イッタンさんとキリさんは第四次忍界対戦で奇襲部隊に配属されていた人達です。
日常編書くの楽しいなぁ(´ω`*)

因みに作者の一番好きな和菓子は三色団子です。
イタチさんと同じですね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。