時は(少し)流れ、準は五歳になった。
今では大学の問題も解けるようになっていた。
あれもこれも全て父親が調子に乗りまくるからである。
今日はデパートへ行く日である。準は今まで殆どデパートへ行ったことが無く、
少し楽しみだった。それに、気の所為だろうか？何時も陽気な母が更にポワポワしている気がする。
しかし、これが、折角だからと遠くのデパートに行ってみようといった母の発言が、
——―———————運命の分かれ道だと———————————
気付く者は、居なかった。
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〈デパート 一階〉
買い物を殆ど終えた十六夜一家は、最後に食品売り場に来ていた。
「準、何か欲しい物はある？」
「無い」
「そっ...そうか..。」
準は今までずっと母に連れ回されていたため、少し機嫌が悪かった。
その時、上の階で爆音が響いた。更には銃声のようなものまで聞こえてくる。
突然の事に、其処にいた全員がパニックになる。
(上の階から銃声のようなもの、てことはエスカレーターやエレベーターから
離れていた方が安全だ。)
そう考えた準は、後ろに下がろうとする。
その時、後ろから誰かに羽交い締めにされる。
「うわっ！(クソッ！上の階に居るから、下の階には居ないという訳じゃないのに！)」
そう、準を羽交い締めにしているのは、銃を持った男だった。
「静かにしろ！でないとコイツを撃つぞ！」
ダンッと男が天井に向けて撃つ。
この銃が本物だと分かると、皆我先にとドアへと向かう。しかし、ドアは塞がれていて、
誰も外には出る事が出来なかった。
そんな中、冷静になった準は今の状況を分析する。
(この男が持っている銃は、おそらくトカレフ。それもコピー品では無く、ロシアの作った物だ。今一発撃ったから、あと最高でも7発。僕を人質に取ったのは、ただ単に子供
だから。つまり相手はあまり僕を警戒して居ない。だとすると、抜け出すのは油断している.................今っ！)
準は素早く男の脛を蹴る。そして一瞬拘束が緩んだ隙に抜け出し、振り返ると同時に
男の腹を殴る。
「ぐっ・・・このガキぃっ！」
男がトカレフを準に向ける。男は手を広げたような状態になってしまっていたため、
男の右手にあるトカレフは準の方向、つまり右から左へ動く。
それに合わせ、準は軽く飛ぶ。そして体を捻らせ、右膝を右から左へ勢いよく振る。
空中での膝蹴りと、男の右手が勢いよくぶつかり、トカレフは男の手から
弾き飛ばされる。
準は即座にトカレフを取り、男に突きつける。
その途端、男は怯み、周りの客達に取り押さえられる。それと同時に警察が突入、
男は呆気なく逮捕された。上の階に居た人達も逮捕された様だ。と安心していたその時、
エスカレーターを走って降りてくる人が居た。まだ逮捕されて居なかったのだ。
その男は、こちらに一直線に走ってくる。
「ハァ・・・・まだ終わってないのか。」
「オイ！そこのガキ！早くそこをどけ！」
怒鳴り散らしながら走って来る男も銃を持っていた。
準は、男の前に立ち、足を振り上げる。男の持っていた銃も蹴りとばされ、直後に準に
股間を蹴られたため、準に何も言う事も出来ずに沈黙した。
すぐ警官がやって来て、男に手錠を掛けようとする。その瞬間、
ダァンッ、という音と共に倒れた。
「だっ大丈夫ですか？」
「グッ....」
準の心配する声を無視し、警官は震える指で遠くを指差す。
そこには、銃を構えた女が居た。今にも二発目を撃とうとしている。
「こうなったら..........当たれぇぇぇーーー！」
準は男から取ったトカレフで女の銃目掛けて撃つ。
ダンッ
「うわわっ！」
銃の反動で軽く吹っ飛んだ準は、女の方をみた。
そこには、綺麗に準の弾が命中し、使い物にならなくなった銃があった。
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準は警察官や救急隊員達がこちらに向かってくるのを音で感じ取る。
今準の腕には鋭い激痛が走っており、まともに動ける状況では無かったのだ。
（これから・・・どうなるのかな？銃刀法とか、正当防衛とかあるけど、何か法とかそんな物とは比べ物にならない事が起きそうな気がする・・・）
その嫌な予感が後日、見事に命中すると言う事を彼はまだ知らない。
戦闘描写はスローモーションの様になって居ますが実際は結構速いです。