今日も目立たず地味に日銭を稼ぐ   作:商売繁盛

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第14話

 

パーティー勧誘やら、面倒事やらが、鬱陶しく感じていた日の、翌日…。

 

本日も、早朝から、いつも通りに出勤する。

 

まずは、早朝から営業をしている、ありがた~いお弁当屋さんへ向かい、朝と昼用に弁当と飲み物を購入する。出くわした冒険者にパーティー勧誘をされるが、テキトーにあしらって、職場(地下洞窟)へと、歩を進める。

 

職場(地下洞窟)へと向かう道すがらに、早速、買ったばかりの弁当を1つ、食べ歩きで簡単に済ます。

 

職場(地下洞窟)の前まで到着し、常駐スタッフに軽く挨拶。そして、地下奥深くへと、歩を進める…。

 

今日の予定としては、いつも通りに隠し部屋に向かい、ボーナス・ステージを堪能する。移動に少し時間が掛かるが、それを踏まえても、得られる恩賞が、美味しい(オイシイ)…。

 

邪(よこしま)な考えを心の中に留めて、ひたすらに歩き進む。

 

魔力反応に近い、不思議な感覚がする、その通路…。一見、ただの地下洞窟の土壁…。だが、その土壁の場所こそ、隠し部屋への入り口。

 

周囲を確認してから、土壁に手を触れると、その土壁の中へと強い力で引き摺り込まれる。この体験は、学習済みでも、経験済みでも、毎回恐怖に感じてしまうのだ。

 

土壁を通り抜けた先には、隠し部屋がある。この手狭な空間に、一際(ひときわ)目立つ、異様な光景。

 

その足元の先、地面に描かれているのは、にぶく輝く、転移魔法陣…。ボーナス・ステージの入り口である。

 

回復アイテムの準備をして、転移魔法陣の上に乗る。すると、足元から光が膨れ上がり、視界を覆い尽くす。

 

目を開けたときには、20メートル四方の広間へと転移している。

 

広間の中央に位置する転移魔法陣の外に出て、奴等を待つ…。

 

この転移魔法陣は、ボーナス・ステージをクリアしなければ、再起動しない仕組みになっているようだ。

 

ツッコミどころ満載の、この世界も『異世界だから』で済ますのは、腑に落ちないのだが、これが現実でもあるのだ…。

 

サクッと頭を切り替え、集中する。

 

奴等…、魔石獸は四方の壁際の地面から、湧き出て、這い出て、向かって来ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒィーハァーッ、ヤッてやんぜぇ~」

 

色々と抱え込んでいる、この男…。

 

そのストレスは、人格を破壊するほどに多大であった…。

 

1人、アゲアゲのテンションで挑戦する、ボーナス・ステージその初戦…。

 

ヤることは変わらない、いつも通りだ…。自身を中心に、その身体から、正面以外の3方向へ足止めの永続突風魔法を展開し、動きを止める。向かって来る正面の魔石獸には、距離を詰められる前に、凝縮した突風の弾丸で、蜂の巣にしていく…。

 

今のフレンのレベルでは、もはや、雑魚キャラ同然の存在に変貌した魔石獸。為す術無く、消えていく…。

 

 

「ひぃ~~っヒッヒッヒ、たぁ~のしぃ~いぃ~」

 

………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「50体で、戦利品の魔石が4つ、レベルは、変化なし…、っと」

 

どうやら、ちょっとスッキリしたことで、テンションも平常に戻り、冷静になっていた。

 

ボーナス・ステージ初戦は、ストレス解消に利用される、ただの射撃場。そのものみたいだ…。

 

一旦、転移魔法陣で、隠し部屋に戻り、小休憩をとり、再挑戦に備える。

 

一息つけたところで、改めて、装備品、回復アイテムの確認をして、隠し部屋から広間へと転移する。

 

ボーナス・ステージ第2戦のスタートである。

 

第2戦では、初戦と立ち上がり方が、少し変わる。新種の魔石獸の存在があるからだ。

 

初戦の足止め突風魔法では、新種の魔石獸たちは、止まらない。故に…。

 

 

「暴風域~、いっくよぉ~~」

 

 

また少し、壊れ始めたのか…。今のフレンは、情緒不安定で、繊細な時期へと、なっているようだ。

 

彼の身体から、吹き荒(すさ)ぶ突風は、自身が居る、20メートル四方の広間全体を暴風域へと化していく。

 

より一層、強力になった足止めに、さらに苦しむことになる魔石獸たち…。

 

通常の魔石獸たちは、暴風に後方へと押し込まれ、広間を囲む壁に磔(はりつけ)の状態になる。

 

第2戦から登場した、4体の新種の魔石獸たちは、フレンから吹き荒(すさ)ぶ暴風によって、前進が出来ず、ただのデカイ的(まと)になる。

 

優先的に、フレンからの“暴風の弾丸”を喰らう。新種の魔石獸。

 

フレンが新たに開発、改良した、風魔法…。突風の弾丸の強化版。暴風のエネルギーを凝縮した、暴風の弾丸…。

 

より一層、強力になった攻撃魔法に、為す術無く、霧散、消滅していく、新種の魔石獸…。やがて、4体すべてが、消える。

 

新種の魔石獸が消えたことで、展開中の暴風域を解除し、通常モードの足止め突風を新たに展開する。

 

魔力消費を抑えて、省エネで戦闘をこなす。暴風域の常時展開は、特典で貰った、『魔力消費量減少』があっても、まだレベルが足りないのだった。

 

それでも、同じ様に特典で貰った、『魔法効果増加』で、なんとか、暴風域と暴風エネルギーを凝縮した弾丸を作り出している。

 

 

 

 

いつもの、足止めに戻したところで、何かが変わることはない。通常の魔石獸たちは、結局、足止めさせられているのだから…。

 

フレンによって、突風エネルギーを凝縮した弾丸を、次々と撃ち込まれ、いつもの、蜂の巣状態が作り上げられる。

 

為す術無く、霧散、消滅していく、魔石獸たち…。第2戦が、もうすぐ、終わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新種4体、通常46体、計50体で、戦利品の魔石が6つに、レベルが1つ上がって19か…」

 

満足いく結果である。サクッと切り替えて、広間から隠し部屋まで転移するフレン。

 

隠し部屋で昼休憩をとりながら、リラックス状態で、このあとの事に、頭を悩ませる。

 

 

「このあと、どうすっかな?」

 

 

戦闘効率が上がっているため、時間短縮が出来てる。そのため若干、暇なのだ。

 

「帰るには早すぎるし、再三のボーナス・ステージは、怖ぇし…」

 

珍しく迷走するフレン。

 

(もう一回、最初から出来りゃ、いいんだけど…)

 

そう思ったフレンは、次の瞬間、ひらめく…。

 

「一回、隠し部屋から出て、もう一回、入ったら、どうなるんだ?……」

 

フレンは、早速、行動に移す。隠し部屋から地下洞窟の通路に出ると、そこから、再度、隠し部屋に戻ってくる。

 

そして、念のため回復アイテムで魔力を回復すると、新たに魔力回復の薬草を水筒にいれて水に溶かし、常備しておく。

 

準備完了。フレンは隠し部屋の転移魔法陣の上に乗る。

 

「よろしくお願いします!!」

 

祈りを込めて、広間へと転移する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぃよっしゃぁ~~~ぁぁぁ」

 

 

ボーナス・ステージのクリアは、リセットされたようだ、いつもの、魔石獸が50体くらい出現してる。

 

狂喜乱舞 再び…。

 

ボーナス・ステージ、夢の蜂の巣タイムが始まる。

 

それからのフレンは狂っていた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二度目の初戦と第2戦を、危なげ無く終了させ、隠し部屋から地下洞窟の通路に出ると、また、隠し部屋に戻り、三度目に挑戦した。

 

結果としては、三度目も、無事終了…。

 

さらに、四度目にも挑戦した…。

 

 

そして…。

 

 

四度目も、終了した…。

 

広間から隠し部屋へと転移して、隠し部屋から地下洞窟の通路に出る。

 

ここで、ようやく地上に帰るため、歩き出す。

 

警戒しながらも、地上への帰路の途中、フレンは、ゆっくり思い返す…。

 

(ちょっと調子に乗っちゃったかな?。でも、まぁ、結果オーライだろ…)

 

ボーナス・ステージの仕組みが、少しずつ解ってきた。それを巧みに利用した結果、まさに、言葉通りボーナス・ステージとなった。

 

(今日1日で、魔石獸が、全部合わせて400体、すげー数だな…)

 

(戦利品の魔石が、今日だけで41個、すげー数だな…)

 

(レベルは、今日だけで3つ上がって21、すげ………、妥当かな?)

 

 

どれもハンパない数字だった。だが、当のフレンは、特に変わりはない。

 

表面的には驚愕しているのだろう…。しかし、内面的には、それほど慌てることもなく、不思議と冷静さを保っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事に地上へと帰還した…。少し調子に乗ったことで、いつもの時間帯より遅かった。

 

地上は、薄暗くなり、じきに夜になるだろう、そんな時間帯だ。

 

それでも、常駐スタッフに軽く挨拶をして、食堂へ向かう。魔石買取専門店には、立ち寄らない。フレンなりに考えがあるようだ。

 

食堂に着くと、パパッと夕食を済まし、宿へ戻って、風呂を済まし、宿の部屋で、反省会をする。

 

 

反省会スタート…。

 

 

(え~と、今日は…)

 

…………?。

 

……あれ?。

 

何も、問題は…、起きてない?。

 

 

 

 

 

 

「え?、今日1日、面倒な問題が発生してない!?」

 

思考モードに入っていたが、おもわず浮かび上がる…。

 

(いや、待て…。よく思い出せ!。そんなことが……)

 

 

 

 

 

 

「何も、起きてない……、問題なしだな……」

 

衝~~撃的な事実だった。これまで、何かしらの面倒事や厄介事が連日発生していたのだ、フレンは、激しく動揺した…。

 

(唯一、発生したのは、地下洞窟のボーナス・ステージで、リセットしまくった事くらいだな…)

 

ボーナス・ステージという名称は、フレンが勝手につけて、そう呼んでいるだけなのだが、その名称通りの、内容と結果を魅せている。

 

今日、新たに発見した、ボーナス・ステージの仕組み…。

 

リセット機能…。

 

本来の道筋としては、隠し部屋と広間を転移で行き来し、ひたすらに挑戦を繰り返すものなのだろう。

 

ボーナス・ステージ、初戦をクリアすれば、第2戦、第3戦と続いていき、クリアする毎に、挑戦の難易度が上がっていく。それが、本来の道筋なのだろう。っと、フレンは思っていたのだが……。

 

(思わぬ抜け道があったな…。隠し部屋ダケに…、クククッ)

 

リセット機能…。一旦、隠し部屋から地下洞窟の通路に出れば、それまでの、連続挑戦記録がリセットされてしまう…。っというもの。

 

フレンは、その仕組みを理解し、巧みに利用した…。

 

初戦、第2戦をクリアすると、第3戦には挑戦せずに、一旦、外(地下洞窟の通路)に出て、リセットし、再度、初戦、第2戦を〈安心、安全〉で挑戦する…。それを数回、繰り返した。

 

その結果、大量(大漁)の報酬(経験値&魔石)を得ることに成功した…。

 

今日、起きた出来事といえば、これぐらいだろう…。

 

(そっか~、勧誘とかはあったけど、今日は1日、平和だったんだね~)

 

感慨深く、物思いにふけながら、部屋の天井を見上げる。

 

「いいか~?、よく聞け~、俺が求めてんのは、こういう日常なんよ、平和な日常。わかるか~?、頼むぞ~」

 

天井に向かって、ひとり、呟く…。

 

色々あるのだろう…。フレンの中では…。

 

(さて、これからの方針を考えよう…)

 

 

 

思考モード。

再起動。

 

 

とりあえず、結果の出ている仕事は、これまで通りで、問題ない。あとは、キナ臭い鑑定店主とは、距離をとってしまおう。毎回、買い取りに出向くのは、やめる…。それで、様子を見よう。今んとこ、キープしてる魔石が67個ある、これも、いずれ売りに出すから、そのための手段と機会を待つことにしよう。間違いなく、これから大量(大漁)に保持することになるからな…。

 

ふぅ、勧誘してくる奴らが、面倒くせぇなぁ。今はあしらってるが、いずれ何かが起こるかもしれない…。いざとなったら、この国を出た方が早いかもな…。

 

拠点を変えるなら、どこに行くか…。このアルファス王国から、一番近いのは、ベイタスク王国だな。

 

ベイタスク王国かぁ…。う~ん、特典の『事前情報』で、おおまかな知識はあるんだが、実感のない情報が、記憶として頭に入ってるんで、詳しい情報が掘り起こせねぇんだよな、実際に見聞きすりゃ、現実と事前情報が混ざりあって、確かなモノになるんだが…。これが、この特典の残念なトコだよな、すげー便利なんだけど…。まぁ、脳に負担を掛けないための、優しさ補正なんだろう…、標準装備だし、きっと、そうだ…。

 

とりあえず、一回、行ってみようかな?。ベイタスク王国…。そうすりゃ、『事前情報』も活用できるし、俺にとって有利なことがあれば、即、引っ越しでいいんだし。

 

よし、そうしよう、とりあえず、明日の仕事は休みにして、ベイタスク王国行きの準備だけでもしておこう。

 

一番近いといっても、移動するとなれば、30日以上は掛かるだろうからな…。この辺も、調べなければ…。

 

今日は、この辺までにしとくか…。

 

 

 

 

反省会終了…。

 

 

 

(なんか、今夜はいい夢を見れそうな気分だな…)

 

明日は情報収集である。

 

「おやすみなさい」          


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