今日も目立たず地味に日銭を稼ぐ   作:商売繁盛

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第11話

 

休日に突如、舞い降りた美少女との出会い…。

 

ずっと回避(スルー)していた、この世界での奇妙な出来事(イベント)との邂逅。

 

人の意思を超えるほどの強大なチカラ…。異世界イベント。もし、そんなモノが、本当にあるのならば……。

 

…厄介この上ない。

 

転生者が皆、異世界で、はっちゃけたい訳ではないのだ。

 

なかには、目立たず、地味に、日銭を稼いで暮らしていきたい、そんな転生者もいるのだ。

 

もう、かまわないでくれ!。そんな言葉が聞こえてきそうだが、大いなるなる意思…。世界の進み方…。その前では、無力に等しい…。

 

こっちの事情や迷惑をかえりみず、悪意とも言える、そのチカラを発揮するのであるならば、多少であったとしても、抵抗するだろう。

 

自分の意思をもって対立する。その覚悟は立派だが、アテがまったくない。

 

それはそうだろう。本気になられたら、そもそも対応策がない。どうしようもない…。

 

そんな暗い思考に陥っている。それほどまでに休日の出来事は衝撃的だった。切り替えの速さが特徴の、この男も、お手上げ、なのかもしれない。

 

 

(さて、今日も元気に職場(地下洞窟)に行きますか!)

 

 

切り替えていた……。あっさりと…。この男は結構、テキトーだった。

 

考えても仕方ない…。これで済ませることが出来るのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衝撃的な休日の翌朝。今日も早朝から行動する、フレン。

 

まずは、早朝から開店している、お弁当屋さんへ。朝用と昼用の、弁当と飲み物を購入。そして、職場(地下洞窟)へ向かいながら、早速、朝用弁当(サンドイッチ)を食べ歩きする。通勤距離があるため、無駄を省いているのだ。

 

そして、職場(地下洞窟)前に到着。いつものように常駐スタッフに軽く挨拶。地下、奥深くへと進む。

 

今日の予定は、前回の隠し部屋(ボーナス・ステージ)に行こうと考えている。

今回も前回同様に挑戦することが可能なのか、それとも最初の一回限りなのか、それを確かめるためでもある。

 

仮に挑戦できたならば、それはそれで、お得なのだ。ボーナス・ステージの名は伊達じゃない。待ち伏せがあることも、あらかじめ知っているのだから、事前に準備が出来る…。体力、魔力を回復できるアイテムは、それぞれ購入済みだ。

 

前回の経験と反省をいかして、万全の体勢で挑む。

 

地下洞窟の通路を、目当ての場所まで、ひたすらに進む。長い距離だ、朝イチ出勤でも相当に時間が掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おそらく、昼時の手前ほどの時間帯で、ようやく隠し部屋へ通じている、すり抜けられる土壁…。の前まで到着した。

 

(やはり、微弱ではあるが、魔力に似た感じのモノが、土壁の中から流れている…)

 

前回は、これを感じとって、ひどい目にあったフレン。しかし、今回は確認調査が目的だ。周囲を見回し、誰もいないことを確認すると、迷うことなく土壁に触れる。そして、ゆっくりと土壁の中に吸い込まれていく。

 

吸い込まれた先にあるのは、転移魔法陣が床に描かれた、せまい空間。前回同様に魔法陣が、にぶく輝いている。

 

フレンは、1つ1つ 確認しながら行動する。ここで魔法陣の上に乗れば、ボーナス・ステージの広間へ転移するはず。前回の体験したことが今回も同じように起きるのか…。それこそが今日の確認調査の目的である。

 

フレンは魔法陣の上に乗る前に、これから起こるかもしれない出来事を予想する。

 

予想スタート。

 

まず1つ、なにも起きない…。

 

これは、このボーナス・ステージ…。と思われるモノが一回限りのサービスだった場合…。どうやって、初回と、それ以降を分別してるのか解らないが、この不思議ワールドには、ツッコミどころが満載だ。気にしない…。

 

次の可能性。前回同様のボーナス・ステージを体験できる…。

 

これは、前回の経験と反省をいかせる。そのための準備も整っている。出来ることなら、このパターンが1番いいと、俺は思っている…。

 

さらに次の可能性。前回とは違う、ボーナス・ステージに挑戦する…。

 

これは、別の意味で経験と反省をいかす。規模にもよるが、回復アイテムを用意してる以上、落ち着いた行動、慎重な判断で冷静に対応すれば、良い結果が出ると思う…。いや、思いたい…。

 

最後の可能性。絶望的な、ボーナス・ステージに挑戦…。

 

これは、どうにもならない…。諦めるしかない、抵抗はするが…。これが、1番怖い。こんな可能性は無いと楽観視したい…。切実に…。

 

予想タイム終了。

 

「考えられる可能性は、こんなもんかな?」

 

そう呟くと、回復アイテムを確認して、懐(ふところ)に仕舞う。補給用の弁当と飲み物を、いつでも取り出せるように、リュックの中で1番上に配置しておく。

 

「準備完了。では、覚悟を決めて…」

 

フレンは魔法陣の上に乗る。

 

「行きますか!」

 

魔法陣が輝き始め、フレンは目を閉じる。やがて、光が膨らみ、せまい空間が光に包まれていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開き、周りを確認するフレン。

 

20メートル四方の空間…。前回の時と同じ広間に転移したと思われる。

 

そして、このあとに起こる現象は……。

 

「壁際の地面から、湧き出る魔石獸…」

 

フレンの言葉と合わせるように、四方の壁際の地面から、次々と魔石獸が這い出てくる。

 

「この時点で、ボーナス・ステージが、一回限りのサービスゲームじゃないことが確認できた、と…」

 

前後左右。その四方から、各10体~15体ほどの魔石獸…。

 

「前回と、同じと断定…。ボーナス・ステージ、開始だな…」

 

そう言うと、一方向に身体の向きを変え、1つの集団を正面に捉える。

 

四方から迫り来る魔石獸。距離はまだある。奴等の脚は遅い。ここで、前回の経験と反省をいかす。

 

「左右と背後の奴等にのみ、足止めの突風…」

 

フレンの身体から、正面以外の3方向へ永続的な突風が吹く。出力を調整し、すんなりと足止めに成功する。これで奴等は前には進めない…。

 

「前回の反省をいかして、4方向ではなく、3方向にしてみました。省エネですね。

 前回の経験をいかして、突風の出力調整が、とてもスムーズです。素晴らしいですね」

 

なぜか、優しい口調で自画自賛のフレン。だが、確かに経験と反省がいきている。テンパっていた前回とは、…違う。

 

これで、正面から向かって来ている魔石獸に集中できる。脚も遅く、距離があるなら、コイツらまで足止めする必要はない。

 

フレンは、この状況になった場合を想定して、事前にプランを考えていたのだ。

 

「前回の反省点。片手で貫通式の…、突風の弾丸を丁寧に撃ち出してたから、時間と魔力を浪費した」

 

そして、正面の魔石獸たちに、左右の手のひらを向ける。

 

「今回は両手で、素早く魔力調整。さぁ、いきまっせ!」

 

次の瞬間、正面の魔石獸たちへ、貫通式・突風の弾丸が撃ち込まれる。

 

両手で調整され、前回よりスムーズに、安定の魔力消費で放たれる、フレンの風魔法。ここでも、前回の経験がいかされている。

 

「レベルアップの恩恵かな?。改良型も一息で3連発いけるようだ、さっさと俺んトコ来ねぇと蜂の巣だぞ?、来させる気はねぇけどな…。ククク」

 

 

 

ワルい顔になったフレン。彼は忘れてない…。昨日の休日でのゴタゴタを…。ストレスの発散という…、その八つ当たり先を奴等に向けることを…。

 

改良型の弾丸が、一息で3連発できるようになり、次々と蜂の巣になる魔石獸の集団。1体、また1体と霧散、消滅を確認していく。

 

そして遂に、正面の集団を全滅させた。

 

「とりあえず、13体…。次は、後ろのヤツラだな…」

 

そう言うと、真後ろを向いて、正面に捉える。やることは、変わらない。

 

蜂の巣だ…。

 

「…っと、その前にお前らだけ足止めの解除だ…。左右のヤツラは、もう少し、待ってろよ!」

 

ここでも、省エネを実践。距離もあり、正面に向き合ってる状況なら、足止めはいらない。フレンの遠距離魔法は、結構、えげつない…。

 

 

 

そしてフレンから放たれる弾丸…。動きを制限していた正面からの突風がなくなり、ようやく前進を始めた魔石獸たちに、一方的に撃ち込まれる風魔法。

 

ここでも蹂躙され、蜂の巣にされる魔石獸。体力、魔力ともに、まだ余裕がある。フレンは、この時点で勝利を…、ステージクリアを確信していた。

 

 

 

「2つ目の集団、全滅確認。11体…」

 

 

 

およそ半分の魔石獸を消滅させたフレン。勝利は揺るがない。残りも安全に倒していくつもりだ。

 

そして3つ目の集団を正面に捉え、足止めを解除し、蜂の巣状態を作り上げる。手を抜く必要はない。一気に攻勢をかける。

 

 

 

 

 

「3つ目の集団、全滅。14体…」

 

 

 

 

 

これで、3つの集団を消滅させたフレン。残りは最後の集団のみ。

 

「では、ラスト、いきますか!」

 

最後の集団を正面に捉え、足止めを解除し、蜂の巣状態を再び作り上げる。

 

一方的な蹂躙も、ようやく終わりが近づく。フレンから放たれる改良型の弾丸に手も脚も出ない、魔石獸。

 

 

 

 

 

そして…。

 

 

 

 

 

「ふぅ~、終わった。最後は12体…」

 

二回目のボーナス・ステージはフレンの圧勝だった。

 

「ぴったり、50体だな…。改めて考えると、スゲー数字だ」

 

これだけの魔石獸を1日で倒すのは、相当、運良く、遭遇しなければ、普通は無理だろう。

 

「流石は、ボーナス・ステージ!。経験値も魔石もがっぽりです!」

 

ボーナス・ステージは、フレンが勝手に命名してるだけなのだが、現時点では、その通りな内容だ。

 

フレンは広間に散らばってる戦利品の魔石を拾い集める。その数は7つ。1戦闘での獲得数において、新記録達成である。

 

「ついこないだ、新記録樹立したばかりなのに、もう記録更新か…」

 

ぼやいても、実は、嬉しがっているフレン。続いてステータス画面を出して、レベルを確認する。

 

「レベル14。よし、ちゃんと上がってる」

 

戦いのあとの、レベル確認を、密かに楽しみにしているフレン。その顔は、ニヤニヤしている。

 

「よし、帰るか!」

 

もう、ここには用はない。今日の仕事は、これで十分なのだ。フレンは広間の中心にある、光り輝く魔法陣の上に乗り、転移する。

 

転移で隠し部屋まで戻ると、すぐに通路には出ず、休憩の食事タイムをとる。

 

小腹が空いていたフレンは、隠し部屋の隅に背をもたらせ、座り込み、リュックから弁当を取り出すと、一気に口へと運び咀嚼。そこへ果汁水を流し込んで飲み込む。あっという間に弁当を平らげた。

 

「よし、行くか!」

 

僅かな時間で食事を済ませたフレン…。あとは、地上に出るだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事に地上へと帰ってきたが、驚愕の光景に思わず息を飲む…。ソラが明るい!。っと言うより、ソラがまだ青いのだ!。夕方の時間まで、あと少し。そんな時間帯だった。

 

(感動です…。こんな早い時間帯に帰ってこれるなんて…)

 

今にも、歓喜の涙が出そうになるが、なんとか我慢して、ポーカーフェイスをキメている。

 

常駐スタッフに、サクッと挨拶。そのまま、魔石の買い取り専門店を目指す。

 

フレンは歩きながら思考する。

 

(こんなに早く帰ってこれるとは…。このパターンは使えるな…)

 

経験値も魔石も申し分ない。その上に、勤務時間まで短縮してくれるなんて、素晴らし過ぎる。

 

フレンは思う。これでいこう!っと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ!」

 

鑑定店主の掛け声…。

 

魔石買取専門店に到着したフレンは…。

 

「この4つを、買い取りお願いします!」

 

フレンは現時点で14個の魔石をキープしていた。数日は遊んでいても問題ない保有数だ。一度に全部を売ると怪しまれるため、頑張りました!っ的な感じで小出しに売りに出す。今回はその内の4つだ…。

 

「かしこまりました、少々、お待ち下さい…」

 

早速、目の前で鑑定を始める、店主…。すると…。

 

「そうそう、実は、この店にも登録水晶を設置することになったのですよ。ステータス更新のためにも、ご利用しては、いかがですか?」

 

鑑定店主は、そう言葉にすると、フレンを、ジッと見る。

 

「(………)そうですね、冒険者ギルドには、全然行ってないので、試してみます。…え~と、ギルドカードは、リュックの中に仕舞ったっけな~?…」

 

フレンは、そう言うと、背負ったリュックを降ろし、鑑定店主に対して背中を向けて…、膝を曲げて腰を落とすと、リュックの中をゴソゴソと手探りしている…。

 

「(………)あった、あった、ギルドカード…。無くすと、再発行手数料、取られちゃうんですよね…」

 

そう言って、ギルドカードを鑑定店主に手渡す。

 

「そうですね、大事にして下さい。カード、お預かりします…」

 

鑑定店主が登録水晶にカードをかざすと、魔道具 登録水晶は淡く光り、ステータスデータを読み取り、更新する。

 

水晶の淡い光りが収まりステータスデータの更新が完了する。鑑定店主がギルドカードをフレンに返し、フレンもカードを受け取る。

 

「驚きました、レベルは9なんですね。もっと高レベルなのかと思ってましたよ」

 

フレンのステータスデータを見た鑑定店主の反応に、フレンは…。

 

「(……)冒険者登録をして、たいして経ってないんですよ…。むしろ、このレベルでも、けっこう頑張った方ですよ?」

 

自身の妥当なレベルを強調する。フレン…。

 

「いえ、これだけの魔石を、連日のように持ち帰られていましたから、驚いて、不思議に思ったのですよ。失礼いたしました」

 

「(……)最近は、運がいいんですよ!。早朝からの活動も、いきてるみたいですし!」

 

真実を織り混ぜながら、適当な返事をかえす。

 

「何はともあれ、我々としましては、魔石の安定供給はありがたいことです。これからも、ぜひ、よろしくお願いします」

 

「はい、頑張りますよ!(………)」

 

どうやら、今日は、ここまでのようだ……。っと、フレンは感じた…。

 

「では、魔石の鑑定結果ですが、4つとも下位でした。ですので、2万8000ガルですね。どうぞ、お確かめ下さい」

 

「2万8000…、はい、確かに。では、また。お疲れ様でした」

 

報酬を受け取り、店を出たフレンの顔は、どこか真剣さが垣間(かいま)見えた。

 

フレンは、一路、広場へ向かう。本来なら食堂で夕飯をガッツイてるのだが、考え事ができた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広場に着き、ベンチに腰掛けると、深くため息。

 

(目を付けられたかな?。だけど、そんなに怪しまれる行動は、とってないハズなんだけど…)

 

先程の鑑定店主との、やり取りを思い出す。フレンは、なにかしらの疑念を持たれたと感じた。

 

(調べたかったのは、俺のステータスか?)

 

ギルドカードを提示し、ステータスデータを更新する際に、持ち主のステータスを確認することができる。その内容は登録者名だったり、レベルであったり、特殊能力であったり。

 

ギルドカードに登録された内容を確認できるのは、本人以外では、手続きに立ち会う、ギルド職員か、それに準ずる者。

 

鑑定店主は冒険者ギルドから派遣されて、あの店で鑑定士兼店主をしているので、フレンのステータスを確認することが出来る。

 

(最近になって現れた男が、順調に魔石を持ってくるから、興味を持った…とか?)

 

うーんと、フレンは考え込む。

 

(咄嗟にステータスを偽造して、レベルをいじったのは、正解かもいれない。登録日が記載されている以上、レベル14は、いくらなんでもヤバ過ぎる…)

 

フレンはリュックの中をあさる振りをして、事前にステータス偽造をして、更新をしていた。

 

転生特典が記載される特殊能力欄は、当然の如く、隠蔽。レベルは14を9に変更しておいた。

 

(怪しく思っても、興味を持たれても、何か、特別な項目が表示されることはない…)

 

そのための、ステータス隠蔽・偽造の特典なのだから…。

 

(次は、鑑定店主さんも気を付けなきゃならんとは、忙しいなぁ、まったく…)

 

疑念なのか、興味なのか。一過性のモノなのか、継続的なモノなのか。現段階では、判らない。

 

だが、行動にとられたのは、事実。

 

フレンの、要注意人物にリストアップすることが決定した。

 

ここで思考をやめ、顔を僅かにあげる。うつむいていた訳ではないが、視線を下げて集中していたため、同じベンチで隣に座る人物に、ようやく気が付いた…。

 

 

「あっ、やっと気が付いたわね…」

 

昨日、衝撃的な出会いを果たしたディアナがそこにいた。

 

「ん?。ディアナか…。お疲れさん、いつから居たんだ?」

 

「お疲れ様。少し前よ、驚かせようとしたのに、フレン、全然気が付かないのだから…、わたしが、逆に驚いたわよ」

 

「ククク、そいつは、済まなかったな、ちょっと考え事してたんだ…」

 

「それは、隣で見てたから分かるわよ。それで、なに考えてたの?」

 

「ん~、これからの対応?」

 

「どうして疑問系なのよ。もう…」

 

「まぁ、いいじゃねぇか、それより、どうしたんだ?、こんなトコで…」

 

「今、仕事帰りなの。この広場を通り抜けて店と家を行き来してるのよ…。ほら、あっち側の通りにある装飾品店、知ってる?」

 

そう言って、ディアナは指差し、フレンにたずねる。

 

「あぁ、ん~、そういえば、そんな店があったような…」

 

「知らないのね、よく解ったわ…」

 

適当にかわすつもりであったが、あっさり看破された。この子は色々するどいなぁ…。っとフレンは思った。

 

そんなフレンを、ジト~ッと見つめるディアナ。フレンは明後日の方向を見て、目を合わせない…。

 

先に折れたのはディアナだった。

 

「ふぅ、もういいわ。それより、フレンも仕事は終わっているのでしょ?。一緒に食事しない?」

 

「あぁ、かまわんよ。どのみち今から、メシ食おうと思ってたからな…」

 

「決まりね♪。じゃあ早速、買い物に行きましょ」

 

そう言って、座っていたベンチから立ち上がる、ディアナ。

 

その一言に呆けるフレン。

 

「………?。は?、買い物?。なんで?。食べ歩きでもするのか?」

 

「なに言ってるのよ。料理をするから、その食材を買いに行くに決まってるじゃない。ほら、フレンも立って!」

 

そう言って、ディアナはフレンの手を掴むと、引っ張って、立ち上がらせる。そして手を繋いだ状態で歩き出す。

 

ディアナに引っ張られる形でついていくフレン。手は繋いだまま…。

 

「おいおい、近くの食堂でいいじゃねぇか。わざわざ作らなくたっていいだろ?」

 

普段から食堂を利用しているフレンならではの意見…。

 

「わたしが作った方が美味しいわよ♪。フレンだって昨日、喜んでくれたじゃない」

 

普段から手料理を作るディアナならではの意見…。

 

「確かに旨かったけど、昨日もご馳走になってんだ、俺だって、遠慮って言葉ぐらい知ってるぞ」

 

「平気よ。遠慮なんかしなくて。フレンは、たくさん食べてくれるから、作りがいがあって楽しいの」

 

「はぁ~、分かった…。それなら、買い物の代金は俺が支払うからな。これは、譲らん…」

 

「ふふっ、分かったわ、あと荷物持ちもお願いね♪」

 

「…はいよ」

 

「ふふふ」

 

こうして、食材を求めて城下町市場へと向かう二人。手は繋いだまま…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食材を買い集め、ディアナの家に行き、今日も夕食をご馳走になり確りと完食し、御礼を言ってディアナの家を出たフレン…。

 

今は、宿屋に戻るため、1人、歩いている。

 

繋いだままだった手は、二人とも気付いていたが、離すタイミングが判らず、しばらく、そのままの状態が続き、食材選びの際に自然と離れた。

 

正直、恥ずかしかったフレンは、心の中で、ホッとした。

 

その時のディアナは、どうだっただろうか…。フレンには察することは出来なかった…。

 

宿に戻ったら、風呂を済ませて、部屋で本日の反省会をする。

 

「ホントに色々、ありすぎなんだよ、毎日、毎日…ったく」

 

まずは愚痴からのようだ…。

 

 

 

 

 

思考スタート。

 

 

 

 

 

(とりあえず、確認と調査をした、隠し部屋については…)

 

結果としては、望みうる最高の結果だった。パターン化して明日以降も続ける価値がある。

 

 

(魔石買取専門店の鑑定店主に目を付けられたっぽい…)

 

フレンのギルドカードから、そのステータスを読み取り、何らかの情報を得ようとした可能性が高い。

 

あらかじめ、偽造という名の手を打ったことで、今日に関しては、事なきを得たが今後に関しては、不明のまま…。

 

(いつか、冒険者ギルドからの接触があるかもしれない…)

 

そうなった時、どうするか?。答えが出ない…。

 

(最優先は、鑑定店主への対応だな…。今回のケースが、ただの偶然で済むわけがない…)

 

状況は後手に回っているが、フレン、鑑定店主、両方、ともに情報が欲しいのは間違いない。

 

明日、訪ねるのはやめる。っと言いたいが、それは悪手だ。このタイミングでは怪しく思われる。これまでのように顔を出す。出来るだけ平静を保っての、腹の探り合い。こんなトコだろう…。

 

 

 

 

 

思考終了…。

 

 

 

 

 

「面倒だ、ホントに…。はぁ~」

 

 

心の底から本心です。っと、叫びたいフレン。

 

 

「明日も、頑張って日銭を稼ごう…」

 

 

今日も疲れたようだ…。精神的に…。

 

(おやすみ~)            


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